7Game   作:ナナシの新人

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恋恋高校スターティングメンバー。
 一番(中)、矢部(やべ)
 二番(一)、甲斐(かい)『オリ』
 三番(右)、奥居(おくい)
 四番(遊)、鳴海(なるみ)『オリ』
 五番(三)、葛城(かつらぎ)『オリ』
 六番(捕)、近衛(このえ)『オリ』
 七番(二)、真田(さなだ)『オリ』
 八番(左)、浪風(なみかぜ)
 九番(投)、早川(はやかわ)

パワフル高校スターティングメンバー。
 一番、駒坂(こまさか)(二)
 二番、小田切(おだぎり)(遊)
 三番、東條(とうじょう)(三)
 四番、宇渡(うど)(一)
 五番、香本(こうもと)(捕)
 六番、松倉(まつくら )(右)
 七番、星井(ほしい)(投)
 八番、鈴木(すずき)(中)『オリ』
 九番、松井(まつい)(左)『オリ』

『オリ』は、原作には登場しないオリジナルキャラです。以上です。それでは、本編どうぞ。


game4 ~反撃~

 球審は、右手を大きく上げて判定をコール。

 

「ストラーイクッ!」

「やんすっ!?」

 

 外角低め構えたミットに、ストレートが突き刺さった。サイドハンドからのクロスファイアー、右打者の矢部(やべ)にはより遠く感じるボールで、カウント0-2と開始二球で追い込んだマウンドの星井(ほしい)は、出されたサインにうなづき三球目を投じる。

 

「ボール!」

 

 三球勝負はせずに一球大きく外角へ外し、カウント1-2。続けて四球目を投じる。ストライクゾーンから、ボールゾーンへ滑るスライダー。

 

「ストライク! バッターアウッ!」

 

 外へ逃げるスライダーに泳がされ、一球も当てることも叶わず空振り三振。肩を落とした矢部(やべ)は、とぼとぼと意気消沈でベンチへ戻った。

 

「申し訳ないでやんす......」

矢部(やべ)くん、ドンマイ!」

「そうだよ、次の打席でリベンジすればいいんだから。落ち込んでる暇なんてないよ!」

「そ、そうでやんすね。甲斐(かい)くん、頼むでやんす!」

 

 鳴海(なるみ)とあおいに励まされ立ち直った矢部(やべ)は、声を張り上げエールを送る。頷いた二番バッターの甲斐(かい)は静かに闘志を燃やし、バッターボックスへ向かう。

 しかし、闘志は実らず、矢部(やべ)と同じく簡単に追い込まれ、カウント1-2からのアウトローへのストレートを見逃し三振に倒れてツーアウト。

 続く三番奥居(おくい)もカウント2-2から外のスライダーを打たされて、セカンドゴロ。セカンドの駒坂(こまさか)がキッチリ処理して、スリーアウトチェンジ。

 

「三者凡退か。あおいちゃん、頼んだよ」

「うんっ!」

 

 一回の裏、恋恋高校が守備に着く。

 ポジションは東亜(トーア)の指示ではなく、去年の夏予選前に部員たちで全員で決めたオーダー。

 

「まったく、どこで油売ってるのよ......」

 

 理香(りか)は、スマホを見ながら呟く。液晶画面には、東亜(トーア)からのメッセージ「後で行く、先にやってろ」と一言だけ表示されている。

 

「プレイ!」

 

 パワフル高校の一番バッターの駒坂(こまさか)が右打席で構え、主審のコール。

 サインに頷いたあおいは、ノーワインドのモーションからぐっと体を沈め投げる。地面すれすれの低い位置からのアンダースローで放たれたボールは、まるで糸を引くようにインローギリギリに構えられたミットへ吸い込まれた。

 

「ストライク!」

「いいよ、あおいちゃん! その調子その調子!」

 

 鳴海(なるみ)が、ショートのポジションからマウンドへ声をかける。あおいは一瞬笑顔で答えると、真剣な表情(かお)で構え直し、二球目を投じるためモーションを起こした。0-1からの二球目。打ち取った当たりは、サード正面へのやや弱いゴロ。バウンドを合わせて捕球、一塁へ投げるも――送球がファーストへ届く前に、バッターランナー駒坂(こまさか)は持ち前の俊足をとばして一塁を駆け抜けていた。

 

「セーフ!」

「ふぅ、危なかった」

 

 ファウルゾーンからファーストベースへ戻り、小さく息を吐く駒坂(こまさか)。サードの守備は決して上手いとは言えなかったが、ミスはなかった。完全に駒坂(こまさか)の足が、サードの守備(それ)を上回った結果の内野安打。

 

「(いきなりランナーを出しちゃった、けど......!)」

 

 あおいは、不安を消し去る様に深く呼吸をしてセットポジションに構える。

 パワフル高校の二番の小田切(おだぎり)は、守備と小技に定評のある選手。スイッチヒッターのため右投げのあおいに対して左打席に立つとさっそく、バントの構え。

 あおいはバントに備え、ファーストランナーを目で牽制をしてから第一球を放る。モーションの途中で一塁ランナーの駒坂(こまさか)が、スタートを切った。小田切(おだぎり)は、しっかりバントをしてボールを転がす、勢いを死んだ打球はピッチャー前へ転がった。マウンドを降りて打球を処理したあおいは、キャッチャーの指示を聞き、すかさず一塁へ送球。

 

「アウト!」

「サードッ!」

 

 塁審のコールとほぼ同時に、鳴海(なるみ)が叫ぶ。「えっ?」と小さく声をあげたあおいが振り向くと、駒坂(こまさか)が二、三塁間を駆けていた。

 

「ダメだ、投げるな!」

 

 サードが腕をクロスさせ「×」を作る。投げてもタイミングはセーフ、ファーストは投げるのを諦め、滑り込んだ駒坂(こまさか)は見事三塁を落とし入れた。

 秋季大会では見られなかった、足を絡めた攻撃。新入生駒坂(こまさか)の加入は守備面だけではなく、攻撃のオプションも拡げた。策が上手くいき満足げに腕を組むパワフル高校の監督。鳴海(なるみ)はタイムをかけて、内野陣をマウンドに集めた。

 

「すまん、俺の指示が......」

「ううん。近衛(このえ)くんのせいじゃないよ。ボクが――」

「誰も悪くない。今のは相手が上手かっただけだよ」

 

「ボクが、簡単にバントをさせちゃったせいで」と言おうしたあおいの言葉をさえぎり、鳴海(なるみ)は言った。

 

「それより問題は、次の......」

 

 全員がチラッとネクストバッターに視線を移した。

 長い髪を赤い髪ゴムでまとめたクールな少年が、打席に立つ準備をしている。

 ――東條(とうじょう)小次郎(こじろう)

 秋季大会での成績は、23打数12安打。打率0.521、本塁打4本、18打点をマーク。パワフル高校をベスト8、強豪校へと押し上げたのは彼と断言しても過言ではない。

 

「公式戦なら敬遠だけど......」

「勝負するよ。ううん、勝負させて。お願い!」

「......わかった。サードランナーは無視して、バッターオンリーで深めに守ろう」

「おう」

早川(はやかわ)、任せとけ。ぜってー取ってやるからな!」

「何言ってるの? ボクは三振を狙いにいくよ。ね、近衛(このえ)くん」

「あ、ああ、そうだな。勝負するからには獲りにいくぞ!」

 

 それぞれポジションに戻り、キャッチャー近衛(このえ)が指示を送る。東條(とうじょう)の長打に備え、内外野共に深く下がっていく。内野は定位置から二メートル後ろで、外野に至ってはフェンス手前にポジションを取り。あおいは、左バッターボックスで悠然と構える東條(とうじょう)に全力で挑む。初球は、内角へのストレート。球審の右手が挙がった。

 

「ストライークッ!」

「ほう。あいつと勝負するのか」

 

 パワフル高校の監督は、感心していた。秋季大会後、練習試合を申し込まれる頻度が増え、遠征試合を何度も行ったが、東條(とうじょう)とまともな勝負をする投手は数えるほどしかいなかった。クサイところを突き、カウントが悪くなれば歩かせる。ただ、それだけだった。

 

「フッ......」

 

 東條(とうじょう)は少し口角を上げて想う「この投手の方が、今までの相手よりずっと男らしい」と。

 あおいの、二球目。投げられたボールはキャッチャーミットへ収まることなく小気味良い金属音を残し、ライトのフェンスを軽々越え、通路を隔てた先のテニスコートに着弾。東條(とうじょう)の先制ツーランホームランで、パワフル高校が先手を取った。

 ホームランを打った東條(とうじょう)はゆっくり、ダイヤモンド一周してベンチへ戻り、仲間が求めるハイタッチにクールに答えた。普段群れない彼には、とても珍しい光景だった。

 

「初回に先制点を取られてしまいましたな。行かなくてよろしいので?」

「織り込み済みだ。それに、ここからの方がよく見える」

 

 校舎二階に構える理事長室。グラウンドをセンターから正面に見えるこの部屋に、東亜(トーア)と理事長は居た。理事長は窓際に立ち戦況を見つめ、東亜(トーア)はソファーに深く腰掛けている。

 

「さて、この先どうなりますかな」

「さてね」

 

 テキトーに答えた東亜(トーア)であったが、彼は既にこのゲームの結末(シナリオ)を描いていた。

 グラウンドではあおいが四番の宇渡(うど)、五番の香本(こうもと)にいい当たりをされるも、バックの好プレーに救われてどうにか踏ん張り、二失点で初回を切り抜けた。ベンチに戻ると、芽衣香(めいか)が元気よく大きな声でベンチを盛り上げる。

 

「さあ、気を取り直して攻撃するわよ!」

「おおーっ! 打てよ、鳴海(なるみ)!」

 

 気合いの入った声援を背に受けて、四番の鳴海(なるみ)が左打席に立ちバットを構える。

 

「よし! スバル、勝負だ!」

鳴海(なるみ)、打たせないよ!」

 

 星井(ほしい)も気合いでは負けていない。

 それもそのハズ。子どもの頃とはいえ、星井(ほしい)鳴海(なるみ)との勝負に負け越していた。実力をつけ、数年越しのリベンジの機会。東西で予選地区の分かれる二人にとって、この試合が最後の対決になることが濃厚。一度首を振った星井(ほしい)は二度目で頷いて、投球モーションを起こす。

 

「ストライクッ!」

「くっ......」

「よしっ!」

 

 初球は、対角線へ食い込むクロスファイアー。左バッターの鳴海(なるみ)には膝元へ食い込んでくるストレート。打ってもファウルになる確率が高い完璧なコースへ決まった。

 二球目は、外へ滑り落ちるシンカーを空振り0-2。鳴海(なるみ)は、二球で追い込まれてしまう。星井(ほしい)は、一球高めに釣り球を投げてから四球目を投げる。ほぼ真ん中から低めへ落ちるフォークボールで空振りを奪った。

 

「よしっ!」

「くそ......」

 

 マウンドで大きくガッツポーズをして、鳴海(なるみ)を指差して微笑む。この三振で勢いに乗った星井(ほしい)は、続く五番、六番も連続三振に切って取った。

 そして、二回の裏パワフル高校の攻撃。恋恋高校はヒットとエラーで一点を失い、3対0とリードを広げられてしまう。その後も回を追う度に失点を重ね徐々に点差が広がり、6回裏パワフル高校の攻撃。バッターは、こここまで二打席連続ホームランを含む三打席三安打の三番東條(とうじょう)

 

「フッ!」

「あっ......」

 

 快音を響かせた打球は、ライトの上空を飛んでフェンスの外へ消えるも、一塁塁審は両手を挙げる。

 

「ファウル!」

「タイム!」

 

 鳴海(なるみ)がタイムをかけ、初回と同じように内野陣がマウンドへ集まった。

 

「あおいちゃん、代わろう」

「絶対にイヤ! ボクは投げれるよ!」

「だけど......」

 

 彼女は肩で息をしている。無理もない、ここまで一人で投げ球数は既に100球を越え、6回までに13失点。心が折れていないのが不思議なくらい。それに、彼女以外に本職のピッチャーは居ない。交代したところで更に悲惨な結果になることは目に見えていた。

 

「はぁはぁ......」

「わかった。だけど、次打たれたら即交代だからね?」

「――うんっ!」

 

 各々ポジションに戻り、試合再開。仕切り直しの二球目、外へのシンカー。東條(とうじょう)はコースに逆らわず流し打ち、理想的な角度がついた打球はレフト上空へ。

 

「ファウル!」

 

 二球連続の特大ファウル。結果的にファウルではあったが、タイミングは確実に合っていた。あおいは、東條(とうじょう)の威圧感に気押されてしまい、ストライクゾーンにボールが入らず、三球連続ボールでフルカウント。

 眼光鋭くマウンドのあおいに睨みを利かせる、東條(とうじょう)鳴海(なるみ)は、彼女に声をかけた。

 

「あおいちゃん! 歩かせていいよ!」

「(いやだ......絶対に逃げたくない......でも)」

 

 多少ボール球であろうが叩き込む。バッターボックスの東條(とうじょう)は、そんな気迫を感じさせる眼をしていた。

 あおいはセットポジションで構える。キャッチャーのサインは外のシンカー。

 

「(絶対打たれたく......ない!)」

 

 勢いよくアンダースローから放たれたボールは、アウトコースのやや甘めに入った。捕手の近衛(このえ)は、すぐに異変に気がつく。

 

「(変化しない!? 抜けた!?)」

「(外の真っ直ぐ、もらった――)」

 

 甘いコースを狙い撃ち。東條(とうじょう)は迷いなく振り抜いた。しかし、そのバットは快音を響かせることはなく、打ち抜いたハズのボールはバックネットへ転がっていた。

 

東條(とうじょう)、振り逃げだ!」

「くっそー!」

 

 キャッチャーはマスクを投げ捨て、必死にボールを追う。

 

「えっ? ......ファースト」

 

 ファーストへ送球――アウトが宣告された。東條(とうじょう)は、バッターボックスからあおいを見つめたまま走っていなかった。球審に促されて、ベンチへ戻る。

 

「(最後のボール......今のは、シンカーか?)」

 

 東條(とうじょう)の考察は当たっていた。

 あおいが投げたボールは、間違いなくシンカー。ただし、打たれたくないという思いから普段シンカーを投げるときよりも強く腕を振った結果、二球目のシンカーよりも速く手元で鋭く変化する高速シンカーに変わった偶然の産物。ストレートと勘違いした東條(とうじょう)も、捕手近衛(このえ)もついていけず振り逃げ。

 

「や......った」

「あおいちゃん、ナイスピッチ!」

「ありがとっ」

 

 グラブタッチをして意気揚々とベンチへ戻る。しかし、好打者を三振に切ったものの点差は13点。この回六点以上取らなければ、コールドゲームが成立してしまう。

 しかも――。

 

「ナイスボールなんだな~」

 

 パワフル高校先発の星井(ほしい)は、ここまで被安打四死球共にゼロ――つまり参考記録ながら6回終了までパーフェクトピッチングを継続中。

 

「行ってくるでやんす!」

「矢部くん! 頼むよ!」

矢部(やべ)、打ちなさい!」

 

 七回表、一番バッター矢部(やべ)がバッターボックスで構える。

 

「プレイ!」

 

 気合いを入れて挑んだ矢部(やべ)だったが、ストレート二球で簡単に追い込まれた。140キロ近い球速のストレートにタイミングが合っていない。投手からすればこのまま勢いに任せて三球勝負へ行きたくなる場面だが、バッテリーはペースを乱さず三球目をアウトコースへ外す。

 

「――や・ん・すッ!」

 

 矢部(やべ)は、その外したボールに食らいついた。左手一本でバットの先に当てる。スピンのかかったボテボテのゴロがファースト方向へ転がった。矢部(やべ)は全力で走る。ファースト宇渡(うど)のスタートがやや遅れた、グラブでは間に合わないと判断して素手で捕球。

 

宇渡(うど)!」

 

 ベースカバーの星井(ほしい)へのトスが逸れた。不規則なスピンのかかった打球を握り損ねた結果の暴投。星井(ほしい)は飛び付いて何とか捕球したが、矢部(やべ)は気迫のヘッドスライディングでベースへ到達。記録はエラーながら、恋恋高校は初のランナーを出した。

 

「ナイス、矢部(やべ)くん!」

「続け続け!」

 

 続く二番、甲斐(かい)の打席。初ランナーを出した星井(ほしい)は、矢部(やべ)の足を警戒して、二球連続で牽制球を投げる。

 そして、バッターへの初球。甲斐(かい)は意表をついてセーフティバント。しかし、打球はやや弱めにピッチャーの正面へ転がってしまう。

 

一塁(ひとつ)なんだな」

「いや、二塁(ふたつ)行ける!」

 

 星井(ほしい)香本(こうもと)の指示を聞かず、セカンドへ送球、矢部(やべ)の足を封じに行くも。

 

「セーフ!」

「くっ......!」

 

 選択は裏目、フィルダースチョイス。

 無死一二塁のチャンス。今の一連のプレーを理事長室から見ていた東亜(トーア)が、ソファーから立ち上がった。

 

「どちらへ?」

 

 倉橋(くらはし)理事長の問い掛けに答えず鼻で笑った東亜(トーア)は、理事長室を出ていった。

 

「アウトッ!」

 

 グラウンドでは、三番バッター奥居(おくい)が捉えた痛烈なライナーを、ショート小田切(おだぎり)がジャンプ一番で捕球し、ワンナウトが取られたところ。

 

「惜しいわね、あともう少し逸れていたら......」

「やってるじゃねぇか」

「えっ?」

 

 険しい表情(かお)でグラウンドを見守る理香(りか)に、降りてきた東亜(トーア)が声をかける。

 

「遅いわよ、どこで油を売っていたの? もう終盤よ」

「まあ、別にいいじゃねぇか。おい、お前次のバッターだろ」

「え? あ、はい」

 

 見知らぬ金髪の男に声をかけられ戸惑いながらも、鳴海(なるみ)東亜(トーア)の元へ。

 

「ねぇ、誰あれ? 何かどっかで見たことあるような気がするんだけど」

「オレもだ、どこだっけ?」

 

 などなど......ベンチ内に疑問の声があがる。それらを気にする様子もなく、東亜(トーア)は要件を伝えた。

 

「三球目、外から入ってくるスライダーを狙え」

「えっ?」

「お前に勝機があるとすれば、その一球だけだ。ほら、思い切り振ってこい」

 

 鳴海(なるみ)はバッターボックスへ。東亜(トーア)は、そのままベンチの空いている席に座って足を組む。

 

「今のどういうこと?」

「フッ、まあ見てればわかるさ」

 

 星井(ほしい)は、ランナーを警戒しながら投げるも初球、二球目と共にボール。そして三球目、キャッチャーのサインに頷いて投げた。

 

「(――本当に来た!)」

 

 鳴海(なるみ)は、東亜(トーア)の指示通りボールから入ってくるスライダーを完璧に捉えた。打球は快音を響かせ、レフト上空へグングン伸びて飛んで行く。

 

「抜けろー!」

 

 ベンチが沸き上がる。

 

「狙った球だ、余裕でフェンスを越えるさ」

 

 東亜(トーア)の予告通り、打球はフェンスを越えて駐車場付近で跳ねた。

 まさかの特大の一発にマウンドで茫然とする星井(ほしい)。ノーヒットノーランを打ち砕いた一撃は、反撃の狼煙を上げるスリーランホームラン。

 

「さあ、反撃開始だ」

 

 3-13。点差は10点。

 ここから、恋恋高校の反撃が始まる。


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