ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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人里を守れ!集まった六人の戦士

 妖夢と鈴仙は人里の人間を助けるために全速力で人里に向かって飛んでいた。竹林の入り口付近までくるとすでに凍結が進んでしまっていて、もはや一刻の猶予もない状況に迫っていた。

 

「竹林が凍りかかって……!?永遠亭にまで凍結が進むのも時間の問題かもしれない……!」

 

「もしかしたら私たち以外にも人里に向かっている人がいるかもしれません。もしいるとしたら急いで合流しないと……!」

 

 二人は全てが白銀に染まった幻想郷を進む。そして人里が見えてくると同時に何体もの氷の魔人の姿も確認できた。これはまずいと額に汗を流す二人だったが、その魔人たちは突然粉々に砕け散ってしまった。

 

「「え?」」

 

 一瞬何が起こったのかわからない様子の二人。魔人たちが砕け散った場所をよく見てみると、そこには超サイヤ人に変身した悟飯が人里に侵入する魔人たちを片っ端から相手取り、撃退している姿が見えた。

 

「悟飯さんが魔人たちの進行を止めている!私たちも行かなくては!」

 

「はい!__っ!?妖夢さん止まって!!」

 

「っ!?」

 

 鈴仙の声に反応して急ブレーキすると、今通ろうとしていた場所に氷の柱が出来た。鈴仙に止められていなければ今頃この柱の中で凍り付いていたであろう。

 

「……よく反応した。褒めてやろう。」

 

「貴方は……っ!」

 

 近くの岩山から声がして上を見上げるとそこにはアスイが立っていた。

 

「妖夢さん。この人は……?」

 

「この人がホウレンさんたちを氷漬けにして更にこの幻想郷を侵略しようとしている男です……!」

 

「ってことは……この人を倒せば幻想郷は平和に戻るってわけね!」

 

「はい。……ですがあの人は私たち二人で勝てるほど弱くはありません。でも、どうやら逃げることは出来なそうです。」

 

 妖夢は刀を抜いてアスイを見上げる。するとアスイもまたどこからかダガーを取り出した。

 

「……そういうことだ。さっきは逃がしたが丁度いい。……人里を制圧する前におまえたちを始末させてもらうとしよう。」

 

 アスイがダガーを振り下ろすとそこから水色の斬撃が二人に向けて飛ばされた。

 妖夢がその斬撃を斬り伏せようとしたその時、遠くから声が聞こえてきた。

 

「妖夢!その攻撃に触れるな!!」

 

「__っ!くっ!!」

 

 妖夢はギリギリでその斬撃をかわした。その斬撃が当たった場所を見るとそこからたくさんの氷が飛び出していた。

 

「……誰だ?」

 

「よう、やっと会えたな……!おまえがあの魔人たちの親玉だな!?」

 

「貴方を倒して氷漬けにされた皆さんを元に戻してもらいます!!」

 

 現れたのは守矢神社に身を潜めていた早苗と魔理沙だった。二人はにしっかり体を休ませたようで体力気力ともに万全の状態であった。

 

「魔理沙さん!早苗さん!お二人ともご無事だったんですね……!」

 

「……誰だか知らんが俺を探していたようだな。……だが残念だが俺は高見の見物をさせてもらおう。……魔人たちよ。来い。」

 

「「「グォオオオオ!!」」」

 

 アスイが合図をするとあちこちに散らばった魔人たちの一部が猛スピードで四人を囲った。そしてアスイはそのまま岩山の上で四人を見下ろした。

 

「くそっ!こいつらか……!」

 

「待ってください魔理沙さん!この魔人たちの中……!」

 

「っ!?紅魔館の連中じゃねえか!こいつらもやられてたのか……!?」

 

 よく見ると魔理沙たちを囲っている魔人たちの中にはレミリア。咲夜。パチュリー。小悪魔。そして美鈴の姿があった。

 

「……中に人がいては迂闊に倒すことはできない。……手も出せないままそいつらにやられるといい。」

 

「ふっざけんなぁあ!!」

 

「魔理沙さん!!」

 

 魔理沙は箒に乗って魔人たち頭上を越え、アスイに向かって飛び出した。だがそんな魔理沙の前に更なる魔人が現れてその動きを止めた。

 そしてその魔人の中身に魔理沙たちは大きく目を見開いた。

 

「霊夢……!!」

 

「グォオオオオオ!!」

 

 霊夢の魔人は雄たけびを上げて魔理沙を他の三人の元へ投げ飛ばした。魔理沙は勢いよく地面へと叩きつけられる。

 

「ぐぐっ!……くそ、見かけないと思ったら霊夢まで……!!」

 

「あの時言った霊夢さんを始末したというのはこういうことだったんですね!?」

 

「……そういうことだ。そいつらの力は中に入っている人間から直接力を奪っている。……つまり中にいるそいつらの実力とほぼ同等ということだ。おまえたちでは勝てない。」

 

「へっ、霊夢やレミリアの実力を持ってる上にあの硬さかよ。嫌になってくるぜ……。」

 

「どうしましょう……霊夢さんたちの実力は私たちよりも上です。魔人たちの対策はあってもそもそも勝てるかどうか……。」

 

「それでもやるしかねえ!早苗、行くぞ!」

 

 魔理沙と早苗はそれぞれ体の一部に魔力や霊力を集中させ始めた。

 

「はい!妖夢さん、それに鈴仙さんも自分の力を攻撃する一点に集中させてください!そうすればあの魔人たちの体も砕くことが出来ます!そしてなるべく手足を狙ってください!手足さえ砕いてしまえば魔人は動けなくなります!」

 

 二人の魔人への対策とは早苗が山の頂上で見たピッコロの闘い方を参考にして自分たちの力を一点に集中させて攻撃することだった。

 そうすることによって魔人たちの硬質な体も打ち砕けると判断したのだ。

 

「な、なるほど!わかりました!鈴仙さん、私たちもやりましょう!」

 

「力を集中……!よし、わかりました!」

 

 早苗の話を聞き、妖夢と鈴仙もまた体の一部に力を集中させた。

 

「……魔人たちへの対策を持ってきたか。面白い。……おまえたちがどこまで魔人たちを抑え込めるか見ものだな。」

 

「まずは一番厄介な霊夢からだ!みんなで一斉にいくぞ!」

 

「「「はい!!」」」

 

 魔理沙の指示に従い全員で霊夢の魔人へ標的を定め、それぞれが攻撃を始めた。

 

「たあ!!」

 

 鈴仙は霊夢の魔人の足を狙い、ばらまくのではなく一点に集中させて弾幕を放った。だが霊夢の魔人はその弾幕をひょいっと足を上げてかわして鈴仙に向けて腕を振り下ろした。

 その腕を妖夢が庇うように刀で受け流し、攻撃を回避した。

 

「その腕もらったぁあ!!」        恋符『マスタースパーク』

 

 霊夢の魔人の伸び切った腕を狙って魔理沙がマスタースパークを放つ。このマスタースパークは通常のマスタースパークと違い魔人に対抗するために範囲を小さく絞って貫通力を大幅に上げたものだ。

 派手な弾幕を好む魔理沙も今回ばかりは魔人を倒すために色々と対策をしてきたのだ。

 

「グォオオオオオ!!」

 

 魔理沙の放ったマスタースパークによって霊夢の魔人の片腕に穴が開き崩れ落ちる。

 

「よし、効いた!どうやら身体能力は同等でも能力までは使えないみたいだぜ!」

 

「そのようですね!この調子で動きを止めてしまいましょう!」

 

「グォオオオオオ!!」

 

 四人の後ろからレミリアの魔人が氷の槍を突き立てる。四人はそれをそれぞれ大きく横に飛んでそれを回避した。だがそれぞれが別の魔人と対峙する形になってしまった。

 魔理沙には霊夢。早苗にはレミリア。鈴仙にはパチュリーと小悪魔。妖夢には咲夜と美鈴がそれぞれ目の前に近づいてきた。 

 

「くそ!分断されちまったか……!」

 

「こうなったら仕方ありません!各自魔人たちを抑え込みましょう!」

 

「ええ!?わ、私のところには二体もいるんだけど!!」

 

「それは私も同じです!でもやるしかありません!」

 

 魔人たちは中にいる者たちに近い闘いかたでそれぞれが攻撃を仕掛けてきた。だがそれは本来の霊夢たちに比べると巨体のせいかなんとか見切れる程度のスピードだった。

 妖夢は美鈴の魔人の繰り出す体術を刀で受け止めながら咲夜の魔人にも目を配らせてギリギリの闘いをしている。

 しかし妖夢は刀に力を集中させながら攻撃を受け止めることで逆に魔人たちの手足に傷を負わせていた。

 

 鈴仙はパチュリーの魔人による口から放たれる氷のエネルギー波に苦戦しながらの上手く二体の魔人を相手取っていた。

 パチュリーの魔人と小悪魔の魔人は本人たちがもともと肉体派ではなかったため他に比べると幾分か闘いやすく、鈴仙一人でも十分に押すことが出来た。

 

 だが魔理沙と早苗の相手は違う。霊夢とレミリアの魔人は力だけじゃなくそのスピードまでもが本人に近い実力だった。

 早苗と闘っているレミリアの魔人は空を飛び回りながら大きな槍を振り回して早苗を翻弄してきた。 恐らくレミリアのグングニルが力の一部として反映されているのだろう。魔人の体に合わせてかその槍はリーチが長く数メートルはあり、早苗は避けるのが精一杯だった。

 

 そして魔理沙が闘っている霊夢の魔人。さきほどの攻撃で腕を一本失くしたにもかかわらずとてつもない強さで魔理沙を追い詰めていた。

 

「さすが霊夢の力だ、一人じゃさすがに厳しいぜ……!早苗に妖夢も苦戦してるな……鈴仙!その二体を抑えつけたら他のやつらのサポートも頼む!」

 

「わかってる!もうすこし待って!」

 

 それぞれが別の魔人と闘いを始め苦戦を強いられる中、いつの間にか岩に腰かけていたアスイが立ち上がった。

 

「……人里に随分強いやつがいるな。仕方ない。……魔人たちよ。そいつらを氷漬けにしてしまえ!」

 

「「「グォオオオオオ!!」」」

 

 アスイの言葉に反応して魔人たちは一斉に口を大きく開き、特大のエネルギー波を放った。

 

「まずいっ!みんな避けろぉおお!!」

 

 四人はそのエネルギー波をなんとか回避しようとしたが近距離での広範囲攻撃を完全に避けきることが出来ず、体の一部をかすらせてしまった。

 するとかすった場所からどんどん体が凍り付いてきた。 

 

「や…やばい!早く凍り付いた部分をなんとかしないと私たちまで氷漬けにされちまうぞ!!」

 

「そ、そんな!でもどうすれば!?」

 

 三人が慌てる中、妖夢は息を飲んで刀を握りなおした。

 

「……こうなったら、凍った場所を斬り落として止めるしか……っ!」

 

「よ、よせ妖夢!そんなことしたら大怪我じゃ済まないぜ!?」

 

「でもこのままでは誰も助かりません!ならばいっそ覚悟を決めるしか……!」

 

 妖夢が覚悟を決めて自らを斬りつけようとしたその時だった。

 

「そんな必要ないよ!」

 

 突然声が聞こえてきたかと思うと四人の体の氷がすべて砕け散った。

 

「……俺の氷が砕かれただと?」

 

「こ、これは一体。」

 

「間に合ってよかった。おめえたちよく頑張ったな。」

 

 そこに現れたのは人里に身を潜ませていた悟空とフランだった。二人の恰好はボロボロになっていて激しい特訓の後が残っていた。

 

「魔人たちは私たちに任せて!貴方たちはあいつを!」

 

「フラン……!ありがとな!でも全部任せるってわけにはいかないぜ。それにあの魔人たちの対処方法も伝えとかねえと!」

 

「ううん、大丈夫。私の能力でみんなを助けて見せるから。安心して、魔理沙。」

 

「え?で、でもおまえ。能力をまだ使いこなせないはずだろ?」

 

「大丈夫。きっと上手くいく。それに悟空だってついてるもん。」

 

「そういうことだ。ただフランが魔人から全員を助けるのは時間がかかる。それまでおめえたちだけであいつを止められるか?」

 

「……私は四人がかりでもかなりきついと思います。でもやってみせます!ホウレンさんたちを助けるためにも!」

 

「そうか。じゃあそっちは任せっぞ。フラン準備はいいか!」

 

「うん!いつでもいけるよ!」

 

「よし始めっか!だぁあああ!!」

 

 悟空は超サイヤ人に変身して魔人たちを闘いを始めた。その間にフランは魔人たち全てに向けて意識を集中させ始めた。

 

「ここはフランたちに任せよう。私たちはあいつを!」

 

 魔理沙たちは岩山の上にいるアスイを見上げた。アスイはそれを見て小さく息を漏らすと組んでいた腕を解いてダガーを取り出した。

 

「……仕方ない……俺が直接おまえたちを凍らせてやるとしよう。」

 

 


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