ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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限界超え×限界超え 常識を覆す者たち!

「オレをぶっ倒すだと?ハッハッハ!いくらオレが体力を減らしているとはいえ、孫悟空がいない今おまえさん一人で何ができる!?オレはこのまま紫を連れてこの幻想郷から出る。そして他の協力者たちを連れておまえさんらを全員倒し、オレたちがこの幻想郷を支配するのだ!」

 

「他の協力者だと……?おまえ以外にもまだ仲間がいやがるのか!」

 

「いるとも……訳あってこの世界には最大二人づつしか入ることは出来んが、紫の力を使えば全員をこの世界に呼び出すことが出来る……!そうなればあの孫悟空とて勝ち目はない!」

 

「舐めんじゃねえぞ。悟空だけじゃねえ。俺たち全員はおまえたちに負けるつもりはねえ!そうだろ?紫。」

 

 突然話を振られた紫は動揺しながらもしっかりと頷いた。

 

「……ええ。もちろんよ。貴方のような得体のしれない輩にこの幻想郷は渡さない!誰が来ようと力を合わせて必ず乗り越えて見せるわ!」

 

 紫の言葉は確かな強い意志のようなものを感じた。ホウレンはその言葉に満足そうに微笑み、アルメトもまた何かを考えるような仕草をとった。

 

「……困難を乗り越える。素晴らしい考えだ。」

 

「なんだよ。悪人のくせして、そういう考えには賛同できんのか?」

 

「当然だ。人間は困難に対して、不可能だと思い込み、出来ないと決めつける。それが常識だからだ。だが常識を超えた者にはそれがない。不可能は可能に変わり、出来ないという言葉は無くなる。オレという困難に対して負けることを考えないおまえさんたちは間違いなく戦士だ。」

 

「……勝つことしか考えないのは普通のことだろ?負けることばっか考えてるやつが闘いに参加するかよ。」

 

「それはおまえさんが強いからだ。戦士にも強い者と弱い者がいる。強い者は皆勝つことだけを考えて闘っている。だが弱い者はどうだ?簡単に挫折し、才ある者を妬み、負けることに抵抗が無くなる。自身の限界を決めつけ、勝つことを諦めてしまうからだ。……それらをオレは戦士とは呼ばない。ただの負け犬だ!」

 

 ホウレンは無言だった。アルメトの言葉の全てに賛同することは出来なくとも、考え方そのものは理解できたからだ。

 

「話はここまでだ。おまえさんを倒し、八雲紫はいただいていく。止めたければ常識を捨ててかかってこい!!」

 

「常識なんざ知るか。紫は連れてかせねえよ。悟空の代わりに俺があんたを止めてやるぜ!」

 

 ホウレンは次の瞬間、一気にアルメトと距離を詰めてその腹に右拳を突き入れた。

 だがアルメトの肉体にホウレンの攻撃はまるで効かなかった。

 

「っかってえ……!」

 

「どうした!おまえさんの力はそんなものか!?」

 

「この……!おらぁああーー!!」

 

 ホウレンは仁王立ちするアルメトの腹に無数に拳を叩きこみ続け、更に全力の拳をアルメトの腹に叩きこみそのままその拳に気を集中させた。

 

「ガーネットインパクト!!」

 

 そしてゼロ距離でとっておきの必殺技をぶちかまし、アルメトから大きく距離をとった。

 

「……嘘だろ。」

 

「フッフッフ。痒いな。ひょっとすると今のが全力だったか?」

 

 アルメトはピンピンしていた。それどころか最初の位置から微動だにしていなかった。

 

「おいおい……ちょっと力の差がありすぎだろ……。アスイよりも強いんじゃねえか、このおっさん……!」

 

 ホウレンが無意識にこぼした言葉をアルメトは聞き取ったのか興味深そうに笑った。

 

「おまえさん、アスイと闘ったことがあるのか?」

 

 思ってもいない質問にホウレンは目を見開き、そして同時に考えた。

 アルメトの口からアスイの名前が出てきたということはアスイに任務を与えた人物がアルメト、またはその関係者ではないかと。

 

「……あんた、アスイを知ってんのか?」

 

「質問しているのはオレだ。どうなんだ?」

 

「……ある。アスイは俺が闘い……そして倒した。今度は俺の質問だ。あんたはアスイを知ってるのか?答えてくれ。」

 

「知っているさ。アスイはこの世界に最初に送り込まれた男だからな。」

 

 この世界に最初に送り込まれたという言葉にホウレンは自身の考えが確信に変わった。

 

「ってことは、アスイに任務を課したやつがあんたの協力者の中にいるってことか……!」

 

「ほう。あのアスイがそんなことまで話したか。珍しいこともあるものだ。……しかしおまえさんがアスイを倒したということは、おまえさんまだ本気じゃないな?」

 

「……なぜそう思うんだ?」

 

「その程度の力ではあのアスイを倒すなど不可能だからだ。つまりおまえさんは真の力を隠しているとしか考えられん……違うか?」

 

「……あんたの言うとおりだよ。俺はまだ力を隠してる。正直まだこの力はまだ完全に使いこなせるわけじゃねえんだ……。でもあんたにはそんなこと言ってらんねえな。」

 

 ホウレンは深呼吸をするとゆっくり気を高め始めた。

 そして次の瞬間、ホウレンの気が一気に膨れ上がりホウレンを中心に爆風が発生した。

 ホウレンはアスイと闘った時の力、超サイヤ人2に変身したのだ。

 

「……っ!!」

 

「これが俺の全力だ。これならあんたとだって闘えるはずだぜ……!」

 

「なるほど、アスイが負けるわけだ……。だが孫悟空ほどではない!さあ来い!ここで息の根を止めてくれよう!!」

 

 そう言ってアルメトもまた気を最大限に高めてホウレンを睨みつけた。

 悟空との闘いで消耗しているということもあって、アルメトはホウレンとほぼ同じくらいの気を放っていた。

 

「ホウレン!アルメトは異常なまでの再生能力を持っているはずよ!気をつけなさい!」

 

 紫の言うとおり、アルメトはオーガと同様の再生能力を持っており、たとえ手足が千切れようが頭が消し飛ぼうが死ぬことはない。

 倒すためには完全に消し去ってしまうしか方法はないのだ。

 

「再生ね……。わかったよ!」

 

 ホウレンは返事をすると同時にアルメトの後ろに回り込み、頭に蹴りを食らわせようとした。

 しかしアルメトはそれを腕で防ぐと振り返ってホウレンを殴りつけた。

 ホウレンはその拳を片手で受け止めて、もう片方の手でアルメトを殴りつける。

 

 するとさっきまでビクともしなかったアルメトがダメージを負っているのが分かった。

 アルメトは反撃としてホウレンのがら空きになった体に大量の拳を叩きこんだ。

 超サイヤ人2とはいえ、まだまだ発展途上のホウレンにはその攻撃は十分に強力な攻撃であり、ホウレンは口から血を吐き出しながら吹き飛ばされた。

 

「くっ……!__っ!!」

 

「ウォオオオオオ!!」

 

 地面を転がり、立ち上がろうとするホウレンの真上にアルメトが現れ、両足で踏みつける体制で落下してきた。

 ホウレンはそれを転がってかわし、アルメトに向けて手を構えた。

 

「ターコイズブラスト!!」

 

「むっ!?」

 

 ホウレンのターコイズブラストをアルメトは避けようとするも間に合わず、右腕が飲み込まれ、跡形もなく消し去ってしまった。

 

「……やるな。だがこの程度……ハァアアアーー!!」

 

 アルメトが右腕に気を込めると一瞬にしてアルメトの右腕が再生した。

 

「ほんとに再生できんだな……。あんたもう人間じゃねえよ……。」

 

「常識を超えた存在となったオレが人間などという弱い存在なわけがないだろう。おまえさんが人間である以上、オレに敗北はない!」

 

「ああそうかい!だったら見せてやるよ!人間の底力ってのをな!!」

 

 ホウレンは気を限界まで引き上げてアルメトの間合いに走り込み拳を振り抜いた。

 そしてアルメトもまたホウレンへ向けて拳を振り下ろし、二人の拳がお互いの体に打ち当たる。

 

「ウラァアアーー!!」

 

「ハァアアアーー!!」

 

 互いに声を上げて相手の体に連続で拳を叩きこみ続ける。二人の激しいぶつかり合いで辺りに衝撃が発生し、見ている紫もその衝撃から藍と橙を守るのに必死だった。

 

「ホウレン!決着を急いで!このままではこの子たちが危ないわ!」

 

「わかってる!もう少し耐えてくれっ!」

 

「ハッハッハ!まだオレに勝てると思っているのか!おまえさんの力ではオレを倒すことなどできん!やつらを助けたいならば諦めてオレに倒されるがいい!」

 

「うるせえ!あんたこそオレに負けて降参しやがれ!」

 

「それこそありえん!オレを止めたければオレを殺して見せろ!」

 

「アスイといい、あんたといい……!そんなに命が惜しくねえのかよ!!」

 

「当然だ!命を惜しんでいてはオレたちの野望を実現などできんわ!」

 

「っ!!」

 

 アルメトの拳を顔面に受けたホウレンは大きく後ろに滑り込むもなんとか踏みとどまった。

 

「ハァ……ハァ……野望だと?」

 

「そうだ。オレたち全員の野望だ。それを叶えるにはこの幻想郷は障害になりえる。だから消えてもらわねば困るんだ。」

 

「なんだよ、その野望って……。」

 

「……あるときオレたちは皆一人の男の元に集められた。その男はオレたち全員の想像を遥かに超えた存在だったのだ。そしてその男が計画していたもの……それこそがオレたちの野望。全宇宙の支配……いや、統一とでも言うべきか。」

 

 アルメトの言葉にホウレンは再び目を見開いた。アルメトたちにとって幻想郷の支配はただの足掛かりでしかない。宇宙全体を統一などという、とてつもなく大きな野望があったことに驚きを隠せなかった。そして何よりもアルメトの言った言葉がホウレンの心を大きく揺さぶった。

 

『その男はオレたち全員の想像を遥かに超えた存在だったのだ』

 

 それはつまりその男はアルメトよりも遥かに強いということだ。

 そんな相手であればいくら悟空たちがいても敵わないかもしれない。そんな考えが頭を過ぎったホウレンはアスイの言葉を思い出した。

 

『……凶悪な敵に対して情けは必要ない。甘いままでは守りたいものを守ることなど出来はしないんだ。……もしもこの先この世界を守るために闘い続けると言うのなら覚えておけ。』

 

 アスイの言葉どおりだった。アルメトは死ぬまで闘いを諦めない。ならば殺してしまうしかない。

 だがホウレンはアスイの時と同様にそれをためらっていた。

 

「少し喋りすぎたな……。まあいい。どのみちおまえさんはここで消す。問題はないだろう。」

 

 アルメトはそう言ってホウレンの元へ歩いて近づいてくる。

 

(やるしかねえのか?これから先、この世界を守るってんなら……!)

 

「さあ終わりだ!!」

 

 アルメトは全力で拳を振り下ろし、ホウレンの顔面に拳を叩きこんだ……がその拳はホウレンの手で防がれた。

 

「!!」

 

「世界を守るためなら……俺は……あんたを!倒して進む!!」

 

 ホウレンはその瞬間いままで以上の気を放出して、アルメトを殴り飛ばした。

 

「うぐっ!?な、なんだと!?」

 

「ハァアアアーー!!」

 

 ホウレンはアルメトを追いかけて、更に拳を叩きこむ。

 

「ぐふっ!お…おのれ!調子に乗るなよ若僧が!!」

 

 アルメトはホウレンに向けて超特大の気弾を放った。

 

「こんなもん……!!」

 

 しかしホウレンはその気弾を真正面から受け止めると力任せにその気弾を上空へ弾き飛ばした。

 

「ば、馬鹿な!!なぜオレがおまえさん如きに一方的に負ける!?常識を超えたオレが一体なぜ!?」

 

「あんた気づいてないのか?……あんたの力はどんどん落ちてきてる。俺と闘う前から体力が随分減っちまってるみたいだぜ?」

 

「くっ!孫悟空との闘いの反動か……!」

 

「……これで決めてやる!!いくぞ!!」

 

 ホウレンは一気にアルメトとの間合いを詰め、無数の拳をアルメトに叩きこみ、上空に蹴り上げ、拳に気を最大限に溜め始めた。

 

「これが俺の最大の……!!ターコイズブラストだぁああーー!!」

 

 そして今までで最大級の大きさのターコイズブラストが空中のアルメトを襲った。

 しかしアルメトは残った気を全開まで高めるとターコイズブラストを正面から受け止めた。

 

「ヌォオオオ!!常識を超えたこのオレが……おまえさんのような若僧に負けてたまるか!!」

 

 アルメトが声を上げて更に力を込め始める。するとアルメトの筋肉が更に膨張して巨大化していった。

 

「ズリャァアアア!!」

 

 そしてアルメトはホウレンのターコイズブラストを力づくで打ち消してしまった。

 

「……まだそんな力が……!」

 

 ホウレンは今のターコイズブラストにほとんどの気を乗せていた。それが防がれてしまったことにより、ホウレンは一気に不利な状況に陥ってしまったのだ。

 

「ハァ……ハァ……ハ、ハハハハ。どうだ!おまえさんの最大の技もこのオレの能力の前では無意味なのだ!ハーハッハッハ!!」

 

「ち、ちくしょう……!あとちょっとだったってのに……!」

 

「さて、そろそろ終わりにしようじゃないか!すぐに止めを刺してやるぞ……!」

 

「ホウレン!!」

 

「く……っ!」

 

 ホウレンが歯を食いしばってアルメトを睨みつける。

 

「さあこれで終わ___ッ!?」

 

 アルメトがホウレンに拳を振り下ろそうとしたその時、アルメトの体に変化が起きた。

 振り上げた手が突然ひび割れ、砕けて地面に落ちてしまったのだ。

 

「な…なんだこれは?オレの腕が……いや全身がひび割れているだと……!?」

 

「ど、どうなってんだ……?こいつは一体……。」

 

「体が付いていけなくなったみたいね……。」

 

 二人が困惑しているといつの間にか紫がホウレンの隣にいた。

 

「紫……。」

 

「八雲紫……!今の言葉はどういう意味だ!?」

 

「能力の限界を越えた力を使った代償とでも言うのかしら。貴方はさっきのぶつかり合いで能力以上の力を発揮してホウレンの技を打ち消した。それにより恐らく貴方の体が自身の能力に耐え切れなくなってしまったのよ。」

 

 紫の考察にアルメトはわなわなと震えて鬼のような形相で自分の体を睨みつけた。

 

「ば…馬鹿な……!鍛え上げたオレの肉体が能力に負けたというのか……!?そんな……そんなわけがない!オレは!オレは常識を超えた存在だぞ!おまえさんとの闘い程度でこのオレが……オレ自身の能力で身を滅ぼすというのか!!」

 

「アルメト……。」

 

「認めん!こんな結末オレは認めんぞ!……ホウレン!」

 

「……なんだ?」

 

「オレはこのまま能力で死ぬのはごめんだ!ならば最後は、せめておまえさんとの闘いでの死を選ぶぞ!」

 

 アルメトの目は本気だった。自滅するくらいなら闘いの中での死を選ぶ。

 そんな強い覚悟を感じたホウレンはしっかり頷いた。

 

「……わかったよ。それがあんたの望みなら今度こそ決着をつけようぜ……!!」

 

 そう言って再び構えたホウレンを見てアルメトは口元に笑みを浮かべた。

 そして次の瞬間、二人が同時に飛び出した。

 

「これがオレの限界を超えた拳だぁああ!!」

 

 アルメトは崩れかけた体で残った左腕に全ての力を乗せて思い切り振り下ろした。

 

「うぉおおおーー!!」

 

 そしてホウレンもまた、自身の力を振り絞ってアルメト目掛けて全力の拳を振り抜いた。

 辺り一帯に大きな重低音が響き渡り、特大の衝撃が発生した。

 紫はその衝撃に目を閉じ、再び開けるとそこには拳が砕け、胸を貫かれたアルメトと体をふらつかせながらアルメトの胸を貫いたホウレンが立っていた。

 

「……見事だ。」

 

 アルメトはそう言うと全身がどんどんひび割れ、粉々に砕け散ってしまった。

 ホウレンはそれを見届けるとふらふらと紫の元へ歩み寄り、ボロボロの顔で笑った。

 

 

「紫……勝ったぜ。」

 

 

 


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