準決勝、恋恋高校対そよ風高校戦。三回の攻防終わって、両校共に無得点。恋恋高校先発の
「やっちゃん、ナイスピッチング! ええ調子やんっ」
髪の毛をポニーテールに結った、そよ風高校のマネージャーの
「当たり前や! ワイを誰やと思てんねん“浪速の変化球男”やで! そしてゆくゆくは、“球界の変化球王”として君臨するんやからな!」
そう言って自信満々にグッと親指で自分を指さす。そんな
「ちょっと褒めるとコレや。すぐに調子にのるんやから。油断したらアカンで? ウチの占いにも“受難の相”って出とるんやから。なにせ、相手は――」
「ホンマ、
アバタボール8号こと高速ナックルは、
『四回の表、そよ風高校の攻撃は、四番ピッチャー、
「せや、ワイからやったな。ほな、行ってくるでー!」
「あ、うん。やっちゃん、ファイト!」
「おう!」
ヘルメットを頭に被り、右のバッターボックスに入った
「えろうおまっとさんでした。おおきに」
「うむ、プレイ!」
球審のコールで試合再開。
「ストライク!」
球審の右手が上がる。オーバーハンドから放たれたストレートが、アウトコースへ決まった。
「ナイスボール、走ってるよー!」
「(ホンマ、一年の投げる球ちゃうで)」
バックスクリーンには、
「(せやけど、コイツを打たな勝たれへんのや。一点でええんや。一点あれば、ワイが
気合いを入れ直し、改めて
「(お、バッターの気合いが入ったな。
キャッチャーのサインと
「もろたで!」
構えたところよりも甘く入ったストレートを、
「(あっ、甘く入った! 届くか――!?)」
予測と逆をつかれたが
「――あ、アウトー!」
「な、なんやて!?」
『刺した! 間に合った! 今日、ショートに入っている
「やるじゃんっ。
「へっ、オイラなら正面でさばいてるっての。ファインプレーじゃなくて余裕にな! 難しい打球を簡単なアウトに見せる、それが最高のプレーなんだぞ?」
「ふーん、言うわね。じゃあ決勝で見せてもらおうじゃないっ」
ここ数日、あかつき大附属のエース
一方グラウンドの方は、と言うと。カウント3-1から五番を歩かせてしまい、続く六番がきっちり送られ、ツーアウトながらスコアリングポジションにランナーを許してしまった。初回に続いて、この試合二度目のピンチ。だがこのピンチも、七番をライトフライに打ち取り切り抜けた。
そして、四回裏の攻撃は三番ピッチャー
『見逃し三振! 先発の
続く四番は、ライトの
「(――低めだ。これは、いらない)」
初球、低めのアバタボールを見逃しワンストライク。二球目、三球目は、初球と同じく低いコースへ来たアバタボールを見逃し、共にボールでカウント2-1のバッティングカウント。そして、次も低めに外れた。
「ドンマイ! バッター、手が出ないだけだぞ!」
ボールを受け取った
「(しゃあないしゃあない。なんてたって投げてるワイにも、どう変化するか分からん魔球やからな!)」
調子に乗っている直後の一球。アバタボールが高めに抜けた。このボールを、
「あー、くそっ、上げちまった!」
「おっしゃ、これでツーアウトやでー!」
後ろを向いて、右手を掲げ、バックを盛り立てる。
「ナイスピッチ! ツーアウト!」
「ツーアウトー!」
マウンドからの呼び掛けに内外野から元気な返事が返ってくる。
「まったく、お調子者なんやから。やっちゃん、気ぃ抜いたらアカンでー!」
「おう、わーとるわい!」
恋恋高校の五番、
『打ったー! 引っ張った打球は、一塁線上へ高々と舞い上がったー!』
「ファール!」
『しかし、これはファールです! ポールの手前で切れていきましたー!』
「あっぶな、助かったで~」
「だからゆーたやんっ。気ぃ抜いたらアカンって!」
「わかっとるゆーとるやろがっ」
「......キミたち、私語はベンチに帰ってからにしなさい」
「す、すみません......」
二人揃って球審に謝罪、試合は仕切り直し。
今のファールで気合いを入れ直した
「これで八個目ね。高めの空振りが二つで、低めの見逃しが六つ。あなたにとっては予定通りなんでしょ?」
「さてね。おい、ちょっと待て」
「三点だ。三点までは取られても構わない。そいつを頭に入れておけ」
「――はい!」
二人は返事をして、グラウンドへ駆け出していった。
試合が動いたのは直後の五回表、そよ風高校の攻撃だった。先頭バッターにヒットで出塁を許すと。先の回と同じく、送りバントで得点圏にランナーを進められ、一死二塁とピンチを迎えた。次の一番バッターをセカンドゴロに打ち取り、二死三塁。だが、次の二番に緩い当たりながら内野の間を抜ける不運な形でタイムリーを打たれてしまった。
先制点を奪われた直後の三番には、ユニフォームの袖にボールがかすって死球、二死二塁一塁。四番の
「あ、アウトーッ!」
『ライトからスバラシイ送球! 恋恋高校ライトの
「嘘やろ? なんちゅー肩しとんねん? ......まあ、ええわ」
――二点もあれば十分。 そう思いながら
その頃、恋恋高校ベンチでは――。
「五回に二失点か」
「はるか、球数は?」
「はい。81球です」
1イニングにおける投球数は15球前後の球数が目安と言われている。投球イニングは5回。81球は理想に近い数字と言える。
「次の回だが、投げる気あるか?」
「あ......はい!」
三点取られてもいいと言われた直後の失点に、交代を告げられことも覚悟していた
「じゃあ投げろ。
「あ、はい、なんでしょうか?」
「一応軽く肩を作っとけ。いいか、軽くだぞ」
「はい、わかりましたっ。
「うん、行こうか。コーチも言っていたけど軽くだからね?」
「はいっ」
今日レフトで先発のサウスポーの
「ま、そういうことだ。後ろのことは気にせず投げろ」
「......はい!」
返事をした
「ストライク! バッターアウト!」
「これで九つ目ね」
六番
しかし、ベンチに焦りの色はまったく見えない。
それどころか、
「クックック......いい、いい、それでいい。もっと奪え、もっと奪われろ。その奪った三振の数だけ
阿畑の打撃能力の補足。
アプリやサクスペではあまり野手能力は高くありませんが、パワプロ9だとパワーDとなかなかの能力をですので、そちらを採用しています。