自身の力を
ヴェロニカは思った。
私が助けたいのは父なのだと…
Veronicaの祖父と力
「えぇぇぇえええ⁉ヴェロニカちゃん、バズーカの故障で戻ってこない⁉」
「ええと、ごめんよ…何年前に行ったか分かれば僕も対処の仕方があるんだけど…」
「え、じゃ、じゃあヴェロニカちゃんは戻ってこれるの⁉」
「今からバズーカを修復しないとどうにも…」
「どどどどどうしよ…これ絶対ヴァリアーにバレるって!っていうかヴェロニカちゃん予防接種のワクチン持って行ってないよぉぉぉお」
「おい、それはどういうことだぁ」
「君は未来から来たと?」
「……うん」
「ふむ…理由を聞いてもいいかい?」
こんにちわ、ヴェロニカです。
私は今、九代目の前にテーブルを挟んで座っています。
バズーカの故障かなんかで過去に飛ばされてきたことに大変遺憾であります。
ワクチンも持っていないし、戻れる保証はない。
持ってきたのは、財布、携帯、洋服、パパの拳銃のみ。
ぶっちゃけ涙目です。
というか、飛んだ場所がボンゴレ本部だったので説明するまで逃げれる気がしないです。
その上相手はボンゴレ九代目…超直感あるから嘘つけないじゃないですかやだー
いやほんと、私からしたら一応祖父ではあるんですよねぇ…
私が6歳の頃に、パパに娘がいると耳にした九代目が私のもとに会いに来てたんですよね、ハイ。
その時のパパの形相は凄まじかった。
だが、孫ということもあってとても可愛がられていた自信があります。
そんな九代目が亡くなった報せを聞いたときは凄くショックだったなぁ…
と、まあ現実逃避はここままでにして、目の前の九代目に事情を話さねば…
ここがどの時間軸なのか定かでないので、それも知りたいですな。
小一時間、今までの経緯を話して、一息着いたヴェロニカです。
目の前の九代目は何やら考え事をしています。
「そうか、君はザンザスの―――…」
「えーと……うん…」
「ザンザスは父親らしかったかい?」
「全く」
予想通りだったのか、九代目が苦笑いしている。
おっと、少しだけ父を持ちあげてやろうか。
「でも…最期は、私の心配をしてくれた……」
「ほう、ザンザスが…」
「私の頭を撫でてくれた……それが、とっても嬉しかった」
九代目を見ると、とても安心そうに私を眺めている。
「君はこの時代に帰る場所も住む場所もないじゃろう?」
「え、と…うん」
「ならば少し日本に行ってそこで住んでみないか?」
「日本?何で?」
「ここだとザンザスと顔を合わせてしまうリスクがあるからね……少しでもボンゴレの手の届く範囲でリスクの低い場所は日本くらいでね…」
「パパ……は、ここにいるの?」
「ああ…」
九代目の表情が硬い。
あ、これ冷凍されてる時期かな?
「えっと……今パパに会ってもメリットはないし、日本に連れてってもらっても…いい?」
「ああ、勿論だ。君は私の孫だからね…何か不安なことがあれば言いなさい、わしが手伝おう」
「ありがとう、九代目」
「お爺ちゃんと呼んでくれてもいいんじゃよ?」
「周りに勘違いされちゃったらどうするの…」
「まあ怪しまれては元も子もないな…それと少し君に聞きたいことがあるんだがいいかい?」
「ん?えっと…なに?」
「君は、我々に関してどこまで教えてもらったんだい?」
我々、マフィアうんぬんか…ふむ、これは正直に答えねば自爆するやつだな。
「えっと…パパがヴァリアーのボスで…死ぬ気の炎が出て……えっと……憤怒の炎使える、ことくらい」
色々端折ったけど、嘘はついてない。
「そうか……そして君に、炎が出たんじゃな」
超直感ってほんと厄介だな。
「うん…パパは最期まで私をマフィアとは関わらせたくなさそうだった……でも私が決めたことだから」
そういうと私は右手に憤怒の炎を纏わせた。
九代目はそれを見て悲しそうに私を見ていた。
「君の決めた道だ…わしは止めはしない……だが、祖父という立場で見ると…悲しいねえ」
「ごめんねお爺ちゃん」
炎を仕舞うと、九代目は口を開く。
「ヴェロニカ、君がザンザスに会うということはとても危険じゃ…君の存在が消えてしまう危険性を孕んでいる」
「覚悟の上よ」
「そして、今のザンザスは君のことを知らない…だから平気で君を傷つけてしまうかもしれない」
「そうね、でも私は簡単にやられはしないわよ」
「それでもじゃ、君がちゃんと自分の命を自分で守れるくらいに強くなってもらわなきゃならない」
「うん」
「だから、近々日本に家庭教師を送る予定だったんじゃ…君も彼に教わってきなさい」
「……分かった」
リボーンが家庭教師に付きました、やったね☆
じゃねえ、死ぬ。命いくつあっても足りない、これ絶対死ぬ。
死亡フラグとまではいかないけれど、これすんごい面倒なフラグを立てた気がする。
確かに私は、自身の力がどこまで通用するかを知らない。
ならやっぱり、経験も積んでおくべきだろう…
だがしかし、リボーンの指導はお断りしたい、切実に。
マーモンかラルじゃダメなのだろうか…
でもこれ断れないパターンですよね、知ってます。
「でもどうして日本に家庭教師を?」
「沢田綱吉君を知っているかい?」
「うん」
「彼に、ボスの器になれるよう家庭教師をつけようと思っていたんじゃ」
「彼は確か大空…私も大空だ。彼の守護者にはなれないよ」
「問題ない、彼には彼なりに仲間を探し出すだろう…君は自分の目的を優先しなさい」
「優先したいが、とりあえず待機状態なんだ……未来から連絡が来るか、パパが病気になる時期まで待つか…」
「そうだね、でも焦ってはいけないよ」
「分かっている」
九代目はそういうと立ち上がり、私の頬にキスをしたので、私もキスを彼の頬に返す。
「私にも愛嬌のある子供が欲しくてね」
「未来での貴方はいつもお菓子を持ってきてくれてたから大好きだったよ」
これは本当である。
日本好きの彼は毎回くる度、私に日本のお菓子や食べ物を教えてくれていた。
元々日本人だった記憶があった為、みそ汁のもとを持ってきてくれた時は抱きしめてしまった。
「あ、九代目」
「ん?どうしたんだい?」
「少し広い場所ない?あの…少し自分の力を確認したくて…過去に来ちゃったので変化がないか気になって」
「そうだね、じゃあ部下に案内させよう…コヨーテ」
「はい、こちらに」
「ヴェロニカを訓練場へ連れて行ってあげなさい」
「分かりました」
「ではな、ヴェロニカ…また日本への準備が整い次第君を連れて行こう」
「うん、ありがとう九代目」
九代目は、部下を呼ぶとそのまま部屋を出て行った。
私は、コヨーテさんに連れられ訓練所まで案内してもらった。
「九代目から、今日寝泊りする部屋の案内まで任されている…夕方になったら来る」
「え、と…はい。お願いします」
コヨーテさん、見た目が獄寺隼人みたいで苦手だ。
コヨーテさんが外に出ると、私は扉に鍵を閉め、訓練所の中に人がいないのを確認する。
「よし」
表立って派手に使うのは初めてである。
いつも手に纏うように少量しか出せなかったので、思いっきり使ったことがなかった。
その上、未来から拝借してきたザンザスの拳銃を扱ってみたかった。
まず手のひらに憤怒の炎を圧縮する。
それを薄く、とても薄く伸ばして手のひら全体を覆う。
とりあえず、殴ってみるか…
私は思い切り地面に殴りかかった。
ドゴン
「……ん?」
私の目の前には数mに渡るクレーターが出来ていた。
「おや…?」
自身の手を見る限り、無傷である。
私は、纏っている炎の量を圧縮せずにただ纏ってみる。
そして思い切り地面を殴った。
ドッ
「……痺れる…」
先ほどより小さい、半径50cmほどの浅いクレーターが出来ていた。
「えーと…圧縮して纏うと威力が桁違いなのか…にして殺人レベルじゃんコレ……」
え、パパこんなん日頃からスクアーロとかレヴィにブッパしてたの?
え、あいつらよくこれで死なないね。
ヴェロニカはザンザスの拳銃を取り出すと、拳銃に憤怒の炎を溜めて発射した。
ドガアア
発射した瞬間、ヴェロニカの体に風圧が一気に押しかかった。
そして目を開けると、壁に最初に地面を殴ったとき出来たクレーターの倍ほどの大きいクレーターが出来ていた。
「……ハハ……えー…これは…ひどい…」
あまりの惨状に頬が引き攣る。
「でもこれ原作じゃこんな威力なかった気がする……」
十数年前の記憶をなんとか思い出そうとするが、こんなに威力のあるものではなかったような気がする。
そのあと、小一時間ザンザスの拳銃を試していて分かったことがあった。
この拳銃は、手から出る炎を圧縮して加速させながら飛ばす武器であること。
そして圧縮具合で威力が異なるということ。
何も圧縮せずに、ただ中に溜めてみたところ、原作のザンザスの放っていた威力であった。
なるほど、圧縮コントロールしないことで次撃つまでの時間を短縮していたのか。
そして、圧縮せずに通常より炎を多めに溜めると少し圧縮されて広範囲で攻撃が撃たれた。
次に、圧縮をしたまま炎を溜めると、銃の性能で圧縮された炎が更に圧縮され威力が数倍まで跳ね上がった。
最初に銃を使ったように、いくつか大きなクレーターが出来たので修理する者に後で謝っておこうと思った。
結論、圧縮は危険すぎるのでやめた。
ぶっちゃけ普通に撃つだけでも危険なので、本当に命の危機に陥った時以外では使うまいと心に決めた。
ヴェロニカは知らない。
4歳の頃憤怒の炎が発現し、14歳まで地道にただコントロールの練習だけしていた彼女は、イタリア全マフィアの誰よりも炎のコントロールが上手いということを。
そして、少量の炎とはいえ、毎日いつも手に纏っていて、いわゆる垂れ流し状態で何年も過ごしていたことで炎の保有量が大幅に増えていることを。
「……リボーンが行くってことは…もうすぐで原作が始まる…」
このおぼろげな記憶でどこまでやれるのかは分からない。
別に作中で死んでしまったキャラを生き返らそうとは思っていない。
私には、ザンザスを助けることでいっぱいいっぱいだ。
私は原作キャラを助けたくてここにいるわけじゃない…
父親を助けたくてここにいるのだ。
ヴェロニカ
今も、父の声を思い出す。
九代目side
未来からきたわしの孫娘、ヴェロニカはとてもザンザスに似ていた。
最初に会った時、わしは直感した。
ザンザスの血縁だ、と。
最初はザンザスの年齢を考えると兄妹だと思っていた。
だが、この子の話を聞いてこの子が未来のザンザスの娘であることに納得した。
そして、ザンザスが亡くなってしまった未来を聞いてしまった。
ヴェロニカは淡々と無表情に父親であるザンザスの死を語っていった。
親子間の仲が悪かったのか、それとも父の死で変わってしまったのか、わしには分からなかった。
ザンザスは父親らしかったかと問うと、全然と言われて苦笑してしまった。
ザンザスは娘の愛し方を知らない、そしてわしはそれを教えなかった。
この子はさぞ寂しかっただろうに…わしの罪でもあるのだろうな…
だが、この子は自身の父としてザンザスを好いていた。
そして、ザンザスの最期にわしも驚いていた。
そこでわしはふと気づく、ザンザスの頭を撫でたことがあっただろうか…と。
目の前の子は、ただそれだけで、過去へ来て自身の父を救おうとやってきた。
ああ、わしよりザンザス…お前の方が父親に向いているようだ。
ヴェロニカに日本へ行くことを促進すると、ザンザスがここにいるのかと聞かれた。
ああ、いるとも…冷たい…氷の中で……
わしは無意識に拳を握っていた。
それに気づいたのかヴェロニカは話を戻すと、日本へ行くことに賛成した。
わしは気がかりであった、ヴェロニカの我々マフィアに対する知識がどこまであるかを聞いた。
深くもなければ、浅くもない…マフィアの業を抜けられないところまで来ていた。
わが孫娘を思うと、これほど心苦しいことはないだろう…
ザンザスもこの子をマフィアから遠ざけようとしたのだなと思うと、今氷の中で眠っているザンザスが脳裏に浮かぶ。
直ぐに、考えを戻す。
直感で、この子は炎を受け継いでいると思った。
案の定、この子の手から憤怒の炎が燃え上がった。
ああ、呪いというものは恐ろしいものだ…まだ小さな子供に重たい覚悟を背負わせるなどと。
せめて、この子が未来に無事帰れるように、わしが出来ることは鍛えることしか出来ないのだと悟る。
日本に住むついでに、ここ最近リボーンに沢田綱吉を任せてあるので、この子も一緒に鍛えさせようと考えた。
それを伝えた時、ヴェロニカの表情は一層真剣みを帯びる。
覚悟をした目だった。
竦みそうな足を必死に押さえつけ、足を踏ん張って前を見据えるような…必死の覚悟をした目だった。
ああ、孫の覚悟を見守るのも、わしの務めなのか…なんと心苦しいことじゃ
話も終わり、わしは立ち上がるとヴェロニカも立ち上がる。
挨拶代わりに頬にキスをすれば、し返してくれたので、とても愛しく思えた。
力に変化がないか、確認したいというので訓練場までコヨーテに送らせ、離れていく孫の背中を見えなくなるまで見つめていた。
ああ、あの子がザンザスを変えたのか、変えてくれたのか…
未だ氷の中で眠る、我が子を思う。
あの子がいるということは、ザンザスの封印はいつか解かれてしまうことを意味する。
だが、わしはそれを誰にも言わなかった。
それもまた運命であり、あの子が生まれてくる大切な事柄なのだろう
あの子は苦しい道のりを歩むのだろうな…
どうかヴェロニカが無事であるようわしは祈ろう
その頃ヴェロニカは
「あー…チーズ蒸しパンになりたい……」
九代目はヴェロニカのことより、自分の心配をした方がいいと思うんだ。
これから祖父が瀕死になるが、敢えて静観する気満々のヴェロニカ。
この人でなしぃぃ!
いや、確かにお爺ちゃんは好きよ?お菓子くれるし、でもこれはこれ、それはそれ。はい終わり。
次回、原作スタートです。