ヴェロニカは思った。
ここはどこで、私は誰で、目の前の男は誰なのだろうと
そしてヴェロニカは夢を見ている。
Veronicaの生誕
私の名前はヴェロニカ。
イタリアに住んでいて現在5歳だ。
「おはよう、プリンチペッサ」
「おはようルッスーリア」
私は普通の人間と違うところがある。
「パパは?」
「さっきスクアーロが頭からワイン被ってたから、もう起きてるはずよ」
「そう…いただきます」
「あら、日本の礼儀なんていつ覚えたのかしら?」
「この前、本であった…」
「ボスの前ではあまりやっちゃダメよ~」
「わかったわ…」
それは、私が日本人として生きていた記憶があるということだ。
そしてこの世界が漫画として知られていた世界で私が生きていたということと…
バンッ
リビングのドアが大きな音を立てて乱暴に開かれた。
「おいルッスーリア、カス鮫はどこだ」
「あらボスおはよ~、スクアーロならシャワー浴びてるんじゃないかしら?さっきワイン被ってたし」
「ふんっ」
ザンザスはそれだけ聞くと、すぐさま部屋を出ようとする。
「パパ」
ヴェロニカが声を掛けると、ザンザスはこちらを見ないものの足を止める。
「おはよう」
「……ああ」
パタン
小さな返事だけ残すと、ザンザスは出て行った。
そう、私はボンゴレ直属暗殺部隊ヴァリアーのボス、ザンザスの血のつながった娘である。
「ほーんと、ボスはプリンチペッサには甘いわね~」
「……知ってる、ごちそうさま…」
「あら、プリンチペッサまだおかわりあるわよ?」
「いらない、私庭の方で散歩でもしてくるわ…」
「わかったわ~いってらっしゃい」
「……いってきます」
ヴェロニカは、そういうと庭のほうへ出て人気のない花壇の方へ足を進める。
段々と歩く速度が速くなり、花壇へ着くと周りを見渡し誰もいないことを確認すると、白いベンチに腰掛ける。
「はぁーーーーー……緊張したー…」
朝っぱらからなんちゅーアクシデントだよ…
パパってかザンザスが父親って、ほんと何があったんだよ
毎度ながら、ザンザスに声かけたり目線合うと緊張しすぎて心臓破裂しそうなんだけど…
愛を知らない男でも流石に自分の娘に手は上げないだろうと思うけれど。
そこまで堕ちちゃいないだろう…
私の名前は、ヴェロニカ。
そして日本人だった時の名前は仲田夏美、最後に覚えているのは大学3年頃、アルバイトを終えて家に帰ろうとしていたところである。
父母姉私と四人家族であり、長女ともにオタクではあったが、長女は漫画派であり、私はアニメ派という奇妙な二人姉妹であった……ハズだ。
この日本人だった記憶があるという、ましてや漫画の中の世界にいるなんて何かの夢ではないかと思いながら早2年。
何故2年かというと、私の3歳の頃…何がきっかけで思い出したのかは分からないが急に倒れて高熱でうなされていた時があったそうで、熱が引いて意識がハッキリとしたときには日本人であった記憶は既に私の中に存在していた。
最初は困惑が大きかった。
周りにはどこかで見たようなコスプレ集団、自身の体は小さくなっていて、呂律が回らない、何故か口から出るのは
もう、ヤバかったですね、ハイ。
急に大人しくなってしまった私を一番心配してくれたのがルッスーリアで、私の身の回りの世話も彼がやってくれていたのが私の中ではとても感謝が大きかったのか、今じゃ心の中でママと呼んでいる始末。
ザンザスとルッスーリアのカップリングとか嫌でも考えたくないので、あくまでも心の中でそう呼んでいるだけである。
記憶を得て最初の頃、時間をかけて頭の中を整理した結果、ここが家庭教師ヒットマンリボーンの世界なのだと認めざるを得なかった。
ヴァリアーの人たちは私に生々しいところは教育上良くないと思っているのか死ぬ気の炎やらナイフやら血やらを私の前では見せないけれど…
考えてみろよ、4階まで人が登れると思うか?ちなみに登ってきたのはスクアーロである。
そして赤ん坊が喋るだろうか?もちろんマーモンである。しかもなんか浮いてるし。
色々現実を突きつけられて、一週間ほどで自分の中で整理できたと思った時期に長期任務でどこかへ行っていたザンザス帰還。
いやー、ルッスーリアから「プリンチペッサ、あなたのパパが帰ってきてるわよ」なんて言われて父親の顔を覚えておこうと行ったらザンザスがいるではありませんか。
あの時は、死ぬかと思いましたまる
父親になりそうな人物に当たりをつけようとして一番最初に候補から外した男である。
ちなみにレヴィかオッタビオらへんの出来ちゃった子かと思っていた。時間軸も分かんなかったし。
だが現実は奇なり、父親ザンザスと対面した時顔から変な汁がでそうな勢いで緊張しまくっていたし、呼び方なんて分かんなかったしとりあえず「おかえり」とだけ小さく呟いたのは今でも覚えている。
当時の私は、あの愛を知らない男と言われるザンザスが子供作るか?いや知らない間に出来ちゃってた感もありはするけれど、それでも施設に預けてポイしそうだし、ここら辺は本気で不思議であった。
まあ、その謎も一か月過ぎたあたりで解けたんですがね、ハイ。
憤怒の炎…私も出るじゃないですかやだー
………まじかよ、おい
誰もいない部屋で発現した時は、頭抱えて絶望しましたよ。
私がザンザスの血をばっちり受け継いでいてなおかつ憤怒の炎を一般人の前で出しちゃったらそれこそ危ないと思ったのだろう、私を育てている理由がバッチリ分かってしまった。
誰も私にマフィアと悟られないようにしてはいるけれど、これバレたらマフィアルート一直線ではなかろうか?
そう思った私は、このことを誰にも言わずに人気のない場所で何度も手から炎を出しては調節しようと努力してきたのだった。
そうして、2年経つ現在、私は今も父親であるザンザスとあまり喋ったことがないし、この炎のことも言っていないのだ。
ちなみに今は炎をごく少量、一見誰も気づかない程度を手に纏わせている。
これが出来るまでに長い時間を浪費したのは懐かしい思い出である。
「にしても暇ね」
そういえばさっきルッスーリアがザンザスは私に甘いって言ったから、咄嗟に知ってるとか言っちゃったけど、全く身に覚えがない。
声かけても目も合わせないし、まぁ足を止めてくれるだけ彼なりの優しさか?
だがしかし、こちとら精一杯挨拶してんだから、少しくらいは返せよ…ってんなもん出来てたら、あんな非情な男になってないわけで。
「はぁ……」
5歳になってもどこか保育園みたいなのに預けられるわけでもないし、英才教育を受けるわけでもなし、ぶっちゃけ暇だ。
……とりあえず、暇だから炎の調節に励みますか。
ルッスーリアside
食卓にトースト、オニオンスープ、サラダにソーセージを並べて小さなお姫様が好きなブルーベリージャムを棚からとっていた時、リビングの扉がゆっくりと開く音がした。
眉毛がとてもボスに似ている可愛いヴェロニカが、少し眠たそうに入ってきた。
寝起きはボスと似ていて、表情をムッスリとしている様に思わず顔がにやける。
「おはようプリンチペッサ」
「おはようルッスーリア」
ヴェロニカがいつもの席に座ると、ルッスーリアはバターナイフとジャム瓶をヴェロニカの近くに置く。
「ありがと」
そろそろベルとマーモンが起きてくる時間ね…トースト焼けたかしら?
ルッスーリアが考え事をしていると、ヴェロニカが口を開く。
「パパは?」
ボスをパパ呼び出来るのはこの子の特権よね、ボスもよくそれに応えたわね…
「さっきスクアーロが頭からワイン被ってたから、もう起きてるはずよ」
大方、大きな声で怒鳴り散らしながらボスの部屋に入っていったから近くにあったワインを投げつけられたんでしょうね。
「そう…いただきます」
いただきますってたしか、日本のご飯を食べるときの礼儀作法だったかしら…
「あら、日本の礼儀なんていつ覚えたのかしら?」
「この前、本であった…」
昨日あまり見ないと思ってたらまた書庫へ行っていたのね、にしてもそんな本あったかしら…?
「ボスの前ではあまりやっちゃダメよ~」
沢田綱吉達を思い出して不機嫌になって、私たちに八つ当たりしそうだし。
「わかったわ…」
バンッ
リビングのドアが大きな音を立てて乱暴に開かれた。
「おいルッスーリア、カス鮫はどこだ」
「あらボスおはよ~、スクアーロならシャワー浴びてるんじゃないかしら?さっきワイン被ってたし」
「ふんっ」
ザンザスはそれだけ聞くと、すぐさま部屋を出ようとする。
「パパ」
可愛いヴェロニカの声がザンザスの足を止める。
ちゃんと娘の言葉を待つとこがボスが父親に見えるときなのよね~
「おはよう」
「……ああ」
パタン
ちゃんと返事はしてくれるとこがもう、とってもプリンチペッサに甘いって一目で分かるわ、ああ羨ましい。
「ほーんと、ボスはプリンチペッサには甘いわね~」
「……知ってる、ごちそうさま…」
「あら、プリンチペッサまだおかわりあるわよ?」
「いらない、私庭の方で散歩でもしてくるわ…」
「わかったわ~いってらっしゃい」
「……いってきます」
パタンと小さく扉が閉まると、扉の向こう側で小さな気配が外へ行くのが分かる。
そして、ルッスーリアはベルとマーモン、他の幹部が来るまでにヴェロニカの使った皿を洗おうと立ち上がった。
いつもいつも、一人で遊ぶ小さな背中にルッスーリアは心配していた。
ヴェロニカから、外へ出たいと言われたこともなければ一緒に遊びたいと言われたこともなかった。
ルッスーリアは、無表情でただいつも庭の奥の誰も寄り付かない、薔薇が植えられているところのベンチで自身の手を覗き込む小さな子供がただ気がかりだった。
「ふわぁぁ…飯~」
「あら、ベルおはよ」
「なに、トースト?ならピーナッツバターちょうだい…」
「はい」
「ヴェロニカはー?」
「庭にいるわよ」
「また?昨日もいなかった?」
「昨日は書庫じゃないかしら?」
「ふ~ん…暇じゃないのかなー…」
「私も少し心配なのよねー、あの子いつも一人でいるじゃない…」
「にしてもいつも庭で何してんの?」
「ずっと、手を眺めてるのよ…何か思い詰めることでもあったのかしら…」
ルッスーリアは紅茶を淹れると、ベルの前に置く。
ベルはそれを飲むと、トーストを齧る。
「はぁ?んなのあの事件しかないでしょ」
「でも二年前のことよ?しかもあの時のことは忘れてたし…」
「思い出したのかもよ?」
「ボスにもいつも通りだったわよ?」
「何言ってんの、あの時からじゃん……ヴェロニカがああなったの」
「………それは…そうね…」
「つーか、こんな場所にいて普通に育つわけないでしょ」
ベルはトーストをすべて食べ終えると、ウィンナーをフォークで刺し口に持っていく。
「あいつが思ってることなんてボスが聞かない限り、誰も分かんないんじゃない?」
「そうね……ボスに少し言ってみようかしら……」
「別にあいつみたいなガキは沢山いんでしょ、世の中」
「それでもそのままってわけにはいかないでしょ!もう……」
ルッスーリアは庭の方向を眺めて、ため息をはく。
ベルは空腹が満たされたのか、椅子から立ち上がり扉の方に手を掛ける。
「ボスが裏切り者を殺してる場面に出くわすなんて、これからもありそうだし」
扉が閉まる音を耳にしながらルッスーリアはまた溜息を吐く。
「あらやだお洋服に血が付いちゃったわ!」
ザザーザ…
「はーい、こちらルッスー『おい、カス今すぐ本部に来い』え?ボス?何かあったの?」
『…』
「とりあえず、すぐ向かうわ」
「ボス!何があっーーーー……」
「こいつを空いてる部屋に運べ」
「……わかったわ…ボス…その…見られたの?」
「……」
「…そう…」
「うぇぇぇぇええん…ルッスーリアぁ…」
「プリンチペッサ、今お薬飲んだから直ぐ良くなるわよ」
「うぅ…ぐすっ」
「ええ、さあ寝なさい」
「やだぁ…やだっ」
「どうして?悪い夢でも見るの?」
「パパが赤く…って………こわいよぉ…」
「……大丈夫、あたしがプリンチペッサとずっと手を繋いでおくから大丈夫よ」
「ふぅ……ううぅ……」
「あたま…もう、いたくない」
「ほんと?でも少し熱あるから今日まで寝ましょ?」
「わかった」
「プリンチペッサ、この前ボ……パパが帰ってきたこと覚えてる?」
「……?おぼえてない…」
「そう…わかったわ……」
ああ、可愛いプリンチペッサ、思い出さないで。
そのころのヴェロニカ
あ、こいつカテキョーに出てくるオカマのやつに似てる
*処女作です。
誤字脱字あれば教えてください。
カテキョー自体、ハマってたのは5か月ほど前なんですけど、ハマってた時に出てきたネタを書かずにはいられなくて…吐き出したくてとりあえず投稿してみました。(笑)
ちなみにアニメもうろ覚え(2~3年前に見たっきり)で、原作は見たことないです。
でもザンザスが好きなので、wikiで調べるという…ほんとなんかカテキョーが本当に大好きな人には申し訳ないほど寄せ集めの知識で書いてます。
どこか間違っていたら、または違和感があるならば教えてください。