「王族は、今もこのトリスティンに居るよ」
三人は、路地裏のこじんまりとしたカフェに居る。
その中でアンソニーは向き合ったルイズ達に話をしている。
「良かったわ!でも、何故なの?貴族が無くなったのに?」
ルイズはホッとして疑問を投げ付ける。
アンソニーは、何でって困惑してルイズを見る。
「ルイズ姉ちゃん、本当に何処に居たんだよ?貴族制が無くなるときに貴族達、とくに大貴族って言われるヴァリエール家が王家の存続を条件に政府と交渉したんだ」
「えっ、ヴァリエール家が!?」
「結果、何の政治権限も与えられず、王家は君臨しせども統治せずって訳さ」
アンソニーは、そんなのどの歴史の本にも載ってるよと呆れ顔でルイズを見る。
「それで家は、ヴァリエール家はどうなったのよ?」
「暫く、政府と元貴族達の交渉のパイプ役をしていたけど、ある日、突然、消えたんだ」
「消えた!?」
「そう、まるで霧の様にね」
ヴァリエールだけじゃない、グラモンとか元貴族の有力者も消えたんだと語られるが、ルイズは衝撃のあまり耳に入って無かった。
「ふーん。突然ねぇ、原因は解ってるのかい?」
「諸説あるけど、暗殺が有力かな」
「君は納得してないんだろ?」
アンソニーが何をと言いかけて突然、ドクターは大袈裟な動作で立ち上がった。
「少なくとも、僕は納得出来ない!大貴族って事は、そんじょそこらの貴族よりも魔法の力が強かったんだろ?ルイズ、君にはわかるだろ?君の家はたかが数百年で暗殺程度でどうにかなる家なのかい?」
「冗談じゃないわよ!家の一族は家族は勿論、使用人も熟練の兵よ!数百年でも、数千年でも家を滅ぼすなら、三個師団とかじゃないと無理よ!納得いかないわ!」
ドクターに言われてルイズも勢い良く立ち上がる。
アンソニーは、そんな二人に着いて行けずに呆然と見ている。
「その意気だ、ヴァリエール!あと、まだ僕が納得出来ない事がある!それは千年経ってもまだ、月にすら行ってないんて、納得出来ない!魔法が衰退してる?不自然だ!時が経つに連れて、魔法は洗練されて、科学と結びつき、もしかしたら、地球よりも速い進歩で銀河を渡る事が出来た筈だ!納得出来ない!君もそうだろ?」
「え?うっ、うん。いや、待ってよ!いったい、何を言ってるんだ?それに俺が何を納得していないんて言うんだ?」
「この世界にさ!」
ドクターの気迫に、押されて黙るアンソニーに更にドクターは言葉を放つ。
「少なくとも、君がこの世界に疑問を持つ切っ掛けが合った筈だ。それで君は調査してたんだろう?」
調査とドクターが言った瞬間、アンソニーの目が鋭くなった。
「ドクター、何のこと?」
「惚けても無駄だ。さあ、君は何処まで知ってるんだ?」
次の瞬間、アンソニーは机の下から杖を出して二人に突き付けた。
「アンソニー、貴方は何してるの!?」
「動かないで、ルイズ姉ちゃん」
先程まで元気よく明るい雰囲気だったアンソニーは、一気に冷たく、鋭い雰囲気になった。
余りの変わりようにルイズは呆気にとられるが、自分の杖を抜こうとした。
「ルイズ、駄目だ。回りを見てごらん」
ドクターに言われて周囲を見渡すといつの間にかにアンソニーと同じくらいの杖を持った少年達に囲まれていた。
仕方なく、ルイズは杖を机に置いた。
「ドクター、あんたも何かあるんだろ?」
「これの事かな?」
そう言って、ソニック・ドライバーを同じく机に置く。
そして、大人しく二人が席に座るのを確認すると置かれた杖とドライバーを見てアンソニーは自分の杖を下に下ろした。
「国宝級な古い杖と明らかに、オーバーテクノロジーじみた杖。学院遺跡で突然、現れた青いbox。本物なら、数十億する古金貨。本当に何者なんだ?」
「やっぱり、ターディスの近くに居たのは君か!」
「答えろ、あんたらは何者だよ?」
「僕らかい?僕らはタイムトラベラーさ!」
「冗談は嫌いだ」
「本当よ、私はルイズ・フランソワズ・ド・ヴァリエール。千年前のヴァリエール家三女」
真っ直ぐな眼でアンソニーを見詰める。
「アンソニー、君らが何者かで、何を目的にしているのかは知らない。けど、これだけは言える。僕らを信頼しないと事態は好転しないぞ」
ドクターの説得に何かを考える様に眼を瞑り、おもむろに左手を上げて手を振ると周囲の少年達は戸惑いの表情を浮かべた。
アンソニーは良いいからと、少し強目に言うと渋々と杖を下ろしてカフェから出ていった。
残るのは三人だけになった。
「信じてくれて、ありがとう!」
ドクターが笑顔で言う。
「別に全部、信じた訳じゃない。・・・あと、悪かったよ、杖を向けて」
ばつが悪そうに、そう言うと結局、何者だよとまた、聞き返す。
「何よ!さっきから、言ってるじゃない!」
「まあまあ、ルイズ。それで質問があるけど、君たちは皆、メイジみたいだけど、君らは革命家とかかな?」
「革命家?違うさ、俺達はレジスタンスさ」
「レジスタンス?」
「ああ、そうだ。俺達は戦ってるんだ」
ドクターが誰とと問い掛けると、アンソニーは絶対に笑うなよと念を押して小声で何かを言った。
「ん?何て?」
「だから・・・と」
「だから、何よ!」
「ああ、もう!だから、
宇宙人の侵略者とだよ!!」