おれナルト。木の葉がヤバい。   作:焼酎臭いマン

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初投稿です。ハーメルンの皆様に影響されまして、この度投稿してみました!あたたかーいおめめで見守って下さると嬉しいです。
※すみません投稿してすぐ修正しましたw


第一話 おれナルト。働きたくない。

おれはうずまきナルト。忍び五大国の一つ、火の国に所属するごく普通の忍者の卵である。

 

なに、ちょっと体の中にかつて里に壊滅的な被害をもたらした天災、九尾の化け物こと九喇嘛が封印されていて、父親に四代目火影をもつだけの、ごく普通の少年ジャンプ誌の主人公だ。

 

しかし、これだけの主人公設定を持ちながらも、幼少期から里の大人達に執拗な嫌がらせを受け続け、逃げるように入居者の少ないボロアパートで一人、貧乏暮らしをしているのが現状である。

 

おれの血筋はいわば王家。他作品で言えば生まれながらにして勝ち組。何不自由ない生活が送れるはずだというのにこの仕打ちはなんだ。

 

今すぐおれを差別してきた奴らをまとめて不敬罪でしょっぴきたいところではあるが、あいにくおれに王位は継承されていない。

 

 

まあ、そんなどうでもいいことは置いといて、おれの自己紹介を続けようか。

 

皆さんご存知九尾ハブで幼い頃より頼れる大人がごくわずかだったおれは、生きるためにそれはそれは多くの知識、技術を身につけた。

 

掃除に洗濯、料理と家事に始まり、中忍レベルの忍術に体術、武器術、幻術。さらには暗部が行うような隠遁に暗号解読術、暗殺術。うずまき一族御用たしの封印術。

 

その他にも兵糧丸ソムリエや手裏剣鑑定士の資格も手に入れた。

 

九喇嘛とも少しずつ会話をするようになった。

 

 

そして、ある程度一人でも生きていけるようになった時。

 

 

 

おれは、そこそこなエリートになっていた。

 

 

 

 

 

 

木の葉忍者アカデミー。火の国の国立学校であり、忍びを目指す子供たちが一同に集う学舎である。

 

おれことうずまきナルトも当然ここの生徒だ。

 

もちろん、ここに通って学べることは特にない。すべて、既に習得済みだ。

 

しかし、今はせっかくの平和な時代。

 

音に聞くはたけカカシやうちはイタチのように無理して飛び級を狙う必要はなく、人柱力であるため国の最重要人物であるおれはなんと授業料と給食費が無料。

 

さらにアカデミーは、自宅のボロアパートよりも設備が良く、夏は冷房が、冬には暖房がちゃんと入っている。

 

これだけの良物件なのだ。ついつい落ちこぼれを演じ、卒業試験を三回も落第してしまうおれを誰が責められようか。

 

 

 

 

 

おっと。説明していなかったことだが、おれは里では落ちこぼれを演じている。

 

 

もちろん、火影や一部の上層部はおれが実力を隠していることを把握しているが、今の状況を否定するのは彼らにとって都合が悪いだろう。

 

里の英雄の息子としての立場、多くの同胞の仇をその身に宿す人柱力としての立場。二つの相反する立場をもつおれは、この国において政治的に非常にデリケートな存在だ。

 

敬愛の対象にも抹殺の対象にもなりうる。里の上層部はおれの扱いにさぞかし頭を悩ませていることだろう。

 

そこで、「落ちこぼれ」という肩書きが効いてくる。

 

偉大な忍びの子息だからこそ、それが無能であれば一般人以上に蔑まれるのは、忍びの世界において常識である。

 

おれが「落ちこぼれる」ことで、市民の九尾に対する度を超えた嫌悪を、表向きには、優秀な親を持ちながらも無能でしかない息子に対する侮蔑として処理することが可能になるとしたらどうだ。

 

わかりやすく言えば、市民が「このクソ化けぎつねが!死ね!」と思っておれを差別しようが、対外的には「だってあいつ四代目の息子なのにクズだからしょーがない」で通して見過ごせるようになるということである。

 

つまるところ、おれが無能なふりをする事で、里はおれを差別する市民を正当化する大義名分を得られるわけだ。

 

本来なら先代火影の息子様が差別の対象となるなどもってのほか。ストレス解消におれをいじめる中流階級の人々は、波風ミナトを尊敬する忍びたちにとって里の癌にも等しいだろう。

 

おれの演技は民の行為の異常性を緩和するとともに、ミナト信者の皆さんがおれに失望し、興味を失うというオマケまでつけてくれる優れものだ。

 

結果として、チームミナトと中流階級の対立を防げることが可能だとすれば、もはやトップ層にこれを止める理由はない。

 

 

だからおれのアカデミーでの態度について口を出すこともないし、生活支援を続けるしかない。

 

 

本当に、オヤジは偉大な忍びである。

 

 

おれにとって、アカデミーは必然の生んだ楽園。

 

ここではタダで飯が食えるし、暑さも寒さもしのげる。

 

できればずっとアカデミー生でいて、国の金で生活をしたいものだ。

 

ああ、アカデミー様。これからもおれにご加護を。ご慈悲を。

 

 

 

 

 

 

 

「うずまきナルト。火影様がお呼びだ。」

 

 

しかし。おれが落ちこぼれることは里にとってプラスであるにも関わらず。おれのこのニート体質を改善して立派な忍びに育て上げよう、と父の前任者に度々呼び出されているおれは、不本意ながら「かまちょないたずら小僧」としての汚名まで里に知れ渡っているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ナルトよ…」

 

 

ここは火影のスイートルーム。スイートとは名ばかりの資料と巻物で堅苦しい内装。そしておじいちゃん家特有の線香の匂い。

 

ここはおれにとって、見慣れた説教部屋である。

 

今、眼前におわすのは三代目火影、猿飛ヒルゼン様だ。

 

これから始まるありがたいお言葉を考えると、ありがたすぎて涙が出そうである。

 

 

「お主…。ワシがこの間言ったことを覚えておるかの?」

 

 

愚問である。おれが一度聞いたことを忘れるはずもない。

 

 

「ええ。今度の卒業試験は合格しないと、流石にワシも庇いきれないと。確かそうおっしゃっていたと記憶していますが。」

 

 

「いや。覚えてるなら聞こうよ!ワシ言ったよね!これ以上はまずいって!ダンゾウ達が動き出すかもしれないからやばいって!なんでかなぁ!?」

 

 

落ち着け一国の主。

 

確かにダンゾウ一派はおれにとって少々厄介な存在である。

 

彼らは、実力がありながら表舞台に出ようとしないおれを、いずれは国家に刃向かうテロリストとなりうるのでは、と危険視する優しいおじさん達だ。

 

火影様はダンゾウ一派に標的にされるリスクを鑑み、おれに早々に下忍になることを薦めてくるというわけだ。

 

ずっと、前からである。

 

 

「はい。ですから尽力したのですが一歩及ばず…不合格という形に…」

 

 

「そんなわけないじゃん!だってお主に修行つけたのワシだし!お主の実力はワシが一番よう知っとるし!そんな、わけ、ないじゃん!!!」

 

 

そうなのだ。実はおれが年齢不相応の域に達している理由。

 

何を隠そう、目の前で何やらまくし立てているプロフェッサーのおかげなのである。

 

 

「いやほんとなんでかなぁ!?ワシ、この前ダンゾウの奴になんて言われたかわかる?『ヒルゼン。お前弟子ひとりすら独り立ちさせられんのか?…フッ。老いたな。いつでもワシが代わってやる。』って!って!!!言われたの!!わかる!!この屈辱!!あいつには舐められたくないの!!ほんと!!頼むから!言うこと聞いてちょうだいよ!!ラーメン!ほら!あれ奢るから!」

 

 

テロリスト予備軍のくだりはなんだったのか。

 

結局は火影様とダンゾウ様の意地の張り合いである。巻き込まれるおれの身にもなって欲しい。

 

それとせっかくダンゾウに変化してまで披露したモノマネだが、余りにお粗末だったためスルーしておいた。

 

 

しかしラーメンとは大きく出たな。あの一杯はおよそ数ヶ月分の食費の価値があると言ってもいいほど。それほどのものだ、ラーメンとは。

 

だが俺を動かすにはまだ足りない。

 

それほどに一年間の無料食費パスと光熱費無料キャンペーンは手放せないのだ。

 

 

「…いいもん!ワシにだって考えがあるし!」

 

 

さあ、どうあがくつもりだ?扶養者よ。この悪性腫瘍をどう切除する?

 

 

 

 

「うみのイルカを呼ぶ。」

 

 

 

 

 

そうきたか。

 

 

うみのイルカ。木の葉の黎き戦艦と呼ばれた上忍であり、数々の偉業を成した傑物だ。

 

たしか幻の秘境を発見してナマズ仙人になったとか。たったひとりで敵国の基地を潰したとか。その水遁は国を滅ぼす規模をもち、かの二代目火影のそれを上回るとか。

 

噂は忍界各地に広まっており、コピー忍者はたけカカシに並ぶ木の葉の有名人である。

 

 

「奴は利き腕を失っての。戦いの前線から離れることになったのじゃ。しかし奴ほどの男をそのまま腐らせておくには惜しい。そこで次世代の忍びを育成するアカデミーの教師として迎え入れることとなったのじゃ。」

 

 

いや、その展開はおかしい。GTO先輩もびっくりの教師物語の出来上がりだ。

 

 

「もちろん!奴はお主の事情こそ知らんが…強者故の慧眼がある!今年こそは逃れられると思うなよ!ナルトよ!!」

 

 

いや、事情は伝えるべきではないだろうか。これだから木の葉の里は恐ろしい。知る権利が認められないブラック帝国である。

 

 

しかし困ったことになった。おれの苦手なものに一つ、実力者がある。子供程度の演技なら簡単に看破される恐れがあるためだ。

 

それに、うみのイルカは片腕を失ってもなお里の為に働こうとするいかれた社畜精神の持ち主だ。

 

おれの行動を許さんとし、あらゆる手を使っておれを里に利益をもたらす優秀な忍びに育てようとするだろう。

 

 

そう、まるでブラックバイトに無駄に全身全霊を注ぎ、使える後輩を育てる事とバイト仲間でのボーリング大会を至上の喜びとする変態クソバイトリーダーのように。

 

 

残された道は一つだ。

 

この一年、なんとか奴をやり過ごす。

 

これを目標に頑張るしかない。

 

頑張って、落ちこぼれるしかない。

 

 

 

おれは部屋を退出した。その際におれを連れてきた忍びが困った顔をしていたので、うちはせんべいをわけてあげた。

 

 

 

 

 

 

夕日が差し込む執務室。猿飛ヒルゼンは今年のアカデミー生達の資料を眺めていた。

 

その顔には、西日にくっきりと主張された深い皺が刻まれている。

 

 

 

「今年の卒業学年は癖が強い連中ばかりじゃ。今までのようには行かんぞ。ナルト。…でもあいつら手に負えないからのぉ。ナルトの方がまだ可愛いわ。さてさて、どうなることやら。」

 

 

一人つぶやく火影の背中には、やけに哀愁が漂っていた。

 

 

 




トンデモ理論多数。仕方ないさ、これが凡人だ。

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