「ねぇ、君なんていう名前?」
俺は年端もいっていない少女に問いかけた。金髪に碧目。驚くほど“俺”に似ていた
俺は家族というものを知らなかった。気付いた時にはゴミ溜めでゴミを漁ってた。盗んで、殺して、生きるために何度も何度も繰り返した。死にたくなかった、生きたかった。俺を守ってくれる家族なんてものはいなかったが代わりに仲間がいた。盗みや殺しは一人でやるより大勢でやった方が効率かいい。
家族なんて概念は無かった。母親も父親も兄弟だって知らない。いなくたって生きていけた。おれの“親”はどうゆう人間なのだろうか。死んでいるのか、はたまた生きるために俺を見捨てたのか
親の顔や名前すら知らない俺に“家族”というものは存在しないと思っていた。流星街に捨てられれば皆ゼロの存在だから
だが血の繋がった人間がいることは確実だろう。もしそいつらが俺を見ても気付かない、気付いても他人のふりをする
ただ、それだけ。
目の前の少女はまさしく“俺”なのだ。あの時の、他人に、仲間にさえも心を開けなかった頃の俺自身。光のまったくない碧の瞳は生気というものがまったく無く、まるで死人だ。月明かりで反射する金髪には泥で所々汚れている。ボロボロのワンピースは元の色は白だったようだが、土汚れがとても目立っている。靴は履いておらず、白い足だって汚れてしまっている。身体の汚れを落とせば陶磁のような白い肌が現れるだろう
彼女はとても俺に似ていた。もしかすると、と考えがよぎる。DNA鑑定などで証明などする必要がない。それほど“確信”があった。そこまで考えると何故今まで彼女のことを知らなかったのか、と歯を食いしばった。彼女は一人だったのかもしれない。死んだ瞳をしている彼女に俺と違って仲間というものに恵まれなかったのではないのか?きっと、俺なら誰も信用できずにどこぞで死んでいただろう。流星街は一人で生きていくには過酷すぎる。
彼女は新月のようだ。そこにあるのに見えない光の無い月。月は太陽のおかげで美しく光り輝いている。彼女に“太陽”は無いのか。月はあんなにも美しいというのに、月は太陽が無ければ輝けない。ならば、俺は彼女にとっての太陽になりたい。彼女の瞳に光が宿ったならどれだけ美しいだろうか。
彼女が小さな口を開く
“シャルリア”
なら、リアと呼ぼう。俺はシャルと呼ばれているのだから
シャルナークとシャルリア
シャル と リア
nice to meet you,
my sister