ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
聞き込みを始めてから数時間後、トランクスたちは迎えに行ったパラガスと共に宮殿へ帰ってきた。その時なぜか悟空も一緒であった。
「よう!ホウレン。おめえも来てたんだな。」
「悟空!?なんでおまえがこの星にいるんだ?」
「ちょっと瞬間移動でな。サイヤ人の気を追ってきたら悟飯たちに会ったんだ。詳しい話は飯食いながら話すから、早く行こうぜ!パラガス、案内してくれ!」
「ではこちらへ。」
一同はパラガスの案内に従い、足を進めた。部屋に着くとパラガスは用意させた食事を兵士に運ばせて部屋から出て行った。
「それで?悟空はどうしてサイヤ人の気を追ってきたんだ?」
「界王様に頼まれて伝説の超サイヤ人を探してたんだ。」
「悟空も伝説の超サイヤ人を探しに!?」
「ああ。トランクスから聞いたけんど、おめえたちも伝説の超サイヤ人を倒しに来たんだってな。」
「まあ、正確にはそれを倒しに来たベジータを連れ戻しにって感じだけどな。」
「悟空さん。その界王様の情報は確かなんですか?」
「間違いねえ。オラも伝説の超サイヤ人が暴れた星に行ってきたけど、そこにはもういねえってのに随分でけえ気が残ってた。もしかすっとオラたちよりもパワーが上かもしんねえぞ。」
「ご、悟空たちよりもか!?」
「もしもお父さんの言うとおりだとしたら、パラガスさんの言っていたことはも本当であの二人以外にもサイヤ人がいるってことなんでしょうか…?」
ますます謎が深まる中ホウレンはとりあえず今自分たちが得た情報を交換することを考えた。
「聞いてくれ。俺がこの宮殿で調べたことを話しておこうと思う。まずこの星に宮殿や街が造られたのはつい最近のことらしい。そしてそのどちらもが他の星から連れてきた奴隷に造らせたそうだ。」
「あ!ボクたちはその奴隷にされた人たちに会ってきました!伝説の超サイヤ人に星を荒らされて連れてこられたとか…。」
「ホウレンさん、ほかには何かありますか?」
トランクスの催促に頷き、ホウレンは話を続ける。
「それとは他にパラガスはこの星に帝国を造ることにやけにこだわっていたらしい。もしかしたらパラガスは何かこの星のことを何か隠してるのかもしれない。」
ホウレンの言葉に部屋の中が静まり返る。それぞれが考えをまとめているのだろう。そんな中悟空が夕食を食べる手を止めて話し始めた。
「そう気にすんなよ。この星になにがあんのかは知らねえけど、伝説の超サイヤ人とはぜってーに闘うことになると思う。オラはそれだけわかってりゃ十分だ。」
そう言って悟空は再び夕食をガツガツと食べ始めた。
「……そうかもしれませんね。お父さん、ボク少しだけこの夕食をさっき話した人たちに持っていっていいですか?」
「いいぞ。持ってってやれ。」
「はい!」
「悟飯さん、俺も行きます。少し探りたいこともあるので。」
「わかりました、じゃあ行きましょう。」
悟飯たちは夕食をいくつか持って宮殿から飛び立った。それから少し時を置いてベジータとブロリーがトトカマ星から帰り宮殿へと戻ってきた。
「くそっ!伝説の超サイヤ人は影も形もなかった!」
苛立つベジータにパラガスが後からついてきてベジータをなだめる。
「ただいま一生懸命行方を捜査させております!もうしばらくお時間を。」
「よう!ベジータ。」
「…カカロット。わざわざ俺に殺されに来たのか。」
「ベジータ。伝説の超サイヤ人は見つかんなかったみてえだな。」
「伝説の超サイヤ人はオレが見つけ次第ぶっ殺してやる。出しゃばるんじゃない。」
ベジータはそのまま窓際に座った悟空を通り過ぎて行った。パラガスもそれを追って先に進むがブロリーはなぜか悟空の前に立ち止まった。
「ベジータのやつまた怖え顔になったなー。ん?」
立ち止まり悟空を睨みつけるブロリーに対して悟空は正面に立ち真っ向から睨みあった。
感情が高まり始めたブロリーをパラガスが抑えようとする。
「気を静めろ!ブロリー!」
抑え込むパラガスの言葉も耳に入らずブロリーの気は高まり続ける。だが少し経つと徐々に高まった気は静まり始め、怒りをあらわにした表情も次第にもとのおとなしい顔つきに戻っていった。
「騒がせてすまなかったなカカロット。行くぞブロリー。」
「……はい。」
落ち着いたブロリーを連れてパラガスは再びベジータの後を追って歩き出した。それから数時間後、皆が寝静まったころホウレンは一人夜風に辺りに廊下を歩いていた。
すると視線の先に物凄い怒気を帯びた顔つきのブロリーがどこかへ向かって歩いているのを見かけた。
「あれはブロリー?こんな時間に何を…それにあの顔つきはなんだ?」
最初に会った時とはあまりにも違う雰囲気を纏ったブロリーにホウレンは何か嫌な予感がした。
「……あとを追ってみるか。」
こっそりとブロリーの後をつけていくと辿り着いたのは一つの部屋の前だった。
「あそこは悟空たちが寝てる部屋のはず…。あいつ一体何をしようってんだ?」
「カカロット…!」
「!?や、やべえ…!待てブロリー!」
ブロリーは低い体勢になって扉に体当たりし、そのまま扉をぶち壊して部屋の中へ入っていった。その直後何かが破壊されたような大きな音が辺りに鳴り響き、ホウレンは急いで部屋の中に入ると、そこに見たのは真ん中から折れ曲がったベッドと破壊された外壁であった。
「悟飯!大丈夫か!」
「ボクは大丈夫です!でもお父さんが外に!」
「くそっ!後を追うぞ!」
「はい!」
悟空とブロリーはぶつかり合いながら城の外を飛び回っていた。
「ブロリー、いい加減にしろ!」
湖の付近まで来るとブロリーは両腕を小さく広げ急激に気を高め始めた。
「ウォオオオオオ!!」
「オラたちと同じで一気にパワーが上がるんか……!」
「カカロット!!」
「どらぁっ!!」
「グッ!?」
悟空との距離を一気に詰めて殴り掛かるブロリーであったがそれを追いかけてきたホウレンによって再び元の位置へと蹴り飛ばされた。
「お父さん!大丈夫ですか!?」
「悟飯!それにホウレンも!なんでここに?」
「たまたまブロリーのやつを見かけてな、後をつけてきたらこのありさまってわけだよ。邪魔だったか?」
「そんなことねえさ。サンキューな!それよか気を付けろ、あいつまだまだ底が知れねえぞ……!」
「ああわかってる!」
ブロリーは右手に気を集め、悟空たち目掛けて大量に緑色の気弾を放った。悟空たちはそれぞれ別の方向に避けると気弾は大きく爆発し大地を抉り取る。
そしてブロリーは自らの気をさらに上昇させ始めた。
「オラが感じたのはこの気だ……!南の銀河を破壊したのはおめえだな!ブロリー!!」
「な!?悟空、そりゃどういう__」
「ウオオオオオオオ!!」
ブロリーが気を高めることによって辺りに強い風が吹き始める。
「くっ…!いまはそれどころじゃねえか!!」
「やめろブロリー!」
ブロリーの力が上がり続ける中、いつのまにかパラガスがその場にいた。
パラガスは右手をブロリーに向け必死にブロリーを止めようとしているようだ。
「やめろブロリー!落ち着け!やめるんだ!!」
パラガスが必死に声をかけ続けると最早止めることなど不可能に思えたブロリーの気が急激に小さくなっていった。
「なに……!?」
「おい、嘘だろ!あそこまで暴れてたやつがこんな簡単に……?」
パラガスはブロリーの気が完全に元の状態に戻ったことを確認するとそのままブロリーに歩み寄った。
「ブロリー、宮殿に戻るんだ。」
ブロリーは小さく頷きパラガスと共に宮殿へ飛んで行った。ブロリーの急激な変わりように動揺しパラガスには何も聞くことが出来なかった。
「……悟空。さっき言ってたこと、本当なのか?」
「ああ間違いねえ。ブロリー、あいつが伝説の超サイヤ人だ。」
「お父さん、それなら早くベジータさんたちにも伝えなくちゃ!」
「そうだな。でも今日はもうおせえ、明日の朝早くにこのことをベジータに伝える。トランクスにはホウレン、おめえから話しといてくれ。」
「わかった。」
「……明日はまちげえなく闘いになっぞ。二人ともしっかり休んどけ。」
この後ホウレンはトランクスにこの出来事をすべて伝えた。このことを聞いたトランクスは気合を入れなおして明日の準備を始めた。そして翌日。
~宇宙船前~
ベジータは痺れを切らし地球に帰ろうとしていた。パラガスはそれをなんとか止めようと必死に説得している。
「ベジータ王!明日まで、明日までお待ちください!明日になれば伝説の超サイヤ人がいる星がわかるはずです!」
「今地球ではセルという化け物が大会を開こうとしている。それを終わらせてからでも問題あるまい。
それとも、この俺をここにとどまらせたい理由があるのか?」
「い、いえそれは……。」
「ベジータ待ちくたびれたぞ!朝飯も食わねえで待ってたんだぞ?オラ腹減っちまった!」
声が聞こえた宇宙船の方向を見るとそこには悟空とホウレンの二人組が入口で待ち構えていた。
そして二人はベジータたちの前まで歩いてくると話をつづけた。
「ベジータ。出かける必要はねえぞ。伝説の超サイヤ人はここにいるんだ。」
「カカロット、出しゃばるなと言ったはずだ!」
「パラガス!ベジータに教えてやれ!ブロリーがその超サイヤ人だってな!」
「めっそうもございません!ベジータ王!そのようなことがあろうはずがございません!私より力の劣るブロリーが超サイヤ人だなどと…。」
「なにが私より力の劣るだよ、昨日のそいつの力はどう考えてもあんたより遥かに上だったぞ!」
「ホウレン、それは本当か?」
「悟飯だって見たんだ。間違いねえよ。」
「パラガス、こいつはどういうことだ……。」
「そ、それは…その…。」
追い詰められていくパラガスに更なる追い打ちをかけるように悟飯とトランクスが奴隷となった人たちを連れてこの場にやってきた。
「父さん!パラガスが言っていることはすべて嘘です!あの街は父さんを騙すために造られた廃墟なんです!ここにあるものはすべてパラガスがこの人たちを使って造らせた見せかけの都市です!」
トランクスがすべて言い終えると連れてきたものが一人震えるようにブロリーを指さした。
「あ…あいつだ!オレたちの星で暴れたのは!!」
それを聞いたベジータはついにすべてを理解してパラガスを睨みつけた。
「パラガス、騙したな!」
「……やっと能天気なお前でも呑み込めたようだな。すべては貴様らの言うとおりだ。こんな最低の星にはなんの未練もない。彗星が衝突することが分かったからこそこの星を利用したのだ。」
「彗星の衝突…!それがあんたがこの星にこだわっていた理由か!」
「その通りだ。オレの本来の計画はお前らをこの新惑星ベジータと共に葬り去り、宇宙の中で一番環境の整った美しい地球に移住しそこを本拠地として帝国を建設することなのだからな!ベジータ。新惑星ベジータの王などとその気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ!」
「貴様…っ!」
ベジータがパラガスに掴みかかろうとすると隣から怒気の混じった声が響きベジータは動きを止めた。
「カカロット!!」
その声の主はブロリーであった。ブロリーはゆっくりとパラガスとベジータを押しのけて悟空の前まで歩き出した。
「カカロット……ッ!!」
ブロリーは超サイヤ人へと変身しながら悟空に向かって歩き続ける。その凄まじい気の上昇にホウレンは一瞬足がすくむ。だがベジータはその変身を見て自らも超サイヤ人に変身してブロリーに突っ込む。
「ハアアア!」
ベジータはブロリーの首筋に勢いよく蹴りを当てるもブロリーはダメージはおろか怯みすらせずに悟空を目指して歩き続けた。
それを見て悟空とホウレンは後ろに半歩下がり、両手を構えた。
「カカロットじゃねーっ!オラ孫悟空だ!」
「ウオォオォオオオオオオ!!!」
ブロリーは空を見上げてどんどん気を上昇させていくその姿にパラガスは焦り始め、ブロリーを落ち着かせようと声をかける。
「ダメだ!やめろブロリー!それ以上気を高めるな!!」
だがブロリーはその言葉も耳に入らず、さらに気を上昇させる。そして変化は起こった。
ブロリーの周りが変身による気の上昇で大爆発が起こり、地面をへこませる。さらに気の強さに大気が震え強い衝撃波がホウレン達を襲った。
爆発の中心にいたブロリーの姿は元の姿の倍近いほどの身長になっており、全身の筋肉が膨れ上がっていた。ついに伝説の超サイヤ人との死闘が幕を開ける…!
幻想入りまであと数話くらいです。もうしばらくお時間を!