オラリオで槍の兄貴(偽)が頑張る話   作:ジャガボーイ

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8話

ドラゴンを討伐した俺達は、今まで以上の報酬を手に入れてホクホク顔でホームへと帰還した。

ロキ・ファミリアも俺達デメテル・ファミリアも大きな利益を得たと同時に、ランクアップと魔法・スキルの発現により、オラリオは沸いた。

 

ロキファミリアの最高戦力であるフィン・リヴェリア・ガレスの三名がレベル2へとランクアップしたのだ。

そして、俺もまたイカれたアビリティ上昇と共にレベル3へとランクアップを遂げていた。

 

クー・フーリン

 

LV3

 

力・I0

耐久・I0

器用・I0

俊敏・I0

魔力・E460

耐異常C

精癒 C

 

魔法

 

ゲイ・ボルク

 

・槍にのみ、使用可能

 

戻る武器

 

・無詠唱魔法

 

ルーン魔術

 

・指先に魔力を宿し、文字を描くことで発動する

 

スキル

 

半神半人

 

・早熟する

 

・不完全なる不変を得て、神に至る可能性を得る

 

・生命力があふれる年齢で肉体が固定される

 

仕切り直し

 

・戦闘から離脱する時、ステイタスが上昇。

 

・離脱しやすくなる

 

森の賢者

 

・ルーン魔術の威力向上

 

これが現在の俺のステイタスである。

 

超魔法スキルに分類されるルーン魔術を発現し、森の賢者としての知識を思い出すように得た俺は、ダンジョンに潜る事を一時的に止めてファミリアの為に魔力を屋敷の庭で限界までひり出していた。

 

「社長の良いとこ見てみたい!!はい!!」

 

『社長の良いとこ見てみたい!!』

 

「やかましい!!」

 

そう、俺達デメテル・ファミリアは庭でルーン魔術により、野菜と果実の品種改良などの実験を繰り返し、神の舌をも唸らせる食材の開発に勤しんでいた。

育てているのはリンゴとブドウとジャガイモと高級なメロン様だ。

 

初めは俺の好奇心だった。

森の賢者であるキャス兄の力が顕現し、力を得た俺なら野菜や果実を育てたい放題なのではないか?と。

そして、ルーンによる成長促進に少しづつ手を加えて開発したものをファミリアに振舞った。

 

自分が限界まで消耗し、試行錯誤して栽培した野菜をファミリアの連中は美味い!!美味い!!と喜んでくれた。

気分を良くした俺は、ファミリア全員に栽培方法と自分の苦労を語った。

 

そう、うかつにも語ってしまったのだ。

俺の語りを聞いた奴らは金になると瞳を輝かせ、種を含む果実を購入。

 

俺一人で行っていた魔術による魔術農法はファミリア全体で執り行われる事になった。

俺が魔力を絞り、栽培された野菜を社員たちが試食して総評と改善点をたたき出し、再び俺が魔力を絞って栽培。

団員の頭脳と俺のブラックで過剰な労働の成果によって俺が育てた果実たちは神の舌をも唸らせる人気の新商品『至高の果実』と名付けられた果実たちはジャガ丸くんの隣で販売された。

 

通常の4倍価格で販売されたにも関わらず、試食コーナーで果実を食べた全ての人間…特に食品関係の人間と王国などの外の国と取引している商人は生者に群がる亡者のごとく果物に群がった。

俺の予想を大きく超える人気ぶりにより、俺は現在の様に果実と野菜の製造マシーンと化してしまったのだ。

 

まあ、お陰で俺達のファミリアと生産者である俺の懐は潤いまくり、大きな店と農地の購入も決定したのだが……。

 

あと、ついでに俺を狙う神々が増えたらしい。

増加の原因は、チートはつまらんと言っていた神も俺の有用性と未知によって手のひらを返したように求めているようだ。

 

 

「いやー、社長マジ最高っすね!!」

 

「社長が居れば俺達のファミリアが商業系のトップになるのも夢じゃないですよ!!」

 

「新人も増えたし、あっと言う間に中堅に上り詰めたよな……」

 

魔力を果実たちに注いでいるとファミリアの奴らの声が聞こえる。

 

「そういえば、社長の二つ名ってまだ決まっていないよな」

 

「ああ……。ランクアップしたんだからないと駄目だよな…」

 

「明日はバベルで神会が行われるらしいから…明日社長の二つ名が決まるんじゃない?」

 

「ロキ・ファミリアのフィンさんは『勇者』を希望しているらしいぜ」

 

「おお…カッコいいな。神たちの二つ名はどれもセンスがあってカッコいいから羨ましいぜ」

 

魔力を注ぎながら社員たちの会話を聞いているとどうやら、明日でも二つ名がもらえるらしい。

そういえば、ギルドで噂になっているゼウス・ファミリアの最強である金髪のイケメン君は『白銀の騎士』だったか?

俺も何か希望すれば通るのだろうか?

 

「この間のあれは最高だったよな!!」

 

「おう!!『美尾爛手』は最高だった!!俺もあんな二つ名が欲しいぜ!!」

 

「まったく、神が思いつく二つ名は最高だぜ!!俺は『皇帝』一択」

 

ビ、ビオランテ…だと!?

何処の大怪獣の名前だそれは!?

そして皇帝だと!?

 

それにカイザーだと?なんだそれは…ギャグか?

遊〇王が強くなりそうな二つ名だな……。

 

こ、こうしては居られない!!そんな痛々しい二つ名をつけられるくらいなら『槍兵』で十分だ!!

 

俺は野菜に十分な魔力を注いだ後、土にまみれたまま、デメテルが仕事をしている執務室へと直行した。

 

「デメテル、話がある!!」

 

「な…なによ、いきなり……?」

 

扉を破壊する勢いで開けた俺に戸惑いを見せるデメテルに俺は二つ名について話をした。

 

「あー……。貴方は他の子供たちと違って大人なのね…。

ちょっと安心したわ」

 

「おい…アイツらのセンスが特殊なだけじゃないのか?

他の連中もカイザーをカッコいいと感じるヤツばかりなのか…?」

 

「そうよ、だから誰も娯楽に飢えた神の餌食になっていると知らないの」

 

なんてこった。

あの痛々しい二つ名は全部神が面白半分に付け、付けられた冒険者を陰ながらバカにする為だけに存在しているらしい。

それじゃあゼウス・ファミリアのイケメン君が普通なのは……

 

「じゃあ、ゼウス・ファミリアの二つがまともなのは……」

 

「あのファミリアは千年前から存在する最強のファミリアよ?

へんな二つ名を付けようものなら潰されるわ」

 

「なるほどな」

 

「安心しなさい。貴方とロキファミリアの子は大丈夫だから」

 

「そ、そうなのか?」

 

デメテルの言葉を聞いて安心する俺。

しかし、俺達のファミリアは中堅どころだ。

そんなファミリアに気を遣う神がいるのだろうか?

 

「その顔…疑っているわね。

大丈夫よ、貴方の作ってくれた果実を交渉材料に無難な二つ名をつけてくれるように根回しをしているから……。

ロキはボーナスが亡くなってもいいから(※誤字ではありません)一緒に頼んでくれと血の涙を流しながら頼んできたわ」

 

「その光景が目に浮かぶようだ」

 

「だから安心しなさい。あなたには無難な二つ名をつけてあげるから」

 

そう言ったデメテルは、微笑みながら会計などの仕事に戻ったので退室した。

そして、仕事をしているデメテルを見て、ふと思った。

そういえば…俺ってデメテルに何もしていなかったよな……。

 

フィン達、ロキ・ファミリアはバイトで頑張っているロキをみてお酒を買ってあげたという話をダンジョンで聞いた覚えがある。

俺も何かデメテルにプレゼントの様な物を送ってやるべきだろうか?

 

幸い金は数百万ヴァリスある。

デメテルにプレゼントを一つや二つしても腹は痛まない。

 

まあ、たまにはいいだろう。

 

俺は、早速ファミリアの女性陣にプレゼントについて相談するのであった。

 

 

 

 

「ほほう?つまり、社長も乳の誘惑に負けたのですね?」

 

「ちげぇよ。人聞き悪い事を言ってんじゃねぇぞ」

 

「はいはい。男の人は皆そういうんですよ。

ごめんなさいね?中途半端で」

 

「おい、そろそろ殴るぞ」

 

「冗談です」

 

副団長ならぬ副社長を務める獣人の女性は、俺の相談に無表情でしてくれたはいいのだが、本気か冗談か分からない言動にイライラする。

 

「では、ドレスや化粧品ではどうでしょうか?神会と神が催す、神の宴も近いと思いますので、丁度よろしいかと思います」

 

「ドレスと化粧品か……そうだな、いつもよれた服ばかり着ているし、それにしよう。

後、わりぃが付いてきてくれぇか?さすがに男の俺じゃあ買うのは無理だ」

 

「……お断りです。

そもそも、デメテル様の様なだらしな……異常に発達した胸部と臀部に合うサイズを見つけられるはずはありません。

プレゼントをするならデメテル様と一緒に行けばいいのでは?」

 

「な、なるほど…」

 

副社長の言う通りだ。

確かにデメテルは豊穣の女神と呼ばれるだけあって、胸と尻はデカい。

デメテルに合わせたサイズのドレスを購入するとなればオーダーメイドになるだろう。

 

これは一緒に行くべきか……。

 

「……行くのでしたら、仕事の引継ぎは任せて大丈夫ですので遠慮なく乳繰り合ってきてください」

 

「いや、ただの買い物だから…乳繰り合う事は間違ってもないから……」

 

優秀ではあるものの性格が歪んでいる副社長にデメテルの仕事の引継ぎを頼み。

げんなりとした気持ちでデメテルと共に街に繰り出した。

 

………。

 

オラリオの街の商店街の店にやって来た事を後悔した。

 

「クー、これなんてどうかしら?変じゃない?」

 

「ああ、似合ってる。

変じゃないから安心しな」

 

「もう!せっかくあなたが買ってくれるのだからいいものを選びたいの!」

 

白く燃え尽きたボクサーのような状態で、テンプレートな言葉を言う俺にプリプリと怒るデメテル。

確かに、その表情は珍しく可愛らしいと思える。

デメテルのような美女と買い物にこれた事も嬉しく思う。

 

しかし、化粧品を選ぶのに2時間。

 

ドレスと服を選ぶのに3時間。

 

昼頃にホームを出たはずなのに外は完全に夜だ。

待ちきれなくなった俺はデメテルに一番似合うんじゃないかと目をつけていた亜麻色でフリルのついたドレスを取って、デメテルに渡す。

 

「なら、これにしろ。

俺の中では一番お前に似合うと思うドレスだ。

着たら、きっと綺麗だろうよ」

 

「え?えっと……本当?」

 

「ああ、本当だ。

お前が選ぶのに夢中になっている間に目星をつけておいた」

 

「じゃ、じゃあこれにしようかしら」

 

両手でドレスを握りしめているデメテルを見て、ようやく買い物が終わると思った俺は会計へと向かった。

 

「えー…サイズ変更にしばらく時間が掛かりますがよろしいですか?」

 

「ああ」

 

「では、先にお会計となります」

 

副社長の助言により大金を持ってきた俺は、化粧品と服…そしてこのドレスの代金無事に支払う事が出来た。

ま、まさかドレスがこんなにするとは……流石は副社長。

殆ど空になった財布を見つめて、副社長の優秀さに脱帽した。

 

「クー。今日はありがとう。

あの……今日、買ってくれたものは大切に使わせてもらうわね」

 

「……おう」

 

恥ずかしいのか頬を染めながらも笑顔を浮かべるデメテルを見てに満足した俺だった。

 

しかし、突如として気持ち悪い何かを感じ取る。

 

俺の体に絡みつくような何か……。

ごく最近ではとても身近な物……。

 

視線だ。

 

誰かが俺を見て……。

 

「ん?アンタ…珍しいところで会うね」

 

「お前は……」

 

辺りを見渡していると俺と同じくらいの身長の見覚えのある女が立っていた。

そして、その隣にはオッタルと呼ばれた青年はおらず、ローブに包まった女が立っていた。

 

コイツ…神か?

 

「久しぶりね…デメテル。

元気だったかしら?」

 

「あら、フレイヤ?お久しぶりね。

そっちも元気だった」

 

デメテルに挨拶すると同時に頭にかぶっていたフードを取る。

どうやら、デメテルと知り合いの様だ。

その女は光り輝く銀の髪に、吸い込まれそうな紫の瞳を持つデメテル以上の美を持つ女神だった。

 

店に居た店員と客は男女問わず一人残らずこの女神を見つめている。

その表情はまるで、魂を抜かれたかのようだ

 

確かに美しい女神だ。

美しいのだが……同時に危険な何かを感じる。

俺の勘にしか過ぎないのかもしれないが、この女にあまり深入りすると不味い感じがする。

 

デメテルと世間話をしている姿はごく普通。

危険や怪しいところは見受けられない。

 

なんなんだろうな…この感覚の正体は。

 

「へぇ…うちの主神を見て睨み付けるなんて……。

男で、そんな反応を見たのは初めてだよ」

 

「あれ…本当に女神か?」

 

「ああ、あたしが所属するフレイヤ・ファミリアの主神様で美の女神さ」

 

「美の女神…か」

 

俺とミアが談笑している女神達を見ていると。

フレイヤがニコリと笑って俺を手招きする。

 

「ねぇ。私にもドレスを選んでくれないかしら?」

 

「クー。選んであげて」

 

「……わかった」

 

気が進まないが、一応デメテルの知り合いの為、頼み通りにドレスを選んでやることにした。

 

再び、ドレスコーナーに移動した俺達。

俺はさっそく、フレイヤに似合うドレスを選ぶ為に見て回る。

 

「ドレスは何処で着るんだ」

 

「そうねぇ…プライベートと神の宴かしら」

 

「じゃあ……」

 

俺はフレイヤという女神のイメージを元にドレスを二着選んで、フレイヤに渡した。

 

「あら?意外と早く見つけたのね?」

 

「ああ、アンタに対するイメージで選ばせてもらった」

 

「…そう」

 

一着目はパーティ用の白いドレス。

この女神の髪と白い肌に合っていると思ったからだ。

 

そして、二着目は………。

 

「ちょっとクー……。

これは破廉恥すぎない?」

 

「それはプライベート用だ。

その女神にお似合いの一着だとおもうぞ?」

 

色が黒で、ほとんど布がない破廉恥なドレスだ。

この女神の美しさの中に隠れた何かにぴったりだと俺の直感の様な物が言っている。

デメテルの中で俺の株は暴落しているのかもしれないが、後悔はない。

 

それにだ。

これで、この女神との縁を断ち切れるのならエロ野郎と罵られても安い物だ。

 

「じゃあ、これを買うわ」

 

「は?」

 

フレイヤは嫌な顔をせず、自分に合った同じドレスを数着ほど取り出し、スタスタと会計コーナーで会計を済ませていた。

マジか?

俺が言うのもアレだが相当破廉恥な物だったぞ、あの黒いドレス……。

 

俺とデメテルは美の女神のセンスに戦慄しつつ、サイズ変更が終わったドレスを受け取って帰路についた。

 

 

☆フレイヤ・ファミリアにて……☆

 

ホームに帰った美の女神フレイヤは今までに見た事のない最上の光に興奮し、淫らな表情を浮かべていた。

 

欲しい…彼が欲しい。

 

彼…クー・フーリンと別れ、ホームの自室へと戻った後、フレイヤはまるで情欲に溺れ男を求める娼婦の様にクー・フーリンを心の中で求め、ベッドの上で己の下半身に手を伸ばす。

 

「何処までも蒼く……何処までも広く輝く、彼が欲しい」

 

恐らく彼女が相手にして来た男神や人間たちが誰一人として聞いたことがない本気の声に、駆け足で部屋に駆けだした主神を心配する眷属たちを魅了した。

次の日フレイヤの部屋の前で下半身を露出させ、気持ち悪い表情をした男達が転がっている光景が発見され。

ファミリアの女性たちにボコボコにされる事となる。

 

「彼は私の物……いつか、絶対に手に入れて見せる」

 

 





フレイヤが欲情している理由についてですが、オリ主が高次元の世界からやって来た…存在であるため、つい最近まで一般ピープルだったオリ主でも欲情してしまったという事になっております

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