Veronica   作:つな*

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生んでくれてありがとう。



      それは涙だった。


Veronicaの真実と未来と

現在私、ヴェロニカは17歳です。

そして3日後に18歳の誕生日を迎えます。

18歳になったらヴァリアーに入れることになっていて、一応ヴァリアーの次期ボス候補になっているんだよね。

まぁ自分でパパに志願したんですがね。

力不足ではと下の者達が半信半疑だったが、スクアーロと模擬戦をして勝利を収めたので誰も何も言わなくなった。

剣の師匠がスクアーロで銃の師匠はパパだからね、そうそう負けないと思いたい。

今私は何をしているかだって?

部屋の掃除です。

要らないものを全部捨てようと思い、タンスや本棚の中身を全部出して一つずつ捨てていってる。

 

「ん……?」

 

ヴェロニカが机の一番下の引き出しを開けると、奥に小奇麗な箱があった。

見覚えが無かったので、自身の幼い頃のものだろうと思い、箱を開ける。

 

「……ネックレス?」

 

良く見ると、ネックレスにはリングが通されていて、そこにはⅤと彫られていた。

……どっかで見たことあるような?

ヴェロニカは数分考えるも、思い出せずそのネックレスを箱に戻す。

 

「プリンチペッサ、ルッスーリアが呼んでんぞ」

「分かった…あともう私大人よ…その呼び方やめて」

「言いじゃん別に、シシッ」

 

ベルがヴェロニカを呼びに来たので、一旦物を置き立ち上がる。

 

「あ」

「ん?」

「これ見覚えある?」

「なにこれ」

「引き出しの奥にあったんだけど…」

「さー?オカマなら何か知ってんじゃね?お前の世話係だったし」

「そうね…」

 

ヴェロニカはルッスーリアの部屋へ向かう。

扉をノックして中に入ると、ルッスーリアが中でドレスを数着持っていた。

 

「あら、プリンチペッサ!三日後のあなたの誕生日パーティ何着ていこうかしら?」

「どれでもいいけれど、その呼び方やめてったら…」

「3日後まではまだ子供よん、ささ着比べましょ!」

「めんどくさ…あ、ルッスーリア…私の部屋の机の引き出しの一番下にあった綺麗な小さい箱にネックレスあったんだけど、あれ何か知ってる?」

「ネックレス?」

「リングが付いてて、Vって彫られてたんだけど、私は買った覚えないし…」

「ああ!それね、それはあなたが赤ん坊の頃にヴァリアーの玄関に置かれてたって話はしたでしょ?」

「ええ」

「その時に、一緒に籠の中に入ってたのよ~、なんかのブランドものだったハズよ」

「ああ、覚えてないわけだ…」

「あなたの母親があなたに置いていったものだから、一応箱に入れて引き出しの方に入れてたのよ~」

「そう……Vってそういうことか…」

「気に入ったの?」

「まぁ、綺麗なネックレスだったから……」

「あ、ほら腕広げなさ~い」

 

母親か……

今まであんまり意識してなかったなぁ…

ここは男しかいないから、母親が凄く欲しいときが子供の頃あったような?

昔、私が初潮を迎えた時なんてルッスーリアが不在で、スクアーロなんて医者呼びそうになってたし。

あれは本当に恥ずかしかった。

最終的に任務帰りのルッスーリアにナプキンを買って来てもらったけど、あんな思いは二度としたくない。

あれ以来、私専用というか、女性専用トイレを設置したりと女一人だと何かと面倒だったな。

今じゃあまり気にしたことなんてなかったけど、母親かぁ…

私の母親ってどんな人だろう。

パパが特定の女性と付き合うなんて有り得ないから、どこかの娼婦かなんかだったんだろうな。

んで金銭的にきつくなってパパの元に置いていったのかな……捨てないだけマシな母親だったんだろうな。

高価なネックレスを赤子の私に授けるぐらいだし。

別に自分の出生に関して不幸だなんて思ったことはないけど、母親は少し気になるかなぁ。

そういえば4年前過去に行ったとき、優しそうな女性に出会ったけど、名前何だったっけ。

宿無くて困ってた私に寝床貸してくれたりして、人の好さそうな女性だったけれど…今も元気にしてるかな?

お腹の子もそろそろ産まれそうだったし、シングルマザーなんてすごく大変そうだ。

でも私の記憶って彼女から消えてるのか。

少し寂しいな…私の母親があんな人だったら良かったけど。

 

「プリンチペッサはやっぱり赤と黒が似合うわねぇ」

「そうかしら、気にしたことなかったわ」

「ボスも赤と黒が似合うのよぉ、あなた達親子は目の色が赤いからそれに色を合わせてるの」

「パパの服って殆ど黒と白でしょ」

「たまに赤色のシャツを着てるボスは一段とカッコいいわよん!」

「そう」

「あ、ほらこのドレスとっても似合うわ!これにしましょ」

「じゃあこれで」

「もういいわよ、丈合わせるのはあたしがやっといてあげるわ!」

「ありがとうルッスーリア…」

 

ヴェロニカは着替えると、部屋に戻る。

先ほどの箱が視界に入り、もう一度箱を開く。

 

何だろう、何か忘れてるような気がする。

一度どっかでこのネックレスを見たことがある。

それも5年以内くらいに……

 

「んー……」

「まだそのネックレス見てんの?」

「あ、ベル」

「つーか、そのブランドここの近くの店の奴じゃね?」

「え、近場にあるの?」

「ほら、ここ少し歩くと病院あんじゃん」

「ああ、結構昔からあるやつよね」

「そ、そこの向かい側の方にあった気がするぜ…なに気に入ったのかよ?」

「うん、他に何かあるか見に行こうと思って」

「ふーん、俺暇だから一緒に見にいってやるぜ」

「え、今?」

「当たり前じゃん、シシッ」

 

ベルはヴェロニカの腕を掴むと、玄関まで有無を言わせず歩き出す。

ヴェロニカは途中から諦めて、ベルの歩調に合わせて歩く。

街中を歩いていくと、病院が見えてくる。

 

「あ、ほらあれじゃん」

「あれか…」

「げ、閉まってんじゃねーか」

「仕方ない、帰ろ」

「マジかよー折角外出たしどっか寄り道しよーぜ」

「え、ああ……別にいいけど……」

「あ?」

「少し待ってて…」

 

ヴェロニカは向かい側の病院の方へ入っていく。

確か14年前に私に宿を貸してくれたあの女性はここで働いていなかっただろうか?

えーと、名前……は確か……ヴェ……ヴェラ?そう、ヴェラだ。

ヴェロニカが院内を見回すと端の方に売店があった。

ヴェロニカは迷わずそこに足を向け、売店の中に入ると、レジの方に男性がいて他に客はいなかった。

 

「すみません」

「いらっしゃいませ、どうしました?」

「ここにヴェラって女性働いてませんか?多分4~50代だと思うんですけど…」

「ヴェラ?さぁ……ここ数年勤務してますがそのような名前の従業員はいません」

「そうですか、失礼します……」

 

やっぱり十年以上も前のことだから、どこかに引っ越しでもしてるのだろうか。

ずっとここで勤務してる方が珍しいよね。

ベル待たせてるし、行こ。

 

「あ、ねぇ君」

 

後ろから少し老いた白衣の男性に呼び止められる。

 

「え、はい。何ですか?」

「君、さっきヴェラという女性を探していなかったかい?」

「え、ええ…十年以上前にここで働いていた人なんですけど…知ってるんですか?」

「もちろん、私が彼女をここに雇ったのだから…」

「あの、ヴェラさんはまだここで働いているんですか?」

「いや……彼女は十年以上も前に病で亡くなったよ」

「え」

 

ヴェラさん亡くなってしまっていたのか…寂しいなぁ…

 

「君はヴェロニカ……という名前じゃないかい?」

「え、あ、そうですけど……何で…」

「彼女から娘の名前を聞いていたんだよ…だけど出産後、彼女が病気で倒れる直前に子供をどこかの施設に預けたらしくてね…心配してたんだよ」

「あ、いや、私は……」

 

待って。

それはヴェラさんの子であって私じゃ…

……私じゃ………

 

「いやぁ、こんなに無事に育って…彼女も喜んでるはずだよ。君のことを大層可愛がっていたからなぁ…とても優しい女性だったよ」

 

❝ヴェロニカよ!あなたと同じ名前!なんて偶然かしら❞

 

「彼女は身寄りが誰もいなくてね、遺品は私が預かっていたんだ………少しだけ待っててくれ、確か私の執務室にあったはずだよ」

 

老いた男性は急いだように階段を駆け上がっていった。

ヴェロニカはそこにただ立っていた。

 

そんな、馬鹿な……有り得ない…そんなわけがない…

彼女が……ヴェラさんが……

 

❝ええ、女の子よ…きっととても可愛い子が生まれてくるわ…❞

 

そんな都合のいいことがあるわけないじゃん。

 

❝産みたいの……どれだけ苦労しても、この子だけは…❞

 

そんな……偶々名前が同じだけで…

 

「あったよ、これだこれ…ほらヴェラがずっと身に付けていたものだよ…誰から貰ったのか覚えてないけど大事なものだって言ってずっと身に付けてたんだよ…」

 

男の人の手のひらにはリングが通されているネックレスがあった。

 

「ほらここにVって彫られてあるだろう?多分ヴェラのVじゃないだろうか…」

「あ……」

 

ヴェロニカは震える手でそのネックレスを手に取る。

 

「あああ……ああ……」

 

どうして今更思い出したんだろう…

思い返せば気付く機会なんて沢山あったハズなのに……

 

 

「……お…母さん……」

 

 

❝こんなに愛されてるお腹の子がとても羨ましい❞

 

 

「……おかあさんっ……」

 

私は人目を憚らずみっともなく、泣いてしまった。

 

男性は私にもう少し休んでいけばいいと言ってくれたけれど、私はベルを待たせていることを思い出して、断って病院を出た。

 

「ベル、ごめん…待たせた」

「おせーよ、なにやって……は?何、誰にやられたわけ?俺が殺してあげよーか?」

「ちが、違うから、ナイフしまって…」

「おめーが泣くって相当じゃん」

「ほんとに…違うから…大丈夫……」

「………取り合えず帰るぞ」

「うん」

 

ベルは目元の真っ赤になったヴェロニカを見てナイフを出してきたが、ヴェロニカが焦って止める。

二人は寄り道せずに本部に帰った後、ヴェロニカは部屋に戻ると直ぐに部屋の鍵をかけた。

ただ、ただ一人になりたかった。

 

「お母さん……」

 

部屋にあった箱を開けてネックレスを取り出す。

どこから見ても同じに見えるネックレスは確かに私が過去に行ったときにヴェラさんに買ってあげたものだった。

 

「優しい…人だったなぁ………」

 

彼女を思い出すだけでまた涙ぐみ、ヴェロニカは枕に顔を押し付けて静かに泣いた。

 

私は望まれて生まれたんだ…

あんなに苦労して私を産んでくれたんだ……

あんなに…あんなに愛されてたんだ―――…

 

「ありがとう…お母さん………」

 

 

私を…産んでくれてありがとう……

私は今とっても幸せよ

 

お母さんのお陰でパパと仲直り出来たよ

 

「ありがとう……」

 

 

 

 

 

三日後、ヴェロニカは18歳の誕生日を迎えた。

以前からヴェロニカはヴァリアーのボス仮候補ということは既にマフィア界では広まっていた。

狙われる可能性を考慮し、ヴェロニカは18歳までヴァリアー本部から一人で外を出ることはなかった。

だが、今日18歳になりヴァリアーに所属することで、正式なボス候補となり、任務も請け負うことが出来るようになる。

ヴェロニカは、現ボスであるザンザスに次ぐ実力を有していることからヴァリアー全隊員から賛同を得ており、現在53歳であるザンザスが引退するまでの間、十年余りあるだろうが彼女の地位は固まりつつあった。

そんなヴェロニカの成人する誕生日であり、表向きはザンザスの娘の祝典となっているが、ヴァリアー入隊日ということもあり、盛大に祝われた。

人混みを嫌うザンザスも流石に娘の祝典は顔を出している。

ヴェロニカ本人は先ほどからいろんな人に声を掛けられていて忙しそうにしていた。

悪い虫が付かぬようベルが傍にいるが、ヴェロニカ自身恋愛に関してはザンザスに似てとても興味を示さないので、あまり心配はされていなかったが。

あくまで彼女の興味は1にザンザス、2に自分、3にヴァリアー、4・5飛ばして6にその他である。

そんな彼女に、ボンゴレ10代目ボス沢田綱吉が声を掛けてきた。

 

「ヴェロニカちゃん、誕生日おめでとう」

「沢田綱吉か、来てくれてありがとう」

「今もまだフルネームなのか…」

「癖なんだ、それよりもあなたの守護者も来ているのか?」

「え、うん、一応雲雀さん以外は皆来ていると思うよ…にしてもあんな小さかった君がこんな大きくなって…なんか感動するなぁ」

「あまりあなたに会わなかったからだろう」

「それもそうだね…これからも色んな苦労があると思うけど頑張ってね…何かあれば助けるよ」

「あなたがそういうのなら頼もしいな」

「じゃあ、僕はこれで」

「ああ」

 

色んな苦労という言葉に、ヴァリアーでの任務が入ってる気がするけど、沢田綱吉もようやくボスらしくなってきたということなのだろうか。

2時間ほどに及ぶ祝典は終わり、ヴェロニカは本部の広間に向かう。

今から入隊するにあたって、私の所属する部隊はスクアーロの第一部隊となっている。

なので、一応顔合わせとして第一部隊で宴会をするらしい。

 

「そういえばプリンチペッサぁ、おめー酒飲むの初めてじゃねぇかあ"?」

「…そうね、あとプリンチペッサはやめて、私大人よ」

「おうおう、気を付けるぜぇ」

「気を付ける気ないでしょ…」

「おめぇも俺のこと隊長っていっていいんだぜぇ"?」

「鳥肌立った」

「う"ぉぉおおおおいどういう意味だあ"!」

「あ、ほらもう先に皆来てるじゃない」

 

ヴェロニカが広間へ行くと、第一部隊と共に何故か別部隊の幹部までいたのだ。

 

「もう始めてるわよ~」

「主役ほっぽいて先やってんじゃねえよお"」

「ほら、プリンチペッサ…あなたもじゃんじゃん飲みなさいよ」

「あまり沢山飲ますんじゃねえぞお"」

「分かってるわよ、最初はカクテルでいいじゃないかしら?」

 

ルッスーリアから手渡される酒をちょびちょび飲み始めるヴェロニカに、第一部隊の面々は声を掛けてくる。

小さい頃から本部で育ったヴェロニカには殆どが見慣れた顔ではあったが、喋ったことはあまりなかったので新鮮であった。

 

「いやー小さい頃からいらっしゃったが、我が部隊に配属される日が来るとは…」

「やっと女性隊員が入ったぞおおおお」

「「やったああああ」」

「おめぇらあ"!プリンチペッサに手ぇ出すんじゃねぇぞお"!ボスにカッ消されてえのかあ"!」

 

既に酒が回っている者がちらほらいて、ヴェロニカには少し騒がしく思え、少しだけ隅の方でカクテルを飲んでいた。

目の前の騒がしく、賑やかな光景を眺めて、口元に笑みを浮かべる。

 

マフィアとしての私のスタート地点にやっと立ったのだ。

色々ありすぎたけど、まだこれからなのだ。

お母さん、私は普通の人生は送れないけれど、満足よ。

ここじゃ、孤独死なんてさせてくれない人達ばかりに囲まれてるんだもん。

 

「ヴェロニカさん!これ飲みますか⁉」

 

一人の隊員がヴェロニカに話しかけ、ヴェロニカも快く貰った酒を飲みだす。

そうやって楽しくスタートをヴェロニカは切ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

日差しが顔にかかり、少し眉を顰めた後ヴェロニカは起き出した。

 

「ん?」

 

ベッドを起き上がると、自身の部屋ではないことに気付く。

 

「あれ?ここパパの部屋?」

 

周りを見ると、ザンザスの部屋と分かり困惑したまま部屋を出る。

昨夜、宴会をやっていた広場に行くと、そこは地獄絵図だった。

死屍累々とはこのことか。

積もりに積もった気絶した男たちの山と、頭から血を流し白目をむいているスクアーロ、レヴィも何故か鼻から血を出しながら寝ている。

何故か壁もぶっ壊れているところがちらほら…

一体何があったし。

 

「おおう、何があったんだ…」

「あらプ……ヴェロニカ起きたのね~」

「あ、ルッスーリアおはよう、ねぇこれ何」

「え」

「え?」

「お、覚えてないの?」

「?」

 

目の前のルッスーリアが手を口にあてて、まあ!みたな表情でヴェロニカを見つめている。

 

「い、いや覚えてないならいいのよ!というか覚えてない方がいいわ!」

「え、ちょ…何があったの」

「ほら、朝ご飯あるから食べに行きましょ、ここの掃除はこの子たちにやらせるわ!」

 

ルッスーリアはヴェロニカの肩に手を回し、部屋から出す。

ヴェロニカは始終首を傾げていた。

 

 

 

XANXUS side

 

ガキの祝典の後、部屋で静かに酒を飲んでいると、遠くの広場の騒音がこちらまで響いてきていた。

度々爆発音などが聞こえ、いい加減うるさく感じカッ消そうと広場に足を向けた。

段々と広場に近づくにつれて声が聞こえてきた。

 

「――――――ま―――だれ―――ああ―」

「――せぇ――――――す!」

「おい誰だ――――――ペッサにこんなに酒―――奴はぁ"!ぐはっ」

「黙れこのカス鮫!」

 

一瞬俺かと思う台詞が聞こえた瞬間、カス鮫が広場の扉からぶっ飛んできた。

俺は若干眉を顰め額から血を流すカス鮫を眺めていると、カス鮫は俺の存在に気付き体を引きずって俺のとこへ向かってくる。

 

「う"おぉいボスさんよお"…あんたの娘…どうにかしてくんねぇかあ"…」

「あ?」

「俺逃げる!」

「ちょ、ま、僕も逃げるぅぅぅううう」

「あ、あたし肌荒れるといけないからもう寝るわね!おやすみなさぁぁぁあい!」

 

ルッスーリアにマーモン、ベルが慌てたように広場から出てきた。

俺はこいつらが焦る理由に少しだけ興味が沸き、広場を覗く。

そこにはガキがレヴィの頭を地面に蹴り付け、右手にカス、左手にカスの首を絞めながら何かを喚き散らしていた。

 

「てめぇら弱っちいんだよこのカス共!カッ消す!」

「ぐふっ」

「うげっ」

「ごっふ」

「どいつもこいつもプリンチペッサ、プリンチペッサって私はヴェロニカって名前あんだよこのドカス共ぉぉぉお」

 

ガキは手に炎を圧縮して、カス共を壁に叩きつけると壁がぶっ壊れる。

ガキは穴の開いた壁を一蹴して、振り返ると俺と目が合った。

 

「あ、パパ!」

 

ガキから甘い酒の匂いがして、俺は眉を顰める。

 

「酒くせぇ」

「パパはいつも酒臭いよ!」

「あ"あ?」

「あはは、怒らないでよ」

 

ガキが酔っぱらっているのが分かると、俺は面倒になり部屋に戻ろうとした時、ガキが後ろから抱き着いてきた。

 

「離せ」

「パパ、私がパパの跡継ぐんだからね」

「いいから離せ」

「うーん」

 

ガキが眠たげな声を出すと、そのまま俺の背中を壁にして眠り出した。

この時キレなかった俺は人生で初めて我慢という行いをしたと思った。

周りにいる者は皆意識を失っていて、ガキを任せる相手がいないと分かると、俺は非常に不本意だったが、ガキを背負い自室へ向かう。

ガキの部屋に捨て置きたいが、最近ガキの部屋が移動になり場所が分かっていなかった。

廊下を歩いていると、背中から鼻をすする音がした。

 

「おい鼻水つけてみろ、カッ消すからな」

「んー」

「聞け」

「お母さんに会ったの」

 

脈絡もなく放ったその言葉に俺は一瞬足を止めたが、またすぐ歩き出す。

 

「過去に行ったときにね、お母さんにあったの」

 

ガキはゆっくりと、思い出すかのように語った。

 

「お腹にね私がいてね……私その時気付かなくてね……この前ね………あの人がお母さんだって分かったの」

 

「お母さん死んでた…」

 

俺は何も言わずに長い廊下を歩く。

 

「私を産んで…直ぐに亡くなったんだって………」

 

俺の首に回しているガキの腕に力が入るのが分かった。

 

「とっても……私が産まれてくるの…待ってた……凄く喜んでたの……優しい人だったなぁ」

 

上擦った声が耳の近くで聞こえてくる。

 

 

「生んでくれてありがとう…」

 

 

俺の肩が濡れていくのが分かり俺は眉を顰めた。

 

 

「おい、鼻水つけたらカッ消すって言ったぞ」

「鼻水じゃないもん」

 

 

 

俺の部屋に着くころには、ガキの静かな寝息しか聞こえなかった。

 

 

 

 

 




改めてご愛読ありがとうございました!
これ以上伏線あったかなー?
自分ではこれ以上見つけられなかったんで、取り合えずこれで終わりです。
長々と呼んでくださった方には感謝します。
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活動報告の返信、またはメッセージでお願いします。

では、チャオ!

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