「凄い!いったい、どうなってるの?」
ルイズは先程から、ターディスを出たり、入ったりを繰返していた。
ドクターはそんなルイズを見て期待通りの反応だとニヤニヤと見ていた。
「ドクター、このマジックアイテムは何処で手に入れたの?」
「マジックアイテム?」
ひとしきり、観察を終えたルイズは質問するとドクターは心外だなと言う表情になった。
「ターディスには魔法的な要素は無いよ」
「嘘!」
「本当さ、ターディスは僕の故郷のガリフレイの科学だけで作られた物だからね」
ガリフレイ、そう聞いてルイズは怪訝な表情になった。
「ガリフレイ?聞いたこと無いわ、そんな国」
「当然さ、ガリフレイはこの世界とは別の世界の別の時間軸にあった国なんだからね」
ルイズは更に頭に?を浮かべた。
「そんな事よりも、えーと」
「ルイズよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン」
「長いね、ルイズで良いよね?」
「ちょっと!」
「決めた!僕はルイズって君の事を呼ぶよ!」
そう言ってドクターはサッと右手をルイズに差し出した。
「改めて、自己紹介しよう!僕はドクター、宇宙と時間を旅をするタイムロードって人種で今はルイズ、君の使い魔だ!」
爽やかに言ってドクターは戸惑って手を差し出さないルイズの手をパッと取り、ブンブンと上下に振り回した。
「ちょっと!痛いわよ!あんた、何が宇宙と時間を旅するタイムロードよ!ホラ話しも良い加減にしなさいよ!」
ルイズは怒って手を振りほどき、ドクターを睨み付けた。
ドクターは、それに気に留めた様子も無く、懐から懐中時計を取り出すとルイズに告げる。
「さて、ルイズ?この世界の時間の基準って僕の時計と合ってるかな?そろそろ、出発しないと授業に間に合わないよ?」
ドクターの言葉にルイズの顔はサッと血の気が引いた。
確かに今から、このターディスから走って出たとしてもギリギリ間に合うか、と言うかもう授業が開始されている時間だった。
「どっ、どどどどど、どうするの!?あんたのせいだからね!?」
ドクターの蝶ネクタイを締め上げてルイズは詰め寄った。
ドクターはそれに慌てる事なく、手元のパネルの隙間から吸盤の付いたコードを取り出してルイズの額にペチッと張り付けた。
「こんな、時に何してんのよ!!」
「ルイズ、これは僕が暇な時に作ったターディスの新機能なんだ!ターディスの移動には座標の設定とかしないといけないから、初めて行く場所には上手く行けない確率があったんだけど、これは張り付けた人物から、記憶を読み取って、場所の固定座標を教えてくれる装置なんだ!」
「はぁ?」
ルイズは何言ってんのと疑う視線をドクターにやった。
「教室をイメージしてご覧よ!今から、そこにターディスで送ってあげるよ」
「あんた、本当に頭は大丈夫なの?そんなの出来る訳がないじゃない。それに移動出来たとしたも、授業はもう始まっているのよ」
呆れて言うルイズにドクターは我が意を得たりと笑い掛けた。
「大丈夫だよ、ルイズ。授業が始まる少し前の時間に行けば良いだけだからね。その変わり、もしそれが出来たら僕の話を真実だと、認めてくれる?」
「あ~、はいはい。出来たらね」
「よーし!じゃルイズ、君は教室をイメージするんだ!」
ドクターはそう言い残して中央の雑多なパネルに忙しそうに操作を開始した。
ルイズは一つ、溜め息を吐いて取り合えず、自分の教室をイメージする。
「さあ、準備は出来たかいルイズ?行くぞ、ジェロニモー!」
草原にぽつりと佇んでいた青いpoliceboxは突然、独特な音を発し出すと、まるで最初からその場に無かった様にその姿が消えてしまった。