「何、これ!?繋ぎ目の無い道が続いているわ!」
ルイズ達は魔法学院遺跡のゲートまで出て来ていた。
そこには地球で言えば、アスファルトで硬められた道路が続いている。
更には、
「見て見て!あれ、馬が引いて無いのに馬車が動いてるわ、ドクター!」
「うん?う、うん。そうだね」
所謂、自動車だ。
それに未来に来たのだと、実感が湧き、一つ一つに驚き指を指して驚くルイズに対してドクターは訝しげに周囲を観察していた。
「可笑しいな?普通、千年たったなら、もっと文明レベルが上の筈なんだが?」
そう呟いてドクターはしげしげと自動車を眺める。
地球で言えば、だいたい50年代くらいの技術で、最も良く見たら少し劣るくらいにも見える。
いぶかしむドクターを余所にルイズは珍しげに見渡している。
「ルイズ、そんなにキョロキョロしてると、お上りさんみたいだぞ」
苦笑しながら、ドクターが言うとルイズは顔を真っ赤に染めて仕方ないじゃないと文句を言う。
「まだ、トリスタニアにも行ってないんだぞ」
「そうね!早速、行きましょう!でも、どうやって行くの?馬を借りられそうな場所はないし?」
「そうだね~。あっ、あれってバスかな?」
「こんな大きな物が馬も無しに動くの?」
移動手段を探して道路沿いを見ると、大型の二階建バスがちょうど良く停車している。
二人は早速、バスに乗車して一番後ろの席に腰をかける。
そしてバスのドアが閉まり、静かに動き出そうとしたときにルイズの視界にバスに走り寄ってくる小さな人影が入った。
「おーい!待ってよ!俺も乗るよ!」
小さな人影、どうやら少年は手を振りながら、大声でバスに叫んでいる。
「ねぇ!ちょっと、止めて!乗り遅れている人が居るわよ!」
気付いたルイズはバスの運転手に伝えると運転手も気付いたようで直ぐに停車してドアを開いた。
そして、バスに乗り遅れそうになっていた少年はするりと乗車して来た。
「いやー、ありがとう!お姉ちゃん、お陰で助かったよ!」
少年は今しがたまで全力で走って乱れた呼吸を整えながら、ルイズにお礼を言う。
ルイズより、頭一つ分は低い身長にハンティングキャップを被り、膝までの長さのズボンをサスペンダーで吊った、ドクターに言わせればロンドンやパリにいる新聞売りの少年みたいな少年はルイズの隣に座る。
ハンティングキャップから、除く少年の容姿にルイズは可笑しな事に少年と昔、何処かで会ったような気がした。
「お姉ちゃん達は何処から来たの?ここら辺の人じゃないでしょ?その格好って古いけど、制服みたいだね。何処かの学生?似合ってるね!」
「えーと、そっ、そうねぇ」
「僕らはとっても、遠い所から来てね!今日は観光だよ!」
「そう、そうなの!」
少年は、好奇心旺盛に質問攻めにしてくる。
ルイズはどう言ったもかと、考えているとドクターが助け船を出してくる。
「そうなんだ。あっ、そうそう俺はアンソニーって言うんだ!姉ちゃん達は?」
「僕はドクター!」
「私はルイズ・フランソワズ」
「よろしく!ルイズ姉ちゃん、ドクター!」
「ルイズで良いわ」
それから、暫く三人は時折、ジョークを交えつつ話に花を咲かした。
「アッ、そうそう!ルイズ姉ちゃん達はトリスタニアは初めてなんだろ?良かったら、俺が案内するよ!」
アンソニーは元気よく提案すると、ルイズはどうしようかと悩む。
トリスタニアは自分にとっても知らない土地では無いが、流石に千年という時を経てどの様に変化しているのかは想像が付かない。
最終的にドクターの良いんじゃないかなという一言でルイズも同意する事にする。
「なら、よろしくね」
「任せてよ!大丈夫、安くしとくよ!」
「ちょっと!お金は取るの?」
「当たり前だろ?こっちだって、生活が掛かってんだから」
ルイズは溜息をつくと分かったわよと財布から、金貨を一枚の取るとアンソニーに手渡した。
「こりゃ・・・」
「どうしたの?」
「いや、何でも無いよ。毎度!」
一瞬、アンソニーは眼を見張ったが何事もなく、ズボンのポケットに押し込んでルイズ達に笑い掛けた。
「さぁ、もうすぐ着くよ!」
「えっ、もう!」
アンソニーの言葉で窓に視線をやるルイズ。
ドクターもルイズと同じ様に窓を見る振りをしながら、アンソニーを盗み見ると、先程の金貨を取り出して鋭い目付きで観察していた。