ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ホウレンが復活してからアスイや魔人たちとの闘いは更に厳しさを増してきていた。
フランが魔力を集中させている間、悟空がすべての魔人たちの相手をするという形になっており悟空は超サイヤ人になりつつも相手の体を壊さないように心がけていた。
「もうちょっと……悟空、頑張って耐えて……!」
魔人たちは動かないフランを無視して厄介な悟空の元へ集まり一斉に攻撃を仕掛けていた。
悟空その攻撃を難なくかわし続けてフランのために時間を稼いでいるが時々攻撃を受けて徐々にダメージを蓄積させてしまってる。
いつもなら笑ってこの闘いを楽しんでいるであろう悟空も今回は魔理沙たちが危険な敵と闘っているため、その表情に笑顔はなかった。
「だりゃりゃりゃりゃ!だりゃああ!!」
悟空は魔人たちを次々となぎ倒し、転ばせて時間を稼ぐ。
「おめえたち!もうちょっと耐えてくれ!あと少しでそっちに行けっかんな!!」
悟空が声をかけた先にはアスイと闘い傷だらけになった魔理沙たちがいた。
「出来れば急いでくれ!私たちもどこまでこいつと闘えるかわからねえ!……くそっ、どんなスペルカードを使ってもあいつの力ですぐに凍らされちまう……!」
「かと言って近接攻撃で仕掛けても体を掴まれたら最後。全身を氷漬けにされてしまいます。流石に厳しいですね……。なにか対抗手段かあればいいのですが……。」
「おまえの奇跡でなんとかできないのかよ。」
「……無理です。そもそもこの状況でどんな奇跡を起こせばいいんですか?」
「そうだよな……。ちくしょう!せめて霊夢クラスのやつが一人でもいれば……!」
「霊夢さんクラスの実力者はほぼ戦闘不可能にされてしまってますからね……。今人里を狙ってきたのも、実力者の数が大きく減ったからだと思います。」
「全部あいつの作戦通りってことか……。」
二人が話している最中も妖夢と鈴仙がアスイと闘っていた。妖夢が刀で直接攻撃を仕掛け、鈴仙が弾幕でサポートをしてなんとか闘えている。
だがそれも長くはもたず、二人まとめて魔理沙たちの元へ吹き飛ばされてしまった。
「うわ!だ、大丈夫かおまえら!」
「っ痛~!だ…大丈夫よ。まだやれるわ!」
「わ…私もです……!」
「そうか……。おまえたちが闘ってくれてたおかげで少し魔力も回復したことだし、私ももう一度闘わせてもらうぜ!」
「魔理沙さん、私に作戦があります。」
「お、何か思いついたか!」
「はい。みなさん耳を貸してください。」
四人がこそこそとしている間アスイはなぜかそれを眺めているだけで攻撃してこなかった。
それを妖夢は横目にその様子を見ると無表情のままだが若干口角が上がっていてむしろ次にどんな手を打ってくるのか期待しているようにも見えた。
それを不思議に思いながらも妖夢は早苗の作戦を頭に入れた。
「わかった。その手で行こう。二人もいいな?」
聞かれた妖夢と鈴仙は顔を見合わせてお互いに頷いた。
「あいつはなぜか動いてない。余裕かましやがって……今に見てろよ……!」
「魔理沙さん、お願いしますよ。」
「任せとけ。おまえらこそ、へますんなよ。」
「わかってますよっ!」
「「「はあ!!」」」
奇跡『客星の明るすぎる夜』
狂視『狂視調律(イリュージョンシーカー)』
獄神剣『業風神閃斬』
魔理沙を除いた三人が一斉にスペルカードを発動させてその場全体を弾幕で覆った。
「……今度は広範囲の同時攻撃か。」
「本来の弾幕ごっこでは反則ですがこれは闘い!反則も何もありませんからね!」
「……闘いに反則などない。確かにその通りだ。……だがこの程度では闘いにおいて反則にすらなりはしない。」
アスイはもはや前も後ろも見えないほどの高密度の弾幕をあえて凍らせずに軽々と避けていった。
アスイが弾幕に注意が向いているうちに魔理沙はアスイの後方に回り込んで最大まで溜めた八卦炉を構えた。
(これでもくらいやがれ!!) 魔砲『ファイナルマスタースパーク』
今までで最大。超高火力のマスタースパークを魔理沙は解き放った。アスイはそれに気づくとすぐに受け止める姿勢になった。
そしてファイナルマスタースパークを真正面から受け止めていた。
負けじと魔理沙も残った全魔力を八卦炉に込めて踏ん張る。
「……こ…凍らせることが間に合わないほどのエネルギーだというのか……!」
「いけぇええーー!!」
「……ぐっ…うぉおおおおーー!!」
アスイを押し始めたように見えたがあと少しのところでアスイは力を解放してファイナルマスタースパークを凍り付かせてしまった。
凍ったファイナルマスタースパークはアスイが殴り砕いた。
「……はぁ…はぁ……。少し肝が冷えたぞ……。……だが俺には届かなかったようだな。」
「__隙あり!!」 天星剣『涅槃寂静の如し』
「……っ!!?」
ファイナルマスタースパークを受け止めたことによって隙が出来たアスイの真後ろに突然妖夢の姿が現れアスイを斬りつけた。
アスイは常に戦場のすべてに気を張っていたがこの一瞬、妖夢が放ったスペルカードには気づくことが出来なかった。
なぜならこのスペルカードは妖夢が集中力を極限まで高め、気配を完全に消して音すらも聞こえなくするものだからだ。
気配も音も無くなった状態の妖夢の接近にファイナルマスタースパークとぶつかり合っていたアスイが気づくことは不可能に近かった。
そしてアスイは急いで後ろを振り向き防御をしようとするも間に合わず、その斜めに斬り降ろされた一閃を体に浴びて血が噴き出した。
「……ぐっ……!し…しまった……!」
「どうですか……?その深手を負ってはもうまともに闘うことが出来ないはずです!諦めて降参してください!」
「そうだぜ……。そもそもその出血じゃあ、治療しないと間に合わねえレベルだ。さっさと幻想郷を元に戻すんだな。」
「……フ、フフフフ!」
「何笑ってんだよ、早くしねえとおまえも死ぬぞ。さっさと降参しろって!」
「……ハッハッハッハッハ!降参だと?それはおまえたちの方だ……!」
「……なに?」
出血しながらも高笑いを続ける姿は目の前にいる二人には異様なものにしか見えなかった。
そしてそれは少し遠くにいる早苗と鈴仙にも同じように見えていた。
「な、なにを言ってるんでしょう。あの男……。」
「出血で頭がおかしくなったのかな……?」
「……こ…ここまで追い詰められるとは思わなかった。……少しでもおまえたちの闘い方に興味を持ったのが甘かったか……。……だがもうそれもこうなってしまったら仕方がない!俺の真の姿でおまえたちを氷像にしてやろう!!」
「真の姿……だと?」
「……凍てついた白銀の空よ。俺のもとに冷気を送れ!」
アスイが両手を広げて空を見上げると幻想郷を覆っていた白い空が全てアスイの元へ集まっていく。そして白が抜け落ちた空は最初のどんよりとした曇り空へと戻った。
「な、なんだ?空が元に戻った……いや空を覆っていた白い冷気を吸収したのか……!?」
するとアスイの周りで目に見えるほどの冷気が渦巻き、アスイの体を覆いつくした。
そしてその冷気が晴れるとそこにはさきほどまでのラバースーツではなく、真っ白な装束を身に纏ったアスイが立っていた。
その冷気はいままで感じたものとは桁違いのものであり、四人は思わず背筋を凍らせた。
「……『凍零白呑装束(とうれいしらのしょうぞく)』……これが俺の奥の手だ。」
「そ、それがどうしたってんだ!そんな技を出したところでその出血じゃまともに動くこと…すら……__っ!?」
魔理沙と妖夢はアスイの胸を見て目を見開いた。さっきまで出血していたはずの場所がなんと凍り付いて傷口を塞いでしまっていたからだ。
「……傷など凍らせてしまえばなんともない。」
「そ、そんな!あんなに深かったはずなのに!!」
「ち、ちくしょう……!」
「……俺の凍零白呑装束はあらゆるものを凍らせる。」
アスイが手を開くとその両手に長い氷の刀が現れた。
「……さて、終わりにしよう。」
どうしようもなくなった四人は覚悟を決めて歯を食いしばった。だがその時、空から一筋の光が妖夢の前に降りたった。
「……なんだ?」
「今度は何が……っ!あ、貴方は……!!」
そこに現れたのは電撃のような気を纏ったホウレンだった。
「ホ、ホウレンさん!!」
「……遅くなって悪い。あとは任せてくれ。」
「で、でも……!」
「大丈夫だ。俺を信じてくれ。」
「……ホウレンさん……。」
それを遠目で見ていた悟空はその姿に動揺した。
「あの姿……!そうか……あいつ超サイヤ人の壁を!」
迸る気に気づいているのは悟空だけではなかった。それは目の前にいるアスイも感じていた。
「……おまえは確かに凍らせたはず……!なぜ動いている!……それにその強大な気はなんだ!?……おまえに一体何があったというんだ!!」
「……さあな。だが今の俺は前みたいにはいかないぜ……!今度こそみんなを守り切ってみせる!!」
「……ハ…ハッハハハハ!!面白い……決着を付けよう!……お互いの全力でな!」
ホウレンは妖夢たち四人が下がったのを確認してから構えをとった。
ついに最後の闘いが始まる。ホウレンはアスイの奥の手を打ち破れるのか……。