おれナルト。木の葉がヤバい。   作:焼酎臭いマン

2 / 8
続けて投稿します!最初は書き貯めるもんなんすかね?


第二話 ラーメンはタダで食うもの

 

 

 

お久しぶり。ナルトだ。

 

師匠こと火影のじっちゃんに呼び出されてからはや数ヶ月。

 

アカデミーは新世代を迎えていた。

 

まあ、いくら同期とはいえど、今回ももちろん卒業試験はスルーするつもりだし、特別仲良くしてやる必要もないだろう。意識高い系は意識高い系とつるんでウェイウェイするがいい。

 

おれは一人でまったりしたいのだ。

 

 

 

 

「よお、ナルト。ラーメン食いいくぞ!一楽!」

 

 

…しかし、中にはこうやって頻繁に構ってくる大人もいる。大人って不思議だ。

 

 

 

 

 

 

 

所変わってここはラーメン一楽。木の葉の里ができる前からある老舗だ。他のラーメン屋とは一風変わっているが味は確かであり、密かにラーメン通の間で評判が良い。

 

俺のオススメはやはり味噌ラーメン。ここの看板メニューでもあり、確かな技術と費やした歳月を感じさせる一品だ。

 

木の葉の里に来る機会があれば、是非一度食べてみて欲しい。

 

 

 

 

しかし、今日も今日とて独特な内装である。

 

店内ではジャズだかレゲエだかよくわからない謎のBGMが流れている。

 

備え付けのテレビは流行りのドラマも野球の試合も見せてはくれない。

 

ただひたすらに、雲隠れの忍びたちをキャストとする通販番組が繰り返されている。一体誰に需要があるのか。

 

 

 

 

おっと。気づかないうちにラーメンが来ていたようだ。相変わらずここの大将は仕事が早い。

 

冷めないうちにいただくとしようか。

 

 

「やっぱ一楽のラーメンはうめぇな!」

 

 

「そうですね。この味は筆舌に尽くし難いです。それでもあえて言葉にするなら…まずスープが人知を超えている。味噌をベースに数種類のスパイスを加えた極上のスープはそれだけで食卓の主役となり得るほど。そのスープと絡み合う麺はまるで水の国の七宝うどんのようにコシが強くしなやかで老若男女問わず…」

 

 

「わかったわかった。いつからおまえはラーメン評論家になったんだ?しかも微妙に食レポが下手い。そんくらいでやめろ。だるい。」

 

 

だるいとはなんだ。ヘタクソとはなんだ。ラーメンとおれに謝って貰おうか。主にラーメンを重点的に。

 

 

「まあ奢ってもらう身としてはあなたの要望に応えなくてはですね、イルカ先生。」

 

 

「おれまだ奢るって言ってねぇぞ!まあ奢るがよ。」

 

 

うみのイルカ。独身。今年から赴任してきたアカデミーの先生である。もと上忍の実力と面倒見の良さ、教え方のうまさからすぐに生徒に気に入られ、今ではアカデミー生の引っ張りだこだ。イルカなのに。

 

そして、そんな人気者の先生だが、度々こうやっておれに絡んでくるのだ。

 

 

そして、三代目火影と同じく、おれに説教をくださる男でもある。

 

まさか、おれの行きつけのラーメン屋が第二の説教部屋になるとは、一体誰が予想できようか。

 

とはいえ冷めてしまっては元も子もないため、いつも彼の説教は片手間に聞くことにしている。

 

そう、まるで川のせせらぎのBGMを聞きながら受験勉強をする学生のようにな。

 

 

「…なぁ、ナルトよぉ。」

 

 

煩わしいせせらぎだな。味の世界に入って来るのはやめて貰おうか。

 

 

「おまえさぁ、とっとと下忍になれよ。んで中忍試験受けろ。実力、隠してんのはわかってんだぞ?」

 

 

彼の生徒になってしばらくたった頃。手裏剣術の時間に、わざと的に当てないよう適当に手裏剣を放っていたおれを見て、おれの実力を知るに至ったという。

 

何やら投げ方がぎこちなかったとか。出来ることを無理やりしていないように見えたそうだ。何それ凄い。

 

今まで教鞭をとっていたサラサラヘアー真ん中分けの男前教師は呆れたような表情を浮かべるだけで、疑うことすらしなかったのに。

 

元気かな。ミズキ先生。

 

とはいえ疑念を持たれたのは初対面の頃だというから大変だ。本当に強い忍びは見ただけで他人の実力をある程度測れるという神話があるが、まさか実在するなんて。

 

きっと彼が神様なんだろう。ラーメンを何度も施す、小麦粉の神様。

 

収穫期には田畑に奉られ、奉納品としてその年採れた一番出来のいい小麦を献上するのだ。

 

 

 

 

「何度も言ってますが買いかぶりすぎですよ。おれはそんな器用な人間ではありません。ごく普通の穀潰しです。」

 

 

「穀潰しなんじゃねえかよ。働け、おい。ちったあおれを見習えよ。片腕になってもお国のために働いてんだぞ?」

 

 

「そうですね。その忠誠心には本当に驚愕するばかりです。では将来はあなたと同じアカデミーの教師でも目指すことにしますか。」

 

 

「…おまえ、給食タダで食い続けたいだけだろ。ダメだ。許さん。おまえは必死に修行して必死に任務やって、腹ん中の九尾も制して、そんでいつか里一番の忍びになれ。四代目の、ミナトさんの息子だろ。そんくらいになって当然のモンをもってんだよ。お前は。」

 

 

「おれに父をついで火影になれとおっしゃいますか。面白い見解ですが、あなたは重要な事を見落としています。一つ。そもそも見習うべき親父の事をおれが全く知らないこと。二つ。おれ、里一番の嫌われ者です。」

 

 

実際親父にはこの素晴らしいアカデミー生活とラーメン好きのおれにふさわしいナルトという名前をプレゼントして貰ったという恩があるが、それ以外にとくに思うことはない。

 

 

聞くところによると歴代最強の三代目に匹敵する強さをもつ忍びだったらしいが、あいにくおれは生前の彼に会ったことがない。

 

 

なにやら里の人々から多大な支持を得ているらしいが、残念なことにキュウコンのおかげで息子には反映されていない。

 

 

以上の理由から、おれは親父を継いで火影を目指す熱血主人公になる理由がないのだ。

 

 

「…ったく。まあ知らねぇってのは仕方ねぇが。ちったァ関心もて。元、国のトップだぞ?里の外壁に顔岩だってドカーンとあんだろ?見守ってもらってるとか、ポジティブに考えてみろ。」

 

 

「あの制度ほんとにやめません?父親がドカーンと彫られてるの普通に恥ずかしいんですが。」

 

 

自分の父親の顔岩(笑)が国のシンボルなのは息子としてはなんとも言い難い恥ずかしさがある。

 

それに、あの岩に特に意味はない。忍びの国にあるのだから、ギミックの一つでもつけたらどうだ。

 

目からビームが出るとか。嘘をついた罪人の手を喰いちぎるとか。候補は数多くある。

 

 

 

それにしても、おれを仲間はずれにする里の大人達は、あれだけ目に付く場所に里を守った英雄の顔があって、よくその息子に平然と暴力を振るえたものだと常常思う。

 

彼らの脳の構造は一体どうなっているのか。おれは彼らの脳構造の事を密かに「木の葉のパンドラボックス」と名付けている。

 

きっと蓋を開けたらこの世の一番恐ろしいものが入っているに違いない。

 

 

普通の感性をもって生まれてきた幸福な人間ならば理解できると思うが、彼らの悪行は英雄が見てる前でとてもできることではないはずだ。

 

しかしどうにも木の葉の民というものは恩義という概念を持ち合わせていないらしく、喜んでおれをストレスのはけ口に指名してくる。

 

これだけ指名されれば、ホストクラブなら不動のナンバーワンになれるほどだ。

 

奴らは常軌を逸した蛮族である。滅びても良かったのではないだろうか。

 

きっと九尾の事件はノアの方舟のような意味があったに違いない。蛮族を淘汰し、心優しい人々だけを生き残らせるという神の御技である。

 

とはいえ、おせっかいな我が親父様が天の意思をねじ曲げてくれたおかげで、おれはこうして忍界において最も強い、尾獣という力をもって生まれてこれたわけだが。

 

なるほど。そういえば親父には九尾の力を与えてくれたという恩もあったか。メモしておこう。

 

 

 

 

 

だがしかし、せめてあの岩に可愛い息子をいじめたやつの手を噛みちぎるくらいの能力はあっても良かった。多分、土遁で可能だろう。

 

 

「まあ、それとおまえがハブられてんのは流石に今更だろ。良かったじゃん。おかげで三代目の弟子になれたんだよ?俺なら嬉しくてブレイクダンスするね。三代目火の意思(ファイアソウル)ブラザーズだね。」

 

 

「通りでおれはいつも熱い視線を頂いているわけですか。火の意思って尊いですね。」

 

 

「皮肉はやめろ。九尾を恐れることしか出来ねぇカス共がかわいそうだろ。」

 

 

奇遇である。おれも同意見だ。

 

霧隠れの里では、人柱力でありながら民に慕われ続けた青年が長となり、以後、明らかに他里に比べて強力な忍びを輩出し続けているらしい。

 

霧が木の葉の忍びを軟弱者呼ばわりする理由の一つには、この辺りも含まれるのではないだろうか。

 

 

「まぁお前も思うことは色々あんだろうが、お前に忍術を教えてくださった三代目の事もちったァ考えてやれ。あの人、ダンゾウさんにからかわれてこっそりマジ泣きしてたんだかんな。」

 

 

だめだ。彼らの喧嘩は介入したら負けだ。

 

 

 

 

 

ふと顔を上げると、シックな壁に取り付けられた古めかしい時計が目に入る。その針は既に夜九時を示していた。

 

イルカ先生も時の超過に気づいたようで、なにやら慌てた様子だ。

 

おそらく、デザートを注文するのだろう。

 

彼はいつもシメにスイーツを頼む。それも、やけに専門的なものをだ。

 

しかし、未だかつて出てこなかったものはない。

 

おれは密かにこの店の限界を見極めることを楽しみにしている。

 

さて、今日のお題は。

 

 

「おし、そろそろ時間だ。シメになんかデザート頼むか。大将!チョコレートフォンデュ二人前!苦めで頼む!あるよな?」

 

 

 

まさか。ここはラーメン屋だぞ?そんなキュートでシャングリラなスイーツがあるわけ

 

 

 

 

 

「あるよ。」

 

 

 

 

「あるんだ…」

 

 

「みたいですね…」

 

 

木の葉の七不思議の一つである。

 

 

 

 

冗談半分で頼まれたチョコフォンデュを食すのに三十分ほど費やし、いよいよ帰宅の時間。

 

幸せな時間はあっという間に終わってしまう。

 

さらばラーメン。また来るよ。

 

 

「うし、じゃ、帰っぞ。今日はおれの奢りだ!」

 

 

「ええ。今日もあなたの奢りですね。ごちそうさまでした。」

 

 

「ウゼェ。」

 

 

 

まああれだ。少々過大評価が過ぎるとは言えど、九尾や里のしがらみに関係なく、自分の実力を認めてくれる人とこんな時間を過ごすのは嫌いじゃない。

 

おれの秘密を生徒達に話していないのも非常に好感が持てる。

 

口煩くは言っても、生徒の自主性を軽んずる真似はしたくないと、以前語っていた事を思い出す。

 

教師の鑑である。

 

 

 

 

それに、何と言っても毎度毎度飯を食わせて貰えるのはありがたい。

 

貧乏暮らしのおれにとって、食費が浮くのは最も喜ぶべきことだ。

 

しかし、先生は説得もかねておれを飯に誘ってくれるわけだが、ここに来る度におれは人に施しを受ける喜びを思い出すため、逆効果ではないだろうか。

 

もちろん、口には出すことはない。

 

ラーメンは無料で食べるのが一番美味しいのだ。

 

 

「ではイルカ先生。また明日。」

 

 

「おう。じゃあな。いい夢見ろよ!」

 

 

イルカ先生と別れたおれは、アカデミーに宿泊設備をつけてもらおうか、などと考えながら、今日もオンボロアパートに帰っていくのであった。

 

 

その日はラーメンで出来た船でラーメンの海を渡り、ラーメンの島を見つけるという楽しい夢を見ました。

 

 

 

 

 

 

 

続きます。

 

 

 

 




ルビ間違ってたらごめんなさい。。

頑張った結果なんで後悔はしません( ー`дー´)キリッ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。