一番(中)、
二番(一)、
三番(右)、
四番(遊)、
五番(三)、
六番(捕)、
七番(二)、
八番(左)、
九番(投)、
パワフル高校スターティングメンバー。
一番、
二番、
三番、
四番、
五番、
六番、
七番、
八番、
九番、
『オリ』は、原作には登場しないオリジナルキャラです。以上です。それでは、本編どうぞ。
球審は、右手を大きく上げて判定をコール。
「ストラーイクッ!」
「やんすっ!?」
外角低め構えたミットに、ストレートが突き刺さった。サイドハンドからのクロスファイアー、右打者の
「ボール!」
三球勝負はせずに一球大きく外角へ外し、カウント1-2。続けて四球目を投じる。ストライクゾーンから、ボールゾーンへ滑るスライダー。
「ストライク! バッターアウッ!」
外へ逃げるスライダーに泳がされ、一球も当てることも叶わず空振り三振。肩を落とした
「申し訳ないでやんす......」
「
「そうだよ、次の打席でリベンジすればいいんだから。落ち込んでる暇なんてないよ!」
「そ、そうでやんすね。
しかし、闘志は実らず、
続く三番
「三者凡退か。あおいちゃん、頼んだよ」
「うんっ!」
一回の裏、恋恋高校が守備に着く。
ポジションは
「まったく、どこで油売ってるのよ......」
「プレイ!」
パワフル高校の一番バッターの
サインに頷いたあおいは、ノーワインドのモーションからぐっと体を沈め投げる。地面すれすれの低い位置からのアンダースローで放たれたボールは、まるで糸を引くようにインローギリギリに構えられたミットへ吸い込まれた。
「ストライク!」
「いいよ、あおいちゃん! その調子その調子!」
「セーフ!」
「ふぅ、危なかった」
ファウルゾーンからファーストベースへ戻り、小さく息を吐く
「(いきなりランナーを出しちゃった、けど......!)」
あおいは、不安を消し去る様に深く呼吸をしてセットポジションに構える。
パワフル高校の二番の
あおいはバントに備え、ファーストランナーを目で牽制をしてから第一球を放る。モーションの途中で一塁ランナーの
「アウト!」
「サードッ!」
塁審のコールとほぼ同時に、
「ダメだ、投げるな!」
サードが腕をクロスさせ「×」を作る。投げてもタイミングはセーフ、ファーストは投げるのを諦め、滑り込んだ
秋季大会では見られなかった、足を絡めた攻撃。新入生
「すまん、俺の指示が......」
「ううん。
「誰も悪くない。今のは相手が上手かっただけだよ」
「ボクが、簡単にバントをさせちゃったせいで」と言おうしたあおいの言葉をさえぎり、
「それより問題は、次の......」
全員がチラッとネクストバッターに視線を移した。
長い髪を赤い髪ゴムでまとめたクールな少年が、打席に立つ準備をしている。
――
秋季大会での成績は、23打数12安打。打率0.521、本塁打4本、18打点をマーク。パワフル高校をベスト8、強豪校へと押し上げたのは彼と断言しても過言ではない。
「公式戦なら敬遠だけど......」
「勝負するよ。ううん、勝負させて。お願い!」
「......わかった。サードランナーは無視して、バッターオンリーで深めに守ろう」
「おう」
「
「何言ってるの? ボクは三振を狙いにいくよ。ね、
「あ、ああ、そうだな。勝負するからには獲りにいくぞ!」
それぞれポジションに戻り、キャッチャー
「ストライークッ!」
「ほう。あいつと勝負するのか」
パワフル高校の監督は、感心していた。秋季大会後、練習試合を申し込まれる頻度が増え、遠征試合を何度も行ったが、
「フッ......」
あおいの、二球目。投げられたボールはキャッチャーミットへ収まることなく小気味良い金属音を残し、ライトのフェンスを軽々越え、通路を隔てた先のテニスコートに着弾。
ホームランを打った
「初回に先制点を取られてしまいましたな。行かなくてよろしいので?」
「織り込み済みだ。それに、ここからの方がよく見える」
校舎二階に構える理事長室。グラウンドをセンターから正面に見えるこの部屋に、
「さて、この先どうなりますかな」
「さてね」
テキトーに答えた
グラウンドではあおいが四番の
「さあ、気を取り直して攻撃するわよ!」
「おおーっ! 打てよ、
気合いの入った声援を背に受けて、四番の
「よし! スバル、勝負だ!」
「
それもそのハズ。子どもの頃とはいえ、
「ストライクッ!」
「くっ......」
「よしっ!」
初球は、対角線へ食い込むクロスファイアー。左バッターの
二球目は、外へ滑り落ちるシンカーを空振り0-2。
「よしっ!」
「くそ......」
マウンドで大きくガッツポーズをして、
そして、二回の裏パワフル高校の攻撃。恋恋高校はヒットとエラーで一点を失い、3対0とリードを広げられてしまう。その後も回を追う度に失点を重ね徐々に点差が広がり、6回裏パワフル高校の攻撃。バッターは、こここまで二打席連続ホームランを含む三打席三安打の三番
「フッ!」
「あっ......」
快音を響かせた打球は、ライトの上空を飛んでフェンスの外へ消えるも、一塁塁審は両手を挙げる。
「ファウル!」
「タイム!」
「あおいちゃん、代わろう」
「絶対にイヤ! ボクは投げれるよ!」
「だけど......」
彼女は肩で息をしている。無理もない、ここまで一人で投げ球数は既に100球を越え、6回までに13失点。心が折れていないのが不思議なくらい。それに、彼女以外に本職のピッチャーは居ない。交代したところで更に悲惨な結果になることは目に見えていた。
「はぁはぁ......」
「わかった。だけど、次打たれたら即交代だからね?」
「――うんっ!」
各々ポジションに戻り、試合再開。仕切り直しの二球目、外へのシンカー。
「ファウル!」
二球連続の特大ファウル。結果的にファウルではあったが、タイミングは確実に合っていた。あおいは、
眼光鋭くマウンドのあおいに睨みを利かせる、
「あおいちゃん! 歩かせていいよ!」
「(いやだ......絶対に逃げたくない......でも)」
多少ボール球であろうが叩き込む。バッターボックスの
あおいはセットポジションで構える。キャッチャーのサインは外のシンカー。
「(絶対打たれたく......ない!)」
勢いよくアンダースローから放たれたボールは、アウトコースのやや甘めに入った。捕手の
「(変化しない!? 抜けた!?)」
「(外の真っ直ぐ、もらった――)」
甘いコースを狙い撃ち。
「
「くっそー!」
キャッチャーはマスクを投げ捨て、必死にボールを追う。
「えっ? ......ファースト」
ファーストへ送球――アウトが宣告された。
「(最後のボール......今のは、シンカーか?)」
あおいが投げたボールは、間違いなくシンカー。ただし、打たれたくないという思いから普段シンカーを投げるときよりも強く腕を振った結果、二球目のシンカーよりも速く手元で鋭く変化する高速シンカーに変わった偶然の産物。ストレートと勘違いした
「や......った」
「あおいちゃん、ナイスピッチ!」
「ありがとっ」
グラブタッチをして意気揚々とベンチへ戻る。しかし、好打者を三振に切ったものの点差は13点。この回六点以上取らなければ、コールドゲームが成立してしまう。
しかも――。
「ナイスボールなんだな~」
パワフル高校先発の
「行ってくるでやんす!」
「矢部くん! 頼むよ!」
「
七回表、一番バッター
「プレイ!」
気合いを入れて挑んだ
「――や・ん・すッ!」
「
ベースカバーの
「ナイス、
「続け続け!」
続く二番、
そして、バッターへの初球。
「
「いや、
「セーフ!」
「くっ......!」
選択は裏目、フィルダースチョイス。
無死一二塁のチャンス。今の一連のプレーを理事長室から見ていた
「どちらへ?」
「アウトッ!」
グラウンドでは、三番バッター
「惜しいわね、あともう少し逸れていたら......」
「やってるじゃねぇか」
「えっ?」
険しい
「遅いわよ、どこで油を売っていたの? もう終盤よ」
「まあ、別にいいじゃねぇか。おい、お前次のバッターだろ」
「え? あ、はい」
見知らぬ金髪の男に声をかけられ戸惑いながらも、
「ねぇ、誰あれ? 何かどっかで見たことあるような気がするんだけど」
「オレもだ、どこだっけ?」
などなど......ベンチ内に疑問の声があがる。それらを気にする様子もなく、
「三球目、外から入ってくるスライダーを狙え」
「えっ?」
「お前に勝機があるとすれば、その一球だけだ。ほら、思い切り振ってこい」
「今のどういうこと?」
「フッ、まあ見てればわかるさ」
「(――本当に来た!)」
「抜けろー!」
ベンチが沸き上がる。
「狙った球だ、余裕でフェンスを越えるさ」
まさかの特大の一発にマウンドで茫然とする
「さあ、反撃開始だ」
3-13。点差は10点。
ここから、恋恋高校の反撃が始まる。