不遇な朝田詩乃に寄り添いたい 作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_
(朝田詩乃ちゃんの事をフルネームで書いてる意味は)ないです。
分けてもいいかなー。と思ったけど、やめた。丸々1話に収めておきたかった。
ちょっと展開早いけど、まぁ、いいかな。
「すみません。柊ですけど」
っと。柊と言っても分からんか。しっかりと「朝田詩乃さんのクラスメートです」と伝えると、ひょこっと若そうな女性が顔を覗かせた。
原作知らなかったらお姉さんと見間違える所でしたね。はい、詩乃ちゃんのお母さんです。
「クラスメートの……何か用かな?」
子供に言うように、笑顔で言った。あ、そうか。僕子供やわ。
「帰りの会で配られたプリントなんですけど、朝田さん、貰い忘れたみたいで。届けに来ました」
あれ?すらすらと言えたな。学校じゃあいうえおのあも言えないのに。
「あらそう……あの子ったら……ほら、上がってくださいな」
……おっと、マジか。上がれたらいいな〜とか、ちょっと考えてたけど、マジか。3次元じゃ有り得ない(事もないけど)事だと思うんだけど……詩乃ちゃんと知り合える機会には成り得るか。良かった良かった。
家に上がり、大きなテーブルの前の椅子に座る。帰りに寄ったので、ランドセルはまだ持っている。そのランドセルを床に置き、貰ったオレンジジュースを飲む。氷まで入ってて、とても冷たくて美味しい。
「今、詩乃を呼んでくるわね」
「あ〜……学校じゃあまり関わりないんですけど、大丈夫ですかね?」
「そうなの?……まぁ、大丈夫だと思うわよ?」
……そんなの気にする年齢じゃない、かな?詩乃ちゃん結構大人だからなぁ。知り合いたいのは事実だし、仲良くもなりたい。でも不用意に近付いて怖がられるのは嫌だな……
「呼んでくるわね」
しかし。目の前に甘い果実(詩乃ちゃん)を出されて我慢など出来なかった。
……お母さん、大丈夫なのかな。
原作では、詩乃ちゃんが2歳の頃、つまり、5年前に詩乃ちゃんのお父さん……お母さんの旦那さんが死んだ事で、精神が病んだんだが……そのような様子は見れなかった。もしかしたら、僕がいる事で原作とは違う点があるのかもしれない。
「…………」
いつの間にか詩乃ちゃんが来てい…………え?来て?
リビングに入る扉から右半身だけ出して、じっとこちらを見ている。その目には、まだ氷のような鋭さはなく、幼く優しい瞳をしていた。可愛い(確信)
こちらが存在に気付いた事に気付いたのか、はっとして、たたっとこちらに小走りでかけてきた。すると、ペコッと少しお辞儀した。
「……あの、プリント、ありがとうございます」
顔を上げて、申し訳無さそうにそう言う。やはり、なんというか、まだ強くない。人というものにまだ慣れていない、と言った方がわかりやすいだろうか。
わかりやすく言えば、コミュ障って奴だな。厳密には違うけどさ。
「……あぁ……話すのは、初めてだよね」
「っ」
ビクッと震え、目を瞑る。そんなに僕の顔は怖いだろうか。爽やか系イケメンに生まれたかった。
友達が出来ないくらいなんだから、僕にはそれ相応の「近寄りたくない
「……敬語、使わなくていいよ。タメ口で」
「……うん」
「はい、これプリント」
プリントを詩乃ちゃんが受け取り、プリントを流し読みしている。いや、していない?目はプリントに行っているが、心ここに在らずと言った感じだ。
……よし、僕は、思い切ってみようと思う。
「ねぇ、朝田さん」
「っ!なっ、なひ!?」
あ、噛んだ。顔真っ赤にして可愛いねぇ……何でだろう。学校では、思ったように喋れないのに。詩乃ちゃんの前だと、言葉がすらすら出てくるな。
「僕ってさ、怖い?」
僕のその一言に、詩乃ちゃんの顔の赤みが、すっと溶けるようになった。
「……えっ?」
ポカンとしている。まぁ、僕学校じゃあんまり……まったく喋らないし、そういう人だと思ってんだろう。少なくとも、こんな事を聞いてくるような人ではないと思ってる筈だ。辛いなぁ。
「…………」
「答えづらいなら、答えなくていいけど……」
「あっ……えっと……」
おろおろ、と狼狽えている。恐らく、答えていいのかどうか迷っているのだろう。まず、こういう子は「答えなくてもいい」と言われ、答えないなんて選択肢は出ない。そこで、答えていいのか良くないのかを考える。
「……あの、ね」
まぁ、どんな人でも、大体は結局答えるんだけどね。
「怖いって、感じじゃなくて……近寄り難いっていうか……」
「……そんな雰囲気、出てる?」
コクコクと頷く。ふむ。怖い訳では無いと……まぁ、それなら、いいかな。……いや、良くないけど。雰囲気なら何とかなりそう?時間はかかるけど。
「朝田さん」
「な、何?」
打ち解けてきた、かな。
そこで、1つ提案をする。受け入れてくれるかどうかは、大袈裟なんかではなく、僕の人生を左右する。
僕が
……僕はただ、目の前にいる、この儚く脆い少女に、寄り添いたいだけなんだから。
「僕と……友達になって、くれないかな」
その日の事を、僕は死ぬまで、1度たりとも忘れたことは無かった。
いつもの日常、いつもの時間。
毎日毎日変わる事なんて無くて、面白い事も無い。
私の名前は、朝田詩乃。5年前にお父さんを事故で亡くし、今はお母さんと私の2人で暮らしている。
事故の時、まだ物心がつく前の私にお父さんの記憶はなく、お母さんから聞いた事しか知らない。お父さんが死んだ時、お母さんは心が壊れかけたらしい。でも、そんな時、今より幼かった私の事を想い、なんとか病む事はなかったらしい。
今でも、お父さんの写真がリビングに飾ってある。病む事はなくても、やはり心にくる物があるのだろう。今でもたまに、お父さんの写真を見て涙を流すお母さんを見る。
「詩乃〜」
?……お母さん?
……今は自室にいるのだから、私を呼ぶ人はお母さんしかいないのだから、当たり前だが。
お母さんに呼ばれるまま1階へと降りると、「カッコイイクラスメートの男の子が、来てるわよ〜」とニヤニヤ顔のお母さんに言われた。
…………自慢ではないが、私に友達と呼べる人はいない。帰りの会が終わるとすぐに家に帰るか、図書館によるかしかない。休み時間は本しか読んでないし、ろくに話している人もいない。クラスメートなんて、名前を知らない人が殆どだ。
「……プリント届けに」
「!?そ、そういうのは早く言ってよ!」
「ふふ」
いつもの、子供っぽくて、意地悪なお母さんだ。
プリント届けに、なら、まぁ、分からないでもない。友達がいないのは先生も分かっているだろうし、適当な人に任せたのだろう。そう思って、静かに扉を開けて相手を確かめる。
「……………………」
パタン。と、閉める。リビングでオレンジジュースを飲んでいた男の子を見て、出るに出られなくなった。
「……お、お母さん」
「なぁに?」
「プ、プリント貰ってきて……」
「……」
彼とは顔を合わせたくない。いや、好きな人とか、嫌いな人とか、そういうんじゃない。ただ、彼はダメだ。
彼は、人気がある。当たり前だろう。顔もよく、頭もいい。子供ながら、どこか年上のような余裕を見せる節がある。表立ってそれを言う人は居ないし、本人も気付いているのか分からないが。一部ではファンクラブすらあるらしい。しかし、彼からは……なんというか……「近寄るな」「関わるな」って空気が出ているのだ。それで、今まで告白した人はおろか、友達になれた人すらいない。
「クラスメートでしょ?」
「そうだけど……」
私は、彼の事をよく知らない。ファンクラブがあるって事も、近寄り難いって事も、噂してるのを聞いただけなのだから。ほらほらと言いながら、お母さんにリビングへ行くのを催促される。あまり気乗りしない。「関わるな」と言われたら関わらないし、別に関わる理由もない。ぶっちゃけて言うと、関わりたくない。彼はここらへんでは有名人なのだ。私が彼に関わって、有名になりたくない、と思うのは、自意識過剰なのだろうか。
「……」
もう1度リビングの扉を開き、半分だけ顔を出して観察する。顔は、噂通り悪くない。だが、問題は性格や口調である。学校で彼が話しているのを見た事がない。私のように、いつも同じ時間を繰り返しているような感じだ。もしかしたら私と同じなのでは?と思ったこともあるが、その時はそれはないかと首を振った。
すると、彼がこちらに気付いた。私ははっとして、慌てて彼の元に向かう。
「……あの、プリント、ありがとうございます」
思わず、本で学んだ「敬語」の口調になってしまう。敬っている訳では無いが、なってしまうのは仕方ない。もしかしたら、プライドの高い人なのかもしれないし、不良のような性格の悪い人かもしれない、と思うと、自然とそうなってしまった。
「……あぁ……話すのは、初めてだよね」
思いの外優しく、それでいてふんわりとした、女性のような少し高い声で、彼はそう言った。クラスメートで彼の声を知っているのは、私だけなのではないかと、思ってしまう。
しかし、それで私の気分は高揚なんてせず、逆に苦しくなってしまった。普段の彼……いや、他のみんなが思う彼なら、無言で立ち去っていただろうから。優しい声をしていても、本人が優しいとは限らない。何か言われるのでは?と、不安になってしまう。
「……敬語、使わなくていいよ。タメ口で」
いつも真顔で、普段、感情をあまり表に出さない彼が、笑顔を浮かべそう言った。緊張と安堵と驚きで、頭がこんがらがってしまう。その笑顔は、正しく優しい人の笑顔で、その声は、私を気遣っての言葉だと、理解出来た。
彼は、みんなが思うような人ではなく、又、雰囲気通りの人ではないと、理解出来た。
……噂は当てにできない。
「……うん」
少しづつ回復してきた頭をフル回転させ、返事を絞り出す。緊張も不安も、もう無かった。でも、理解出来ない心臓の高鳴りと羞恥に、どうしていいか分からなくなる。
「はい、これプリント」
彼の手からプリントが渡され、私はそれを受け取る。そのプリントを読む振りをして、どうしていいか考える。
さっきから心臓が苦しくて、顔が赤くて、まともに考える事が出来なくて、訳が分からない。今すぐ自室に向かい、ベッドの上で足をバタバタさせながら暴れたいと思う。しかし、彼に「帰って」なんて言えない。言いたくもない。
……あれ?なんで、言いたくないんだろう?
「ねぇ、朝田さん」
「っ!な、なひ!?」
噛んでしまった。彼もそれを聞いて、引きつったような笑顔を浮かべている。やってしまったと思っても、もう遅い。顔は真っ赤になり、何も言えなくなる。まともに思考する事も出来なくなる。
「僕ってさ、怖い?」
その彼の一言を聞いて、私の頭は急速に冷えて行った。
「……えっ?」
目を丸くしてしまう。まさか、そんな事を聞かれるとは思わなかったし、そんな事を気にする人だとも思ってなかった。
……いや、そうか。彼は、優しいんだ。自分の、どうしようもない、その「近寄り難い雰囲気」に、心の奥底で悩んでいたのか。言いたくても、言えない。多分、勇気を出して言ったのだろう。自分ひとりではどうしようもなくって、どう思われてるのかもわからなくって、ただただ不安で。
「…………」
「答えづらいなら、答えなくていいけど……」
「あっ……えっと……」
この場合、率直に言った方がいいのだろうか。博識な彼の事だから、自身が他者にどう思われてるのかなんて、知っていると思うのだが。
試している、という訳では無いだろう。ただ、自分で見るのとは違う、客観的に見た自分を教えて欲しいのだろう。
「……あの、ね。怖い、って感じじゃなくて……近寄り難いというか……」
分かっていても、言いづらい。頭で考える事と口でいう事には、天と地程の差がある。だが、答えないわけには行かない。私なんかが彼の力になんて烏滸がましいにも程があるが、力になれるのならなりたい。彼がみんなと打ち解ける時、その横に私なんかが居ちゃいけない。みんなが彼を理解した時、私が彼とこうやって話す事など出来ないのだから。
「……そんな雰囲気、出てる?」
口には出さず、頷いて見せる。やはり、言いづらいのだ。それを聞いた彼は、考えるように顎に手を置いて目を瞑る。何を考えているのかは、もちろん分からない。理不尽に当たってくるような人ではないし、不安になる事は無いが……
「朝田さん」
「な、何?」
だんだんと、彼と話す事に慣れてきた。まだ完全に慣れていないし、心臓の高鳴りはまたやって来たが。彼が私の名を呼ぶ度、言いようのない嬉しさが、込み上げてくる。それが何なのか分からず混乱するしかないが。
そして、彼の決意した目が私の目と合い、驚きの言葉を発する。
「僕と……友達になって、くれないかな」
その日の事を、私は死ぬまで、1度たりとも忘れる事は無かった。
ゴーストルール聞きながら書いてたんですけど、いい歌ですよねこれ。
詩乃ちゃん大人っぽいとか言わな〜いの。
コミュ障ってさ、みんなが思う数十倍も、たくさん考えてるんだよ。誰とも話さない分、みんなからは見えない場所が鍛え上げられていくんだ。精神とか、頭脳とか。言い方が大人っぽくもなるし、客観的に他者を見てしまう。
とっても便利だし、未来に繋がるよ。けど、とっても辛い事。
原作との違いその1
お母さんの精神安定
でも、やはりやりづらい部分はあるので、「元々子供っぽい天然お母さん」って感じのお母さんになってます。原作に似せてますね。病んではませんが。
サブヒロイン候補
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要らない!ヤン詩乃ちゃん一筋で行け!
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