……まぁそもそも所属するかどうかも怪しいですが(震え声
#8 風紀委員会
お昼休み、今朝の呼び出しの件があるので僕とテスラは達也君達と一緒に生徒会室へ来ていた。
生徒会の皆さんは女性ばかりで男女比がアレだから少し居心地が悪いんだよね、でもテスラは僕以外の話をほぼ聞かないから一旦僕が聞いて彼女に通訳しなくちゃならないんだよねー。
てか、風紀委員長? 貴女生徒会じゃないでしょ? 初日に問題起こした僕を見張りに来たのかな?(震え声
そんな被害妄想的な事を考えているとそんな事は無かったらしく、糸で思考を読むと生徒会の説明の中で風紀委員会に触れるのでその補足に来たっぽい。
入室したテスラ達に見惚れる先輩方を見ながら、本当にこの二人は神がかった容姿してるなぁと下駄箱に山ほど詰め込まれていた釘打ち済みの藁人形の量に納得した僕は達也君と共に椅子に座った。てか、僕に対する嫉妬の山を風紀委員長に取り締まって貰おうかな、丁度目の前に風紀委員長がいるし。
そんな事を考えながら、生徒会長の役員紹介を聞きつつ先ずは親睦を深める為に昼食を食べる事になった。
あっ、役員の名前は順に会長の七草真由美先輩、会計の市原鈴音先輩、風紀委員長の渡辺摩利先輩、書記の中条梓先輩、そして現在は居ないけれど副会長の服部範蔵先輩(本名はかなり長いらしい)だってさ。
今回は学校のランチでは無くお弁当を持ってきている、と言うのもテスラの口にこの学校のランチが合わなかったらしく、僕の料理が食べたいと言ったからだ。
一応レガ様仕込みの料理が作れるから差があるのは確かなんだけど、テスラの場合僕の料理以外全て同じ味とかそんな認識だったりするからなぁ……って、うん? なんだろう、周りの視線が僕に集まってる気が……。
「なあ俊、その弁当はお前が作ったのか?」
「意外かな? 渡辺先輩も自分で作って来てるし、普通だと思うんだけど」
「いや、予想外に美味しそうで意外だっただけだよ」
「うーん、まぁ拘りがあるっちゃあるからねぇ、まぁ普段深雪さんの料理食べてる君にそう言われるなら僕の料理も捨てた物じゃないかな」
さらっと深雪さんが僕の弁当を褒めた達也君にむっとしてるけど、僕ら男同士だからね? シスコンの達也君からしたら君のごはんの方が美味しいに決まってるから。
男の料理ってのが案外珍しいのか先輩達も興味深そうにしていたけど、その視線が集まっている中でテスラが僕の裾を引き。
「俊、はいあーん」
「テスラ先生、流石に人前じゃ恥ずかしいです」
唐揚げをあーんして来た、家じゃ毎日やってるけど流石にこの状態でする勇気は無い(震え声
「お、お兄様!! その、私もあーんをしてもよろしいでしょうか!?」
「落ち着こうか、深雪」
深雪さん……実はこの子もテスラに影響されたり逆に影響与えたりするからなぁ……。
そんな僕らのやり取りを見ていた市原先輩が、からかい目的か『兄妹というよりはまるで恋人ですね』と言ってきた、テスラも戸籍上は妹だしねー。
さてどう返したら良いかなと考えていると、達也君が少し意地悪をするみたいなので様子を見る。
「そうですか? まぁ確かに考えた事はあります、血の繋がりが無ければ恋人にしたい、と」
その一言でからかった市原先輩、笑っていた渡辺先輩、中条先輩が驚きと共に顔を赤くした、うーん達也君は表情分かんないからなぁ。
「勿論冗談ですが」
だから冗談を言っても分かり辛いんだよなぁ、深雪さんもガックリしてるし、妹さんですら分からない物を他人が理解出来る訳無いよね。
「僕の場合は戸籍上兄妹ってなってますけど血の繋がりは無いですからね、テスラの事は愛してますよ? 勿論一人の女性として……誰にも渡すつもりはありません」
そう言って僕がテスラの肩を抱くと、さっきの3人が明後日の方向を向き始めた、側で聞いてても恥ずかしいなら話題を振らないで下さいな。
そんな昼食が終わり本題に入る事になった、話の内容は生徒会の説明で、主に生徒会長の任免によって副会長以下が決まる事、各委員会の委員長も風紀委員会を除いて生徒会長が任免する事などといった内容だった。
風紀委員会だけは、生徒会・部活連・教職員会の三者が3名ずつこれを選任するらしい、部活連・教職員会はまぁそのままの意味だろう。
パッと聞いた感じだと生徒会長の権限が強い感じもするけれど、それがこの学校の校風だと言われればまぁ納得かな?
それと、新入生総代に選ばれた生徒は生徒会に所属してもらう事になっているらしいのだけど、今年は総代として深雪さんとテスラが選ばれているので生徒会の役員に庶務が加わっているらしい。
テスラを所属させるなら庶務の椅子に座らせるべきなんだろうけど、やる気が……ね?
ちらっと見たら彼女は暇そうにしてほぼ話を聞いてなかった、コレは後で僕が説明しなきゃダメみたいですね(白目
「と言う訳で、二人に生徒会へ入って頂きたいんだけど……引き受けて頂けるかしら?」
会長がそう言うと、まず深雪さんがアイコンタクトで達也君と何やら通じ合い、『兄も一緒と言う訳にはいきませんか?』と希望していた。
入試の成績を考えるなら妥当といえば妥当なんだろうけど、生徒会は一科生から選ばれると言う規則がある為にその訴えは却下されてしまう。
「一科生しかダメなら俊は生徒会に入れないの?」
「そういう事だね、まぁ僕と達也はどの道定員オーバーだから入れそうにないけど」
「なら嫌、俊が居ないなら入らない」
テスラの発言で何とも言えない空気になる生徒会、案の定と言えば案の定なんだけど、まぁ僕もテスラと一緒に居られないと嫌なので口は出さない。
深雪さんはこの話を受けるらしいので、僕らは退席しようと腰を上げた瞬間、渡辺先輩が『ちょっと良いか?』と手を挙げた。
「風紀委員会の生徒会選任枠の内、前年度卒業生の二枠がまだ埋まって居ない」
「摩利……それはまだ人選中だって言ってるじゃない?」
「確か風紀委員の選任には二科の生徒を選んでも規定違反にはならない、だったよな?」
「ナイスよ!! そうよ、風紀委員なら問題ないじゃない!! 生徒会は風紀委員に司波達也君と関根俊彦君を指名します!!」
お、おう、まさかそんな手段に出るとは……。
こうなったら僕に拒否権は無い、何故って? 僕は実技以外がワースト3の成績だ、下手をしなくても進学はおろか卒業すら危かったりするのでこう言った部分で下駄を履くしか無いのだ。
抗議しようにもする理由が無い、流石にテスラとの時間が無くなると言う理由で断る事は出来ないだろうしね。
僕はその任命を了承するしかなく、必然的に僕から離れ離れになってしまうテスラには深雪さんの居る生徒会に所属する様に頼んだ、ちょっと不満そうだったけど僕の頼みだからすんなり引き受けてくれたよ。
達也君は割と抗議していたけど結局言い負けてしまい、予鈴と共に流れるままに任命されてしまった、頑張れ達也君(震え声
詳しい話は放課後にするらしい、それまでにテスラの不満を解消しとかなきゃなぁ……。
▽
そして僕はその後の授業でお昼の出来事を何時ものメンバーに話していた。
レオや柴田さんは心配してくれたけど、要は警察と検察を合わせた様な組織だし、まず僕や達也が鎮圧の際に遅れをとる事は無い筈だ。
今の実技の授業は台車を中央まで加速後、向こう端までは減速し、端で停止後同じように戻すと言った物、内容自体は簡単だったのでノルマ分をサクッと終わらせる。
すると後ろで見ていた千葉さんが『ふーん、それだけ出来て二科生って事は本当に筆記が悪過ぎたのね』と言って台車を動かしに行った、案外ストレートにモノを言う人なのでグサッと来るんだよなぁ。
僕は既にノルマが終わったので達也君の実技を見せてもらったんだけど、確かに魔法の発動が遅い、魔法のみで本気でやり合ったら僕の方に軍配があがるだろう、彼が風紀委員になる事を渋る理由も分からなくは無い。
けど今朝の反応速度を考えると素手で相手を拘束することも余裕だと思うんだけど……まぁ人には言えない事情があるのかもね。
時間は進み放課後、生徒会室に行くと男性が一人窓際に立っていた、恐らく彼が服部副会長だろう。
僕らが入室し、挨拶をしたところ僕と達也君の間をスルーして深雪さんとテスラに向かって自己紹介し始めた、ハハッ何僕のテスラに色目使ってんだよ、今直ぐ挽肉にするぞ?
「生徒会副会長の服部刑部です。司波深雪さん、関根テスラさん、生徒会にようこそ」
深雪さんも彼の態度にムッとしてはいるようだけど普通に頭を下げている、テスラ? 彼の態度が気に入らなかったのか単分子の厚みしかないA・ARMを発動して細切れにしようとしてたので慌てて糸使って拘束しました(震え声
数秒しか止められなかったけど、テスラは僕の制止を聞いて刃を引っ込めてくれたので大事が起こらずに済んで良かった。
どうにも服部副会長はあまり僕と達也君に良い印象が無いらしい、二科生だからだろうね。
そんな彼に呆れながら、渡辺先輩の先導で風紀委員会へと移動しようとしていた僕達は服部先輩に止められた。
内容は僕らが風紀委員になる事に対する反対だ、過去にウィードが風紀委員になった事は無く、校則違反者を実力で捕まえる仕事なので実力に劣るウィードには務まらないと言うのが彼の主張だ。
感情が入ってはいるけれど、言ってる事は正しく思えるんだけどねぇ、僕らは普通じゃないからなぁ。
「確かに風紀委員は実力主義だ、だが実力にも色々とあってな? 達也君には起動式を直接読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳がある!!」
そう、その目のおかげで森崎君達は昨日無罪放免にされた様な物だ、渡辺先輩が風紀委員会に欲しがった理由もこれだろう。
それに一科生が二科生を取り締まる事があってもその逆はないという構造の改善をしたいとも彼女は言った、その反論を聞いた服部先輩は押し黙るしかなかったが、やはり感情的には納得出来ないのだろう、副会長としてきっぱりと反対意見を出した。
……テスラがそろそろ殺意の波動に目覚めそうなので止めてくれないですかね副会長(震え声
「魔法力の無い二科生に、風紀委員は務まりません!! ましてや先日騒ぎを起こした問題児ではありませんか!!」
その副会長の一言に深雪さんは反論したんだけど、それよりも先にテスラのA・ARMの刃が超光速で服部先輩を斬り刻みに行った、テスラの目付きが、目付きがナイヴズ化してる(震え声
彼女の束縛を強化して頬を掠める程度に攻撃を逸らしたし、A・ARMを解除させたのだけど、何かが通った事は分かったらしく、服部先輩は口を閉じてしまった。
幸いにもA・ARMの発動の瞬間は見られなかったのでテスラはバレなかったけど、代わりに彼女はそのまま冷たい声で服部先輩に詰め寄った。
「……唯の人間でしかない貴方如きじゃ二人には勝てない、あまり自分の実力を過信しない事ね」
「テスラさんの言う通りです!! 兄は実戦なら誰にも負けません!!」
「司波さん……関根さん……魔法師は、不可能を可能にする存在です、冷静に、あるがまま論理的に物事を判断しなくてはならない、身贔屓に目を曇らせてはならないのです」
と、彼は言っているけど結構ブーメラン発言だと思うんだけど、僕の気の所為かな?
そう思ったのは達也君もなんだろう、反論しようとした深雪さんを手で制して副会長に模擬戦を持ちかけた。
「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」
「なに? ……思い上がるなよ補欠の分際でッ!!」
「フッ……」
「何がおかしい!!」
いや、今さっき自分の発言を思い出して下さいな、思っ切りブーメランですよ?
「別に、風紀委員になりたいって訳じゃないんですが、妹の目が曇っていない事を証明しなくてはなりません」
「……良いだろう、身の程を弁える事を教えてやるッ!!」
熱くなった副会長はそのまま演習室に向かって行った、僕も喧嘩吹っ掛けられてるんだけど、回ってくるかなぁ……。
テスラ先生が余裕で服部パイセン殺しに行った件について(震え声