こうして、彼は元の居場所へ戻る
少年は、黄色い花畑に緑色の髪をした女性と歩いていた。
――八幡、あなたは戻るの?
――……うん
女性の悲しい声が少年に重りのようにのしかかってくる。
――約束して
――……え?
女性はしゃがみこみ、少年にキスをした。
――…姉!?
少年が女性の名前を言うがノイズが走り聞こえない。
――私は、あなたを待ってるわ。いつまでも、ずっと。だから……迎えに来て。大好きよ。
――……そんなの、俺だってそうだよ!!待ってて!!絶対に戻ってくるから!!
――…!えぇ!待ってるわ!
女性は、とても綺麗な笑顔で微笑んでいた――――
***
「……懐かしいのを思い出したな」
周りを見ると、それはいつもの俺の部屋だ。どうやらいつの間にか帰ってきてたみたいだ。
「ま、小町はどうでもいいし、『雪乃』と『陽乃』さんに家に着いたこと連絡するか」
スマホを出し、2人に連絡をする。するとわずか数秒で2人から返信が来る。
「相変わらず、早いな…」
それに苦笑し、キッチンに向かう。一応小町の分も作るけど、適当でいいか。
そういえば、今日はなぜアレを思い出したのだろうか……
「ようやく思い出したようね」
後ろから女性の声がする。俺はそれをきっかけにありとあらゆる『失っていた記憶』が戻ってくるのに気付く。ため息をつきながら後ろを振り向く。そこには綺麗な金髪の女性が立っていた。
「……はぁ、いきなり来ないでくださいよ、ゆか姉」
「フフッ、敬語は付いてるのにその呼び方は変わらないのね…安心したわ」
「そりゃ、あなたと約束しましたからね」
「……来るのね?」
「えぇ、ですが変更したいことがありますがいいですか?」
「何かしら?」
「……連れてきたい人がいるんです」
「…!?」
ゆか姉は驚愕の表情を出した。そりゃそうだ。俺がこれを頼むのは本当に今までなかったからな。
「……何人かしら?」
「4人、ですね。まぁアイツら次第ですが」
「そう……」
「まぁまずは俺が行きます。会いたい人がいるので」
「……フフッ、相変わらず彼女が好きなのね」
「そりゃ好きですよ。俺は、あの人に救われましたから」
「……空に落とすけど大丈夫かしら?」
「ねぇなんで空からなの?まぁ能力使いますから大丈夫ですけど」
「フフッ、ようやく能力を使えるようになったのね」
「えぇ、記憶がない時はびっくりしましたけど」
「それはそうよね…フフッ」
「……では、行きましょうよ」
「えぇ、わかったわ」
そう言ってゆか姉は異様な空間を出してきた。その中に俺は飛び込む。
「行きなさい。彼女が待ってるわ」
「はい!」
彼は空間を抜け、空に出る。そして作った翼を広げ、大声で叫ぶ。
「帰ってきたぞ!!幻想郷!!」