ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
早苗を助けた霊夢を見て妖怪はわなわなと震え始めた。
「博麗の巫女……博麗霊夢ぅ!!」
「そうだけどなに?私のこと知ってるのかしら。」
「知ってる、知っているさ!てめぇは俺様のことなんか覚えていないだろうがなぁ!!」
「?何言ってんのよ。あんたなんかあったことないわよ?」
「うるせぇ!!てめぇが覚えてなくても俺様はよぉく覚えてんだよぉ!!」
妖怪は怒りを露わにして物凄い形相で霊夢を睨みつけていた。
「霊夢さん、この妖怪に何したんですか?」
「知らないわよ。こんなやつ見たこともないわ。ただの勘違いじゃないの?」
「ちげぇって言ってんだろうがぁ!!俺様はなぁ、昔てめぇに退治されたカプラス様だ!どうだ思い出したかぁ!?」
「いえ、全然。」
「な……っ!ほ、本当に覚えてやがらねぇのか?あんだけ俺様のことをボコボコにしておいて?」
「ええ、まったく思い出せないわ。」
「ふ、ふざけやがって!!ぶっ殺してやらぁ!!」
カプラスは鋭く伸びた爪で霊夢に襲い掛かり攻撃を仕掛けるが霊夢はそれを紙一重ですべてかわして、カプラスの顔面に拳を叩きこんだ。
「うへへへ!痛くも痒くもねえぜぇ?しっかりやれよ、博麗霊夢ぅ!!」
「くっ!」
霊夢はすぐさま後ろに下がりカプラスから距離をとった。
「早苗、文、あいつめちゃくちゃ硬いんだけど、どういうこと?」
「私たちにもわかりません。ですがあと少し時間を稼げればピッコロさんの技の準備が整うはずです。なんとか時間稼ぎを手伝ってください!」
「なるほど、そういうことね。いいわ。やってやろうじゃない。でもただ時間を稼ぐだけなんてことは言わないわ。少しでもダメージを与えてやるんだから……!」
「てめぇらさっきからなにひそひそ話てやがる!俺様を前にして随分余裕じゃねぇかぁ!!」
「そりゃそうよ、あんたみたいな硬いだけの雑魚。余裕があるに決まってるじゃない?」
「なんだとぉ!?」
「霊夢さん、そんなに煽ったら霊夢さんに攻撃が集中してしまいますよ!?」
「いいのよ、その方が時間を稼ぎやすいわ。大丈夫、油断なんてしてないから。私に任せて二人は援護をお願い。」
「なるほど、わかりました。私たちでサポートしましょう。早苗さん、やれますね?」
「わ、わかりました。霊夢さん、あまり無茶しないでくださいよ?」
「わかってるわよ。」
「舐めやがって……!こうなったらてめぇら全員たっぷり痛めつけてから殺してやるぜぇ!!」
カプラスはズシンズシンと音を立てて爪を振り回しながら霊夢たちの元へ突進してきた。
それに合わせて早苗と射命丸は左右に分かれて三方からカプラスを囲み同時に弾幕を放つがカプラスはその弾幕をものともせずに突進し続ける。
「うっひゃっはっは!効かねえって言ってんだよぉ!」
「でしょうね。ならこれならどうかしら!」
カプラスが霊夢の目の前まで来ると突然壁にぶち当った。
「!!こいつは結界か?ちっ、めんどくせぇなぁっ!!」
「早苗!文!あいつの足元を攻撃して!」
「「はい!!」」
霊夢の合図に合わせて二人は大量の弾幕を放ち、カプラスの足元を攻撃して大量の土煙を発生させた。それによりカプラスは回りが見えなくなる。
「目隠しなんかして何のつもりだぁ?こんなもんすぐに吹き飛ばしてやるぜぇ!」
カプラスは両手を大きく振り回して土煙をすべて吹き飛ばした。そして視界が良くなるとカプラスの四方すべてを霊夢の結界が囲み逃げ道を完全に失くしていた。
「こいつは……!?」
「かかったわね。ピッコロ!準備は出来た!?」
「ああ、待たせたな……!食らいやがれ!魔貫光殺砲!!」
ピッコロの指先から螺旋を纏った光線がカプラス目掛けて超スピードで飛んでいく、その場にいた全員がその瞬間勝利を確信した。だがしかし……。
「ばぁか!お見通しなんだよぉ!!」
「「「!!?」」」
その瞬間カプラスは一瞬で地面に潜り、姿を消した。そして魔貫光殺砲は結界を貫いてそのまま遥か彼方まで飛んで行ってしまった。
「っ!霊夢さん、下です!」
「遅ぇんだよぉ!!」
「っ!きゃああ!!」
全員が動揺した隙にカプラスは地面から飛び出しながら霊夢を爪で切り裂いた。
霊夢後方にいるピッコロの前まで吹き飛ばされて地面を転がる。
「霊夢さん!!」
「霊夢!意識はあるか!返事をしろ!」
「くっ……!大丈夫よ、大した傷じゃないわ……。」
「咄嗟に避けやがったみてぇだが、間に合わなかったようだなぁ?いい気味だぜ!うっひゃっはっはっは!!」
「私のミスだわ……。結界を足元にも仕掛けるべきだった。まさか地面を潜って逃げるなんて……!」
「まだ動けるか……?」
「当たり前よ……。あんなやつに負けるもんですか……!」
霊夢はよろけながらもすぐに立ち上がり再び闘う意思を見せた。
「そうこなくちゃ面白くねぇ。だがそんなもんで済むと思うなよぉ?もっともっと痛めつけてから殺してやるんだからなぁ!!」
「……霊夢。少し耳を貸せ。」
「……何?早くしてよね。」
「ホウレンと闘った時に使っていたおまえの奥義があっただろう?」
「夢想天生のこと?」
「ああ、そうだ。あれを使ってもう一度時間を稼げるか?今度はなんとかさっきよりも早く気を溜めて今度こそあいつに魔貫光殺砲をお見舞いしてみせる。」
「……今度は当てられるの?」
「ああ、安心しろ。今度はさっきのようにはいかん。必ずあいつを仕留めてやろう。オレが気を溜める間にやつを倒せると言うのならそれでもかまわんがな。」
「意地悪ね。今の私じゃできないってことくらいわかってるでしょ?……いいわ。やってやろうじゃないの。貴方ホウレンよりも強いんでしょ?期待してるわよ。」
「へっ、ならば期待以上のものを見せてやろう。頼んだぞ、霊夢。」
「まかせなさい。早苗!文!下がってて。ここからは私がやるわ。」
「!?な、何言ってるんですか霊夢さん!そんなの無理ですよ!その傷じゃいくら霊夢さんでも危険です!ここは私と文さんに任せてください!」
「大丈夫よ。私が全力でやるには一人の方が都合がいいだけだから……!」 『夢想天生』
「あれは……!」
霊夢はゆっくりカプラスの前まで歩き出した。
「一人でだとぉ?自殺志願かぁ?うへへへっ!ならば望みどおりに殺してやるよぉ!!」
そして霊夢に鋭い爪を振り下ろすがそれは当たらずに空を切り、カプラスは驚いて目を見開いた。
その隙に霊夢はカプラスを思いっきり蹴りつけてカプラスは立ったまま地面を滑る。
「な、なんだぁ!?なんで俺様の爪が当たらねぇんだ!?」
「はあ!!」
霊夢はうろたえるカプラスに更に追撃の弾幕を浴びせた。
「っ!!くそっ!こんなもんっ!」
弾幕を全身に受けながらもカプラスは霊夢の元へ走り、再び霊夢を爪で切りつけるがその攻撃も当たることなく空を切った。
「やあ!!」 宝符『陰陽鬼神玉』
そこに霊夢は手のひらから巨大なエネルギー弾を創り出し、カプラスに叩きつけた。
カプラスは抑えきることが出来ずに空中に飛ばされた。
「ぬぉあぁあああっ!?」
受け身も取れずに頭から落ちて地面に減り込んだカプラスはすぐに地面から顔を出して霊夢を睨みつけた。
「くそっ!痛くねぇ、痛くわねぇが俺様が押されるだとぉ!?てめぇいったい何をしやがったぁ!!」
「そんなの教えるわけないでしょ。私にだって意地があるわ。少しは貴方の顔に泥をに塗ることが出来たかしら?」
「こ、この野郎ぉ!こうなったらもう手加減しねぇ!全力でてめぇをぶっ殺ぉす!」
「やってみなさい!ここで終わるのは貴方の方よ!!」
「うぉおおおおお!!」
カプラスの妖気がどんどん強くなり、周りに紫色のオーラが漂い始めた。
「とんでもない妖気……。妖怪の山でもこれほどの妖気は滅多に見られませんね……。」
「霊夢さん……!」
「死にやがれぇ!!」
カプラスが再び霊夢に向かって飛び出すと霊夢は口元に小さく笑みを浮かべた。
「今度こそ終わりよ。」
「!!?」
カプラスが霊夢を切りつけようとした瞬間、ピッコロが霊夢の後ろに現れた。
「今度こそ食らいやがれ!」
そして再び螺旋を纏った光線が霊夢をすり抜けてそのままカプラス目掛けて飛んで行った。
だが、カプラスは寸前でそれに気づきその光線をギリギリでかわしてしまった。
「うひゃっはっはっは!どうやら望みが絶たれたみてぇだなぁ!そんな攻撃、気づいちまえばどうとでもなるんだよぉ!!」
「っ!ピッコロ!!」
カプラスは笑いながらピッコロを切り付けた。だが切り付けられたピッコロは陽炎のようにゆらゆらと姿を消してしまった。
そしてカプラスの後ろからピッコロの手が伸びてきてカプラスを巻きつけた。
「うぐっ!?」
「残念だったな?そいつはただの残像だ。これで動くことは出来まい!」
「ば、バカな!?てめぇの攻撃は確かに避けたはずだろぉ!?」
「ああ、避けられたさ。だがあれはただの脅しだ。本命はまだオレの指先に残っている。」
そう言うとピッコロはもう片方の手を見せた。するとそこにはバチバチと強い力を放った指先が見えた。さきほど避けられたのはただの見せかけのエネルギー波だったのだ。
「ま、待て!!参った!俺様の負けだ!もうおまえらに手を出さない!だからやめてくれぇ!!」
「生憎、昔その手に引っかかり痛い目を見たバカを知っていてな。オレはそんなに甘くない……!」
「や、やめろぉおお!!」
「魔貫光殺砲ーー!!」
ピッコロの指先から今度こそ本物の魔貫光殺砲が繰り出された。カプラスは巻き付いたピッコロの腕から逃れることが出来ずその光線に胸を貫かれる。
「ぐぎゃぁああああ!!?」
カプラスはそのまま地面に倒れこみ、そのまま絶命した。
ピッコロは伸ばした腕を元に戻して軽く息をついた。
「ご苦労だったな。霊夢。」
「もう……心臓が止まるかと思ったじゃない……。そんな作戦聞いてないわよ?」
「言わないほうが成功率が高いからな。敵を欺くにはまず味方からということだ。悪く思うな。」
「やれやれ、たいしたもんだわ……貴方。」
「霊夢さん、ピッコロさん!」
二人の元へ早苗と射命丸が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?すぐに手当てをしますから神社まで来てください!」
「お二人ともお疲れ様です。どちらも凄かったですよ。おかげでいい記事が書けそうです。」
「あんまり私がやられてたこと書かないでよ?」
「わかってますって。……それと神社で今何が起こっているのか聞かせてもらいますからね。」
「……ええ。(ブロリー、悟飯、そしてホウレン。……あの三人は大丈夫かしら?)」
「そういえばこの妖怪、いったい霊夢さんとどういう関係があったんでしょう?」
「ああ、それね。それならさっき闘ってるときに思い出したわ。」
「え?そうなんですか?」
「ええ、そいつは昔人里の家畜の血を吸って人里に迷惑をかけていたことがあってね。それを私がコテンパンにのしたことがあったのよ。最初はあまりに見た目が違うから気づかなかったけど、あのムカつく笑い方で思い出せたわ。」
「そんなことがあったんですか。」
「でもこいつはこんな力を持っていなかったわ。まったく面倒な力を面倒なやつの渡してくれちゃって、ほんといい迷惑だわ……。」
「まあとにかく私の神社にいきましょう?ピッコロさんも文さんも早く!」
「そうだな。今はとにかく霊夢の手当が先だ。」
「助かるわ……。早苗、肩貸して?」
こうして妖怪の山の死闘に決着がついた。圧倒的にパワーアップした敵にホウレンたちはどう闘っていくのか。霊夢は三人の無事を願って守矢神社へ向かった。