※パワプロくんのポジションに――
P.S.
※アプリに同姓のキャラが居ることを素で忘れていました。(実装前にサクスペの方へ移行したため)。今から変えるのは大変なので
「またいきなり無茶な注文をしてくれるわね......」
頭を抱える、
「お忙しいところ申し訳ありません。わたくし、私立恋恋高校の野球部の......」
「そうですか......。いえ、お忙しいところありがとうございました、失礼します」
受話器を置いて大きなタメ息をついた。結果は、全滅。無理もない。再建したばかりの弱小校の相手をしてくれる物好きな名門・強豪学校などそうありはしない。
「はい、恋恋高校です。はい、わたしがそうですけど。ええ、えっ? ありがとうございます! はい、お待ちしています。失礼します」
受話器を置いて、小さくガッツポーズ。
「さっそく打ち直しね!」
――練習試合の相手が見つかった、と打ち直してメッセージを送信。先ほどの電話の相手は、二番目にかけたパワフル高校の監督。一度断られたが、所属する選手たっての希望で練習試合が決まった。日時は入学式の午後、恋恋高校のグラウンド午後2時プレイボール。
* * *
「連絡は以上だ」
「起立。礼」
恋恋高校三年A組。
始業式後のホームルームが終わり、各自移動を開始。帰宅する生徒、委員会へ向かう生徒、図書室や塾で受験勉強に励む生徒。そして、部活動を行う生徒。
このクラスには、野球部員が三人籍を置いている。
「部活だ! 部室に行くよ、
気合い十分で立ち上がったのは、野球部のキャプテンを務める男子――
「ちょっと、待って欲しいでやんすー!」
常に「やんす」と特徴的な語尾をつけて話し、瓶底眼鏡をかけた男子――
「ほらっほらっ、早くっ!」
もたついている
「気合い入ってるね、あおいちゃん」
「当然だよ、今年の夏は堂々と甲子園を目指せるんだからね!」
彼女は、恋恋高校野球部が公式戦出場停止の原因となっていた女子部員の一人。マネージャーではなく、選手として予選大会に選手登録してしまったため、男子生徒以外出場してはならないというルールに反してしまった。
事態を重く受け止めた連盟は、公式戦出場停止処分を科した。
後に処分は解かれたのだが、結局女子選手の出場は認められず。納得のいかなかった恋恋高校野球部は署名活動を行い、女子部員が所属する野球部がある学校を始め、全国へと広まっていった。
そして、去年の冬。長年の歴史が動き、遂に女子選手の出場が認められることとなった。
「
「オッケー!」
隣の三年B組。あおいは、ドア付近から声をかける。
「お待たせー」
迎えに来たあおいと合流して、グラウンドに併設される部室へ向かう。部室には既に、マネージャーを含めた部員全員が揃っていた。あおいと
「でも、このユニフォームを着て試合に出れるなんて......。ボク、まだ信じられないよ」
「ふーん。じゃあ、ほっぺつねってあげよっか?」
「い、いいよっ、いいよっ!」
「二人とも遊んでいないで急いでくださいね」
いたずらっ子の様な
「よっし、準備オッケー。あおいは?」
「ボクも準備出来たよ。さあ行こう」
「はい、行きましょう」
三人は揃って部室を出る。ベンチ前に集まる部員たちの元へ向かう
明るく爽やかな日差し、空は雲一つなく澄みきった青空。部室脇の桜の木は満開に咲き誇り、散り始めた薄紅色の花弁がグラウンドに舞う。
ゆっくり一呼吸して、駆け出した。
「よーしっ。みんな、お待たせ!」
「さあ、練習を始めよう。ジョギングから!」
キャプテン
「新入部員は何人いるんだろうなぁー」
「さあ、どうだろう。でも、たくさん来て部レベルが上がるといいな」
「オイラは、かわいい女子部員を希望するでやんす! 手取り足取り個人指導......ムフフッ! でやんす」
「おいおい......」
呆れ
「そんなこと考えてると、一年にポジション奪われてベンチだぜ?
「最後の夏をベンチから応援かぁ、よろしくね」
「じょ、冗談でやんすー!」
二人の笑い声がグラウンドに響く。
そこへ、一人の少年が近づいった。
「ずいぶん楽しそうだね。
「えっ?」
後ろから声をかけられ、振り向く。
「あっ、お前は――スバル!?」
「やあ、久しぶりだね」
「
「えっと。子どもの頃からの友達」
彼の名は――
そして今日の試合は、彼が監督に懇願し実現した。
「どうして、スバルが? それに、そのユニフォーム......」
「親の都合で転校したんだよ。キミたちは聞いてないのか? 今日の練習試合のこと」
「練習試合?」
頭にクエスチョンマークを浮かべる三人。
「
「ああ、今行く。じゃあお互いベストを尽くそう」
「みんな集合して!」
反対側のベンチからユニフォーム姿の
「監督、これはいったい――」
「急でごめんなさいね。見ての通り、今日は練習試合を組んだわ。相手は、パワフル高校よ」
「パワフル高校って......秋季大会ベスト8の!?」
「え......ええーっ!?」
驚きと戸惑いが入り交じったどよめきが起こった。
「はいはい静かに。こんな機会めったにないんだから全力で胸を借りましょう。じゃあ、ポジションを発表するわね。まず先発――」
恋恋高校がポジションを発表している時、パワフル高校側もスタメン発表が行われていた。
「では、先ず先発だが......」
「監督。今日の試合、ボクに先発させてください」
「ちょっと待てよ。オレは、マウンドを譲る気はないぜ!」
「
「うむ......」
監督は悩んだ末に答えを出した。
「
「ありがとうございます!」
「松倉、お前は先週の練習試合で完投している。今日は、6番でライトに入ってくれ。もちろん、展開次第では出番もあるぞ」
「ちぇ~、わかりましたよ。
「悪いけど譲る気はないよ。エースナンバーも、ね」
パワフル高校の秋季大会ベスト8は、投手よりも打撃陣による得点力が大きな要因だった。しかし、
そして今年は、パワフル高校の急所であったセカンドに有望選手――
一方、恋恋高校は......。
「以上よ。さあ、思いっきり戦ってきなさい」
「はい! みんな円陣を組もう」
「久しぶりの試合だね。相手は、強豪......正直難しいと思う。だけど、勝負するからには全力でぶつかって行こう! 恋恋ファイッ!」
「オオーッ!」
大きな掛け声。グラウンドへ駆け出した。
お互いに向かいあって整列。
「それでは恋恋高校対パワフル高校の試合を始めます。先攻、恋恋高校」
――お願いします! と礼をして、パワフル高校の選手がグラウンドへ散らばる。パワフル高校の先発は、
「行くよ、
「オッケーなんだな~」
捕手は、鈍足だが巧みなインサイドワークとチャンスに強い打撃が売りの、ぽっちゃり体型の捕手
「さすがスバル、投球練習なのに速い......。
「任せるでやんすー!」
一番バッター、センター
「プレイボール!」
球審の右手が上がり、試合が始まった。