ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
霊夢たちが闘っている時、旧都で人を探して徘徊する鬼がいた。
その鬼は異常なまでに筋肉が膨れ上がっており、鈍く光った瞳を充血させている。
「どこだ……どこにいる!出てこい!トランクス!勇儀!!」
「オレを呼んだか?」
鬼は声がした方に勢いよく振り向いた。そこには騒ぎを聞いて駆けつけたトランクスとこいしが立っていた。
「トランクス……!ようやく出てきたな!」
「トランクス、知り合いなの?」
「いえ、まったく見た覚えがありませんが……。おい、おまえは誰だ!なぜオレと勇儀を探している!」
「おれのことを覚えてないのか?……いや、無理もない。随分姿が変わっちまったからな。」
「姿が変わった……?何を言っているんだ?」
「なんだい。あんたらも来てたのかい。」
トランクスたちに続いて今度は勇儀が酒を飲みながら歩いてきた。
「勇儀。おまえも来たのか。」
「私を探してるやつがいるって聞いてねぇ。誰かと思って来てみれば随分と強そうなやつがいるじゃないかい。」
「でもあの鬼なんか様子が変だと思わない?なんだかすごく嫌な感じがする……。」
「そうだねぇ。ただのそこいらの鬼とは比べ物にならないくらいの力を感じるよ。こりゃあ楽しめそうだ!」
「まったく。おまえは……。」
鬼はトランクスと勇儀の姿を確認すると体を震わせ始めた。
「ハッハッハッハ!おれが探していた二人が同時に現れてくれるなんてついてるぜ!ちょうどいいから教えといてやるよ。おれはオーガ。路地裏でおまえを襲って負けちまった鬼だ。思い出したか?」
「!!あの時の!そうか、確かにあの時とは姿が違いすぎて気づかなかった。だがあの時のおまえはそれほどの力を持っていなかったはず……何があった?」
「……まあ教えてやってもいいだろう。数日前、おれの所に一人の男がやってきた。そして不思議な能力でおれに力を与えてくれたんだ!そこいらのやつじゃ相手にならないほどの力をおれは手に入れて思いついたことがある。それはおまえたち二人を倒し、この旧都で最強になることだ!」
「へぇ。いい目標じゃないかい。だけどいくらなんでも私たちを倒すのは難しいんじゃないかい?」
「そいつはどうだろうな?さあおれと闘え!トランクス!!勇儀!!」
「よーし、じゃあまずは私からやらせてもらおうか?」
「え~?先に来たのは私たちだよ?」
「いいじゃないかい。トランクスにやらせたらすぐに終わっちまうかもしれないだろ?だったら私にやらせとくれよ。」
「どうするのトランクス?」
「オレは別に構いませんよ。油断するなよ勇儀。」
「わかってるって、この間の異変で痛い目を見てるからねぇ。油断せずに最初から真剣に相手させてもらおうか。」
そう言って勇儀は持っていた杯をこいしに預けて腕を鳴らした。
「珍しいじゃねえか。あんたが遊ばずに真面目に闘おうなんてよ。」
「ちょっとした心境の変化ってやつさ。私もまだまだ強くならなくちゃならなくてねぇ。ちょうど修行の相手が欲しかったところさ!」
「言っとくがおれはあんたらを殺すつもりでやる。手加減なんかするんじゃねえぞ!」
「そうかい、なら死んでも恨むんじゃないよ!」
二人は互いに距離を詰めて高速で殴りあう。本来ならば殴り合いなど出来るはずがないオーガであったが力を得たことによってあの勇儀と互角に近い闘いを繰り広げていた。
「へえ!やるじゃないかい!だけど、まだまだ甘いねぇ!!」
「!!」
勇儀はオーガの攻撃を弾くとその瞬間、オーガの胸に重たい拳を何発も叩き込み吹き飛ばした。
オーガはそのまま民家に突っ込み衝撃で民家が崩れ落ちる。
「お、おい勇儀!中に人がいたらどうするんだ!気を付けて闘え!」
「トランクス落ち着いて。ここら辺の連中はみんなさっきのあいつの力を怖がって逃げちゃったから今は私たち以外残ってないよ。」
「ですが、万が一のことがあったら!」
「大丈夫だって。もし周りに妖怪とかがいたら私たちで助ければいいよ。ね?」
「……わかりました。勇儀!あまり周りを壊しすぎるなよ!」
トランクスの言葉に勇儀はひらひらと手を振って返事をする。
「さて、もう終わりかい?」
「ウォオオオオ!!」
すると瓦礫の中からオーガが飛び起きて、再び勇儀に向かって突っ込んできた。
勇儀はオーガの両手を同じく両手で受け止めて、互いに強く押し合った。
「内臓が潰れたような感触があったんだけどねぇ……!まだまだ元気じゃないかい!そうこなくっちゃねっ!」
押し合いの中勇儀は右足を振り上げてオーガの顎を蹴り上げた。
オーガは口から血を噴き出しながら宙を舞った。そして勇儀はそれを飛び上がって追いかけると今度は両手を合わせてハンマーのようにして振り下ろす。
それを食らったオーガは地面に叩きつけられて小さなクレーターが出来た。
「ぐっ!?」
「ほらほら、どうした!あんたの力はそんなもんかい!?」
「舐めるなよ……!ぬぅん!!」
オーガは右手に力を込めて落ちてくる勇儀を殴りつけた。
勇儀はなんとか防御するもそのまま吹き飛ばされてしまった。
「……まだそんな力が残ってるのかい。」
「当たり前だ。おれはまだピンピンしているぜ?」
闘いを見ていたトランクスはオーガの異常性に気が付き始めていた。
「おかしい。あれだけの一撃を食らってピンピンしてるだなんていくらパワーアップしたとは言えあり得ない。」
「あいつが異常にタフなだけじゃないの?」
「恐らく違うと思います。いくらなんでもタフすぎる。それにおかしいのはそこだけじゃないんです。」
「どういうこと?」
「……あいつの体の傷がなさすぎる。血を吐くほどの攻撃を受けてかすり傷ひとつないのはどう考えてもおかしいと思いませんか?」
「そっか……!確かにあの鬼全然怪我してない!」
「これは……もしかしたら勇儀だけではまずいかもしれないぞ……。」
トランクスが心配する最中も二人のぶつかり合いは続いていた。真剣に闘うとは言え、最初は半分くらいの力で闘っていた勇儀も相手の異常性に気づき始めて、今では全力の力で闘っていた。
「たぁあああ!!」
「うごぉお!?」
激しいぶつかりあいの果てに勇儀の全力の拳がオーガの胸を貫いた。
「やった!勇儀の勝ちだ!」
「どうやら、心配は必要なかったようですね……ん?」
胸を貫かれて死んだかと思い油断した勇儀の腕を突然オーガががっしりと掴み取った。
「「「!?」」」
「はぁああ!!」
「ぐあっ!?」
オーガは勇儀の腹を殴りつけ、更に自らを貫いた勇儀の腕を引き抜いてそのまま勇儀を振り回して放り投げた。勇儀は腹を抱えながら着地する。
「げほっ!あんたその体……いったいどういうことだい……?」
「これがあの男から受け取った力……!おれの体はどんな傷も即座に再生できるのさ!この力がなけりゃ、おれなんかとっくにくたばってる。だがこの力があればおれはどんなやつにも負けねえ!つまり最強ってわけだ!」
そう言っている間にもオーガの胸に空いた穴は塞がっていた。
トランクスが気づいた異常性はこのことだったのだ。
「……どうりで私の攻撃を受けてもピンピンしてると思ったよ。随分と厄介な力を手に入れたもんだ。」
「そういうことだ。トランクス!おまえも遠慮せずにかかってきていいんだぜ?二人がかりで来てもおれは負ける気がしねえ!それともおれが勇儀を倒すまで眺めてるか!?」
「……こいしさん。少し下がっていてください。」
「え?」
「勇儀。ここからはオレも闘わせてもらうぞ。」
「何言ってんだいトランクス!私は一人でもやれるよ!」
「このままやれば間違いなくおまえは負けるぞ。それでもいいのか?」
「だからって二対一ってのは気に入らないんだよ!」
「……おまえの言いたいこともわかる。なら少し休め。ここから先はオレが一人でやる。先にこいつと話していたのはオレだ。オレにも闘う権利くらいあるだろ?」
「……ちっ。わかったよ。今回はあんたに譲るさ。ただし!埋め合わせとして今度もう一度私と闘っとくれ。それが条件さ。」
「わかった。それで満足ならいくらでも闘ってやるさ。」
「言ったね?もう撤回できないよ!」
勇儀は条件を出してこいしの隣までやってきて杯を受け取ると座り込んで酒を飲み始めた。
「それと、絶対負けるんじゃないよ?」
「わかってる。オレも久々に本気でやろう。」
「なんだ、結局一人ずつ闘うのか?……まあいい。オレが本当に闘いたかったのはトランクス、おまえだ!あの時の借り、その命で返してもらうぜ!」
「はぁあああ!!」
「!!」
トランクスは最初から超サイヤ人に変身してオーガと対峙した。溢れ出る気はオーガを完全に上回っている。さすがのオーガも再生があるとは言えその圧力に息を飲んだ。
「言っておくがオレは甘くない。おまえが殺すつもりで闘うなら、オレもそのつもりで闘わせてもらうぞ。やめるなら今だがどうする?」
「……そうこなくっちゃ面白くねえ!この旧都でどっちが強いか決めようぜ!」