「流石、ゼロのルイスだ!珍しく一発で、成功したと思えば平民だなんて!」
誰かが言った一言が引き金になり、周りの生徒達が一斉に笑い出した。
それに耐える様に顔を赤くし、歯を食い縛るルイズは後ろに控えるコルベールに必死に抗議する。
「ミスタ・コルベール!これは何かの間違いです!やり直しを要求します!」
「それは出来ない。ミス・ヴァリエール、これは神聖な儀式なんだ。確かに人を呼び出した事は前代未聞な事だが、やり直しは効かない。彼と契約するんだ」
コルベールにアッサリと切られてルイズはそんなと、眉を八の字にして、ゆっくりと後ろを振り返る。
そこには変な青い箱を背にドクターと名乗った男がニコニコと立っている。
「話しはもう、済んだかい?僕は君の強い想いを叶えに来たんだ。その、使い魔だったかな?契約を結ぼうじゃないか」
それで契約書とかあるのと、懐から羽ペンとメガネを取り出してドクターは何時でもサインするよと人好きする笑顔を向けている。
ルイズは深く溜め息を吐いた。
「しゃがみなさい。良い?貴族が平民にこんな事をするのは滅多に無いんだから、光栄に思いなさい」
そう言ってしゃがませたドクターに口早に呪文を唱えて、唇を重ねた。
「!?」
これにはドクターも少しビックリした。
ルイズは顔を赤くしてサッと身を引いた。
「えーと、これで終わり?あー、サインとか、判子は要らなかったかって!うわうち!!」
突然、ドクターは左手を押さえて地面にのたうち回った。
「ちょっと、使い魔のルーンが刻まれているだけだから、我慢なさい」
直ぐに終わるわと言うルイズの言葉通りにドクターの左手の熱さは直ぐに収まっていく。
「フゥ~、まったく、僕は次から絶対に女の子とはキスをしないぞ。どれどれ、僕の左手に何か刻まれているな?うーん、読めないな」
ドクターはぶつぶつと呟きながら、懐から何かを取り出した。
「!?」
ルイズはそれが一瞬、杖に見えてドキッとしたが、見た目が銀色で先端が少し光っているまたヘンテコな物だと解った。
それをドクターは左手に向けた後にカシャッと目の前にかざしている。
「あんた、それ何よ?」
「これかい?これは『ソニック・ドライバー』って言って」オホンッ!
ドクターがルイズに解説しようとしたが、そこにコルベールが咳払いをして止めに入った。
「ミス・ヴァリエール、使い魔と触れ合うのは良いですが、次の授業が始まりますぞ。他の生徒達はもう、フライで学院へと戻っているので、君も戻らねば」
「えっ!もうそんな時間なんですか!わかりました、ミスタ!」
慌てるルイズにコルベールは使い魔になったドクターに使い魔のルーンを写させてもらう様に頼み、それが終ると一枚の紙をルイズに渡した。
「ミスタ、これは?」
「それは、私の用事で君が遅くなってしまったというメモだ。これがあれば少し遅くなっても大丈夫だろう」
コルベールの気遣いにルイズは改めて礼を言った。
コルベールはその礼を受けつつ、あまり遅くならない様に注意してフライで学院へと戻って行った。
「うん、良い先生だ!よかったね!さあ、僕らも行こう!こっちだ!」
コルベールを見届けたドクターはルイズの手を引き、青い箱の扉に連れて行った。
「何よ!私、急いでるんだから、離してよ!」
「まあまあ、走って、この場合は飛んでかな?まぁ、どっちでも良いけど、行くよりもターディスで行った方が速いよ!」
そう言って、ガチャとドクターはターディスの扉を開いた。
「うっそ!何これ!?どうなってるの?」
そこには小さな箱の外見では、信じられない様な広い空間が広がっていた。
「ようこそ!ターディスへ、ご主人!」