#17 懇親会(恥は晒す物)
ホテルに着いた僕は何故か居た千葉さん達と軽い挨拶をしてから自分に与えられた部屋で横になりながら柄にも無く浮ついて居た。
何故なら前世じゃこんな平和なスポーツ的催し物に参加した覚えも無ければ殺戮アンド殺戮の人生しか歩んでいなかったからねぇ……主に邪悪なもう一人の僕のせいで。
ま、道中の自爆テロは多少気になるけれど、直接的な危害を加えられなきゃ別になんだっていいからねぇ、ぶっちゃけた話友人身内に手を出されなきゃ僕からは何もする気はないかな、達也君辺りが色々気にしてるから最悪な事態にはならないだろうし。
テスラと部屋が離れてしまった事が不安だけど(主にテスラ先生のやらかし案件的な意味で)深雪さんが隣だし問題は無いと思いたい、むしろ部屋割りなら僕の方に問題がある。
「なーんで達也君が同室なんですかねぇ……」
「俺も個室が良かったんだがな、誰かさんが一高の恥を晒さないようにするためだそうだ」
反対側のベッドに座りながら荷物の整理をしている達也からのあんまりな言葉に思わず涙が出そうになる。
別に彼と一緒が嫌だとかそう言う意味じゃないんだけどね? 完全に会場でもやらかすと思われてるあたり僕自身の評価が底辺を爆速してるんですね分かります(白目
…………
自分の低評価に悲しみを覚えたものの、部屋に居る意味があまり無いのでそのままテスラ達と合流しに行き、懇親会の会場に向かった。
会場の中は軽い立食パーティーが開かれていたらしく、他校の生徒も和気藹々としている、まぁでもドーナツが無いからテスラは全く料理に惹かれない見たいだけど。
ただ、流石にテスラと深雪さんと言う美少女二人は目立つようで男女問わず熱い視線が向けられた、深雪さんは気にしてない見たいだけど、根本的に人類嫌いなテスラは不快そうだ、勢い余ってA・ARMとかやらないでね?
とりあえず人混みから離れた場所で壁に背を預けながら、近くのウェイターからドリンクを貰ってテスラと並んで飲んでると達也君が千葉さんに絡まれてるのが見えた。
距離が遠くて会話までは聞き取れないが、口の動きから察するにコスプレ染みたメイド服が可愛いかどうかを聞かれてるらしい、うーん残念ながらあの重度のシスコンが他の女の子に反応示すとは思えないから聞くだけ無駄なんだよねぇ。
と、そんな事を考えて居たら奥の方から森崎君がこっちに向かって歩いてきた、向こうから来るなんて正直驚いた。
「や、森崎君、僕と親睦を深めに来たのかい?」
「そんな訳であるか!! 単にお前が司波から離れてるから僕が代わりに見張りに向かわされたんだよ!!」
「……一応、僕ってさ、風紀委員だよね? なんで風紀委員が風紀委員に見張られなきゃいけないのかな?」
友情のゆの字も感じられない言葉に思わず涙が出てきたや……案外僕って友達居ないんだね。
学校出発する時に投げかけられた声援も『試合以外は部屋から出るなよ!!』とか『一高の恥を晒すなよ!!』とかだったし、世の中血も涙も無い。
これもまた苦い青春の一ページかと適当な事を僕が思った瞬間お偉いさんの有難いお言葉が始まるらしく、照明が落とされる。
––––同時に会場全体に魔法がかけられた事を感じ、反射的にCADに手を掛けた上に会場全体を糸で索敵した。
スポットライトが当てられた壇上には若い女性が一人、お偉いさん––十師族の一人『九島烈』は90近い年齢のはずだからいくらなんでも彼女ではない、念の為思考を読み取って意図を読んだ僕は老人の遊びだと知り警戒を解く。
テスラも気が付いたには気が付いたが、危害を加えるような魔法じゃない事を見抜いて居たのか完全にノーリアクションだった。
残念ながら森崎君は気が付かなかったのか『何かのトラブルか?』と呑気にしてる、まぁ精神干渉魔法っぽいから仕方ないね。
CADから手を離し、壇上に視線を向けた瞬間九島さんと目が合った、意味深に笑っているところを見るに彼のお遊びには合格したらしい。
女性の背後に居た彼が何か耳打ちすると、女性は一礼して壇上から去って行った。
この後、今のお遊びに対応出来た人物が数名しか居なかった事を指摘され、心構えが大事だと言う文字通り有り難いお言葉が始まった。
会場は気が引き締まったようだけど、一般家庭出身の魔法師で且つその界隈には完全に疎い僕からしたらあまりその偉大さが感じられず、内心で『早く終わらないかな〜』なんて思いながら欠伸をした瞬間、顎を森崎君に殴られて思いっきり舌を噛む。
(いった!? 何するのさ!!)
まだ話が続いてるので声のトーンを落としながら森崎君へと抗議する、勿論彼が手を上げた瞬間にテスラが殺気を洩らさない様に彼女を撫でながら。
(お前の頭には蟹味噌でも詰まってるのか!? 老師のお言葉の最中に欠伸をするなどと!!)
彼の言葉から察するに僕が思ってる以上に偉い人なんだろうね、取り敢えず当たり障りの無い返答返して丸く収めとかないと目立ちそうだ。
(悪かったって森崎君、僕はほら一般家庭出身の歴史の無い魔法師だからその界隈には疎いんだよ、アレでしょ? 社長と新入社員くらいの差って考えればいいんでしょ?)
(アホかぁぁぁあ!! そんな認識で良く魔法師になろうと思ったな!? 世間に疎いってレベルじゃないぞ!!)
彼は根が真面目なんだろうね、僕の世間知らずに憤慨し、僕の襟を掴んで揺さぶり始めたが、正直な話薄暗がりの中で動く影と言う物は存外に目立つ。
うん、まぁ、なんだ、つまりはさ、森崎君や。
「あー、其処の二人? 話を続けても良いかね?」
僕ら二人、一高の恥をバッチリ晒しちゃった訳だ、九校戦始まる前からね? あ、会長が卒倒した、やったお説教が減った(現実逃避
九島先生は俊君の実力をある程度把握出来てる事と、お遊び見抜いた事で一応多目には見てくれました。
尚恥さらしは変わらない模様(白目