ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
歪みの中を進め 幻想郷への道
悟空たちがセルとの闘いを終えてあれから三年の月日が流れた。
地球は平和そのものであった。
そして今日は未来からトランクスが人造人間とセルを倒したという報告に来ていた。
「トランクス!元気だったか?」
「はい、クリリンさんもお元気そうで。」
「それで、おまえの世界はどうなった?ちゃんと平和になったのか?」
「はい!人造人間もセルもなんとか倒すことが出来ました。これも皆さんのおかげです。」
「そうか!そいつはよかった!これでおまえの世界にも平和が戻ったんだな……。」
「ええ。これですべてが終わりました。……ところで悟空さんとホウレンさんの姿が見えないようですが、お二人はどちらに?」
「ああ、悟空なら今界王様のところに行ってるらしいぞ。なんでも大変なことが起きたとかで。」
「大変なことですか……。ではホウレンさんは?」
「…あいつは、もういないよ。」
「え?」
「トランクスが帰ったあとすぐにホウレンも宇宙へ飛んでっちまったんだ。記憶を探すためにな。だからここにはいないんだ。」
「そうだったんですか……。残念です。記憶…戻るといいですね。」
「ああ、そうだな。」
場所は変わってここは界王星。悟空は界王様に呼び出されて界王星に来ていた。
「界王様。オラに話ってなんだ?」
「うむ。実は最近、地球で少し困ったことが起こってな。そのことでおまえを呼んだんじゃ。」
「地球で困ったこと?また誰かとんでもねぇやつが現れたんか!?」
悟空は驚いたようにだがどこか嬉しそうに界王様に詰め寄った。
「そんなに簡単にとんでもないやつが出てたまるか!今回呼んだのはそういうものじゃなーい!」
「なんだよ…じゃあ何があったってんだよ界王様。」
「コホン!三年前、セルとの闘いで最後セルが自爆したのを覚えているな?」
「ああ、忘れるわけねえさ。それがどうかしたんか?」
「うむ。実はその時の爆発によって時空が歪んでしまっていたようなんじゃ。最初はとても小さな歪みだったようで放っておけばすぐに元通りになる程度のものだったみたいじゃが、最近になってその歪みが突然大きく変化し始めたのじゃ……。」
突然の難しい話に悟空は軽く首を傾げる。
「?その歪みってのが大きくなるとどうなるんだ?」
「あちら側の世界と繋がってしまうんじゃ。」
「あちら側?いってえなんのことだ?」
「時空の歪みの中にある世界。幻想郷のことじゃ。」
「幻想郷…オラ聞いたこともねえぞ。」
「本来幻想郷の存在は誰にも知られていない。知っているのは神々だけじゃからな。おまえさんが知らんのも無理はない。」
「その幻想郷っちゅうところと繋がっちまうとどうなるんだ?」
「それはな。この世界の常識が狂ってしまいかねんのじゃ。それだけこちらの世界とは大きく異なる世界というわけじゃな。そこでじゃ!悟空、おまえさんとその仲間たちでこの幻想郷に直接入って中にいる博麗の巫女、または八雲紫を探してこの問題を解決してほしいんじゃ。」
「博麗の巫女と八雲紫か…。そいつらに会えばいいんだな?それだけなら別にオラ一人でもいいんじゃねえのか?」
「そういうわけにもいかんのじゃ。幻想郷には本来誰も入ることが出来ん。例外として一時的に開いてしまった時空の穴に入り込んでしまいその世界に迷い込むものもいるそうじゃが、今回は自分たちから入ろうとしているわけじゃからな。時空の歪みにおまえさんらで力を合わせて気で無理やり時空に穴をあけて侵入してほしい。それが今回の相談じゃよ。」
「……界王様。その幻想郷っちゅうとこにはつええやつもいるんか?」
「ん?おお確かにおるな。今言った博麗の巫女や八雲紫はもちろん、いろいろな能力を持ったものがたくさんおる。じゃが悟空。あくまで今回は闘うことが目的じゃないのじゃからな?わかっておるか?」
「へへっ、わかってるって!それじゃあオラみんなを集めてくっから、場所を教えてくれ。」
「うむ。場所はセルゲームがあった場所じゃ。そこに着いたら全員で気を全開にして思いっきり叫んでくれ。」
「叫ぶだけでいいんか?」
「おぬしらが全開の状態で気弾なんぞ撃ったら地球が壊れてしまうからな。叫ぶだけでも十分じゃ。さあいけ、悟空!頼んだぞ!」
「おう、任せとけ!じゃあな界王様!」
悟空はそう言って瞬間移動で地球へ戻っていった。
そして悟空はカプセルコーポレーションにやってきた。
「悟空さん!お久しぶりです!」
「おっす!トランクス、随分久しぶりだな!元気してたか?」
「ええ、おかげさまで。悟空さんは用事があったようですが、もう終わったんですか?」
「それがよ。ちょっと面倒なことになってきてな…。ちょどいいやトランクス、おめえの力も貸してくんねえか?」
「え、オレの力もですか?」
「ああ、それと悟飯。ピッコロ。ベジータも力貸してくれっと助かる。」
悟空が指名したのは全員が強い気を持っているものだった。
指名された三人は悟空の元に歩み寄り悟空から話を聞く。
悟空は界王様に言われたことを全員に話した。
「なるほど、時空の歪み。それに幻想郷か。」
「ピッコロ、おめえ知ってるんか?」
「オレも元は神だからな。聞いたことくらいはある。いいだろう。オレも手伝ってやる。」
「お父さん、ボクも手伝います!」
「サンキュー悟飯。ピッコロ!」
「悟空さん、オレも手伝わせてください。ここまで聞いたら放ってはおけません。」
「おめえも手伝ってくれるか!ありがとな!ベジータ、おめえはどうだ?」
「……貴様の頼みを聞くのは癪だがいろいろな能力を持つ強いやつらには興味がある。いいだろう。オレも力を貸してやろう。」
「ほんとか!助かるぞ!それじゃあ、みんなオラについてきてくれ!」
ベジータたちは飛んで行った悟空の後を追って全員で飛び立った。
「…行っちまった。」
「なんなのかしら。また変なことにならないといいけど……。」
残されたブルマたちは心配そうに空を見上げていた。
~セルゲーム会場跡地~
三年前セルゲームが行われたこの荒野はその当時のままで闘いの痕跡が残っていた。
悟空たちは大きなクレーターの中に降りるとさっそく超サイヤ人に変身して気を全開に高めた。
「よーし、みんな!思いっきり叫ぶぞ!せーのっ!!」
「「「だぁあああああーー!!!」」」
悟空たちの叫びはとてつもない気を放ち、雲さえも貫いた。そしてわずかだが空に切れ目が入り始め、奇妙な空間が出現した。
「いまだ!行くぞー!!」
悟空の合図に合わせて全員で空の空間に飛び込んだ。
そしてここは時空の歪みの中。歪みの中は薄暗く、薄紫色のグネグネした壁が続いていた。
「…ここが界王様が言ってた時空の歪みってやつか……。なんか気味悪りいなー。この先に本当に幻想郷なんてところがあんのかよ。」
「いや、間違いなくこの先だろう。少なくともこの空間はこの世のものではない。界王様の言った言葉を信じろ。」
悟空たちはそのまま歪みの中を進んでいくとベジータが何かに気づいた。
「ん?なんだこの音は……。」
「ベジータさん、どうしたんですか?」
「貴様には聞こえんのか?この妙な音が。」
「妙な音……?」
そういわれて悟飯は静かに目を閉じ周りの音をしっかりと耳に刻み付ける。すると遠くから何か電撃のようなバチバチという音が聞こえてきた。
「…本当だ。なんの音でしょうか?」
すると突然歪みの中がうごめき出し、プラズマのようなものが発生し始めた。
「ど、どうなっているんですか!悟空さん、界王様からは何か聞いていないんですか!?」
「オ、オラにもわかんねえ!どうなってんだ一体!?」
慌てふためく悟空たちであったが、そこに界王様からの通信が入った。
『悟空!聞こえるか悟空!』
「!!界王様!こりゃどういうことだよ、歪みの中がすげえことになってきたぞ!」
『そのことなんじゃが大変なんじゃ!おぬしらが入った後、歪みが突然小さくなり始めたんじゃ!このままじゃおぬしらは全員別の時空のどこかにバラバラに飛ばされてしまうぞ!』
「ぃい!?ど、どうすりゃいいんだよ。なんとかできねえんか!?」
『とにかくあちこちに空間の穴が開いておるじゃろう!その中のどれでもいいから飛び込めー!早く飛び込まんと本当にどこか別の世界に飛ばされてしまうかもしれんぞー!!』
「み、みんな!早く近くの穴に飛び込めー!早くしねえと大変なことになっちまうぞ!」
「なんだと!カカロットどういうことだ!」
「説明してる暇はねえ!いいから近くの穴に飛び込め!」
「チィッ!あとで説明しろよ悟空!」
「お父さん!先に行きます!」
ピッコロと悟飯はそれぞれ近くにあった空間の穴に飛び込んだ。
すると飛び込んだ空間の穴は小さくなり消えてしまった。
「ベジータ!トランクス!おめえたちもだ!」
「仕方ない…!行くぞトランクス!」
「はい!父さん!」
そしてベジータとトランクスも近くにあった穴に飛び込み、穴は姿を消した。
「よし!じゃあオラも…!」
最後に悟空は目の前に現れた穴に飛び込んだ。すると時空の歪みはどんどん小さくなり消滅してしまった。
時はさかのぼり数分前…。
~宇宙船~
「…そろそろ地球につく頃か。みんなに会うのは久しぶりだな。」
ホウレンは地球に向けて飛んでいた。
地球が見えてきていよいよ着陸だと思うホウレンだったが突然巨大な気が地球から放出されてきた。その気に宇宙船が激しく揺れ、宇宙船のドアが開いた。
「うぉおおお!!な…なんだなんだ!?どうなってやがる!」
ホウレンが慌てていると宇宙船の外が歪んでいるのが目に入った。
「!?なんだありゃ。近づいてくる…いや、俺が宇宙船ごと近づいてるのか!!」
なんとか体制を立て直し宇宙船を操縦しようとするも間に合わずホウレンは宇宙船ごと歪みの中に吸い込まれてしまった。
吸い込まれた先は悟空たちが入った時空の歪みであった。
「ここは…。どこだ?」
時空の歪みのことを全く知らないホウレンはその不思議な光景に目を丸くした。
すると前方にどんどん宇宙船が吸い込まれ始めたのだ。
「うお!くそっ次から次へと!とにかく宇宙船から出ねえと……!」
ホウレンは急いで宇宙船から出ると宇宙船はプラズマに巻き込まれ姿を消してしまった。
「あっぶねえ!あのまま乗ってたら俺まで消えちまうところだったぜ…!それよりなんとかしてここを出ねえと!くそっ何かないのか!?」
ホウレンは歪みの中を見渡し脱出経路を探すがどこにもそれらしきものは見当たらず、あちこちに黒い穴が開いているだけだった。
「っ~!こうなったら一か八かだ!うぉらあああ!」
そしてホウレンは運にすべてを賭けて穴に飛び込んだ。すると穴の中でさらに空間が歪み始め、ホウレンは深い闇の中に落ちていった。長い時間穴を降りていくと下に小さな光が見え始める。
その光に飛び込むと世界が急に反転してホウレンは地面に頭を打ち付けた。
「いってぇ~…!!はっ!こ…ここは?」
ホウレンが辺りを見渡すとそこは薄暗く雲に包まれているかのようでまるであの世にでも来てしまったのかと思うほど、どんよりとした場所だった。
果たしてホウレンが落ちた場所はどこなのか。そして悟空たちはどうなったのであろうか。
「…誰か侵入者のようですね。」
今回はここで終わりです。次回から本格的に始まります。