ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
魔理沙たちの協力によってファトムを捕まえた霊夢とホウレンは博麗神社に戻り、縛り付けたファトムから情報を聞き出そうとしていた。
「こんだけきつく縛っとけば抜け出せないだろ。」
「そうだね。ボクもこれじゃあ動けそうにないや。」
「さて、聞かせてもらおうじゃないの。貴方が強者に声をかけていたのはなぜ?」
「この世界の強者に興味があった。って言ったら信じてくれるかな?」
「半信半疑ってところね。だって貴方、紫のことも聞き出そうとしてたじゃない。」
「そうだね。ボクはもともと八雲紫に興味があっただけさ。この幻想郷の賢者だなんて一度お会いしてみたいものだよ。」
「本当にそれだけかしら?」
「どういうことだよ。」
「どうもこうもないわ。紫のことを知っている人間なんて限られてる。しかもこの人はどう見ても外来人だわ。外来人が紫の存在を知っているなんてありえないことだもの。」
「確かに……。待てよ?じゃあなんでこいつは紫のことを知っていたんだ?」
「それを今聞き出そうとしてるんじゃない。わかったら黙ってなさい。ってことで貴方に質問よ。なんで紫のことを知っているの?そしてどうやって幻想郷に来たのかしら?答えなさい。」
「残念だけど、どちらも答えられないかな。ボクにだって秘密があるからね。」
「いいから答えなさい!正直に答えたらもしかしたら無罪放免かもしれないわよ?」
「ないな。」
「ないね。」
「あんたねぇ……!っていうかホウレン!貴方まで言わなくていいのよ!」
「だってよ。おまえ絶対に逃がすつもりないだろ?」
「当たり前じゃないの。」
「ほらみろ!最初っから逃がす気がねえならあんなこと言うなよな。」
「まったくだよ。まあ話すつもりはないんだけどね。ああでも一つだけあなたたちに情報を教えてあげるよ。」
「?急に何よ。いったい何の情報を教えてくれるわけ?」
「ボクね。人里の人間にも声をかけたんだ。なぜかは教えないけど急いで向かったほうがいいかもね。」
「……何を言っているの?」
「早くしないと、手遅れになっちゃうかもよ?」
そう言ってファトムはニヤリと笑みを浮かべた。霊夢はその瞬間嫌な予感がして振り返った。
「ホウレン!急いで人里に向かう準備をして!」
「え?どうしたんだ?急に。」
「私はこの人を一時的に封印するわ!外で待ってて!」
「わ、わかった。先に出てるぞ!」
切羽詰まった様子の霊夢に動揺しながらもホウレンは霊夢の言うとおりに境内に出て体をほぐして霊夢を待った。
すると数分ほどが過ぎて霊夢が神社から出てきた。
「待たせたわね、急いで人里に向かうわよ!」
「おう、飛びながら説明してくれよ!」
二人は急いで人里に向かって飛び出した。道中霊夢はホウレンに説明を始めた。
「さっきの話聞いてたでしょ?」
「人里の人間にも声をかけたって話か?だったら聞いたが、それがどうしたんだ?」
「その後よ!あいつは最後にこう言ったわ。『手遅れになっちゃうかもよ?』ってね!つまりあいつが話しかけた人に何かを仕掛けた可能性があるわ!」
「そういうことだったのか……!でもあいつは?一人にしちまって大丈夫なのか?」
「私が出る前に封印を施してきたから大丈夫のはずよ!あいつの力じゃ解くことは出来ないわ!」
「そうか、だったら逃げられる心配はないってわけか!」
「そういうこと!さあ急ぐわよ!遅れないでよね!」
「おう!」
数分後。人里に着いた二人は里の様子を二人で確認する。
すると里が少し騒がしいことに気が付いた。
そこで二人は走ってきた人間から話を聞くことにした。
「ねえそこの貴方!ちょっと話を聞かせてくれないかしら?」
「は、博麗の巫女様!ちょうどよかった!」
「何があった?」
「それが里の人間の一人が急に様子がおかしくなって里のみんなを襲い始めたんです!しかも物凄い強さで……!」
「わかったわ。そいつは今どこに?」
「あの向こうです!どうかこの騒ぎを鎮めてください!」
「任せなさい。いくわよホウレン!」
二人は村人の話に聞いた場所へ向かって走り出した。そして角を曲がるとそこには最早人間と言えるかすら怪しい男が里で暴れていた。
男は筋肉が異常に膨れ上がっていて体の大きさが通常の人間の数倍になってしまっていた。
血走った目で辺りを破壊する姿は妖怪よりも妖怪らしい姿とも言えるだろう。
「はっはっは!破壊だ!破壊だ!破壊破壊破壊破壊ぃ!!」
「なんだありゃ!?本当に人間か!?」
「あいつ……!あの人間になにをしたってのよ!?」
二人が人間の変貌に動揺しているとそこに悟飯と慧音が現れた。
「だぁあああーー!!」
悟飯は暴れる男の背中を蹴りつけた。
「うぎゃ!?クソガキ!痛ぇじゃねぇか!」
「何があったか知らないが里の者を傷つけるのは許さん!私と悟飯でおまえを止める!」
「あん?てめえ寺子屋の先生じゃねえか。へっへっへ、そんなガキと一緒に俺を止めるだと?笑わせんなよ、先生?今の俺は人間の力を遥かに超えてるのさ!常識なんぞじゃ図れないほどにな!はーはっはっは!!」
「悟飯!オレたちも力を貸すぜ。」
「ホウレンさんに霊夢さん!ありがとうございます!」
「さっさと片付けるわよ!」
「あれでも里の人間だ、出来れば殺さないでくれると嬉しい。出来るか?」
「仕方ないわね!聞いたわね、ホウレン!手加減していくわよ!」
「了解だ!はぁあああ!!」
ホウレンと悟飯は超サイヤ人にならずに気を高めた。そして二人で男に突撃して顔面を殴りつけた。
「ごあ!?この野郎!」
男はよろけながらもホウレンに殴り掛かり反撃を試みた。だがそれは敵わず、両足を霊夢と慧音によって蹴り崩されて倒れこむ。
そこにすかさず悟飯が空から急降下して倒れた男の腹を両足で踏みつける。
「ごふっ!!くっ、て…てめぇら!調子に乗りやがってぇええ!!」
「見た目通りタフな奴だな。さっさと降参した方が痛い目に合わなくて済むぜ?」
「この力を持ちながら降参だと?あり得ねえな!俺はここでてめぇらを皆殺しにしてやるぜ!そして俺が幻想郷の頂点に立つんだ!はーはっはっはっは!!」
「呆れた。力の差もわからないのね。慧音。残念だけどこいつはもう人間じゃないわ。私が退治する。」
「……そうか。わかった。やってくれ……。」
男の様子を見てもう手遅れと判断した霊夢は男を退治することを決めた。それはすなわち男を殺すということでもあった。
非情かもしれないがこれもまた博麗の巫女の役割なのだ。
「今私が楽にしてあげるわ。覚悟しなさい。」
「覚悟するのはおまえだってーの!俺が幻想郷最強だ!」
「__邪魔だ。」
「「え?」」
霊夢と男が闘いを始めようとしたその時、男の後ろから別の男の声が聞こえてきた。
すると次の瞬間、暴走していた男は頭に重たい一撃を食らい地面に減り込んだ。
男を殴りつけたのはなんとブロリーだった。
「この程度で幻想郷最強だと?笑わせるな、クズが。」
「な……何者だ……?」
「……ただの獄卒だ。」
「ご…獄卒……?ち…ちくしょう!この俺がてめえみたいなやつにこんな……!!」
「さっさとくたばるといい。」
「ぐぇっ!!」
そしてブロリーは男を踏みつけると男はそのまま絶命し、動かなくなった。
「ブロリーじゃねえか!パラガスから聞いてたけど本当にいたんだな!」
「ホウレン!?それに悟飯も、なぜおまえたちが幻想郷にいる?」
「俺たちだけじゃねえよ、悟空にベジータ、ピッコロにトランクスも一緒だ。」
「……カカロットたちも来ているのか……。ということはおまえたちもあの妙な空間に巻き込まれたのか?」
「少なくとも俺はそうだよ。でも悟空たちは違う目的で来たらしいぜ?」
「話の途中にすまない。ブロリーさんと言ったか?あいつを止めてくれてありがとう。」
「俺はただ目ざわりなやつを消しただけだ。礼を言われる覚えはない。」
「だったら一方的に感謝させてもらおう。」
「……好きにしろ。」
「実際助かったわ。私が手を汚さずに済んだしね。ありがと。」
「霊夢か……ちょうどいい。おまえを探していたところだ。」
「なに?私に用があってわざわざ地獄から来たの?」
「そうだ。映姫から頼まれてな。この辺で強者に声をかけてまわる男を知っているか?」
「ええ、知ってるわよ。ていうかさっき捕まえたばかりよ。」
「何?もう捕まえていたのか。そいつはどうした?」
「今は私の神社で一時的に封印しているわ。あいつがどうかしたの?」
「ああ……実はな。」
ブロリーは地獄で起こっていたことと映姫から頼まれた内容をすべて話した。
「なるほどね。あいつ地獄にまで顔を出してたってことね。でもそういうことならもう解決じゃない?」
「確かにな。そいつの始末はおまえに任せていいか?」
「最初からそのつもりよ。私たちで対処するからって映姫に伝えといて頂戴。」
「いいだろう。伝えておく。じゃあな。」
ブロリーは踵を返して霊夢たちの前から去ろうとした。
「待てよ、ブロリー。久しぶりに会ったんだ。一緒に飯でも食っていかねえか?報告はそれからでもいいだろ。」
「断る。おまえたちと仲良く飯を食う気はない。」
「そう言うなよ。な、悟飯と慧音もどうだ?」
「はい、ボクはいいですよ。」
「私はこいつの後始末をしなくてはならないから遠慮しておこう。」
「そうか?悪いな。」
「なに気にするな。ゆっくり食事を楽しむといい。」
「霊夢はどうする?」
「そうね。もうお昼過ぎだしあちこち飛び回ってお腹もすいちゃったから私も食べていくわ。」
「だってさ、ブロリーもいこうぜ?どうせ地獄に戻ったってすぐに次の仕事だろ?」
「……はぁ。わかった。オレも行こう。」
「へへ、そうこなくちゃな!よし行こうぜ!」
約三年ぶりの再会を果たしたホウレンとブロリーは四人で飯屋へ向かって歩き出した。
噂の男は捕まえて、暴走する村人も倒したが果たしてこの噂は本当にこれで終わるのだろうか?