オラリオで槍の兄貴(偽)が頑張る話   作:ジャガボーイ

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10話

椿と共にダンジョンに潜るようになってから5年以上の歳月が流れ、デメテル・ファミリアがゼウス・ヘラと並び立つ大きな組織となった。

そんな中、俺は相も変わらず、ダンジョンに潜ったり、神々の勧誘を跳ねのけたり、ギルドやウラノスの依頼を遂行したり、至高の野菜を栽培したりとある程度は自由気ままな生活を送っていた。

 

今日は、デメテル・ファミリアが開店する酒場の店長に厨房で料理指南をしていた。

 

「これがジャガ丸くんの作り方だ」

 

「……アンタ本当に料理が出来たんだね」

 

「信じていなかったのか?」

 

スパゲッティやジャガ丸くんなどの料理を教えている俺にショックを受けている店長。

いや、『豊穣の女主人』の店長であるミア・グラントは自分よりも料理が出来る俺にダメージを負っていた。

 

「しかし、いいのか?アンタはまだ、フレイヤ・ファミリアに在籍している状態なんだろ?

よく、あの主神が最高戦力の一人であるアンタに他のファミリアが出す店の経営の許可を出したな」

 

「あの主神は、アンタにぞっこんだからね。

少しでもデメテル・ファミリアに縁を作りたいんじゃないか?」

 

「マジか……」

 

「まあ、月並みの言葉で申し訳ないが気を付けな」

 

「おう」

 

「じゃあ、私が作って見るから不審な点はないか見ておくれよ」

 

雑談を交えながら料理を習得した彼女は、今日の夜店を開店させる。

俺は、指導した人間として、しばらくは客に紛れて彼女の様子を見守る予定である。

 

「ほう、上手くできてるじゃねぇか。

これなら問題ないな」

 

「あんがとさん。

まあ、ほとんどアンタの書いたレシピ本のお陰なんだけどね」

 

「初めはマニュアル通りでいいさ。

もし、オリジナルの料理を出したくなったら言いな。

ウチのファミリア連中が判定してやるよ」

 

「ああ、その時を楽しみにしてな。

…所でアンタとゼウスのところのアーサーが主役の本が発売されたそうだね?」

 

不敵な笑みでこちらを見てくるミア。

全く、面倒な話を……。

 

「まったく、困った話だぜ」

 

「タイトルは『クー・フーリン』と『ダンジョンオラトリア』だっけ?

なんでアンタだけ名前なんだろうね?」

 

「うるせぇ…出版するファミリアの連中が勝手に決めた事だ。

こっちが抗議しても聞きやしねぇ」

 

「オラリオ…いや、世界最強の抗議を跳ねのけて出版するなんて……なかなか度胸があるじゃないか」

 

感心したように感想を述べるミア。

そう、俺のレベルは8となって世界最強の称号を手に入れた。

お陰で、ギルドの主神から寄せられる面倒な依頼も受けなくちゃいけなくなった。

しかも、面倒ではあるが嫌いではないので断る事が出来ないのがなんとも言えない。

 

俺はミアの料理を食べ、皿を片づけた後、一旦ホームへと戻り、派遣するウェイトレスの最後の指導を行い。

ウェイトレスを送り出し、知り合いに声を掛けながら店へと向かうのであった。

 

 

☆☆☆

 

 

「…いきなりホームにやって来たと思えば、珍しいですね?

クーさんが僕たちを誘ってくれるなんて」

 

「ガハハハッ!!クー、今日こそ酒で勝負せい!!」

 

「対等ではない勝負に勝ってもむなしいだけだぞ?ガレス」

 

「悪いなぁクーやん。バイトを辞めたウチや新人の子まで奢って貰えて…。

なに?うちの好感度を稼ぎたいんか?チューして欲しいんか?

それともリヴェリアとチューしたいんか?うん?」

 

「バイトを辞めて久しぶりに会ったが、相変わらずの親父ぶりだな…ロキ」

 

俺が誘ったのはロキファミリアのメンバーと……。

 

「僕だけじゃなく、妻と娘を誘ってもらってすみません。

クーさん、僕らのお金は自分が払いますので大丈夫ですよ」

 

「気にすんな。

お前ら家族はジャガ丸の常連で友人だからな。

遠慮するんじゃねぇーよ」

 

「そうですか?無理していないのでしたらいいですが……」

 

「安心しろよ。

幸い、金は腐るほどあるんだ。

ロキファミリアとお前ら家族にヘファイストス・ファミリアの二人くらい余裕で奢れる」

 

「分かりました。

なら、今度は僕に奢らせてください。

ほら、アイズもお礼を言って」

 

「ありがとー!!」

 

「おう!」

 

アーサーの娘である金髪の幼女…アイズの元気の良い笑顔に気分を良くした俺は他に誘ったヘファイストス・ファミリアの二人にも声を掛ける。

 

「そんな感じで、お前らも遠慮する必要はないからな」

 

「「……」」

 

声を掛けられた二人の美女。

主神ヘファイストスと団長へと就任した椿は俺に対して冷たい視線を向けている。

俺って何かしたか?

 

二人の様子に疑問を抱いていると二人はそろって口を開いた。

 

「「ロリコン」」

 

「よし、ちょっと面ぁ貸せや。

俺の男女平等パンチが光って唸るぜ?」

 

俺はロリでほっこりする事はあるが、劣情を抱く変態ではない。

どちらかと言うとグラマーなボインが大好きだ。

 

椿のつながりで槍と鎧を改造して貰ったり、定期的に見てもらったりしている関係でヘファイストスも呼んだのだが、呼ばない方がよかったか?

 

まあ、最後にひと悶着があったが、俺達は無事に店へとたどり着いた。

 

☆☆☆

 

 

「いらっしゃいませー♪」

 

店に入ると俺の指導通りに接客を行う従業員達。

愛想の良い店員の歓迎でデレデレするガレスとロキ。

 

他の連中も二人ほど過剰ではではないが、感心した表情を見せているので好評のようだ。

 

「ほう。新店舗だけに中々に清潔感がある良い店だな」

 

「おお?リヴェリアが褒めてくれるならこの店は安泰だな」

 

「店員も礼儀正しく、店が綺麗なのだ。

私が褒めなくても客は来ると思うが?」

 

「いやいや、お前の感性は信頼できるからな。

俺も安心だぜ」

 

「全く…お前と言う奴は……」

 

 

呆れた表情を見せるリヴェリアをスルーしながら店員たちが案内するテーブル席へと座り、それぞれが思い思いに料理と酒を注文していく。

幼女であるアイズと母親であるアリアは果実ジュースだ。

 

俺達冒険者とその家族の楽しい夜が過ぎていく。

永遠に続けばいいと思っていたこの時間。

 

しかし、いずれどのような出来事にも終わりがやって来る。

辛い事も楽しい事も例外なく終わりがある。

 

俺は化け物のようなステイタスで忘れがちであるが、冒険者とはいつ死んでもおかしくない職業である事を近いうちに思い出すのであった。

 

 

 




感想等いつもありがとうございます。
今後も皆様の評価などをお待ちしております。

※作者が認識しているランクアップについて。
私の認識でありますが、ランクアップとは格上の敵を倒し、偉業を成し遂げる事。
このダンまちの世界において格とはレベルの事を指しており、レベル1であるオリ主の基礎能力がいくら高くてもレベル以上の敵や試練を打倒すれば、ランクアップすると考えております。

そうでなければ基礎能力の高い人間はいつまでたってもランクアップする事が出来ず、才能のある人間は成長する事が難しいと感じたからです。
才能のある人間が、いつまでも弱いままではおかしいと思いますし、英雄を求めている神からしたら、より速いランクアップを求めると思います。

この認識を間違っていると思いましたら、感想に書き込んでいただけると嬉しく思います。

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