戦国×戦国=カオス!?   作:融点
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ユウタは夜通し馬に乗っていたがためにぶっ倒れました。
そのことに関して、ヨシテルとミツヒデはご立腹のご様子。


第三話 御話

昨日いつの間にやら寝てしまっていたらしい。
確かに、どっと睡魔が押し寄せてきてぶっ倒れる直前までは記憶にあるのだけれども……。


「…すぅ、すぅ……んぅ…。」
「………………、何故ヨシテルさんが俺の布団に?」


いつの間にか自室に戻っていて、そして何故だかヨシテルさんが隣で寝ていらっしゃる…。あ、何かいい香りがするなぁ……じゃなくて!!!
いやいやいや、何してんですかこのバカ将はっ!?家臣でしかも異性である布団に潜り込む将軍が普通いますかね!?そりゃ、ヨシテルさんは綺麗な金髪ですし、顔も綺麗ですし、スタイルも良くて一緒にいるだけでドキドキしっぱなしですけども……俺なんかが思っていいことじゃないって!!!首を振ってとりあえず邪念を取り払おう!煩悩退散っ!!
とにかく……この場をどうにかしなければっ!!


「よ、ヨシテルさん?起きてください、ヨシテルさん?」
「うぅん……ゆー…た?」
「えぇ、ユウタですよ。とりあえず起きてくれませんか?何故布団に入ってたかは詳しく詮索しませんので…。」
「ふぇ…?………………………あっ////」


ようやく覚醒したようだ。だけど、もともと肌白だったためか足から顔まで赤くなってきている。そりゃ、異性の布団に潜ってりゃ恥ずかしくもなるよな…。あー、太ももが眩しい…と言っても、俺みたいなやつが堪能していいものではないので、さっさと俺の上着を掛けてあげる。


「全く…これが俺だったから良かったものの…。気をつけてくださいね?ヨシテルさん。」
「………はい////」
「ふぅ、じゃあとりあえず着替えたいので外に出てもらっても宜しいですか?さすがに恥ずかしいので…。」
「わ、分かりました………(もう少し、見てもらいたいと思ったことはきっと伝わってませんよね…。ユウタは自分を過小評価しすぎてるのでどうせ「俺なんかが見てはいけない」だとか「俺なんかじゃ釣り合わない」って思ってるんでしょうね…。)」


ヨシテルさんは、何でか心なしか不満そうに部屋から出ていった。あれか?もう少し寝ていたかったのに起こされたからか?
とりあえず、昨日の格好のままなので…同じものの換えのものに着替える。黒い薄手の中着を着てから下のズボンを履き、中着の上から軽いチェストプレートを付けてから黒のコートを羽織る。コートには襟元と装飾用のベルトに足利二つ引き両紋をあしらっている。家紋はもともと入ってなかったのだが、家臣として認められてからヨシテルさんが付けてくれた。
とまぁ、着替えもそこそこに部屋から出る。さっきまで寝間着だったヨシテルさんが今度はしっかりとしたいつもの服装に着替えていた。


「すみません、わざわざ部屋から出ていただいて。」
「いいえ、構いませんよ。私も着替えなければなりませんでしたから。さて、見た限りユウタも準備万端のようですね。」
「ええ、いつも通りこれから朝の鍛錬を「でしたら。」…へ?」


いきなりヨシテルさんに手を掴まれた。手を見てからヨシテルさんの顔を見れば…朝から素晴らしい笑顔だった。…過去の経験上、あまりいい思いをしたことがなかった気がするなぁ…。


「行きますよ?」
「えっと、一応聞きますけど…どちらに?」
「いつもの執務室ですよ?」
「あ、そうだったんですね。こんなに朝早くからなんて…何か急な「説教です。」……へ?」
「ですから…説・教です♪」
「………………え?」


何か俺、悪いことしましたっけ?
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えー、あれから一刻ほど経ちました…。執務室に行くと既にミツヒデさんがいて、二人からありがたーい説教を聞いています。
聞いたことを要約すると…「最近、あなたは無茶しすぎです。」という事だそうで…。聞いている本人としてはあまり考えたことないんですが…。


「え〜っと……。」
「全くユウタはいつもそうです。人に『無茶してはいけません』とか言って自分だって眠気で倒れるほどに無茶してるではないですか。あの時私が受け止めたから良かったものの…あの時は心臓が止まりそうになりましたよ。」
「そんな疲れた状況であの場を取り繕ったのは凄いとは思うが、我々家臣は常に主であるヨシテル様を護れなければならない。つまり、常に万全に近い状態を保ってこそだと私も思うぞ。だからあまり無茶をするな。それに…お前が倒れた時、私も目を疑うと同時に頭が真っ白になったぞ。」


あー、何か変なスイッチ入ってるなぁ…。でも心配かけてしまったのは事実だし…ここは穏便に済ませよう…。


「…すみませんでした。いつも通り(・・・・・)なら平気なのですが、昨日に限ってトシイエさんとヒデヨシさんの稽古を見てたらノブナガさんが「ちょっと待て、今お前はいつも通り(・・・・・)と言ったのか?」え、ええ…言いましたけど…。」


そう。全国を回るのに一々宿とか取ってられないと考えた俺は、大抵夜通しで移動することが多い。どうしても辛い時は宿を取るという形にして、経費削減でお財布に優しく、体に厳しくといった感じになっている。
この発言が墓穴だったとは梅雨知らず、俺は続ける。


「念のために聞きますけど…それはどちらが『いつも通り』なのですか?」
「ああ、そういう事ですか。もちろん、夜通しで馬に乗ることですよ!星空とか眺めながら馬に乗るのもなかなか乙なものですよー♪しかも経費削減でお財布に優しく、体の事だってきちんと考えてたまに贅沢で宿を「ユウタ。」…なんですか?ヨシテルさん。」


ヨシテルさんを見てみれば…顔を真っ赤にしながら俯いている。そのおかげで表情がイマイチ分からない。ミツヒデさんも顔を手で覆っている。
そして…ゆっくりと上がったヨシテルさんの顔は…明らかに怒っていた。


「あなたって人は…何て無茶してるんですかっ!!!」
「え、えええ?」
「帰ってきた時に返さなくても良いのに「あまり持ってても仕方ないですし」などと言うので旅費の余りを受け取っていましたが、各地を転々としてる割に返ってくる額が多いとは常々思っていました…。まさかそんなことをしていたなんて……ここで説教を終わらせようかと思いましたが…いや、知れてよかったですよ、えぇ、本当に!!」
「な、何でそんなに怒ってるんですか!?ミツヒデさん、助けてくださいよ!」
「いや、ユウタ。済まないがここはヨシテル様の味方につかせてもらう。どうやらまだまだ隠してることがありそうだな…さぁ、キリキリ白状してもらおうか!!」
「ちょっ…まっ…えええぇえ!?」


その後、もう一刻ほど説教が長引きました…。
もう絶対あの二人は怒らせないようにしよう…。


「朝早くから何やら隣が騒がしいの。」
「きっと、昨日の様子からしてユウタ殿が絡んでいそうですな。」


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ありがたーい説教の後に昨日団子屋のおやっさんに預けていた翡翠を受け取りに向かおうと街中を歩いていた。…何故かは分からないけども、一葉さんと幽さんも一緒にだ。


「あの、お二人共…たかだか馬を引き取りに行くだけに付いてきて楽しいですか?」
「いや、お主のいう『翡翠』という馬はヨシテル曰く『馬力強く、毛並みと翡翠色の眼が美しい』と言うておったのでな!気になってしまったのだ!」
「…と、公方様が言って意見を曲げませんでしたので…暴走しないように見張っておりまする。」
「頼みます。」
「…何故余が暴走する前提で話を進めておるのだ!?そしてユウタも、お主は足利家の家臣なのだろう!?そんな即答で幽に丸投げせずとも良いではないか!少しは余も相手せよ!」
「うーん…ここは『俺は足利ヨシテル(・・・・)さんの家臣なので』って言いたいのですが、一葉さんも『足利一葉義輝(・・)』なんですよね…。まぁ、そこはあちらのヨシテルさんの家臣だってことで、そこはご容赦ください。」


などと軽く雑談っぽいことをしていると、目的の団子屋が見えてきた。二条御所からもそんなに遠くなくて御所内の仕事の合間に良く顔を出している。ちなみにオススメは「特製みたらし団子」。秘伝のみたらしのタレがすごく絶妙な甘さで、疲れた体に丁度いい。作り方は教えてくれなかった。ケチ。


「おやっさーん、いるー?」
「あん?…おぉ!旦那!もしかして馬の件ですか?」
「うん。翡翠を引き取りに来たよ。あ、あと今日は連れがいるから後で特製みたらし3本ね!」
「ん?おぉぉ!これは見目麗しい女性が二人も!旦那も隅におけねーな!」
「なーに言ってるの。この方々はあくまで翡翠が目的だからね、たとえそういうもんだったとしても俺なんかじゃ釣り合わないし。」
「あいっ変わらず自分を卑下しすぎなんだよなぁ、旦那よぉ。お前さん鏡見てるか?ここらじゃ見ねーイケてる面なんだから女の一人や二人出来るとは思うんだがな。……ちょいと待っててくれ、知り合いから預かってくる。待ってる間適当に掛けててくれ。」
「はいよー。」


おやっさんの本名は「美作(みつくり) (てつ)」。見た目は強面のおっさんだが、気さくで明るいこの団子屋の看板親父だ。俺の方が歳が下なのに何故か『旦那』と呼ぶ。…そんなに老けて見えるかな、俺は?
とりあえず空いてる席に座る。空は晴れていて、のどかな時が過ぎていた。見たところ目立った混乱も無く、大通りは賑わっていた。おやっさんが何とかしてくれたみたいだ。これからも贔屓にしないとな。


「…ユウタよ。」
「へ?何ですか?」
「仮にお主らの世界と余らの世界が繋がってしまったとして、混乱が生じるのも分かり切っておる。だが、真にそれだけなのだろうか?」


一葉さんの顔にちょっと不安の色が見える。確かにそうだ。恐らくそれだけではないはずだ。必ずと言ってもいいほどに何かあると思う。


「確かに何かはあるでしょうね。でも、そんな事考えてたらキリないですよ?世の中どれだけ不安なことだらけだと思ってるんですか?」
「一葉様、ここは一つ『今までにない楽しいことが後に控えている』と前向きに考えてみては如何でございますかな?然すれば、その憂いも楽しみに変わりますよ。」
「将軍家として、この日の本の未来を憂いる姿勢も大事ですが…そんな事ばかり考えてると肩凝りますよ?楽ーに楽ーに行きましょ。」
「…うむ、そうであるな!ならば、これから来るであろう『翡翠』と団子を楽しみにしてみようかの!」

「おーい!旦那ぁ!旦那の馬、連れてきたぞー!」


大通りに響き渡るおやっさんの声。その方向を見れば……艶やかな黒色の毛並みと翡翠色の眼が特徴的な馬、俺の愛馬である翡翠が引かれて大通りを闊歩していた。俺の自惚れでなければ、その目は光り輝き、俺と会えるのを楽しみにしていたようにも見える。
そして団子屋の目の前に止まれば、俺に頭を近づけてきて『撫でて』と訴えてきた。撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めてくれる…。うむ、愛いやつめ!


「おぉ……おおぉ!これがユウタの言っておった『翡翠』か!?」
「えぇ、俺がヨシテルさんから賜った自慢の馬です。まぁ、『この中から好きな馬を選んでください』と言われて、その中で一際目立ってたから選んだってのもあるんですけど…やっぱり飼ってみると可愛いものですよ。」
「ほほぅ、力強い黒とどこまでも見透すような翡翠色の眼…なんともはや、見事なものですな!!」


一葉さんも幽さんも、翡翠の見事な外見に見蕩れているようだ。良かった良かった!馬のことなのに、まるで自分のことのように嬉しくなってきてしまう。
一葉さんがこちらを振り向けば……予想通り、目をキラキラさせていた。


「このような素晴らしい馬、余は見たことない!ユウタ、余もこの馬で駆けてみたいぞ!」
「そうですね…。なら、幽さんと二人で乗ってきてみます?夕刻までに御所にお返ししてくれれば良いので。翡翠も、天気がいいからか動きたそうにしてますし。」
「某も、宜しいのですかな?」
「えぇ、女性二人なら全然問題なく駆けることが出来ますよ。な?翡翠♪」


翡翠を撫でながら問うてみれば、『ブルル…』と鳴いてまるで頷くかのような仕草をする。うん、うちの子賢い。賢こ可愛い。


「うむ、では幽!ここはユウタの言葉と、翡翠を信用して行ってみるとするかの!」
「然すれば、お言葉に甘えさせて貰います!」


意気揚々と翡翠に跨る一葉さん。正直すごく絵になるなぁ…。飼い主の俺が言ってしまったらおしまいだけど、それくらい似合っている。その後に幽さんも跨り、一葉さんにしっかりと捕まった。


「では、夕刻までには返すのでな!フフフ…楽しみだ!」
「ユウタ殿、行ってまいります。」
「えぇ、楽しんできてくださいねー♪」


一葉さんの合図とともにゆっくりと大通りを歩き始めた。その後ろ姿も美しい…。我が愛馬だけあってその思いも強くなる。

そしてその後ろ姿を見送って、俺は思い出した。



「あ、団子…。まぁ、まだ機会はいくらでも作れるか。とりあえず明日に向けての準備でもしましょうかね…。
あー、胃が痛い…。あむ、うん…やはりおやっさんの団子は美味いね。」


そんな憂いを帯び始めた俺が空を見れば、雲一つない青々とした青空が広がっていた。その青空を眺めながら、本来であれば一葉さんと幽さんの腹に入るはずだった団子もモグモグと頬張った。やはりみたらしは美味い。



《オマケ》

「…はっ!?」
「どうされましたかな?公方様。」
「…団子を食いそびれてしまった!」
「…あ。」

《オマケ2》
一葉と幽が翡翠に乗っている最中…ユウタはというと。


「…団子の腹ごなしには丁度いいけど、1人は執務、1人は馬乗りって…少しは直すの手伝ってよーーー!!」


一葉とヨシテルが戦った後の庭を直していた。
ちなみにユウタは結構器用で、庭師の人も絶賛するほどの出来栄えとなった。