Veronica   作:つな*

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アルテウムさんからのリクエストです。





Veronicaの好きな人

ヴェロニカ24歳、女性として輝く時期である。

何事なく過ぎていく日々で、ソファに座っていたザンザスにヴェロニカが声を掛けた。

ほんの気まぐれだった。

 

「ねぇパパ」

「あ"?」

「あたしね、好きな人が出来たの」

「は?」

「とってもカッコいい人でね…ライアンっていう―――」

 

パリンッ

 

「え」

 

ヴェロニカの目の前にはザンザスが先ほど持っていたワイングラスが無残に砕け散っていた。

 

「くだらねぇことを言う暇があんなら仕事しやがれ、クソガキ」

「もう、少しくらい聞いてくれたっていいじゃない…はぁ、任務行ってくる」

 

ヴェロニカは興冷めしたように、部屋を出て行った。

任務へ行く途中、廊下でスクアーロに会って任務に行くことを告げると快活に送り出された。

そしてヴェロニカは任務に向かった。

 

この後のことを、のちにライアンの事件と呼ばれることになる。

 

スクアーロがザンザスの執務室に書類を届けに無遠慮に入ってきた。

 

「う"お"ぃ!ボスさんよお"報告書を………」

 

スクアーロは次の言葉を発することはなかった。

いや出来なかった。

部屋を入って直ぐに襲ってくる重圧に体が強張る。

すっかり委縮したスクアーロはザンザスに小さく声をかける。

 

「ぅ"ぉぃ……ボス?……報告書…」

「おいカス」

「う"お"?なんだあ"?」

「消えろ」

 

スクアーロの意識はここで途切れていた。

 

ザンザスの部屋の前に、血溜まりの上でスクアーロが倒れているところを、ルッスーリアが見つけるのはそれから1時間後だった。

 

「ちょちょちょ、なにあれ⁉なにあれ⁉」

「あ、あたしだって知らないわよん‼」

「ボ、ボボボボスがご乱心ををををっ」

「いやお前がまず落ち着けよ!」

「まず君たちみんな落ち着いたらどうだい?」

 

マーモンの声で、ルッスーリア、レヴィ、ベルがマーモンを見る。

そしてマーモンを捕まえ、部屋から出てザンザスの部屋のある廊下に放り込んだ。

そして数秒後

全力疾走のマーモンがベルのフードに隠れる。

 

「なななななな何だいあれははは⁉」

「「「いや俺たちが知りてぇよ」」」

「ぅ……ぉ?」

 

額を数針縫ったスクアーロがようやく目を覚ます。

 

「あ!スクちゃん!あんた何かボスに言ったの⁉」

「あ"?……ってぇ…」

「なんかすごくボスの周りに黒い何かが…てかあれなに⁉何なの⁉」

「え?あ!あんのクソボス!いきなりっ……ていうか何であんなに怒ってんだあ"?」

「お前何かしたんじゃねぇの⁉ボスがやばくなってんぞ⁉」

「俺ぁ何もしてねぇぞお"!報告書出そうとしたらぶっ飛ばされただけだぁ"」

「はぁ⁉じゃあボス何でああなってんだよ!」

「あああ、あたしあの廊下歩けないんだけど⁉」

「ぼぼぼぼぼくも死にたくないよ!」

 

幹部が恐れるほど、現在ザンザスの執務室のある廊下は言い知れぬ重圧がかかっていた。

近づけば殺される。

本能的に死を直感してしまうほどの重圧に他の隊員は廊下に入った瞬間意識が刈り取られた。

既に3時間が経過したが、その重圧が止むことはなく、被害者が続出していった。

 

「ちょっと、これ本格的にやばいでしょ」

「まず何でああなったんだい」

「ボスがあそこまでキレるってクーデター以来だぞぉ"⁉」

「プリンチペッサしかボスを止められる人いないのに、そのプリンチペッサは任務でいないじゃなぁい!」

「とととと取り合えず電話かけようぜ」

「そそそ、そうだな!」

 

ルッスーリアが携帯を持ち出し、ヴェロニカに電話を掛けるが一向に繋がらない。

 

「くっそ、どうなってんだよ」

 

皆が一様に死の淵に立たされているような錯覚に落とされていた。

ヴェロニカが帰ってくるまでの間、あれがずっと続くと思うと死んだような気分である。

時間が過ぎれば過ぎるほど重圧は広範囲に広がっていった。

その間何度か、ヴェロニカに電話をかけるが何故か繋がらず、皆涙目であった。

ようやくヴェロニカに電話が繋がったのは、それから5時間後であった。

 

 

ヴェロニカside

 

「んー、ターゲット来ないなぁ…」

 

私は今イタリアの最北端の町にいた。

ターゲットはこの町に隠れている男性だった。

この男、他のマフィアとのパイプの役割をしているらしく、今回そいつから情報が漏洩したとのこと。

ヴェロニカはそいつが教会の中で情報の取引が終わり、出てくるところを待っていた。

 

「あ、出てきた」

 

ヴェロニカはその男が出てきて、宿への帰り道人気のない場所を歩いているところ、後ろから近づいていく。

そしてヴェロニカは男を通り過ぎて、路地裏を歩いていると、遠くの方から悲鳴と数分後にサイレンの音が聞こえた。

ヴェロニカはそのまま道を進んだところで崖があり、そこを登り切ると匣兵器に炎を注入した。

 

「さて、検問が張られる前に急ごうかレッサ」

 

レッサは咆哮と共に、炎を纏いその場を駆け出す。

近くの町に着くとレッサを仕舞い、ヴェロニカは書店に入った。

 

「あった、もう新刊出てる……」

 

そのまま本を手にすると、レジに向かい列に並んでいた。

待っている途中で携帯を確認すると、すごい数の着信履歴に目を丸くする。

 

「ふぁ⁉何この件数…」

 

一番多かったルッスーリアに電話を掛けると、ものの数秒で繋がった。

と、同時に

 

『プリンチペッサぁぁぁぁあああ!今すぐ帰ってきてちょうだぁぁぁあいい!』

「は?」

『ボスが、何かやばいのよぉぉお!』

「え?」

『はやくきてちょうだあああい!』

『おい!ちょ、黙れ!ボスの部屋まで聞こえたらどうすんだよ!』

『だってぇえ!プリンチペッサとやっと繋がったのよ⁉』

「待って、何があったの」

『プリンチペッサぁ!早く戻ってきやがれぇ"ぇ"ぇ"えええ!』

 

ブツ…ツーツーツー

 

「ええ?」

 

スクアーロの声を最後に通話は切れてしまった。

ヴェロニカは困惑しながらも、レジを済ませると山に登りレッサを出して本部へ向かった。

 

「ごめんレッサもう少しスピード出して」

 

ヴェロニカは大量の炎をレッサに注ぎ込むと、レッサのスピードが上がる。

獣の咆哮を聞きながらヴェロニカは山の上から下を見下ろす。

そこには電灯がぽつぽつ光っている夜の街並みがあった。

 

「キレイだなぁ…」

 

その頃、本部ではスクアーロがザンザスの八つ当たりで窓から数百m飛ばされていた。

数時間後、任務からおよそ二日後にヴェロニカは本部に到着した。

 

「ただいま…ってなんだこれ」

 

ヴェロニカが玄関から入ると、まずそこには死屍累々と化していた。

 

襲撃かな?でもそれにしたってボンゴレが動いてないのがおかしいけど…

 

更に奥に行くと、レヴィとルッスーリアが倒れておりヴェロニカは近寄る。

吐血しているルッスーリアの体を揺らすと、僅かに目が開かれる。

 

「あ、生きてた」

「殺さない…でよん……」

「ただいま」

「おかえり…なさい…」

「で、何この状況」

「ボスが………機嫌…が…クーデターの時並みに…悪くって……」

「え」

 

え、なにその世紀末。

 

「え、何でそれで私呼んだの?」

「あ、あなたなら……ボスを…止められ……」

 

ルッスーリアは言い切ることなく再び意識を失う。

ヴェロニカはそのままルッスーリアを放置し、廊下を歩く。

 

え?何でパパ機嫌悪いの?

クーデターの時並みって相当じゃね?

ヴェロニカは首を傾げる。

つーかそんなパパ止められるわけないじゃん、うん。

無理無理、私が死ぬ。

でも一応任務完了の報告だけはしとかなきゃなぁ…あー胃が痛い。

ヴェロニカは内心死地に赴く戦士のような覚悟をして、ザンザスの執務室の扉を開ける。

 

「パパいる?」

「あ"?」

 

うっほほーい、めっちゃ怒っとる。

ここ数年ヴェロニカはザンザスと親子のように接したつもりだが、ここまで怒気を隠さないザンザスを見るのは久々だった。

だがヴェロニカはここ数年でヴァリアーの任務や親子喧嘩を経験して果てしなく肝が据わりまくっていたのだ。

まだパパと喧嘩した時の方が怖かった。

あれはガチで命の危機を感じ取った。

ん?あれ?じゃあクーデターの時より私との喧嘩の方がパパ怒らせたのかな?

まぁそれよりも、この目の前の非常に不機嫌なパパをどうしようか。

何か私の立っている足の横に、スクアーロが倒れてるような気がするけど、幻覚かな?

ああ、ベルまで八つ当たりされたのか…

壁に盛大に血が飛び散ってる…

 

「任務終わったよ」

「報告書出せ」

「後で出すけどさ…任務帰りに面白い本買ったの」

 

ヴェロニカは取り合えずザンザスの怒気を散らそうと、任務帰りの町で買った本を出す。

 

「これ…ライアンの一生っていう本……私その主人公が好きなの」

「は?」

「ん?」

 

何かパパが素っ頓狂な声をあげたが、何故だ。

 

「あ、朝好きな人いるって言ったじゃない…この主人公なんだけど」

 

パリン

 

あるぇ?パパがワイングラス割ったんだけど何で?

でも怒ってないっぽい?

あ、めっちゃ呆れてる時の目だこれは。

どこに呆れる要素あったんだ、任務帰りに寄り道したからかな?

 

「このライアンって主人公ね、とってもパパに似てて」

 

横暴で酒豪で外道で…何でこんな奴が生きてるんだろうって思うくらい非情な男が、一匹の犬を飼って性格が変わるお話。

まさにパパのような男だったね、うん。

 

「パパも暇な時見てみて」

 

でも読んだら読んだで怒りそうな気がしないでもない…

まぁ八つ当たりは全部スクアーロが請け負ってくれるしいいか。

ああ、私も大分外道になってきてるよ…

流石パパの娘だね。

 

「まぁパパの方が好きだけどね、疲れたから私寝るね…明日中には報告書出すよ」

 

それだけ言ってヴェロニカは執務室を出て行った。

その後、全治一週間の幹部と数名以外は病院に搬送され、ヴェロニカは幹部に事情聴取されることになる。

気に入った本を渡したら機嫌治った、とだけ言ったが全く信用されず、事細かに会話内容教えると何故か皆顔を覆う。

 

「お前のせいかあ"…プリンチペッサぁ"ぁ"ぁあああああ」

 

スクアーロの怒鳴り声が屋敷に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【予告】

 

 

 

 

 

 

ヴァリアーボス就任し、およそ一年が経った頃――

 

「ボス、報告書です」

 

 

空を見上げるヴェロニカ――

 

 

「パパー」

「あ?」

「顔見に来たよ」

 

 

父との関係は良好だった―――

 

 

「入江」

「あ、ヴェロニカちゃん」

「この前の論文を見た」

「え、あれをかい?それは嬉しいなぁ」

 

 

だが彼女の波乱はこれからだった―――

 

「勘弁してよ…」

 

 

いやぁぁぁぁあああああああああっ

 

 

ヴェロニカの悲鳴は誰にも聞こえることなく――――

 

 

「ザンザス様」

 

 

ただ無慈悲に―――

 

 

「ボンゴレの…闇……」

 

 

ただ時は過ぎていく―――

 

 

「おいカス鮫」

「なんだあ"」

 

 

私はここで生きなきゃ――――

 

 

「カッ消すぞ」

 

 

 

 

私は 私は 私は―――――

 

 

 

 

パパ助けて……

 

 

 

 

ヴェロニカは何を思い、導くのか。

 

 

    ⅩVeronicaⅩⅡ

 

 

 

 

 

 

「「どうしてこうなった」」

 




ⅩVeronicaⅩⅡ 6月中旬に投稿予定。

友達のともき君にどうしても続きを頼まれたので書こうと思います。
本当はここで完結させる予定だったのに………。
※6月に予定しておりますが、延長する可能性もありますのでご了承ください。
※リクエストを感想欄に書かないでください。
活動報告の返信、又はメッセージでお願いします。


ライアンの事件:イタリア全土のライアンという名を持つ人物が暗殺対象にされかけた事件である。


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