Veronica   作:つな*

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ヴェロニカは思う。

無駄なのだと

ヴェロニカは考える。

本当の名とはなんだろうかと


Veronicaの憂鬱

「二人目の転校生を紹介する、イタリアに留学していた獄寺隼人君だ」

 

獄寺隼人は、不愛想な顔で指定された席へ移動する。

途中で沢田綱吉を睨みつけるのも忘れずに。

私は極力視線を合わせず、授業に取り組んでいた。

 

確かこの後、獄寺がダイナマイトで沢田綱吉と一悶着あって、仲間にしたんだったか…

リボーンは私のことを未だ沢田綱吉に教えた様子はない。

 

体育の後、午後の休み時間に入ると、遠方で爆音が聞こえた。

教室では生徒たちが音のした方へ視線を向ける。

だが私は面倒なことに巻き込まれたくないため、聞こえなかったフリをして昼食を食べていた。

その日は、獄寺が沢田綱吉に尻尾を振るようになったこと以外は何もなかった。

 

二日後、朝から教室では男女問わずざわざわしていた。

昨日、山本が腕を骨折したという噂が立っていた。

であれば、あれも今日中に起こるだろう…

休み時間、外のほうが騒がしくなってくる。

 

「おい!あれ山本じゃねぇか?」

「何考えてんだよあいつ!」

「ぇ?あれ大丈夫なの?」

 

どうやら、屋上から飛び降りようとしているらしい。

だが数分後、皆一様に安堵し席に着き始める。

どうやら自殺ごっこは終わったらしい。

 

数日経過…

 

私の記憶通りというか、原作通りといか…そのまま進んでいればイーピンやビアンキ、にはもう会っているだろうな…この前家庭科で調理実習あったし、屋上で謎の爆発あったし。

雲雀に笹川…ディーノが近いうちに現れるということか。

私は、今はただ傍観を通すのみ。

ハッキリ言ってこのお遊戯のようなごたごたには関わりたくない。

私から何もしなければ、あっちから来ることもないだろう…

 

 

 

「おいてめぇ…イタリアから留学してきたって聞いたが、まさか十代目のお命を狙ってんのかぁ?」

「や、やめなよ獄寺君!」

「ですが十代目っ…」

 

前言撤回、コイツ(獄寺隼人)がいた。

め、めんどくさっ…何もせずとも突っかかってくるから苦手なのに。

流石に未来では落ち着いているものの、犬の気質は色濃く残ってたわけで…

というか、ここ教室なんですけど?

え、マフィアのことこんな軽々しく言っちゃっていいの?

未来のヴァリアー達でさえ私に気づかれないように注意してたのに。

 

「何のこと?」

 

取り合えずとぼけておこう。

 

「しらばっくれんじゃねぇ!てめぇどこのファミリーの刺客だぁ?」

 

あ、アカンって。

これ何故にリボーンは見て見ぬふりをしているのだろうか…

つか沢田綱吉も、あわあわしてないで止めろ。

まだ獄寺が怖くてもお前一応立場上だろうに。

あーさっきから獄寺が私に突っかかってくるから、教室中の視線が集中しているじゃないですかやだー

これは逃げるに限りますな

 

ガタッ

 

「あ、おいてめぇ!待て!」

 

ヴェロニカが椅子から立ち上がり、教室の出口へ歩いていくと、獄寺隼人に手を掴まれた。

 

「待てっつってんだろ!」

Silenzia(黙れ)

 

おおっと危ない、イタリア語がポロッと出てきてしまった。

ヴァリアーの中で育つときつい言葉とかが身に付いちゃうんだよなー…

取り合えず、トイレに逃げれば流石にこいつも中までは入ってこないだろ…てか来たら変態だ。

 

獄寺隼人の手を振り解き、私はそのまま教室を出て行った。

 

あ~、やっぱトイレの中は落ち着きますな。

 

授業開始ギリギリに教室に戻った私は、そのまま授業を受けた。

何事もなく、そのまま終わったので即効で帰る支度をして教室を出る。

後ろで獄寺が何やら慌てていたが知るか、私は帰る。

何がなんでも私は帰る。

 

 

「ちゃおっす」

 

校門で、リボーンに捕まりました。グッバイ平穏な日々。

これは絶対直ぐに帰れないパターンですね、分かります。

 

「何だリボーン」

「これからダメツナの家に行く、お前も来い」

「何故だ」

「お前のことを獄寺達にも言わなきゃならねぇ、決定事項だぞ」

「これからは事前に知らせてくれ」

「善処するんだぞ」

 

つまりしないというわけですね、分かります。

仕方なく、ほんとに仕方なく…本当は嫌だけど、すっごい嫌だけど。

リボーンの後についていく。

 

沢田綱吉の家の前まで来ると、既に中から声が聞こえてくる。

山元に獄寺と沢田綱吉の声がする他、イーピンやランボの声もする始末。

気が遠くなってきた…

別に私は子供は嫌いではないが、相手はランボだ。

間違って10年バズーカが私にでも当たってみろ…どうなるか予想がつかない上に、私の身の上がバレる可能性がある。

これは素早く撤退するに限る。

 

私は腹をくくって、リボーンの開けた玄関の扉をくぐる。

そのまま二階へ上がり、リボーンが沢田綱吉の部屋のドアを勢いよく開けた。

 

「ちゃおっす、おいダメツナ、おめーにこいつを紹介するぞ」

「え⁉リボーン!お前またどこ行ってたん……ええ⁉転入生の仲田さん!」

「て、てめぇ!まさか十代目の家まで突き止めて来やがったのか!」

「お、仲田じゃん!俺山本武ってんだ、初めましてなのなー」

「ふぎゃ、また知らないやつが増えたんだもんねー、おまえだれー?」

 

既に帰りたい…

何だこのカオス……

切実に家に帰りたい。

 

「………」

「おい、おめーの本名も教えてやれ」

「ええええ⁉仲田夏美って偽名だったのーー⁉」

「あ"あ⁉偽名名乗るたぁますます怪しいぜ!十代目、俺がこいつをぶっ殺してやりますよ!」

「俺は別に仲田夏美でもいいと思うけどなー」

 

隣でリボーンが要らぬことを口走ってくれやがった。

こいついつか絶対、憤怒の炎喰らわしてやる。

 

「…………ヴェロニカ」

 

一言それだけ言って、私は部屋から出ようとするが、リボーンに止められる。

 

「帰る」

「まだダメだぞ」

「何故」

「今日はお前がどれだけ勉強が出来るかの確認をするんだぞ」

「何故、こいつらと一緒にやらなければならない…非効率だ」

「それは俺が決めることだ、いいから座れ、おい山本、おめーの隣少し空けてやってくれ」

「いいぞー」

 

これは逃げれそうにありません。

少しリボーンの横暴さに色々ストレスマッハですが、何とか抑えよう…今手を出しても負ける未来しか思い浮かばない。

というかリボーンに勝てるやつがいるのだろうか…

仕方なく、山本の隣に座ることにした。

獄寺じゃないだけマシか…

 

「ねぇ、リボーン…何で仲田…ヴェロニカさん連れてきたのさ」

「それはこいつも俺の生徒だからだぞ」

「えええ⁉じゃあヴェロニカさんもマフィアの…?」

「違うぞ、こいつは色々事情があって鍛えなきゃならねぇから俺が家庭教師をしてるんだぞ」

「な、なんだぁ…マフィアみたいに怖い人じゃないのか…よかったぁ」

「だがあいつはこの部屋にいるやつの中で俺の次に強ぇぞ」

 

うっそん、マジ?

私山本とやりあって五分五分くらいかなと思ってたけど……リボーンが言うならそうなのか?

 

「えええええ⁉うっそおおお!」

「く、リボーンさん!俺がこいつに負けるわけがありません!」

「バカか…相手の力量も量れねー奴がボスの右腕なんぞなれやしねーぞ」

「がっは!」

 

なんか心に重傷を負った獄寺隼人が地面に伏した。

にしても私は獄寺より一応強かったのか…まぁ、死ぬ気の炎が使える時点であながち間違ってはいない。

だがなにぶん戦闘経験がゼロである。

これに関しては不安しかない…まず相手に炎を放つことが出来るのだろうか……

ん…待て、獄寺よりも実力が上ということは…フゥ太ランキングに入るということで…

ランキングに入ればそれが六道骸の目にも止まるわけで…

止まれば私もちょっかい出されるわけで…Oh…

これはツライ…いやどのみちランキング上位だとは思ってたから六道骸に会いそうだったけど…

まだ幻術対策が出来てない…案はあるけどそれを成功させるとなると…確証がほしいし。

取り合えず考える時間がほしい、早く家に帰りたい。

目の前のうるさい彼らを無視しして、リボーンに声を掛ける。

 

「リボーン、早く帰りたい…何をすればいい」

「これを解いてもらうんだぞ」

「…」

 

中学二年生で習う範囲内か…

日本人としての記憶も、イタリアにいた時間も合わせれば私の敵じゃないぜ

日本語だから私には難しいとでも思ったか?残念だったな、日本人だった記憶のある私には効かない

隣の獄寺もスラスラと書いているが時々手が止まっている。

恐らく国語のところだろう…日本語ってかなり面倒な言い回しとかあるからな…

うん、書けたな

 

「おいリボーン」

「ふむ、合格だぞ…にしてもおめぇずっとイタリアに住んでたのか?」

「そうだが」

「そうか、えらく日本語が達者だと思ってな」

「日本には前々から興味があった…それより帰っていいだろうか」

「おう、おめーの学力は文句なしだぞ」

「ええー⁉ヴェロニカさんすごい!あんな量のテストもう終わったのー⁉」

「…」

「ええと……」

「沢田綱吉、学校ではその名で呼ぶな」

「え、あ…うん…分かった」

「てめぇ!十代目になんて口ききやがる!」

 

きゃんきゃんうるさい犬は放っておいて、私はバッグを肩にかけ沢田綱吉の部屋を出た。

下の階へ降りると、先ほど部屋にいたランボとイーピンがテーブルに座って遊んでいた。

ランボと視線が合ってしまい、急ぎ足で玄関まで行こうとするがランボが引っ付いてきた。

 

「なぁなぁお前ヴェロニカっていうんだろー?ランボさんと遊べー!」

「……」

 

私は相手するのが面倒だったので、バッグに入れていたガムを一枚出してランボに与える。

ランボも嬉しそうにそれを貰い口の中に入れる。

 

「やったねえー!お前ランボさんの子分に……に………」

 

おや?ランボの様子がおかしい。

私はガムの入っていたラベルを見ると、ミントと書かれている。

ん?もしやランボはミントが嫌いなのか?確かに子供には少し辛いと思うが…

 

「うぇっ……うっ……」

 

うっそだろおい、泣き出した。

取り合えず吐き出せと、テーブルに置いてあったティッシュを取りランボの口に寄せる。

が、遅かった。

 

「ふびぇぇぇぇえええええええ」

 

泣きわめきだして、ランボは頭からバズーカを取り出し、容赦なく四方八方に打ちまくる。

私は当たるまいと、避けること数秒…バズーカがランボ自身に当たった。

もくもくと煙があがり、人型の影が中から出てくる。

 

「おや?ここは…若きボンゴレの実家では…」

 

10年後のランボ来てるし……沢田達に知られる前に帰ってもらおう。

 

「ん?君は…知らない顔だ…若きボンゴレのご友人だろうか…」

「いや、私は…「そいつは俺の生徒だぞ」」

「リボーン!ここであったが百年目!しねぇえ!」

「うるせぇゾ」

 

大人ランボはリボーンを見ると、いきなり飛び掛かり雷を出そうとするもリボーンに蹴られて顔から床にぶつかる。

 

「それよりおめー、こいつのこと知らねーのか?」

「ぐぬぬ……くそリボーンめ…」

「答えやがれ」

「うぎゃああ」

 

リボーンが蹴っていると、大人ランボがボンッと煙に包まれちびランボに代わっていた。

 

「ッチ、聞き出せなかったか…」

「ふえぇ?なになに~?」

 

ランボはそのままリボーンに突っかかっていき、返り討ちにされて窓から飛んで行った。

さて、私も帰るか。

 

「おいヴェロニカ」

「…」

「おめー、強くなるのに護身以外の何か目的があんのか?」

「…別に」

 

それだけ言いうと、リボーンの返事を待たずに玄関の扉を閉めた。

帰路を歩きながら後ろからついてきてないか気配を探りながら歩くためとても神経を使った。

 

にしてもリボーンめ…私の事を探っているな…

確かにランボと今日既に顔を合わせていたにも関わらず、10年後では私の顔を知らないときた。

それは当たり前だ、今から10年後では私は生まれていない…

多分10年と半年あたりでやっと生まれたというくらいだ。

幸いにもランボがアホなお陰で、リボーンはただランボが覚えていないだけで済ませそうだが…

一度疑われたことに関して、リボーンは何通りの可能性を出しているはずだ。

未来から来たことがバレれば、自ずとザンザスの血縁ということがバレてしまう。

くそ……もう少しランボあたりを警戒すべきだった。

だがこれからランボとの接触を避けていれば、未来で忘れられている確率が高くなり、さきほどの10年後の大人ランボの言っていたことに真実味が出てくるだろう。

 

それよりも、未来から何も連絡がこないな…

私のいる時間軸の特定に手間取っているのだろうか。

ワクチンがない今、10年後まで居続けなければいけないが、その前に未来への帰り方すらわからないし。

帰ったら沢田綱吉カッ消す。

おっと、パパの口調が移ってしまった。

 

一体これからどうなるんだろう…

………不安だ。

 

 

 

 

獄寺side

 

俺はこんな弱っちい奴を10代目になんて認めねぇ、こいつをぶっ殺して俺が10代目になるんだ…

そんな俺の野望を尽くぶっ壊したこの方こそ、俺がお仕えするお方なのだと思った。

10代目の命は俺が何があってもお守り致す、そう誓った。

それからちょくちょく変な奴が10代目の周りに増えた。

アホ牛に野球バカ…姉貴まで出てくる始末。

そしてある日、10代目が口にした。

 

「そういえば、クラスにイタリアから留学してきた子が獄寺君以外にもう一人いるんだよねー…確か名前は…えーと…」

 

名前は覚えておられていなかったけれど、俺は名も知らぬ留学生を警戒した。

そしてその翌日、留学生としてイタリアから来た女…仲田夏美というやつに声をかけた。

 

「おいてめぇ…イタリアから留学しにきたって聞いたが、まさか十代目のお命を狙ってんのかぁ?」

「や、やめなよ獄寺君!」

「ですが十代目っ…」

 

大人しそうな雰囲気で内心何を考えているか分からないやつほど、危険なものはないと俺の今までの経験で分かっていた。

10代目は難色を示しておられたが、ここは白黒ハッキリしなければいけない。

 

「何のこと?」

 

目の前の女は、心底俺たちがうっとおしそうに、あしらう様にそう口にする。

そのいい様に俺は腹が立っていく。

 

「しらばっくれんじゃねぇ!てめぇどこのファミリーの刺客だぁ?」

 

俺が大声で女に対して声を荒げるが女の顔色は変わらずうっとおしそうにこちらを見つめる。

 

ガタッ

 

女はめんどくさくなったのか、椅子から立ち上がり教室を出ようとするが、俺はそいつを呼び止めるためまた声を荒げる。

が、女はそれを無視する。

 

「あ、おいてめぇ!待て!」

 

痺れを切らした俺は女の腕を掴む。

逃げようたってそうはいかねぇ!てめぇの化けの皮を剝がしてやる!

 

「待てっつってんだろ!」

Silenzia(黙れ)

 

一瞬だった。

たった一言で、俺の体は氷のように固まった。

たかが一言…だがその一言に濃厚な殺気が込められていた。

俺は自身の首が飛び体が跡形もなく消し飛ぶような光景がフラッシュバックし、体の芯から冷めていく感覚に陥った。

 

死ぬ、今、数mmでも動けば俺は死ぬ

 

そう思わずにはいられないほどの濃密な殺気に足が震えだしそうになる…いや実際震えていたのかもしれない。

後ろには10代目がおられる…守らなければ…守らなければ…

だが体は動かない、殺気が肌に突き刺さり激痛が走るような錯覚すら覚える。

 

女はふと目を細め、俺の掴んだ手を振りほどき、そのまま教室を出ていった。

女の視線、殺気に開放された俺はようやく呼吸することができた。

体の筋肉が弛緩するのが分かるほど、俺の体は緊張で固まっていたのだ。

助かったのだ…と唾を飲む。

そして分かった。

あいつはこちらの世界のやつだ。

それも飛び切りヤバいレベルの…

俺では力が及ばない、と思わされるほどの実力者だ。

そんな危険人物がいるのに、リボーンさんが気付かないわけがない…。

今度リボーンさんに聞かなければいけない。

 

後ろに控える10代目がいつまでも動かない俺を心配なさっていらっしゃるので、俺は何でもなかったように振る舞う。

未だ指が震えているけれど、10代目に気づかれないように拳を握る。

 

放課後、ホームルームが終わると同時にあの女はすぐに帰る準備をして教室を出て行った。

俺は女を尾行しようとしたが、まるで俺に尾行させまいと女は早歩きで帰っていった。

教室にいない女に俺は、ため息を吐くが、同時に安堵する。

あれと同じ空間に10代目がいるという事実がこれ以上なく恐ろしかった。

そのまま10代目、野球バカと10代目の家に着く。

そこで10代目のお話やらを聞いていた時、ガキ共が入ってきて部屋を荒らしまくる。

俺は怒鳴りながらガキ共を捕まえようと躍起になる。

そんなとき、下の階で玄関が開く音がした。

 

「ん?今下から音がしなかった?」

「リボーンさんが帰ってきたのかもしれませんね」

「げっ」

「ツナはほんと坊主が苦手なのなー」

 

野球バカが笑っていると、階段を上る音が聞こえる。

聞こえる?リボーンさんは軽すぎて足音が聞こえないのに…10代目のお母さまだろうか…

 

ガチャ

 

部屋の扉が開くと、予想通りリボーンが入ってきて…そのあとに昼間の女が入ってきた。

 

「ちゃおっす、おいダメツナ、おめーにこいつを紹介する」

「え⁉リボーン!お前またどこ行ってたん……ええ⁉転入生の仲田さん!」

 

あの女!10代目を狙ってきて…!

 

「て、てめぇ!まさか十代目の家まで突き止めて来やがったのか!」

「お、仲田じゃん!俺山本武ってんだ、初めましてなのなー」

「ふぎゃ、また知らないやつが増えたんだもんねー、おまえだれー?」

 

野球バカは呑気に自己紹介すらしている始末。

ここは俺が10代目をお守りしなければ!

 

「………」

「おい、おめーの本名も教えてやれ」

「ええええ⁉仲田夏美って偽名だったのーー⁉」

「あ"あ⁉偽名名乗るたぁますます怪しいぜ!十代目、俺がこいつをぶっ殺してやりますよ!」

「俺は別に仲田夏美でもいいと思うけどなー」

 

女はただ黙ってこちらを見ている。

いつ10代目が攻撃されても大丈夫なように俺は女挙動を警戒する。

心なしか少量の殺気さえ放っている。

女は口を開く。

 

「…………ヴェロニカ」

 

圧倒的な威圧感を放つその声に、俺は委縮しそうになるのを耐え10代目を守らんとする。

一言それだけ言って、女は部屋から出ようとするが、リボーンさんに止められる。

 

「帰る」

「まだダメだぞ」

「何故」

「今日はお前がどれだけ勉強が出来るかの確認をするんだぞ」

「何故、こいつらと一緒にやらなければならない…非効率だ」

「それは俺が決めることだ、いいから座れ、おい山本、おめーの隣少し空けてやってくれ」

「いいぞー」

 

女は先ほどの殺伐とした雰囲気を仕舞うと、野球バカの隣にしぶしぶといった風に座る。

女は10代目の目の前に座ったので、俺は身構える。

だが10代目は気にした風もなく、リボーンさんに聞く。

 

「ねぇ、リボーン…何で仲田…ヴェロニカさん連れてきたのさ」

「それはこいつも俺の生徒だからだぞ」

「えええ⁉じゃあヴェロニカさんもマフィアの…?」

「違うぞ、こいつは色々事情があって鍛えなきゃならねぇから俺が家庭教師をしてるんだぞ」

「な、なんだぁ…マフィアみたいに怖い人じゃないのか…よかったぁ」

 

リボーンさんの生徒であればあの殺気、風格…ありえねぇ話ではねぇ…

だが、マフィアじゃないだと?あれだけの殺気を放っていながら?

リボーンさんはそうは言っているが俺は信用ならねぇ

これからも女を監視する必要性がありそうだ。

俺の考え事はリボーンさんの次の一言で吹き飛ぶ。

 

「だがあいつはこの部屋にいるやつの中で俺の次に強ぇぞ」

 

今戦えば俺に勝ち目が無いことくらい分かっている。

分かっているがそれを肯定すれば10代目の前で無能だと言うようなものだ。

 

「えええええ⁉うっそおおお!」

「く、リボーンさん!俺がこいつに負けるわけがありません!」

「バカか…相手の力量も量れねー奴がボスの右腕なんぞなれやしねーぞ」

「がっは!」

 

くっそ、俺にはまだ10代目を守り抜くための力が足りない…

この女に勝つまで右腕として誇るわけにはいかない。

俺の考えを他所に女は心底うんざりしたような雰囲気でだるそうな声を出す。

 

「リボーン、早く帰りたい…何をすればいい」

「これを解いてもらうんだぞ」

「…」

 

リボーンさんは何枚かの用紙を出してきた。

全教科の学力テストのようなものだった。

女はそれを受け取ると、筆箱からシャーぺンを出し書き始める。

俺も、負けてられねぇ!こいつにだけは勝つ!

そう思い、テストを出来る限りの速さで解いていく。

数十分経つと、ラストの国語に入る。

一瞬女を見るとそいつもラストの国語に入っていた。

くそっ早ぇ!

俺は国語を解くが、今までイタリアで育ってたことに加え日本語はここに来る数週間で基本的に喋れる範囲で学んだものばかりだ。

漢字などは少ししかやっていないので、文章問題などで少しばかり止まることがあった。

まだ十数問残っているときに、女はシャーペンを置きテストをリボーンさんに渡す。

 

「おいリボーン」

「ふむ、合格だぞ…にしてもおめぇずっとイタリアに住んでたのか?」

「そうだが」

「そうか、えらく日本語が達者だと思ってな」

「日本には前々から興味があった…それより帰っていいだろうか」

「おう、おめーの学力は文句なしだぞ」

「ええー⁉ヴェロニカさんすごい!あんな量のテストもう終わったのー⁉」

「…」

「ええと……」

「沢田綱吉、学校ではその名で呼ぶな」

「え、あ…うん…分かった」

「てめぇ!十代目になんて口ききやがる!」

 

俺はすべてに置いてぼろっぼろに負かされたような気分だった。

くそっ、くそっ……こんなんじゃ俺は10代目をお守りすることができねぇ!

あの女!いつか絶対負かす!

 

俺がそいつをライバルとして見始めた時だった。

 

 

 

 

リボーンside

 

獄寺が仲田夏美…ヴェロニカについてクラスの奴らに聞いている様子を見ていた。

獄寺の奴め…勘ぐってやがるな。

だが獄寺程度じゃあいつには勝てない。

それをまた自覚するのも獄寺が成長する為に必要なことだゾ。

獄寺がヴェロニカに詰め寄っているところを傍観していた。

ヴェロニカの方は相手にするのが心底面倒なのか、席を立ち教室を出ようとする。

だが獄寺はそれが気に食わないのかヴェロニカの腕を掴み引き留める。

 

Silenzia(黙れ)

 

その時だった。

俺は無意識に懐にある拳銃に手を伸ばしていた。

 

驚愕した。

俺の本能を従わせるような、殺気を、まだ14歳の少女が出したことに。

強者だとは思っていた。

ダメツナ達にとって格上の存在だとは思っていた。

だが、これ程までとは誰が想像出来ようか…

リボーンはこめかみに伝う汗に気づかず、口角を上げる。

 

「九代目……とんでもない奴を俺に任せてくれるじゃねーか…」

 

 

そのあと、ヴェロニカをダメツナの家に呼び、あいつらと対面させようとした。

案の定獄寺が突っかかってきたが今の獄寺じゃヴェロニカの相手にもならないと思い窘めた。

ちくちくりと肌に刺さる僅かな殺気…いやこれは怒気だろうか…

時々それが俺に刺さるが、獄寺もそれに気づいているのかダメツナをいつでも庇えるような態勢で警戒している。

俺は、とりあえずヴェロニカの学力を知りたくて、テストをさせた。

日本語でのテストだったがヴェロニカは満点を取っていた。

国語も満点だったので俺は驚いていた。

次いで獄寺が終わらせていたが、その時にはヴェロニカは部屋から出ていた。

少し経つと、下から何かの爆発音が聞こえ、ランボあたりかと思いダメツナ達に気づかないように下の様子を見に行った。

そこには大人ランボとヴェロニカがいた。

 

「おや?ここは…若きボンゴレの実家では…」

 

10年後のランボはそういうと、ヴェロニカを見据えて首を傾げる。

 

「ん?君は…知らない顔だ…若きボンゴレのご友人だろうか…」

「いや、私は…「そいつは俺の生徒だぞ」」

「リボーン!ここであったが百年目!しねぇえ!」

「うるせぇぞ」

 

ヴェロニカとの会話に俺が入っていくと、ランボは俺に攻撃を仕掛けてきた。

俺はそれを軽く避けて、ランボを強く蹴り飛ばす。

ランボはうめき声を出すが、俺はそれより聞きたいことがありランボに問いただす。

 

「それよりおめー、こいつのこと知らねーのか?」

「ぐぬぬ……くそリボーンめ…」

「答えやがれ」

「うぎゃああ」

 

俺が蹴っていると、ランボがボンッと煙に包まれちびランボに代わっていた。

 

「ッチ、聞き出せなかったか…」

「ふえぇ?なになに~?」

 

何も役に立たなかったランボに俺はイラつき、蹴り飛ばすと窓を突き破り星の彼方まで飛んで行った。

仕方ないので、俺は直接本人に聞くことにした。

 

「おいヴェロニカ」

「…」

「おめー、強くなるのに護身以外の何か目的があんのか?」

「…別に」

 

ヴェロニカはそれだけ言うと、家を出て行った。

俺は、やはり答えなかったかと思い部屋に戻る。

そして、先ほどふと感じた違和感を思い返したが、何に違和感を覚えたのかまでは思い出せず、頭の隅に追いやった。

 

あいつは一体何を考えているんだ…

誰にも背中を見せず、ただ先を見据えている。

 

気付けヴェロニカ…

一人じゃ、人間ってのは進めねえんだぞ……

 

 

 

 

 

その頃ヴェロニカは…

 

 

なんか獄寺から敵を見る目で睨まれるし、リボーンからは疑いの眼差しで見られるし、胃に穴があきそう…

 

 

 

 

 




それぞれのヴェロニカへの印象

リボーン「予想以上の強者」
獄寺「越えなければならないライバル」
山本「転入生」
沢田「マフィアじゃないのに強い人、少し怖い」



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