ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
口元をひらひらと扇子で仰ぎながら現れた八雲紫。いつものように楽し気な雰囲気を醸し出しながらもその瞳は明らかな怒りを宿していた。
「あなたね?この幻想郷を破壊しようなんて宣うのは。自己紹介は必要かしら?」
「必要ないな。むしろあんたが出てきてくれるとは驚きだよ。幻想郷最重要人物の八雲紫。」
「あら、私の名前は間違えないのね?」
「間違えるも何もないだろ。あんたはどこの世界でも『八雲紫』でしかない。違ったか?」
「……。」
「ちょっと、紫!あんた見てたんならもっと早く出てきなさいよ!」
「もうそんなに怒らないでちょうだい?未知の相手だもの、観察するのも悪い手じゃないでしょ?」
「そうだけど!今そんな場合じゃないでしょーがー!さっさとこいつを捕まえなきゃいけないの分かってんでしょ!?」
「ええ、だから私が出てきたの。」
少しトーンの下がった声色で一言告げる。扇子をパチンと閉じたその瞬間、紫の妖気は膨れ上がる。それに比例するように尋常じゃないほどの怒気と殺気が交じり合い、少し離れた地上から二人を見上げていた霊夢と魔理沙ですら、その異質な妖気に息を飲んだ。
八雲紫が怒ることはほとんどない。しかし『幻想郷そのものに危害を加えること』それこそが紫にとっての大地雷であった。
「この幻想郷を滅ぼそうとする侵略者には……そうね。念のためまだ死なれては困ることだし、今確実に捕まえておくのがベストかしら?それとも崩天祭とやらのルールどうりに貴方をここで倒してしまってもこの祭りは終わるのかしらね?」
「ハッハッハ!その質問の答えは捕まえるが正解だ。例えここにいるオレを倒したとしてもこの祭りは終わらない!ならゲームのルールに則ってオレからヒントを貰うのがおまえたちのベストってことだ。おまえたちがノーヒントでこの祭りを終わらせたいってことなら話は別だけどな!」
「ふぅ……仕方ないわね。霊夢、魔理沙。あなたたちはそこで休んでなさい。」
「……本気?」
「もちろんよ。あのセルとかいう化け物も控えてるんだから、少しは温存しておきなさい。」
「……わかったわよ。魔理沙、下がるわよ。」
「いいのか?」
「紫の強さはあんたも知ってるでしょ?それがあんなブチギレ状態で戦ったら、私たちの方が危ないわよ。たーだーし!この周りの結界は解かないからね!万が一逃がしたりなんかしたら洒落にならないんだから!」
「大丈夫よ。……でも結界があろうがなかろうが関係はないわ。」
そう言った次の瞬間、ディグラの視界に映る景色が一変した。空中にいたはずの自分が瞬きの瞬間に結界の底に足を付けていたのだ。
ディグラは動揺をすぐに切り替え、周囲を警戒するが少し遅かった。すでにディグラの周りにいくつものスキマが出来上がり、暗い闇と目が合った。
「弾幕ごっこなんてぬるいことは言わないわ。圧倒的な暴力で動けなくしてあげましょう。」
全てのスキマから一斉に鋼鉄の槍が飛び出し、ディグラを滅多刺しにする。弾幕ごっこではあり得ない相手を確実に殺す殺意の塊のような攻撃だ。だがそれくらいしないと動きを止められない相手だと紫は感じ取っていた。
「悪くないが残念だな!こんななまくらじゃオレの体は傷ひとつ付かないぞ!」
「ええ、そうでしょうね。でもその状態じゃこれは躱せない。」
「ん!?」
身動きが取りずらいディグラの真上に大きなスキマが現れ、妖気を纏った数台の廃列車が一直線にディグラに落下してそのまま押しつぶし、そして大爆発を起こした。
「重さはともかく、至近距離の爆発は重力じゃどうしようもないでしょう?私の妖気もたっぷり込めてあげたわ。」
煙を上げる列車の残骸からディグラは高速で空へ飛び上がり、紫から一気に距離を離れた。
「やるな!血を拭ったのは随分久しぶり__ぐあっ!?」
しかし先回りするように現れたスキマから超高密度の弾幕が直撃し、ディグラは紫の方向へ押し戻されていく。
「これで終わりよ!」
「ぐううう……!落ちろぉお!!!」
紫が手を伸ばし、あと少しと言うところでディグラは自身に重力を発生させて無理やり下に落ちる。
「逃がさないわ!」
紫は迫りくる自らの弾幕を落下したディグラ目掛けて追尾させ、更にスキマを大量に開くとそこから濃厚な妖気が込められた球体が結界内を跳ね回る。
「__逃げ場が……ないっ!!」
全方位からの弾幕はついにディグラを捕らえる。結界にヒビが入るほどの大爆発が直撃したディグラは結界の底に大の字で横たわっていた。
間髪入れずにスキマで移動した紫は、ボロボロになったディグラに馬乗りになって首元を鷲掴みにして宣言したのだった。
「捕まえた。」
これにて決着。最初のゲームは八雲紫の完全勝利で幕を閉じた。
能力バトルは書くのが難しいですね……!