カフェの外では、数人の黒服が待機していた。
「うっ、くそ!離せよ!」
そして、その側には一人の黒服の監視の下にアンソニーの部下の少年達が一纏めにされてロープで拘束されていた。
「突入させたDからのリンクが切れた」
「想定外の状況」
「再度、突入させるか?」
「暫し待て」
黒服達はお互いにボソボソと話し合っている。
「最後に確認された映像を確認する。全員、リンクせよ」
「ターゲット確認」
「アンノウンが二名」
「女性トリスティン人、未成体、1。男性、成体、種族不明」
およそ、人同士の会話には聞こえない会話を聴きつつ、捕らえれた少年達は黒服達の動向を警戒していた。
「なぁ、アイツら本当に人間かな?」
「何、言ってんだ?アイツら亜人に見えるのか?」
「ボスは無事かな?」
「無事だと、信じるしかねぇだろ。・・・よし、もうすぐ切れるぞ」
「抵抗は許可していない」
「!」
捕らえれたている中で袖にペーパーナイフを隠し、ロープの切断を試みていた少年の首を監視の黒服が掴み上げてた。
「抵抗するならば、排除する」
「ぐぅ!あ、ああぁ」
黒服は容赦無く、片手で少年の身体を吊して首を絞めていく。
「離せ!」
「止めろ‼」
「もう、抵抗はしないよ!頼む!」
口々に仲間の助命をするが、黒服は一瞥もくれずに更に力を加える。
少年の顔が赤から、青に変わっていく。
「C、排除の用なし。目的は達成した」
もう駄目だと思ったとき、カフェから先に侵入した黒服が一人の男を引きずりながら、姿を現した。
少年の首を絞めていた黒服は、その姿を認めると手を離す。
少年は受け身も取れずに地面に転がるとゲホッ、ゲホッと咳を繰り返して新鮮な空気を肺に入れる。
「状況の説明を」
「建物内に侵入後、魔法での奇襲に遭遇。一時的にフリーズした」
「不可解。アンチマジックシールドがあるのに魔法が効くわけが無い。説明を求む」
「口では説明しずらい。説明する為にリンクの再接続を要請する」
「暫し待て、その前にその男は?」
「建物内のターゲットの近くに居た。詳細は不明」
「データには無い。種族だ」
「種族について特定している。ただ、口では説明しずらい。説明するには再度、リンクへの再接続を要請する」
それから二、三言、説明を求めるが全て説明しずらいと返された事でリーダー格の黒服は漸く、再接続を許可した。
「リンクの再接続を確認」
「フリーズの説明と、その男の種族を説明せよ」
「男は、タイムロード。名ばドクター、私は彼に停止させられた」
「?」
「そして、彼は私を再起動させてくれました」
「全員、リンクを切断しろ!」
何かに気付いた様にリーダー格が叫ぶ。
そして、黒服に捕らえられていた男、ドクターが伏せていたパッと顔を上げる。
その顔は悪戯が成功した子供の様に笑っている。
「残念、もう遅い!さぁ、おねんねの時間だ!」
ドクターはソニック・ドライバーを取り出して自分を捕らえられている黒服に向けて起動する。
すると、周囲の黒服達が途端に震え出して次々と地面に倒れ出した。
「良し、これでOKだ!三人とも、出て来て良いぞ!」
黒服全員が倒れたのを確認するとドクターはカフェに声を掛けた。
直ぐにカフェから、ルイズらが出てくると周囲の状況を見て眼を見張った。
「何したの?」
「何って、説明したろ?まずは彼のプログラムを書き換えて僕達の味方にして、ああ、君は良くやってくれたよ」
「恐縮です」
「そして、簡単なコンピューターウィルスを作って彼の中に入れて他の黒服がリンクした瞬間に拡散させただけさ」
「説明を聞いても意味、解んないわ」
ぼやくルイズにドクターは伝染病みたいな物さと笑い掛けて、仲間の救出をしているアンソニーとエルの方に歩いて行った。
「さあ皆、怪我はないかい?」
「ドクター!」
「早速で悪いんだけど、行動だ!まずはエル、君は仲間達と一緒に街中のレジスタンスに警告をしに行くんだ。奴等は本気で君らを潰しに行くとね」
「わっ、わかった!」
「ルイズ、アンソニーは僕と一緒にターディスへ行って、元凶を潰しに行く」
矢継ぎ早に指示を出してドクターは足早に歩き出した。
二人もその後を追っていく。
しかし、何を思ったのかドクターは立ち止まる。
ルイズ達は危うくぶつかりそうになった。
「もう、いきなり止まらないでよ!」
「ごめん、ごめん。Dだったかな?まぁ、この際、そんな味気ない名前は変えよう!そうだなぁ~、ドクトル!うん、君の名前はそれに決まり!ドクトルも僕達に付いて来るんだ!」
いかにも適当に付けた名前にD改めて、ドクトルは了解しましたと頷き、ドクター達の後に続く。
「さあて、反撃開始だ!行くぞ、ジェロニモー!」