ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
捜索を始めてからホウレンと霊夢は様々な場所へ足を運んでみたがなかなか手がかりを見つけることが出来ないでいた。
そこで二人は強者が揃っている紅魔館へ足を運ぶと、門の前で話をしている悟空と美鈴の姿があった。
「おーい悟空ー!」
ホウレンの呼びかけに気づいて悟空と美鈴は二人の方へ歩いてきた。
「ホウレンに霊夢じゃねえか。なんでここに?」
「ちょっと今人探しをしててさ。悟空たちの所には来てないか?闘いを挑んでくる女。」
悟空と美鈴はお互いの顔を見合わせて考え込んだ。
「オラのとこには来てねえぞ。」
「私もです。その女性がどうかしたんですか?」
「ええ。実はね__」
霊夢は事の成り行きを二人に話した。
「__と言うわけよ。」
「なるほど、確かにこの間の異変のことを思うとその女性はとても怪しいですね……。」
「でしょ?だから今ホウレンと二人であちこちを探し回ってるんだけど、なかなか見つからないのよねー……。」
二人がそう話している間に悟空はホウレンに楽しそうに聞いてきた。
「なあなあ、その女ってつえぇのかな?」
「さあ、どうだかな。会ってみないと分からねえけど……。」
「オラのとこにも来てくんねえかなぁ!」
心から言っているのであろう。ワクワクした様子の悟空にみんなは呆れかえった。
「貴方は相変わらずね。もしも貴方のところに現れたら倒しちゃってもいいわよ?」
「ほんとか!やったー!」
「いいのか?」
「ええ、だってこの人貴方よりも強いんでしょ?だったら何の心配もいらないじゃないの。」
「ああ~……それもそうだな。」
霊夢の言うとおりホウレンは超サイヤ人の壁を越えたとはいえ、まだ悟空には敵わないのだ。だからホウレンも霊夢の言葉に納得せざるを得なかった。
「でも一つだけ覚えといて欲しいんだけど、もし噂の女が凶悪だったり、実力が強かったりした場合は出来れば捕まえて私の所に連れてきてくれないかしら?」
「オラは構わねえけど、なんでだ?」
「情報を聞き出したいのよ。もしもアスイと関わりがあるとしたら幻想郷を狙ってる可能性だってあるわ。それを未然に防ぐためにはどんなものでもいいから情報が欲しいのよ。まあ勿論?噂の女がアスイとはまったくの無関係って可能性も十分にあり得るけど……。」
「……わかった。覚えとく。見つけて、もしわりいやつだったり、つええやつだったりしたらおめえのとこまで連れてけばいいんだな?」
「ええ、お願い。それじゃあ私たちはそろそろ行くわ。」
霊夢が立ち去ろうとしたその時、悟空は霊夢を呼び止めた。
「なあ!今の話ベジータにも教えていいか?」
霊夢は少し考えると一人の人物が頭に浮かんだ。
「ベジータって……あの永遠亭にいる人?」
「そうそう。実は今日久しぶりに組手の相手を頼んでてさ。あとから来るんだよ。」
「……あの人の実力は知らないけど貴方と組手が出来るってことは強いのよね?だったら言ってもいいわ。」
「よかったー!もし言わなかったらあいつその女のこと殺しちまうかもしんねえかんなぁ……。」
「あいつ、手加減ねえもんな。」
「だったら尚更言っておいてよ?死体なんて渡されても困るんだから。じゃあ今度こそ行くわ。」
霊夢は悟空たちに背中を向けて飛んで行った。ホウレンは悟空たちに軽く手を挙げて別れを告げてから霊夢を追いかけた。
「気ぃ付けろよー!」
「霊夢さん、ホウレンさん、頑張ってくださーい!」
悟空と美鈴の言葉を聞きながら二人は次の目的地へと一気に加速していった。
~人里~
二人が次に来たのは人里だった。人里の強者など限られているが情報は集まりやすいと考えたのだ。二人は人里に着くとすぐに二手に分かれて情報を探し始めた。
だが噂を聞いたことはあるが見た者はなかなか見つからず、ホウレンはやれやれといった具合に頭をかいた。
「全然情報が集まんねえな。おいあんた!」
ホウレンは近くを通りかかったおじさんに声をかけた。
「なんか用か?兄ちゃん。」
「ちょっと聞きたいことがあってよ。最近ここいらで聞くっていう噂についてなんだけどよ。」
おじさんは少し考えると何かを思い出したのか、手をポンと叩いた。
「ひょっとしてあの噂のことか?」
「そうそう!その噂について知ってることを教えて欲しいんだけどいいか?」
「おう、いいぞ。確かそいつは少し前にやって来たみたいでな。里でも見かけることがあるらしい。」
「里にも現れるのか。」
謎の人物は人里にすら現れる。これは大きな収穫かもしれないと考えた。
「見かけるだけじゃねえ、里に来て二人で飯を食ってたって話も聞いたことがあるな。」
「二人?噂のやつは一人だけじゃないのか?」
自分が知っている噂と少し違う話にホウレンは顔をしかめた。
「何言ってんだ。最初からそいつらの噂の話をしてんだろ?話を続けるぞ。なんとその二人は一緒に住んでいるかもしれねえらしいんだ。」
「……ん?」
おじさんの言葉にホウレンは一瞬反応が遅れた。おじさんが話す内容がどこか自分が知りたがっている情報と違っていたからだ。
「それどころじゃねえぞ?どうやらそいつは他の女とも仲良く里を歩いてたらしい。」
「ちょっと待て、あんた一体なんの話を……?」
「いやーまさか博麗の巫女様に男が出来るなんてなぁ。」
ここでホウレンはおじさんが誰のことを指した噂を言っているのか気づいた。しかしそれは明らかな誤解であるということもだ。その噂の内容にホウレンは頭が痛くなる。
「しかし博麗の巫女様というものがありながら他の女と浮気なんざ、度胸のある男だぜ。」
「……おっさん、その噂なんだけどさ。俺が聞きたいのと違うやつだ。……それとその噂なんだが……誤解__」
「ホウレン。情報が入ったわよ。」
噂の内容が勘違いであることをおじさんに伝えようとするとそこに霊夢が現れた。
あまりのタイミングの悪さにホウレンは顔を引きつらせた。
「ちょっと?なんて顔してんのよ。ほら、さっさと行くわよ。」
「おまえ、なんつータイミングで出てきてんだ……!」
「はぁ?何言ってんだか知らないけど、急ぎなさい。早くしないと逃げられちゃうわよ!」
「待て!今重要な訂正をこのおっさんにしなくちゃいけなくてだな……っておい!聞けって!」
ホウレンの抵抗空しく霊夢に腕を掴まれ半ば引きずられるようにその場からいなくなった。
残されたおじさんはその姿をポカンとした表情で見送った。
「なんだ、あの兄ちゃんが噂の男だったのか。……ひょっとしてあの兄ちゃんが聞きたがってたのって別の噂のことだったか?」
ようやくここでおじさんは内容の食い違いに気が付くのだった。
そしてホウレンは訂正を諦めて霊夢の後ろをついて飛んでいた。
「はぁ……まさか、あんな噂が流れてるなんてな。あれじゃあ俺が最悪な野郎じゃねえか……。」
「なんの話?」
「なんでもねえ。そのうち誤解が解ける日が来るさ。……多分。」
霊夢はホウレンの言葉に首を傾げるがまあ大したことないだろうと判断し、再び前を向いて飛び始めた。
「それはそうと、今度はどこに向かってんだ?」
「魔法の森よ。さっき慧音から話を聞いたんだけど、どうやら悟飯のところに噂の女が現れたらしいわ。なんかよくわかんないことをべらべらと話してからこっちの方角へ姿を消したってね。」
ホウレンが話を聞いて回っている間に霊夢はしっかり情報を掴んできたようだ。
「そうか……ようやくまともな情報が入ったってわけだ。」
「そういうこと。……ってことでまずは魔法の森の入り口、香霖堂へ向かうわ。」
「香霖堂?どこだよそりゃあ。」
「ついて来ればわかるでしょ?そこで最初にそこの店主、霖之助さんに話を聞くわ。」
「霖之助……か。ちなみにそいつは強いのか?」
「いえ全然。でもまあ人間と妖怪のハーフだから一般人よりは強いかもね。」
「そうか。じゃあそいつが襲われることはなさそうか……いや待てよ?なあそいつって顔はどうなんだ?」
「え?うーん……そこそこ整ってるんじゃないかしら。でもどうして?」
「噂の女って確か強い力を持ったやつと他になぜか顔がいいやつの所にも来るんじゃなかったか?だったらその霖之助ってやつもあぶねえかもしれないぞ。」
「……完全に忘れてたわ。ただの噂のおまけくらいにしか考えてなかったけど、確かに貴方の言うとおりだわ。霖之助さんの所に急ぎましょう。」
「ああ。」
二人はスピードを上げて香霖堂へと飛んで行った。
~香霖堂~
香霖堂。ここでは冥界や妖怪が使う道具、更に魔法の道具だけに限らず外の世界の道具までも販売している幻想郷唯一とも言える店だ。
ここの店主、森近霖之助はこの間の凍界異変の際に氷の魔人からの被害を受けて店の周りがボロボロになってしまい、その後片付けをようやく終わらせたようだ。
「やれやれ、やっと片付いたか。ようやくこれで一休みできそうだ。」
霖之助はお茶を入れると椅子に腰かけてそれを飲んだ。
すると香霖堂の扉が勢いよく開き、霖之助は驚いてお茶を噴き出した。
「霖之助さん!無事!?……って何やってんのよ。」
「げほっげほっ!い、いや気が抜けたところに突然人が来たもんだから驚いてしまってね。」
霖之助は手ぬぐいで零したお茶を拭き取り始めた。その様子を見て霊夢とホウレンは安心した。
「その様子なら無事みたいね。安心したわ。」
「うん?何のことだい?」
「いいえ、こっちの話。それよりも聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「ああ、構わないよ。とその前に、そちらは?」
「俺はホウレン。霊夢の所で世話になってるサイヤ人だ。」
「そうか君が。霊夢や魔理沙から話は聞いているよ。この霊夢に勝ったんだってね。大したもんだよ。」
「へへっまあな。」
「霖之助さん余計なこと言わないで!あんたも調子に乗らない!」
「わりいわりい、霖之助……でいいか?」
「好きに呼んでくれて構わないよ。」
「そうか、じゃあ霖之助。俺たちがここに来たのはちょっと人を探しててな。ここら辺に変な女が来なかったか?」
「私たちはそいつを探してるの。情報があったら教えて頂戴。」
「変な女……と言うのは知らないがさっき変な男なら来たよ。」
いきなり情報が違うことにがっかりしながらも霊夢は霖之助に質問した。
「それってどんな?」
「ああ、急に店に入ってきて妙な話を振ってきたんだ。『人としての限界。常識を超える力を手に入れてみたくはないか?』ってね。」
「それで、おまえはどうしたんだ?」
「もちろん断ったさ。見るからに怪しかったからね。」
「妙な話を振ってくる男……。ひょっとして今回の噂って実は二人いたのかしら?」
「わからん、でも噂の女と似たようなことをやってる辺り無関係ではなさそうだ。」
「そうね。霖之助さん、そいつがどこに向かったかわかる?」
「その男なら森の奥へ歩いて行ったよ。止めたんだけど聞かなくてね。」
「よし、行こうぜ霊夢。」
「ええ。霖之助さん、ありがとね。さあ行くわよホウレン!私の後についてきなさい!」
「おう!じゃあな霖之助!」
二人はドタバタと店を出て走り去った。
「……なんだったんだ?」
霖之助は首を傾げながらも再び椅子に座り、お茶を飲みなおしたのだった。