おれナルト。木の葉がヤバい。   作:焼酎臭いマン

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今回はとてもいい話です。ナルトくんが他人に心を開いていき、友情を育むハートフルストーリーとなっております。閑話ですのでいつもより短いですがぜひご覧下さいませ。


閑話 いつの時代も友達は必要である。

これは、ナルトがミズキをぶっ飛ばして疑いを晴らした次の日、火影に文句を言いに行った時の話である。

 

 

 

 

その日、おれ、うずまきナルトは混乱していた。無理もない。今まで必死に隠してきた実力の一端が明らかとなったのだ。

 

そう。必死に童貞である事を隠してきた高校デビュー生が、とうとう童貞である事、更には彼女いない歴=年齢である事が友達にバレた時のような、そんな喪失感と情けなさが体に深く染み入るような気持ちであった。

 

 

しかも現実はおれを休ませてはくれなかった。死体を蹴るように、さらに追い打ちをかけて来たのだ。

 

なんと、おれはあれだけ愛していたアカデミーを、卒業試験に合格もしてないのに卒業した扱いにされてしまったのである。

 

 

 

当然のことだが、おれが望んだことではない。里の上層部がおれの意見も聞かず、無理矢理行ったことだ。

 

確かに、彼らにとって優秀な忍びの卵をむざむざアカデミーで遊ばせておくメリットは無い。しかし、おれは元々忍びになりたくてアカデミーに通っていたわけではなく、アカデミーに通うことこそを目的としていた男である。

 

この違いがわかるか。

 

大学受験を例に考えてみるとわかりやすい。

 

受験生には、将来に目標を定めていて、あくまで通過点として大学を選ぶ人間と、とりあえず大学に入ることだけを目的に大学を選ぶ人間の二種類が存在する。

 

後者の人間は、だいたい大学に合格した後授業に出席しなくなり、結果として単位を多く落とす。留年の危機さえある。これは誰のとは言えないが、経験談である。

 

今回の彼らの行為は、極端に言えば大学合格だけを目指して受験に望み、見事合格した学生に対して、いきなり社会人として働けと履歴書を投げつけるようなものである。

 

 

ほら、おかしいだろ。

 

 

おれはその横暴な裁定に不満を爆発させ、火影の構える総本部へと殴り込んだ次第である。

 

 

 

「だから!ワシが決めたんじゃないんだって!皆がそうするべきですってワシに口々に言うものじゃから…判子をついつい押しちゃっただけじゃ!!ワシの意思はそこにない!!」

 

 

「なるほど…で、本音は?」

 

 

「ついにナルトを下忍にできる機会が来たので、これ幸いと鼻歌でウルトラソウルを歌いながらノリノリで判子を押した…はっ!?ワシは今何を!」

 

 

 

 

こんなふうに、火影様の部屋でおれがグチグチと文句を言っていた時。

 

 

 

突如、部屋に一人の少年が飛び込んで来た。

 

 

「ジジイっ!ゲーム買いたいから小遣いくれよっ!!!」

 

 

これが、後に他里に名を轟かす男、猿飛木ノ葉丸とうずまきナルトの最初の邂逅であった。

 

 

 

 

 

 

「これ!木ノ葉丸!今はエビス先生との修行の時間ではなかったのか!」

 

 

「そんなのつまんねえからやめだ!」

 

 

「な、何を言っておるのじゃ!これ、エビス!!お主からも一言言ってやらんか!」

 

 

火影の言葉に呼応するように、入口から一人の男が顔を出した。黒くて丸いサングラスをかけた、痩せた男である。気配の様子から、なかなかの実力者である事が伺えた。

 

 

「お言葉でござるが火影様!木ノ葉丸様とゲームのお話で盛り上がってしまいまして!その時、あ、あの名作『口寄せモンスターズ』、通称よせモンの発売日が今日であった事を思い出しまして!いてもたっても居られず!拙者の方から進言させて頂いた次第でござるよ!」

 

 

「いや、お主の仕業かいぃぃ!!!」

 

 

ん?聞き間違いか?

 

どうやらエビス、と呼ばれた家庭教師らしき男が木ノ葉丸という少年を唆し、火影様からお金を貰ってくるよう勧めた黒幕らしい。

 

明らかに教職者のすることではない。

 

教師とは聖職である。迷える仔羊たちを正しい道へ導くべく、常に先頭に立って模範となるべき存在。それが教育者だ。

 

それが子供を唆して、自分の欲しいものを手に入れようとするなど考えられない。全く。今までそんな教育者なんて見た事がな…

 

 

あ。

 

 

ミズキがいました。今までの下りはすべて忘れてもらって構いません。教師は割と我欲強い。

 

 

 

「そーゆー訳だコレ!ジジイ!早くしろ!!金だ!」

 

 

「ゲームを買うためのお金を木ノ葉丸様に!里の公金から出してもらっても、拙者は全然かまわんでござるよ!!」

 

 

しかしなんだ、限りなくダメな匂いがするこの2人に、おれは興味すら抱いていた。一体何故か?

 

 

そうだ。

 

 

他人に施しを受けることを当然と思う人種。世間一般ではゴキブリのごとく嫌われる、ニートという人種。

 

 

彼らは、おれの同類だ。

 

 

 

 

この後、おれたちは自己紹介をした。その結果、おれは自分の事を殆ど彼らに話してしまった。しかし、不思議と後悔していない。むしろ、彼らの事を知れたことを嬉しく思う程である。仲間って素晴らしいね。

 

 

 

 

少年、改め木ノ葉丸は、掟や里に縛られる「忍び」という職業に不信感を抱いていた。労働内容についても同様らしく、彼いわく、イマドキ任務とか終わってるそうだ。

 

また、生まれた家や血筋だけで子供に将来が求められる、忍び社会の暗黙のルールに関しても好ましく思っていないらしい。

 

火影の孫として生まれた彼は、幼少期から当然のようにその肩書きがついてまわってきていたはず。おれにはわからないが、何をしても自分を見てくれる人が居らず、火影の孫としてしか評価されないのは辛いことだろう。彼なりに何か思うことがあるのだろうな。

 

 

 

そんな木ノ葉丸くんの将来の夢は、ユーチューバーである。

 

 

 

ユーチューバーとは、インターネットを介して自分で撮影した映像を全国に公開し、公開動画に添付した広告料で一山当てようと目論むギャンブラーの総称である。

 

里にも家柄にも掟にも縛られず、好きなことで生きていく、好きなことで他人に夢を与える、と語ってくれる木ノ葉丸に、おれは強く心を打たれた。

 

彼の目指す道は決して楽な道では無い。とても危険な、茨の道である。下手したら忍びになるよりもずっと難しい事かもしれない。

 

しかし、彼の目指す場所にたどり着くためには、真っ直ぐな道を進むしかない。

 

 

ユーチューバーに、近道なんてないのである。

 

 

彼にはぜひとも成功して、定職につかないまま大金を稼いで豪遊して貰いたい。そう願うばかりである。

 

 

 

 

 

 

木ノ葉丸の家庭教師、エビス。一国の主の孫の家庭教師を任されるほどの腕をもつ特別上忍、いわゆるエリートである。しかし、彼はアニメやゲームなどを異常な程に愛するオタクでもあった。

 

これは後で聞いた話だが、彼が特別上忍に留まっている理由の殆どは、任務よりも好きなアニメのイベントを優先するためらしい。

 

 

また、彼はライトノベル作家としての顔も持っていると言う。

 

現在とある部誌で九重ゑびすの名で連載中の「義妹が突然押しかけてきたのでござるが。」は、火の国以外にも大勢のファンがいるほどの人気作で、本屋によっては売り切れている事もあるらしい。一巻はただ今重版中だ。皆さんもお一ついかがだろうか。

 

おれも一度読んでみないかと薦められたが、あまりにもタイトルが酷いため丁重にお断りしておいた。

 

 

あと、これだけは言っておきたい。彼は「拙者」や「〜でござる」などの、伝統を重んじる忍びが使うことが多い言葉遣いをするのだが、何故だろうか。妙に似合ってて気持ちが悪いのだ。

 

気になったので彼に聞いてみると、この口調のキモオタ(気持ち悪いオタク)は少なくないらしく、彼らの界隈の中ではごくごく一般的な喋り方らしい。

 

 

忍びの伝統とは何だったのかと言いたくなる。

 

 

エビス先生はライトノベルである程度稼いだ後は、ファンの中で適当に可愛い女性を見繕って結婚して家事を任せ、自分は時たま新作を書くだけの印税生活を送るつもりらしい。大変、素晴らしい心掛けである。

 

 

 

 

 

 

おれは、木ノ葉丸と義兄弟の契を結び、エビス先生のことを「先生」と呼んで敬うことにした。

 

アカデミーに居られなくなったことは非常に遺憾だが、そのおかげで今日の出会いがあったのだと思うと、あまり悪い結果ではなかったのかもしれない。

 

 

何せ、一人だったおれに二人も友達ができたのだから。

 

 

 

 

この後、買ったゲームソフトをどちらが先にプレイするかを巡って木ノ葉丸とエビス先生の間で一悶着あったのはまた別の話。




すみません。まえがきは全部嘘です。

ふざけました。後悔していません!次話の構成も殆ど終わっているのでご期待ください!!

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