不遇な朝田詩乃に寄り添いたい   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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「死銃の事知らない人ちんぷんかんぷんじゃね?」って人いると思います。って感想来てたので説明をば。

GGO編の黒幕(敵役)です。
なんかゲーム内で特定の銃で特定の人を撃ったら撃たれたプレイヤーが本当に死ぬ特性を持ってます。

イーーーーーーーージョウッッ!!!!ハッッッッ!!!!!

ちなみに特性が「がんじょう」だったり持ち物にハチマキを持っていたりしたら1回は耐えられます(大嘘)


殆ど説明回。


朝田詩乃とB.o.B本戦Part3

「(見付けた......が......)」

 

 左手が指し示す時間は開始29分時点。第2回サテライト・スキャンまで後1分。巨大建造物(神殿か?)から出てくるキリトくんを発見した俺は、何とか接触を試みる。

 

「(なんと言って話しかけるか......「やぁキリトくん!偶然だねぇ。良かったら手を組まない?」なんて言っても、偶然なわけない事なんですぐバレるだろうしなぁ......14分で一直線にキリトくんの所来た訳だし)」

 

 この時、辛くもキリトとシュウの思惑は一致していた。

キリトは「死銃を倒したい」

シュウも「死銃を倒したい」

実の所シュウの懸念は杞憂で、キリトはシュウかシノンを探して、とりあえず近いシュウの方向に歩を進めていた所なのだ。かといって手を組む「きっかけ」が両者にはない。シュウは(表面上は)死銃なんて噂でしか知らないレベルだし、キリトも死銃に関してリアルで巻き込むまいと詳細を説明する事は出来なかった。

 

「(何かきっかけを......いや、待てよ)」

 

 その時、シュウに電流走る。

 

「(キリトくんは死銃を倒す為にB.o.Bに来た。俺も愛するGGOとシノンちゃんの為にみすみす死者を出すまいと首を突っ込んだ。原作を知っていながらこれ以上誰かを死の運命のまま放置することなんて出来ない......キリトくんから見たら俺は「怪しい」だろう。死銃の手先という意味ではなく、単純な信頼関係の不足だ。俺とキリトくんはまだ知り合って日が浅い。そんな俺がノコノコ出ていってキリトくんに信用してもらえるか......なんて、俺らしくないし、キリトくんらしくないか)」

 

「キリトくん」

 

「ッ!?」

 

 神殿外の外柱から身を出し、キリトくんの前に姿を現す俺。

 

「やぁ、キリトくん」

 

「......よぉ、シュウ(どうする......確かにシュウは完全白側の人間だ。仲間にするにも申し分ない実力がある。それは俺自身が体験している......だがシュウはどうだ。俺の「本当の目的」を伝え協力を請うか?いやしかし、シュウは純粋なGGOプレイヤー。俺の事情に巻き込むのは忍びないし、なにより信じてもらえるか......いや待てよ。何故シュウは俺に声をかけた?予選でシュウに俺のプレイスタイルや強さは理解されているはず......なら態々声をかけずに先手を取ればいい。何故だ......?まさか俺と同じで死銃を止めに?いや、死銃は噂程度しか知らないはず。死銃が「本物」なんて......)」

 

「色々考えてるね」

 

 臨戦態勢で長考するキリトくんに対し、俺は降伏宣言をするように両手をあげる。

 

「手を組もうじゃないか」

 

「......何?」

 

「僕とシノンちゃんは「ガチ」で殺り合う約束をしたんだ......キリトくんには言ってないけどね。率直に言えば手を貸して欲しい。」

 

「そんな痴情のもつれに俺を巻き込むのか?」

 

「キリトくんにも有益な話だ。僕は対シノンちゃん用に決戦兵器キリトくんを手に入れる。キリトくんは優勝の為に僕を利用する......win-winだろ?」

 

 俺はこう考えた。あくまでも「ゲーマー」目線で同盟を結ぼうとする。そして恐らく次のキリトくんの答えは......

 

「悪いが、優勝には......さほど興味は無い。俺の目的は別にある」

 

 そら来た。

俺は少なくとも表向き「死銃」の情報はない。ならばキリトくんに自白させればいい。キリトくんは俺を「単純に優勝を狙うGGOプレイヤー」と見えるだろう。本来の目的は同じだが、キリトくん目線から見れば俺は完全なる部外者。「死銃」の脅威を知らないGGOのトッププレイヤーとしか見ていない。

 

「それは......どういう事だ?」

 

「............説明すれば信じてくれるか?」

 

「内容によるな。何にせよ、助力は願いたいが......っと。その前に、第2回サテライト・スキャンが始まる。お互いそれを見よう。話は後にしてくれ」

 

「あぁ」

 

 時間を忘れていた。時計を見れば開始30分丁度。サテライト・スキャン端末を取り出せば、同じく北側からスキャンが始まる。

 

「俺、キリトくん......エンフォーサー?近いな。なんであいつが......」

 

「なぁ」

 

 サテライト・スキャンを見ながら、キリトくんが俺に話しかける。スタスタと無防備に端末を凝視しながら俺の腰掛ける柱まで来て、隣に座る。

 

「今、このプレイヤーの中で、お前の「知らない」プレイヤーは誰だ?生死は問わない」

 

 恐らく死銃のあぶり出しの為なのだろう。それは俺も知りたい。「死銃」の名は覚えていても、ゲーム内でどのような名前だったかまでは覚えていないのだ。とはいえ......

 

「なぜそんな事を?」

 

「いいから教えてくれ。説明は後でする」

 

 何処か焦ったように端末の画面を俺の顔面の前に押し付けるように見せるキリトくん。同じ端末持ってるつーのと思いながら、プレイヤー一覧を見る。

 

「まぁ俺も顔が広い訳じゃない。流石に全員は知らないが......そうだな。「知らないし聞いたことも見たこともない」のは......《Sterben》......スティーブンか?ドイツ語ならステルベンだな。他には《rurunbo》......《death13》......くらいか。この《銃士X》って奴も知らなかったが、俺がもう殺した。マスケティアイクスって名前らしい」

 

「殺した!?どんなヤツだった!?」

 

 キリトくんの剣幕に少し驚く。

 

「お、おぉ......まぁ落ち着け。銀髪ロングの女だったな。スナイパーだ。」

 

「女か......なら違うか......?」

 

 死銃はどいつだったか......スティーブン(ステルベン?)か、ルルンドか、デス13か......

 

「このルルンドってやつは最初キリトくんの近くにいたな。まだ生きてる。今は離れているようだが......ん?今も動いてるな。南側に少しづつ移動してる。俺もすれ違ったか?」

 

 マップに生きてるプレイヤーはもう半数が死亡していた。この15分で死者がどっと加速したらしい。ちなみにスティーブンとルルンドとデス13以外は知ってるか聞いた事のあるやつばかりだ。

 

「そうか......わかった(ならルルンドは白か?何処か特定のプレイヤーに向かったり、特定の場所に向かっている訳でもない......むしろ逃げている?どんどん南側に進んでいるな......俺とシュウが同じ場所にいる事で恐らく同盟......はまだ結んでないが、実質停戦状態なのは全プレイヤーに周知された事だろう。ルルンドは俺の名前は知らないはず。無意味にスキャン中に動き回る理由は......)」

 

「このルルンドって奴、何かから逃げてるな」

 

「恐らく、俺達だろう。単純に多対1を恐れているか、シュウの名を見て逃げたか......ルルンドの向かう先には誰も居ない。死体だけだ。」

 

 そう言って、サテライト・スキャン端末を弄るキリトくん。俺も自分の端末を見ながら、シノンちゃんの位置を把握する。

 

「おい......お前の女神様、俺達の方向に直行だぜ」

 

「えぇ?」

 

 そう聞かれ、こちらに少しづつ動いているマーカーをタップすると、《Sinon》の文字が。どうやらご立腹らしい。俺とキリトくんが手を組んだのがそんなに許せんのか。そうかそうか。愛い奴め。

そんなことを考えていると、スキャンが終わり、マーカーが消えていく。

 

「あっ......まだ見たかったのに」

 

 そういうキリトくんに、

 

「知らねーの?ここ押しゃ前のスキャン結果見れるぜ。ちなみに第1回の方もな」

 

 端末横のボタンを押すと、再度画面にスキャン結果が表示される。もう一度押すと、先程見た第2回サテライト・スキャン結果が表示された。当たり前だが既にルルンドもシノンちゃんも動きは止めていた。いや、正確には動いているのだろうが、「最終結果」しか表示してくれない特性上、今移動しているのかはわかないだけだが......

 

「そ、そうか。ありがと......う?」

 

 端末を見ながら、違和感に気付いたようなキリトくん。どうした?

 

「どうした?」

 

「いや......なんか、少なくないか?」

 

「あぁ、そういう事ね。サテライト・スキャンは水の中とか、洞窟の中とかのプレイヤーは表示されないんよ。ビルとか家とかなら中にいても表示してくれるけどね。設定的には空の遥か彼方にある衛星が生体反応を空からスキャンしてる、だからな。電気を通さない洞窟や分散する水の中なんかはスキャンしてくれないんだ。逆に、スキャン中にスキャン範囲内に居なきゃ、結果を受信できないんだけどな。恐らくそういった所に隠れてる奴らが一定数居るんだろ。プレイヤー一覧に名前は隠せんがな」

 

 これは第1回、第2回B.o.Bでも同様だった。俺は出場してないが、第3回B.o.Bに出るにあたって、情報収集しているうちに知った事だ。ちなみに情報源のサトライザーは洞窟やらなんやらで徹底的に姿を終盤まで隠し、俺のように見敵必殺かつ売られた喧嘩は買うスタイルで全滅させたらしい。ある程度暴れてからスキャンに映り、最後の敵を殺した......と言っていた。

 

「そうなのか......」

 

「そ。んで、話って何さ。優勝以外の目的って?」

 

「あぁ、それは......」

 

 そしてキリトくんは、自分が「死銃」という存在についてとある人に調査依頼を出された事、今回のB.o.Bもその一環である事、俺にはその「死銃」についての調査を手伝って欲しい事を話された。

 

「死銃なら俺も知ってる。噂程度にはな。あの薄塩たらことゼクシードが撃たれて、それ以降ログインしてないとか......」

 

「その2人なら、既に死亡が確認されている」

 

「何?」

 

 薄塩たらことゼクシードに俺は接点はない。ゼクシードは嘘の提唱をした筈の俺のプレイスタイル(AGI超特化型)を嫌って、俺からのコンタクトを尽く避けていた。薄塩たらこは探したが、薄塩たらこのフレンドを名乗る人物と会った時には既に「死銃とやらに撃たれてからログインしていない」と言われた。彼らの死を避ける事は出来なかった。

 

「なら噂は本当なのか?あの......撃たれたら「死ぬ」......っていうのは」

 

「............本当だ。方法は分からないが、両者ともリアルで不審死を遂げてる」

 

「お前はなんでそんな事を知ってるんだ?」

 

「さっきとある人に依頼されて調べてるって言っただろ。その人の情報だ。信じていい......と、思う」

 

「おいおい......当のお前が「と、思う」なんて程度の信用度で俺に信じろってか?」

 

「バーチャルな関係じゃなくリアルでの関係だ。少なくとも、俺は信じてる。だから来た(昔の因縁もあるしな......)」

 

「そうか......」

 

 キリトくんが話してくれた事は、概ね原作と同じ内容だった。死銃はSAO編で悪事を大盤振る舞いした笑う棺桶(ラフィン・コフィン)とやらの残党だ。それは覚えてる。SAO編でのプレイヤーネームも覚えてないが......確か《Poh(プー)》とかいう奴が頭領だった気がする。その部下だろう。そこら辺はキリトくんは誤魔化したが......

ちなみに俺の言った「対シノンちゃん決戦兵器」は嘘だ。口から出た出まかせである。シノンちゃんに勝ちたいのは事実だし、俺はともかくシノンちゃんが死銃の......新川恭二の毒牙にかからない為、速やかにご退場願いたい。今は大半が電子ロックだが、原作死銃はそんな事お構い無しに家に侵入し、対象を薬で殺していた。今からどうこう出来ることじゃない。住所も既に新川恭二にバレているし......

 

「(もし新川くんに何かしら心境の変化があって、俺達を殺さない方向に進めていたとしても、死銃本人とラフコフ達はお構い無しに殺しにくるだろう......そうか。そうだな。確か手口は......透明マント的な物を被って、総督府でGGO参加時に入力される個人情報で家を特て............)」

 

 あっ、これ俺やってるやん。もし新川恭二が改心してたとしても、ラフコフ残党に俺の家バレてるやん。終わった......

いやまぁ、新川恭二が改心してない可能性の方が高いだろう。新川恭二本人は......やらされていたか率先してやっていたかは忘れたが、参加していた事は覚えている。今でもあの「アサダサンアサダサン」シーンは記憶に残ってる......

 

「まぁとりあえず、お前の言い分は分かった。良いだろう。協力してやる」

 

「本当か?死銃に殺されるかもしれないんだぞ?」

 

「......それでもだ。愛するGGOで死者はこれ以上出したくない。それに......」

 

「............それに?」

 

 「事件」の事がフラッシュバックする。

当時の俺の無力さ。シノンちゃんの......誌乃ちゃんの心の傷。想い。そして......俺の頬に、未だに残る傷。

俺はともかく、これ以上誌乃ちゃんの心と身体を傷付けるのは御免だ。

俺は言葉通り、誌乃ちゃんの為に、誌乃ちゃんの為だけに、この世界(リアル)に来たのだ。救う為に。

 

「......いや、忘れてくれ。もし全部が終わって、誰も死ななかったら、また話そう」

 

「......わかった。」

 

 何かを察したのか、俺の目を見てそう呟くキリトくん。こういう時SAOサバイバーであるキリトくんの洞察力というか、観察力というか......そういう物に救われるな。

 

「それならまずこれからどうするか、それを話そう」

 

「乗り掛かった......いや、乗った船だ。俺の女神様の命が危ねーってんなら、救うのが道理だな」

 

 対死銃用作戦ミーティング開始。




「これ以上誰かを死の運命のまま放置することなんて出来ない」とシュウの発言ですが、「事件」での郵便局員の事や、薄塩たらこ、ゼクシードの事を思い出してます。

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