ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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能力に飲まれた鬼 最強悟飯発進!

 トランクスとオーガの闘いは激しさを増していた。だがトランクスの力がオーガの力を遥かに凌駕しており、オーガは防戦一方になっていた。

 

「ぐぅ……!くそっ!」

 

「どうした!オレを殺すんじゃなかったのか!はあ!!」

 

 トランクスはオーガを殴り飛ばし、オーガは大きく吹き飛ばされながらも体勢を立て直してトランクスを睨みつけた。

 

「ち、ちくしょう!これがてめえの本当の力ってわけか!勇儀のやつとは比べ物にならねえ……!」

 

「いくら再生出来てもスタミナには限界があるはずだ。いい加減諦めたらどうなんだ?」

 

「冗談じゃねえ!おれを止めたきゃ殺してみやがれ!もっとも、この力がある限り無理な話だがな!」

 

「……しかたない。はぁああああ!!」

 

 トランクスは更に気を上昇させると一瞬でオーガとの間合いを詰めて腹に手を当てた。

 

「なっ!?」

 

「消えろ!」

 

「うごぉっ!!?」

 

 トランクスの手のひらから気が放出されてそのままオーガを飲み込んだ。

 オーガの体はバラバラになって辺りに飛び散った。

 

「……終わりだ。」

 

 トランクスは踵を返しこいしたちの元へ歩き出した。

 

「!トランクス後ろ!!」

 

「遅かったな!死にやがれ!!」

 

「なに!?ぐわぁ!!」

 

 トランクスを殴り飛ばしたのはバラバラになったはずのオーガだった。

 隙を突かれたトランクスは大きく吹き飛ばされて民家の壁のぶち当たった。

 

「今のはさすがのおれも死んだかと思ったぜ……!だがこの力の前では意味がなかったみたいだがな!ハーッハッハッハ!!」

 

「まさかあんなにバラバラになっても再生できるなんて……。完全にオレの誤算だった……。」

 

「トランクス、大丈夫!?」

 

「大丈夫です!ご心配なく!」

 

 トランクスが立ち上がったのを確認したオーガは体に気を集中させ始めた。

 

「今のでわかった。おれのこの再生能力はまだまだ底が見えねえ!ならもっともっとこの力を引き出して、誰にも負けない肉体を手に入れてやるぜ!」

 

 そうしてオーガはどんどん気を高めていき無理やり自分の限界を越えようとしていた。

 

「何をする気かわからんが止めさせてもらうぞ!バーニングアタック!!」

 

 トランクスの気弾によってオーガは再びバラバラになった。しかも今度は先ほどよりもさらにバラバラになっており、もはや小さな肉片とも言えるほどだった。

 しかしそれでもオーガの体は一瞬にして元に戻っていく。その異常な光景をあの勇儀も酒を飲むこともせずにただ息を飲んでその闘いを見ていた。

 

 圧倒的なパワーを持つトランクス。異常とも言える再生能力を持つオーガ。二人の闘いは一方的ではあるものの常識で考えることなど不可能なものになっていた。

 

「くそっ!キリがない!どうすればこいつは止まるんだ!?」

 

 何度も何度も消し飛ばすトランクスだったがオーガはどんなに粉々にされても一瞬で元に戻ってしまう。それどころかだんだん体が大きく異質な姿に変わっていった。

 

「もう遅い!おれは今この時を持っておれぇ自身んのぉ限界を超えた!??」

 

「な、なんだ?今あいつの声が……?」

 

「ア…あレっ?変だナ?上手く喋れネぇぞォ?そレにぃこの体ノ中から出てクる力はナンだぁ??せ…制御出来ねェ!!?」

 

 動揺するオーガの体からは異質な気が充満していた。何か気ではない別の力が体から溢れ出ているのだ。

 

「オーガ!おまえは一体何をしたんだ!この尋常じゃない気の膨れ上がりは一体……!?」

 

「う…ウアっ?あ…嗚呼あ……ウゴガァアアアアアア!!!」

 

 オーガが大きく声を上げると次の瞬間、オーガが突然爆発して爆炎の中に姿を消した。

 

「なっ……!?」

 

「あいつ、爆発しちゃったよ!どういうこと!?」

 

 突然の爆発に動揺した三人はただメラメラと燃える炎を眺めていた。

 だがそんな気楽な時間はほんの一瞬にすぎなかった。

 

「……ッ!なんだいこりゃ……この寒気がする気は一体……。」

 

「ウォオオオオオオ!!」

 

「「「!!」」」

 

 鳴り響く唸り声に三人は耳を塞ぎながら揺らめく炎の中を見つめた。

 すると炎を搔き消してオーガがズシンズシンと音を立てて出てきたのであった。

 その姿はついさっきまでの姿とは明らかに違い、先よりも更に数倍にも膨れ上がった筋肉。

 真っ赤に染まった瞳。重たい体を支えるように両手を地面についてバランスを取っている。

 まるでゴリラのような体制でトランクスたちの元へゆっくりと近づいてきた。

 

「あの姿は……!?い、いけない!勇儀!こいしさんを守ってくれ!」

 

「あいよ!」

 

「ウォオオオオオオ!!」

 

 雄たけびを上げてすぐにオーガはその剛腕でトランクスを押し飛ばし、そのまま勇儀たちを狙って走り出した。

 勇儀はこいしの前に立ち、オーガを正面から受け止めてその場で堪えて見せた。

 

「勇儀!」

 

「くっ……ぐぐっ!!は、早く避けな!!」

 

「わ、わかった。ありがとう!」

 

「吹キ飛ベエえェエ!!」

 

 オーガは抑え込まれたまま頭を大きく後ろに下げて一気に勇儀の頭に振り下ろした。

 

「ぐあぁああーー!!?」

 

 とんでもない威力の頭突きによって勇儀は大きく吹き飛ばされてしまう。

 勇儀を吹き飛ばしたオーガはすぐさまトランクスの元へ突進してきた。

 トランクスはそれをかわして後頭部を蹴りつけ、振り返りオーガを見た。

 

「その姿はなんだ!オーガ、一体おまえは何をした!」

 

「何ぃをシタ?何をナニをなにヲ???」

 

「言葉が通じないのか……?」

 

 会話が出来ずにどうしたものかと考えるトランクスの元に勇儀が頭をさすりながら歩いてきた。

 

「無駄だよ。ありゃ完全に能力に飲まれてる。」

 

「能力に飲まれる?一体どういうことなんだ?」

 

「簡単な話さ。あいつはあんたと闘う内に能力を使いすぎたんだ。借り物の能力に頼りすぎて肉体と精神がついていけなくなってる。ま、あんな能力数日で使いこなすなんて無理な話ってやつさ。」

 

 力を酷使しすぎた代償が精神すらも飲み込んでしまった。それを聞いたトランクスはぶつぶつと言葉を発するオーガを横目に勇儀に問いかけた。

 

「あいつを止めるにはどうしたらいい?」

 

「手っ取り早いのは息の根を止めることさ。だけどあの能力じゃそれも難しい……まいったね。本当に厄介な力を手に入れたもんだよ。」

 

「ウアァアアアア!!」

 

 オーガは突然大声を上げると今度は頭上に巨大なエネルギー弾を作り出した。

 

「あいつまさか……この辺一帯を更地にするつもりかい!?」

 

「くっ!させんぞ!」

 

 トランクスはオーガの元へ駆け寄ろうとしたその時。

 

「だりゃぁああーー!!」

 

「うぶぇ!?」

 

 超サイヤ人に変身した悟飯が現れ、オーガを蹴り飛ばした。

 

「悟飯さん!!」

 

 突然助けに入った悟飯を見てトランクスはなぜここに?と言う疑問がありながらも素直に喜んだ。

 そして勇儀は現れた悟飯の気を感じて息を飲んでいた。

 

(トランクスよりも更に上の力を感じる……。とんでもない子供がいたもんだねぇ。)

 

「みなさん無事でしたか!」

 

「はい!悟飯さんはどうしてここに?」

 

「話は後で説明します。今はとにかくあいつを倒してからにしましょう。」

 

 悟飯は体に気を込めてオーガの元へ向かおうとした。

 

「待ってください!あいつはあのセルに匹敵、いやそれ以上の再生能力を持っています!完全に消してしまわない限り何度でも元に戻ってしまうんです!」

 

 それを聞いた悟飯は驚きはしたもののそれならばと気を溜め始めた。

 

「はぁああああ!!」

 

 すると悟飯の髪が激しく逆立ち、辺りに爆風が立ち込める。

 悟飯は超サイヤ人を越えた超サイヤ人に変身したのだ。

 

「こりゃ驚いた……!これほどの圧力は今まで生きてきて初めてだよ……!」

 

「それは……セルと闘った時の!」

 

「これで決着を付けます。二人とも下がっていてください。」

 

 一人で闘おうとする悟飯を手伝おうかと思ったトランクスだったが超サイヤ人を越えた超サイヤ人となった悟飯の手助けをするには自分の力が足りないことに気づき、足手まといにならないように悟飯に任せることにした。

 

「すみません、よろしくお願いします!」

 

「任せたよ。私たちは周りに被害が出ないように動いてるからさ。」

 

「はい。ですがトランクスさん、こいしさんと協力してやって欲しいことが__」

 

 オーガは瓦礫の中から這い出して頭を振った。トランクス以上のパワーでの攻撃に頭の中が揺れて足元がふらつきながらもオーガは悟飯たちを睨みつけ大声をあげて更に気を高め始める。

 

「__出来ますか?」

 

 その間に悟飯はトランクスたちに作戦を話し終えた。

 

「わかりました。やってみます!」

 

「なるほど、それならいけるかもしれない。よーしそうと決まれば早く始めるよトランクス!」

 

「ああ!必ず成功させるぞ!」

 

 トランクスと勇儀はすぐにこいしの元へ走っていった。そして悟飯は一人でオーガの元へ歩き出した。

 

「さあここからはボクが相手だ……!かかってこい!」

 

「アアアアアア!!」

 

 オーガは悟飯に突進して右腕を振り下ろす、悟飯はそれを左手で受け止めてオーガの腹に肘打ちを食らわせる。オーガの腹は弾け飛び体が真っ二つになった。

 だがオーガはそんな状態になりながらももう片方の腕で悟飯を殴りつけた。

 

 しかし悟飯はその攻撃をものともせずにオーガの顎にアッパーを食らわせて更に体が弾け飛ぶ。悟飯はそれでも攻撃の手を休めずに圧倒的な力で攻めていく。

 オーガはバラバラになった体を瞬時に再生して悟飯に反撃を試みるが今の悟飯にはまるで歯が立たなかった。

 

「ぐぅウ!ガァ!!」

 

「逃がさないぞ!」

 

 地底の空を飛んで逃げるオーガを悟飯は追いかけて飛び上がった。

 そして空中でも激しいぶつかり合いを繰り返しながら悟飯はオーガを追い詰めていく。

 だがいくら肉体を打ち砕いてもオーガは瞬時に回復していった。

 

「確かに凄い再生能力だ……!いくら攻撃してもキリがない!だけど!」

 

 悟飯はオーガの攻撃をかわすとその腕を両手でつかんでトランクスたちがいる場所へ向けて思いっきり投げ飛ばした。

 

「トランクスさん!お願いします!!」

 

 トランクスは飛ばされてきたオーガが頭上に来るのを確認すると最大限に溜まった気をオーガに向けて放とうとしていた。

 さきほどまでのオーガであればこの気に気づいて避けることも可能だったかもしれない。

 だがそれを危惧した悟飯はあらかじめこいしの能力でトランクスたちの存在を意識させないように仕向けていたのだ。

 そうすることによって確実にオーガを消し去るために。

 

「完全に消え去ってしまえ!!」

 

「!!?ア……アアァアァアアア!!」

 

 トランクスが放った気は上空のオーガを飲み込んで地底の天井にぶち当たり、そのまま天井を貫いていった。

 そしてオーガの気は完全に消滅した。

 

「……今度こそ本当に終わりだ。」

 

 トランクスは超サイヤ人を解いて空いた天井を見上げた。

 

「やったじゃないかトランクス!私たちの勝ちだよ!」

 

「ああ、おまえも力を貸してくれてありがとう。おかげで完全にやつを消滅させることが出来た。」

 

 勇儀はこいしが意識を別にさせている間、自分の妖気をトランクスに与え続けていたのだ。それによってより早くトランクスの気がオーガを消し去るに足るまで溜めることが出来た。

 

「私の力が少しでも役に立ったってんならそれでいいさ。こいしも頑張ったね。やるじゃないかい。」

 

「へへへ。私はほとんど闘わなかったから最後に手伝えてよかった!」

 

「こいしさんもありがとうございました。」

 

 歓談をする三人の元に超サイヤ人を解いた悟飯が降りてきた。

 

「みなさん、お疲れさまでした!」

 

「悟飯さん!来てくれて本当にありがとうございました。悟飯さんのおかげで恐らく被害も最小限で済んだと思います。」

 

「それにしてもあんた強かったね。まだ子供だってのにたいしたもんだよ!」

 

「でもさ、あんなに力があるんだったら悟飯一人でもあいつを倒せたんじゃないの?」

 

 こいしの言葉に悟飯は少し顔を俯かせて答えた。

 

「……確かに本気でやればあいつを倒すことは可能でした。でもここは地底です。超サイヤ人を越えた超サイヤ人の力ではこの地底すらも壊しかねない。だからトランクスさんの力が必要だったんです。すみません。」

 

「いいんですよ。その力はあのセルをも上回るんですから。……とにかく倒せてよかった。あのままいけばあいつを止められずに地底を廃墟に変えてしまうところでした。」

 

「……あいつ、力に飲まれなきゃもう少しマシな闘いが出来たかもしれないね。少し惜しいよ。」

 

 そう言って勇儀は杯に酒を注いで飲み始めた。

 

(こんなに厄介な力を持ったやつが四人……。ホウレンさんたちが心配だ。大丈夫だろうか?)

 

「悟飯さん?どうかしたんですか?」

 

 その後悟飯はトランクスたちに地上で今何が起きているのかを説明した。

 暴走する者たちはあと二人。冥界と地獄の運命は如何に。




ちょっと小説書く時間が無くなってきた……。もしかしたらもう少し更新ペース落ちるかもしれません。

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