おれナルト。木の葉がヤバい。   作:焼酎臭いマン

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ちょっと早く書いたのでまちがいあるかもでーす笑
あったら泣いて謝ります


第四話 【悲報】寝て起きたら指名手配されてた

 

 

 

 

こんにちは。うずまきさん家のナルトです。一人暮らしです。

 

 

そろそろ、卒業試験が近づいてきた。

 

生徒の皆さんはいつもより真剣に忍術の勉強に励んでいる様子だ。

 

今年の課題は去年までの統計から考察するに…分身の術だろう。教員らは基礎が固まっているかどうかを確認する傾向が強く、卒業試験ではあえて単純な術を課すことが多い。

 

中でも分身は基本的な術だし、落ちる者は少数だろう。

 

むしろ、おれ以外の全員が合格する事も考えられる。

 

もちろん、おれはその程度の初歩の術、とっくの昔に習得している。

 

得意忍術は何だと聞かれれば、師匠に教わった多重影分身だと言い張れる程だ。

 

 

しかし、仮にも忍術過程を修めた証明と言うべき卒業試験の課題が、たかだか分身の術というのはいかがなものか。

 

これは入学して一月程で習得する者がちらほら出てくる程の初等中の初等忍術であり、出来ない方が不自然である。

 

 

サスケなんて、入学式の最中に高笑いしながら分身してた。おれはその様子を今でも良く覚えている。

 

 

ものは相談だが、来年から性質変化のテストにするのはどうだろうか。

 

 

自分でも何を言っているのかわからないとは思うが、言わせて欲しい。手を抜く側の事も考えてくれ。

 

失敗が難しいのだ、この術は。

 

この期間中、何としても、よりカッコ悪く、かつ自然に失敗できる分身の術を模索する必要がある。

 

もし試験官がイルカ先生だけならば、演技など切れたゴムレベルに役に立たないが、卒業試験は教師が三人ほど出張ることとなっている。

 

これは、可能性を捨てるべきではない。残り二人がおれを失格にすれば、多数決で自然とおれの落第が決定される。前代未聞の4回落ちの誕生だ。

 

つまりはイルカ先生以外を騙すことができれば、ゲームクリア。

 

 

もう一年、遊べるドンである。

 

 

 

 

 

 

さて。時が経つのは早いもので。光陰矢の如しとはよく言ったもので。

 

木の葉の桜が満開になる今日このごろ。木の葉忍者アカデミーは卒業試験の日を迎えた。

 

コンディションは悪くない。天気もいい。

 

後は、己の努力に従うのみ。結果は後からついてくる。

 

如何にうまく試験監督に「こいつダメだ。」と思わせるかが勝負の鍵だ。

 

漢うずまきナルト、13歳。一世一代の大舞台である。

 

 

 

 

 

 

所変わって試験室前。試験室は普段授業に使っている教室と同じである。これは、生徒達に普段通りのパフォーマンスをしてもらうための措置らしい。

 

部屋から飛び出して来る子供たちは、誰もが喜色いっぱいの表情を浮かべている。中には小躍りしている者、スキップしている者もいるくらいだ。

 

見たところ、落ちた者は居なそうだ。

 

この様子だと、ここで合格した八割以上が下忍にすらなれず、アカデミーに送り返される事を、彼らはまだ知らないのだろう。

 

火影の爺さんが口を滑らせた話によると、アカデミー卒業試験はあくまでアカデミー卒業試験に過ぎず、下忍として認められる為の試験は別に用意されているらしい。(だとしても分身の術は酷い。)

 

 

この辺を子供たちに伝えてやらないのは何とも忍びが治める隠れ里らしい風習であるが、親類にアカデミーの運営に携わる者がいる場合、自身の血縁者にこっそり教えてしまう恐れがある事を上層部の皆様はどうお考えだろうか。

 

もちろん忍びたるもの血のつながった子供だろうと甘やかす事は無いとは思うが、忍者になるための重要な情報を先に入手する事ができる環境と、できない環境が家庭によって分けられるのは納得が行かないところ。

 

と、このように文句を言って見たところで事実が変わる訳でも無い。

 

この喜ぶ生徒たちの大半が、来年もおれと一緒に素晴らしきアカデミー生活を送ることになる事は決定事項であり、おれはそれについて何も思うことは無い。

 

どんまいの一言に尽きる。

 

 

 

あ。春野サクラが出てきた。ニコリともしていない。彼女は要注意人物であるため、是非とも下忍になって欲しい。

 

 

 

「うずまきナルトッ!入れっ!」

 

 

いよいよおれの出番だ。

 

さて、今年も派手に失敗して、先生方の酒の肴にでもなってあげよう。腕がなるとはこの事か。おれは今、この一年間の中で最もやる気に満ち溢れている自信があった。

 

 

 

 

 

「ナルトくん。今年の試験は分身の術だ。早速だけど、使ってみてくれないかな。」

 

 

彼はミズキ。おれの一つ前の担任で、くの一から絶大な人気を誇る男前教師だ。二年ほどおれと接してきて、演技を見抜くどころか疑うことすらしなかった、とても優しい先生である。

 

 

「ふん。いくら落ちこぼれの貴様でも、これくらいの下級忍術位は習得しているだろう。あぁ、急げ急げ!貴様如きに時間を使わせるな!!時間は有限なのだからな!さあ、さっさと始めんか!!!」

 

 

彼は権田原ゴンザレス。今後登場する予定は無い。

 

 

 

「わかってんな?ナルト。」

 

 

そしてお馴染みイルカ先生。試験監督はこの三名のようだ。何やらイルカ先生がガンを飛ばしてくるが、おれは気づかない振りをして冷や汗を流す。

 

この冷や汗は水遁の応用で、自信の無いこと、焦っていること、恐怖を感じていることを相手に言葉を使わずして伝えられるという、非常に汎用性の高い術だ。

 

おれはこの術を主に小物臭を出すために使用している。

 

 

なお、オリジナルの術であるが、勿論特許は申請していない。

 

 

「では、始めます。」

 

 

 

さぁ、ショータイムだ。

 

 

 

 

 

 

 

結果として、おれは今年も見事に落第を勝ち取った。ギリギリの戦いであった。

 

おれの開発した新術、名付けて「スライム分身の術」は、通常の水分身の術に必要なチャクラをあえて削ってコントロールに割く事で、分身体の輪郭をぐにゃぐにゃにする高等術だ。調整が非常に難しく、少々九喇嘛にチャクラを借りた。

 

 

この術は、教師陣に「チャクラを上手く練ることができない」という印象を与えつつ、高等忍術の無駄使いといった観点からイルカ先生を呆然とさせ、発言を許さないという二重の効力をもつ。

 

 

おれの目論見は見事的中し、イルカ先生に喋らせないまま、無事試験を落ちる事に成功したのであった。

 

 

試験が終わった後のイルカ先生の顔は凄かった。まるで時間が止まったかのような表情。タイムスリップして白亜紀に来た人の様な表情であった。

 

 

おそらく近日中に説教も兼ねてラーメンに呼ばれるだろうから、その時に笑ってやろうと思う。

 

 

 

 

 

そんな事を考えながら公園のブランコを浅く漕ぎ、気持ちのいいそよ風と達成感を感じていると、女性と子供の話し声が聞こえてきた。

 

 

どうやら下を向いているおれを見て一人だけ試験に落ちた事を落ち込んでいるものだと勘違いし、わざわざ陰口を言いに来てくれたらしい。

 

せっかく来てくれたのだからお茶くらいは出してあげたいものだが、あいにくこの公園にはウォーターサーバーすらついておらず、出せるものと言えば砂場で作った団子位である。

 

 

 

 

「まぁ、例の子よ。ほら、化けギツネの。」

 

 

「またあの子だけ卒業試験落ちたんですってね。これで何回目よ。」

 

 

「ママー、そんな事より、僕合格したよー!今日のご飯何ー?」

 

 

「オレもオレも!」

 

 

「うふふ、今日はあなたの大好きなハンバーグにしましょうか。」

 

 

「本当?わーい!!」

 

 

 

 

ここぞとばかりに合格した自分の息子を見せつけ、おれに悲しい思いをさせたいという意図は十分に理解できるが、それなら化けギツネのくだりは蛇足であろう。おれに九尾が封印されていることについては、確か箝口令がしかれているはずだ。

 

子が親の真似をして育つのはこの世の真理である。

 

親が里の箝口令を堂々と無視するのを見て育った子供が、将来、何も考えずに里の秘密を口にし、それを偶然居合わせた他里の忍びに聞かれ、いいように利用されないとも限らない。

 

忍びの親なら先を見据えた子育てをするべきだ。ハンバーグの前に、忍び社会で生きていく人間としての良識をこさえてくれたら幸いである。

 

 

 

しかし、家族か。家族との絆とは無縁の生活を送ってきたためか、おれはその辺の常識に疎い。

 

何事も経験だ。今度親父の顔岩にでも落書きしてやろうか。少しは親近感が湧くだろう。

 

何を言ってるんだ。勿論、冗談だ。

 

 

 

 

 

おや?後ろから誰かが近づいて来る気配がする。一瞬身構えるが、気の質からして、実力者ではなさそうだ。

 

ふっと警戒を解き、自然体に戻ったところで、気配の主が話しかけてきた。

 

 

「ナルト君。また試験に落ちちゃったね。大丈夫?」

 

 

とても優しい、ミズキ先生である。

 

 

 

 

「はい、大丈夫です。できないものは仕方ありませんから。」

 

 

「そうは言っても君は過去に三回も試験に落ちてるんだ。そろそろ合格を上げてもいいと思ってたのに…権田原先生が強情でね。ごめん。」

 

 

「いえ、自分の事ですから。」

 

 

このイケメン教師、今日はやけにおれに絡んでくる。普段は腫れ物を触るように扱うというのに。薬でも服用して来たのだろうか。

 

具体的にはベンゾジアゼピン系抗不安薬等が考えられる。これは精神安定剤の一種で、短時間のみ作用する効果を持つ。

 

 

「そんな君にチャンスを与えたいと思ってね。」

 

 

ん?

 

なんで?いらないんですけど。

 

 

「火影様の部屋には、強力な余り一般人の閲覧が禁じられている、秘伝の巻き物があるんだ。その術を覚えれば、きっと権田原先生やうみの先生も、君のことを認めてくれると思うんだけど…どうかな?」

 

 

知ってる。修行の時使用した巻き物だからな。大事そうにしてたから、わざと出前で頼んだキーマカレーこぼしたっけ。

 

あの時は酷く怒られた。まだおれもガキで、分別がついていない頃の話だ。非常に懐かしい。

 

たしか、七歳くらいの頃か?

 

 

 

しかしこの男。非常に怪しい。木の葉の秘伝の巻き物をとってくるよう誘導するなど、普通ならまずありえない。何か裏があるのはまず間違いないだろう。

 

おそらくは他里との癒着。金に目がくらんだか。

 

ぶっちゃけると、木の葉の里が危険に晒されようが里の機密がばらまかれようがおれとしては願ったり叶ったりなので見過ごしたい所ではあるが、大恩ある火影の爺さんの困った顔は見たくない。

 

彼が困った顔を見せるのは、弟子に説教をする時だけで十分だ。

 

ここは作戦に踊らされた振りをして、普通にチクリに行こう。

 

 

「そんなものが…きっと凄い術がたくさん書かれてあるんでしょうね。おれ、絶対巻き物取って来ます!!」

 

 

「その意気だ!ナルト君!」

 

 

子供を舐めたことを後悔するんだな、ミズキ。お前は終わりだ。その涼しい顔が負け犬の様に歪んでいく様を、おれは遠くで楽しむとしよう。鏡の前で吠え面をかく練習をして待っているといい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。暗部によって霧隠れの里の忍び二名が摘発された。作戦決行の前夜祭のつもりか、二人は居酒屋に立ち寄り、二時間の飲み放題食べ放題コースを注文した。100分ほど経過した頃、ベロベロに酔って作戦の全てを自慢げに、それも大声で話す二人を見て、怪しんだ女将が通報。ラストオーダーを頼むことなくそのまま捕縛された。

 

目撃者の証言によると、彼らは木の葉の中忍、ミズキと結託し、木の葉に伝わる秘伝の巻き物を盗んで逃走する心算だったらしい。

 

計画によれば、ミズキはそのまま里を抜け、霧隠れに好待遇で招かれることになっていたそうだ。

 

全て、朝刊に書いてあった事である。

 

 

 

ミズキの作戦は日の目を見る前に、協力者二名のうっかりによってあっさりと幕を閉じた。

 

 

今頃、ミズキは頭を抱えている事だろう。

 

 

そろそろ追っ手も動き出す頃合。こうなってしまえば、捕まるのも時間の問題だ。

 

自分の手でミズキの反逆を暴き、里に借りを作ることが適わなくなったことについてはいささか残念な気持ちではあるが、終わったことは仕方が無い。

 

 

それよりも、次の一年間もアカデミーで悠々自適に過ごせることを、今は素直に喜びたいと思う。

 

 

朝刊を一旦机の上に置き、パンと牛乳を取り出して席に付き…危うく牛乳をこぼしそうになった。

 

 

 

 

『秘伝巻物流出未遂事件 主犯 ミズキ 共犯者 うずまきナルト 見かけた者は本部まで連絡お願いします。』

 

 

 

は?なんだこれ。

 

 

寝て起きたら、ミズキ先生の共犯者の容疑をかけられて指名手配されていました。

 

 

 




今回は4000字くらいよ。

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