べート・ローガがヘスティアファミリアに入るのは間違っているだろうか【リメイク版】   作:爺さんの心得

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ベートきゅんの水着姿の写真何処かに落ちていませんか(迫真)





怪物祭ーー食人花ーー

 

 

 『モンスターが暴れだした』という民間の言葉により、メインストリートは大混乱に陥っていた。モンスターは人を喰らうため興奮した状態で人を襲い続ける。ギルドとガネーシャファミリアの迅速な対応でまだ被害者は出ていないとのことだが、このままではいずれ被害者が出てしまうであろう。

 

 モンスターの咆哮が轟く。轟音と共に建物は崩れさり、あの華やかなメインストリートは一瞬にして地獄と化していた。

 悲鳴が、血が、冒険者の猛声が飛び交う。血気盛んなモンスターは今なおこのメインストリートを荒らし続け、自分らを狩ろうとする冒険者を一捻りしている。

 ーーーだが、そんなモンスターを無傷で狩り続ける猛者もいた。

 

 「い、いやぁ!!」

 

 ニメトルにも及ぶ巨大な猪のモンスター『バトルボア』が、婦人に狙いを定めた。そしてそのまま、荒れているメインストリートをさらに荒れさせて、突進。

 婦人は足を捻って動けない。もうこのまま、生涯を醜く終えてしまうのかと死を覚悟した時だった。

 

 『ブ、ゴァ!?』

 

 横から灰色の狼がバトルボアを蹴り飛ばしたのは。

 バトルボアは驚きの声を上げた後、屋台に突っ込んだ。黒煙が立ち上り、ピクピクと痙攣させてやがて塵となる。ゴトリと紫色の石「魔石」をドロップして、バトルボアは死に至った。

 婦人は自分の側に立っている灰色の狼人に見覚えがあった。いや、見覚えが凄くある。いつも夫が「近づくな」と注意していた人物、その人だったのだから。

 

 「【(ヴァナル)(ガンド)】」

 

 彼の二つ名を呆然と呟いた。

 【凶狼】ーーーベート・ローガは舌打ちを零す。それはモンスターに対してもだが、この事態を招いた大元も含まれていた。

 

 (突然のモンスターの襲撃。モンスターはバベルからは抜け出せれない。……と考えるとすれば、モンスターを連れ出す権限があるガネーシャファミリアがこの事態を招いた張本人だと考えるしかねェ)

 

 怪物祭の主催ーーーガネーシャファミリア。まずベートはこのファミリアを疑った。ガネーシャファミリアは都市で唯一モンスターを地上に運べる権限を持っている。後は調教師(テイマー)などが存在するが、こんな大量のモンスターを軽々と手放すはずがない。となると、ガネーシャファミリアが犯人と考えるしかない。

 だが、あの主神がこんな事をするだろうか?ガネーシャは都市の人々を守ろうと日々行動している。そんな人間が、こんな不幸に陥れる事を易々とやってのけるだろうか?

 と考えて次に思いつくのは、裏切りの可能性。ガネーシャファミリアの中に裏切り者がおり、その者が悪事を働いてモンスターを解き放った。だがモンスターが閉じ込められているであろう所には、必ず見張りが配置するはず。それを全部押し切ったのか?

 

 (ーーー細けェ事は、これを終えてからにするか)

 

 彼らを囲みながら接近して出方を伺っている『トロール』。ベートはそれを見渡し、小さく息を吐いた。

 そして、迎撃。

 トロールが攻撃してきた瞬間、ベートは一瞬にしてトロールの群れを塵にした。魔石がゴトゴトと落ち、ベートは首をコキリと鳴らして、面倒臭そうな顔を浮かべる。

 

 「……す、凄い」

 

 目にも止まらぬ速さでモンスターを処理してみせたベートに感嘆の声が零れた婦人だが、ギロリとベートに睨まれ肩を竦めた。

 

 「何ちんたらしてやがる。足でまといの雑魚はさっさとどっかに失せやがれ」

 

 「…………」

 

 言葉通りであった。婦人は冒険者ではない。ただの民間人で、何も力を持たない。故に、足でまといなのは当然のことであった。

 だが痛む足がそれを許してくれない。相当酷かったのか、足の感覚がない。立ち上がろうとするも足に力が入らず、誤って四つん這いに転んでしまった。

 

 「あ?…………どっか怪我しやがったのか」

 

 それを見たベートは心底面倒臭そうにし、懐から緑色の液体が入った試験管を取り出した。

 婦人が戸惑っていると、無理矢理足を出されてそれを浴びせられる。すると足の痛みが和らぎ、みるみるうちに回復を遂げていった。

 【回復薬(ポーション)】。婦人は使ったことはなかったが、冒険者が狩りに行く際の必須アイテムだと聞いている。

 

 「オラ、治してやったんだからさっさと失せろ」

 

 「!!!あ、ありがとうございます!!凶狼!!!」

 

 婦人はバッ!と立ち上がり、ベートにお礼を言いながら安全な場所へ避難し始める。後ろの目線を感じながら、婦人は彼の認識を改めることとした。

 ーーー良い人じゃない、あなた。

 今度、あの夫にこの事を教えてやろうと心に決めた。

 

 

 

 

 ****

 

 

 この騒動を耳にした瞬間、ベートはもう走り出していた。そして一般市民を襲っているモンスターを一蹴りして殺していった。後は、流れ作業のようにモンスターを狩りまくり、そしてたまたま着いた場所に婦人が襲われる場面に遭遇し、救出したのである。

 言っておくが、助けたのは気まぐれである、とベートは主張した。決して彼女を助けるつもりの為に来たのでは無いと、ベートは強く主張した。

 

 一人の女性を助けたベートはその後、数々のモンスターを処理し続けた。持ち前の脚力や俊足でモンスターを塵にし、被害を減らし続ける。いつの間にかモンスターの咆哮や暴動は静かになっていき、静寂が訪れる。

 

 「……まだあっちにもいやがるな」

 

 僅かな音を拾ったベートは、モンスターの残骸を取り残して走る。民家の屋根を飛び越え、時には攻撃してくるモンスターを次々に蹴り殺していった。

 やがてベートが辿り着いたのは広い広場であった。そこにはまだモンスターがうじゃうじゃと存在しており、逃げ遅れている一般市民を襲っている光景が広がっていた。

 

 「チッ……!!」

 

 血が飛び交うのを目の当たりにしたベートは、まずは手近にいたモンスター三体を蹴り殺す。被害にあっていた女性を避難していた見知らぬ男性に投げ渡し、ベートは次に牡鹿のモンスター【ソードスタッグ】を殺していく。

 

 「あ、あ……凶、狼……!?」

 

 「凶狼が、人を助けてる……」

 

 そんな戯言が聞こえたが、ベートは無視して広場のモンスターを狩りまくった。

 その時間は二分くらいだろうか。思ったよりもモンスターの数が多く手間取ってしまったが、広場のモンスターは全て狩り尽くしたであろう。

 

 「チッ。厄介なモンスターが放たれてねぇだけマシか」

 

 状態異常などのモンスターが放たれたりしていたら、いくらベートでも時間を食ってしまう。しかも一般人がいる中でそのようなモンスターが暴れたりでもしたら、被害が大きくなったりもする。しかし今回はそんなモンスターはいなかったので、今の所何も心配はいらないようだ。

 ベートは野次馬の方を振り返ったが、また視線を戻した。野次馬に手を煩わせる時間が惜しいからだ。そして次にモンスターが現れる場所を探ろうと耳を澄ます。今の所モンスターの音はこの辺りではしない。野次馬は自分の身くらい自分で守るだろうと無視して、次の場所に行こうとベートが足に力を込めたーーーその時だった。

 

 「………………?音?」

 

 足から伝わってくる振動に、ベートは視線を落とす。

 地中から伝わる振動とーー破壊音。ガタガタと地震のように震えだし、それは止まることなく寧ろ大きくなっていく。

 

 「い、いやぁ!?」

 

 「何だ!?何が起こってる!?」

 

 周りにいた野次馬はパニックを引き起こし、ドミノ倒しのように動き始めた。老若男女の悲鳴がさらに恐怖を引き立たせ、この音が異常だというのが嫌でも伝わってくる。

 その音はベートの足元まで迫り、そしてーーーーーー一瞬の静寂、その瞬間に、ベートは跳躍した。

 

 

 

 『ーーーーー!!!』

 

 

 

 ベキベキと広場の地面を破壊しながら、それは現れた。

 ぐにゃりと体長は10、20、いや、それ以上の大きさの極彩色の触手が地面を叩きつけながら地中から姿を現した。頭部と思わしきところには禍々しい配色の花弁が生えており、口から異常な粘液を吐き出していた。

 はっきり言って美しいとはいえない、異色のモンスター。巨大な食人花のモンスターが、ベートの眼下でその全貌を晒す。

 

 「ンだこのモンスター……こんなの知らねぇぞッ」

 

 ベートは上空からそのモンスターを観察しながら、記憶に残っているモンスターノートを引っ張り出した。だがどんなに記憶を駆け巡らせても、あのモンスターの情報どころか、姿を見たことがなかった。

 つまりあのモンスターは、ギルドや冒険者も知らない未知なるモンスターとなる。

 そんなモンスターと相見えるのは危険な行為だが、この状況だ。交戦は避けられないと悟ったベートは、降下と同時に回転して、食人花の頭に重い一撃を食らわせた。

 メキ、と骨が軋む音が聞こえた。ーーーしかし、

 

 『ーーー!!!』

 

 「ッぬお!?」

 

 食人花は頭を振り、ベートの蹴りを押し返す。そしてすかさず触手でベートの体を薙ぎにかかった。

 反動で体を不安定にさせたベートだが、持ち前の身体能力で空中で体勢を立て直す。向かってきた触手を体を捻らせて回避し、割れている地盤へと着地した。

 

 「チッ。硬ぇ」

 

 足からじわじわと痛みが染み渡る。あの食人花はとても硬く、並の冒険者が手も足も出ない事は明白であった。何回でも攻撃すれば行けるだろうが、ベートの足が持つかも分からない。

 なら最初から、全力でやるしかないだろう。

 ベートは全ての力を足に貯め、食人花の頭上まで跳躍した。

 

 『ーー!!』

 

 それを、食人花の触手が追ってくる。

 グワリ!と触手はベートを覆うかのように四方八方から攻撃を仕掛けた。

 

 「ッオラァ!!」

 

 だがそれは、ベートには通用しない。

 ベートの強烈なかかと落としが決まる。攻撃してきた触手を両断し、食人花の頭部を見事に潰してみせた。

 ピクピクと痙攣する食人花はやがて粒子となって消え去る。残ったのは戦闘によってボロボロになった広場と、禍々しい色をした魔石だけであった。

 

 「ンだよ。大したことねぇな」

 

 ケッと物足りなさそうに吐き捨てたベートは、禍々しい魔石を手に取った。

 手に持つだけで異様な空気がビシビシと感じてくる。とても忌々しく、手に持つのが嫌なくらいに気色が悪い魔石。

 こんなのを換金してくれる所があるのだろうか、と模索したーーーその時だった。

 

 『ーー!!!』

 

 「!」

 

 ボゴッ!とベートの背後で地響きが鳴り、新たな触手がベートを襲う。

 もう一体いたのだ。あの食人花が。そう気付いたときには遅く、既に触手は眼前まで迫っていた。

 

 (ーーーやべぇ、当たる)

 

 ここで緊急回避しても吹き飛ばされるのは確実。なら最小限のダメージで凌ぐ為に受け身の体制を取らなければならない。

 ベートは咄嗟に腕をクロスし、その攻撃を受ける。腕から伝わる痛みと浮遊感。そして揺さぶられる脳によってベートの思考は遮断される。

 だがそれは一瞬。直ぐにベートは体をしならせ、地面を掴むかのようにガガガガッ!!と、地面に手をつくことで体を止められた。

 

 (チッ……!!ムカつくなぁ……!)

 

 ベートは地盤を睨んだ。恐らくあの食人花は、まだこの地中に潜んでいる。微弱だが微かな音を、ベートは聞き取っていた。

 さすがに数が増えるのはベートも手に負えなくなってくる。かといってこの食人花は、最低でもLv.4もある程の大型モンスターであった。

 

 (今この付近にいる奴らは大体Lv.3……!!そんな奴らが来ても迷惑なだけだ!)

 

 だったら、自分で倒す。

 救援に来た奴らよりも、自分よりLv.が高いやつらよりも。

 

 (助けなんていらねぇ!!全部蹴り殺す!!!)

 

 助けを求めるなど己の恥。

 そんなのは弱者がやることだ。

 強者は助けを求めない。全て全部、一人で解決してしまう。

 

 それが絶対的強さ。英雄(強者)のあるべき姿。

 

 仲間なんてものは必要ない。

 そんなのは邪魔なだけ。強者の道を潰すだけだ。

 

 「オラ……来いよ、クソ汚ぇ化け物が!!」

 

 ベートに挑発され、食人花はたちまち姿を見せる。

 うねりをあげ、溶液らしき唾液を零し、そしてベートを『獲物』として捉える。

 そしてベートもまた、あの大軍を『獲物』と捉えた。

 

 「行くぜぇ……!!」

 

 上体を落とし、再度足に力を込める。

 一気に頭を潰して、魔石ごとぶっ殺す。それが今、最も最善な事であろう。

 再起不能になるまで潰す。そうだ、これだけ思っていればいい。

 

 今は、目の前の獲物を殺すーーーそれだけしか頭にない。

 

 (………………殺す、殺す、殺すッ!!!)

 

 ベートの熱が高まり、いざ、と右足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひゃっほおおおおおおおおおう!!!!」

 

 

 

 

 

 

 そして、横からやってきた小柄な女性によって、足を止めた。

 

 「………………ア?」

 

 ベートが茫然と見上げれば、目の前の食人花を次々にぶっ潰すアマゾネスの少女が視界に入った。彼女等は時々食人花の硬さに顔を歪めながらも、その次には軽々と潰していく。

 

 「よっ、ほっ、はっ!!」

 

 「オラァ!!」

 

 アマゾネス特有の立ち回りによって、食人花はたちまち倒されていった。

 ゴロリと、魔石がベートの目の前で落ちる。今正に目の前の獲物を狩らんとしたベートの熱は、今は完全に冷めきっていた。

 

 (ーーーンだ、こいつら)

 

 人の獲物を取った少女等を、ベートは睨む。

 少女等はその視線に気づいたが、悪びれることなく、友好的な態度で話しかけてきた。

 

 「やっほー!大丈夫だったー?」

 

 「あの数の敵を一人でやろうとしたの?なかなか度胸ある男じゃない。ーーーでも団長には叶わないわ」

 

 「ティオネ……」

 

 「………………」

 

 ケッとベートは舌打ちし、戦闘態勢を解く。自分だけ身構えているのが馬鹿らしく思えてきたからだ。

 だがーーー食人花は、まだ地中に眠っている。だからベートは体制は解いたが、警戒だけはそのまま解かずにいた。

 そうこうしている内に、二人はどんどん話を進めていく。

 

 「んー、やっぱあいつ硬いね」

 

 「でもあの時程じゃなかったわね。今回は楽に倒せそうだわ」

 

 「ンー。今日は武器持ってきてないのが痛いなぁ。手いたぁい」

 

 「そんなの根性で治しなさいよ。……あ、レフィーヤ」

 

 「レフィーヤー!!」

 

 ふと、こちらをトタトタ走ってくる少女がいた。ベートがそちらに目を向けると同時に、少女もベートに目を向けて、驚愕を露わにしながら立ち止まる。

 

 「べ、ベートさん……」

 

 「……テメェ、あん時の、」

 

 エルフ、と続けようとした時だった。

 

 

 

 

 『ーーーーー!!!』

 

 

 バキバキバキ、と地盤を破壊しながら、食人花が現れたのは。

 また現れた食人花に、アマゾネスの少女とベートは身構えた。唯一状況を把握していないエルフだったが、三人に習って杖を構える。

 

 「ちょっと、まだ出るの〜!?」

 

 「鬱陶しいわね……!!」

 

 (……俺の足を引っ張るんじゃねぇぞ……!!)

 

 (こ、今度こそ皆さんの力に……!!)

 

 一人は嘆き、一人は舌打ちを零し、一人は獲物を捉え、一人は魔力を高める。

 

 

 

 

 

 第2ラウンドの、開幕であった。

 

 

 






ダンメモ水着イベント告知を見る→皆可愛いお胸デカイ→あれ、男の水着は?→ベルきゅんの水着もなくない?→ベートきゅんのは????????

はい、ベートきゅんの水着姿をとても拝みたい爺さんの心得です。ください。
私の作品のベートきゅんはちょっと辛辣で、仲間に対して厳しめな部分もあります。本編のベートきゅんはちょっとだけ協力プレイ的なのはしていましたが、もしかするとこのベートきゅんは協力プレイ一切せずに単独バンザイ貫くかも知れません。

でも……そっちの方が……説教盛り上がる……(メメタァ)


次回の更新はいつになるのやら。何ヶ月も待ってくれる人がいて感激です。いつの間にか900人も……ありがとうございます!!全員ベートきゅんが好きなんですね!!やっぱりベートきゅんは凄い!!!(YBS)

では今回はこの辺で!せーの!!

ベート・ローガァー!!だぁーいすきぃー!!

※Twitterを始めました。IDは第2章「兎も上れば狼も上る」にて。


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