Doctor・Who the 0   作:ヨシヒデ

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・・・貴族みたい

「・・・プッ、本気で言ってるの?」

 

アンソニーが告げた一言に思わず、吹き出してルイズは冗談でしょと言うと、アンソニーは不機嫌そうに腕を組んでルイズを睨み付ける。

 

「だから、笑うなって言っただろう!」

「ハイハイ、悪かったわよ。でも、もっとマシな設定が合ったでしょう。ねぇ、ドクター?」

 

子供の遊びだろうと思い、ルイズは軽く受け流してドクターに顔を向けると、ドクターは深刻そうな表情でアンソニーを見ていた。

 

「ドクター?」

「・・・もし、そうならとんでもない条約違反だ!」

「「条約?」」

 

訳が分からずにルイズとアンソニーはドクターを見ると、ドクターは独り言の様に話し出す。

 

「シャドウ条約で、この惑星はレベル5相当の保護惑星に指定されている筈だ!それを侵略するなんて、なんてバカな真似をするんだ!」

 

憤慨するドクターに二人はいったいどうしたのか、訳が分からずにただ、呆然と見ている事しか出来ない。

 

「アンソニー、敵が侵略を始めたのはいつか特定出来ているのかい?」

「えっ?」

 

いきなり、ドクターに質問されて慌てる。

 

「えっと、三百年前のトリスティン魔法学院の消滅事件だと思うけど」

「何故だい?」

「トリスティン魔法学院が、いや古文書によると、あの時代の魔法学校がその年に次々と謎の消滅や廃校に追いやられて行っていったんだ。魔法衰退の切っ掛けで、その変わりに科学の発展が始まったんだ」

「成る程、君はそこがターニングポイントだと思い、学院遺跡を調査していたのか」

「そうだけど、収穫はゼロだったよ。まぁ、収穫の変わりにドクターやルイズ姉ちゃんが突然、現れたのはビックリしたけどね」

「ちょっ、ちょっと、ドクター!この子の話を信じてるの?」

 

ルイズがそう言うとドクターは勿論だと頷いた。

 

「良いかい、ルイズ。文明は確かに緩やかに発達するモノだが、ハルゲニアの発達速度は遅すぎる。明らかに何か、何者かが故意にある水準までの発達をさせたら、文明のレベルを停滞させている」

 

そうドクターは断言する。

 

「でも、目的が侵略なら何故、侵略者の姿が無いの?街中を堂々と歩いていても可笑しくはないわ!」

「そこさ、解らないのは!シャドウ条約違反を隠す為にゆっくり侵略する場合でも、こんな手間が掛かるマネをする意味が解らない!目的は、そもそも惑星の支配なのか?」

「目的は解ってる僕ら、メイジさ」

 

アンソニーは唐突にドクター達に告げると、どう言う事だと首を傾げる二人に懐から、やけに古い紙を取り出して見せた。

 

「これは俺の家に伝わる手紙だ。ここには正体は解らないけど、ハルゲニアに来た敵の目的が何なのか突き止めた貴族が王家に知らせようとした内容が書かれていた」

 

俺はこの手紙で、宇宙人の事を知ってレジスタンスを作ったんだとアンソニーは言うとドクターに手渡した。

ドクターは、その手紙を開いて一読すると更に険しい表情になった。

 

「ドクター、何が書いているの?」

「ルイズ、君も読んでごらん」

 

ドクターに手紙を手渡されて、ルイズも手紙に眼を落とす。

手紙は所々で読み取れない場所があるが、書き手の品格を現す様に流暢な文字でしたたまれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この手紙が**へと届いているならば、私の計画が失敗し、この世から消されてしまったという事でしょう。ご存知の通り、私には新政府や貴族らに多くの敵が居ります。しかし、私を消したのはそれらの者共では無いでしょう。勿論、エルフや亜人の者共でも無いでしょう。奴等は、このハルゲニア世界の外から来た存在、******************です。何故、私が奴等の存在を気付いたのか、それは新政府側に潜入させていた間者が、その命をかけて私に知らせたからです。その後、私は死に物狂いで情報を集めました。そして、断片的な情報を推察するにトリスティン魔法学院の謎の崩壊は奴等の計画の始まりだったと思われます。また、これから行われるすべの事柄は奴等の目的達成の計画の一部だと思われます。そして、奴等の目的とは我らメイジの*****です。

私が敗れもはや、この状況を覆す事は出来ないでしょう。どうか***、奴等に抵抗はしない様にして下さい。そうすれば奴等は我々の数を管理しつつ、殲滅はしないでしょう。

最後に、この事を子孫らに語り継がせて奴等から解放される機会をお待ち下さい。

トリスティンにハルゲニアにブリミルの御加護があらんことを祈っております。

ヴァリエール公爵より』

 

 

 

手紙を読み終えたルイズは何かを耐えるように眼を瞑り、小さく聖句を唱えた。

 

「ルイズ姉ちゃん、大丈夫か?」

 

アンソニーが心配げに声を掛けると、ルイズは問題ないわと答えた。

 

「私の子孫は貴族の義務を全うしたの、私は彼らを誇りに思うわ。それに、子孫を消されたままなんて出来ないわ。ねぇ、ドクター?」

「その通りだ。これは間違った歴史さ。歴史が間違っていたなら、どうする?」

「正すわ」

 

力強い声でドクターに答えるルイズには先程までの田舎者丸出しの御上りと言った雰囲気は消えていた。

 

「・・・貴族みたい」

 

アンソニーは思わず、思った事を呟いた。

 

「私は本物の貴族よ。アンソニー、貴方もね。だから、貴方も一緒に来なさい。 私達と歴史を正すのよ!」

「正すって、どうやって?」

「それは」

「ボス!!」

 

ルイズが答えようとした瞬間、カフェの入口からアンソニーの手下が飛び込んで来た。

 

「ボス、奴らが来た!早く、逃げて!!うわっ!」

 

必死に扉を押さえようとしていた手下の子供が押し出された様に吹き飛び、変わりに全身を黒いスーツで覆った男が入って来た。

 

「何よ、こいつら!?」

「アイツらは敵だ!」

 

ルイズの言葉にアンソニーは憎々しげに侵入者を睨んで答えた。

 

 


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