ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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博麗神社に現れた男 凍結の戦士アスイ

 ここは守矢神社。早苗と魔理沙は魔人たちから逃れて身を休めていた。

 

「これでひとまず手当はおしまいです。」

 

「ああ。ありがとうな早苗。」

 

「それで、何かわかったことはあったの?」

 

 治療を終えた二人に諏訪子が問いかける。しかし二人は無言のまま首を横に振った。

 

「……正直、あいつらが何なのかさっぱりわからねえ。でもパラガスはあいつらから生気を感じないと言ってた。」

 

「生気を感じない……。生き物じゃない?」

 

「生き物じゃないとすると……もしかして、あの魔人を操っている人がいるんじゃないでしょうか?」

 

「その可能性はあるな。だとするとそいつを倒せばパラガスやアリスを助けることができるかもしれない!早苗!そいつを探しにいくぜ!」

 

「はい!行きましょう!」

 

「待て!」

 

 立ち上がり部屋を出ようとする二人を神奈子が呼び止めた。

 

「今体力を失った状態のおまえたちが行ったところで元凶を見つけることが出来ても返り討ちにされるだけだ。今はとにかく体を休めてからにしたほうがいい。」

 

「ですが急がないとピッコロさんが!」

 

「ピッコロ強くて頭がいい。きっとそいつらを上手く巻いてどこかに隠れているはずさ。今はそれを願うしかない。」

 

「……でも!」

 

「早苗。さっきも言ったが今行ったところで返り討ちにあうだけだ。それこそおまえたちを逃がしたピッコロやパラガスが報われないと思わないか?」

 

「……それは…。」

 

「……早苗。神奈子の言うとおりかもしれないぜ。今は一度休もう。その間に対策を練るんだ!」

 

「魔理沙さん……。そうですよね……。今は大人しく休みます。」

 

 二人は座りなおしてこれからの対策について話を始めるのだった。

 一方その頃フランを抱えて逃げた悟空は人里の悟飯の元へ来ていた。

 

「フラン。少しは落ち着いたか?」

 

「うん……。助けてくれてありがとね。悟空。」

 

「悟飯、人里は大丈夫なんか?」

 

「何体か人里の近くにもあの魔人は現れましたが全部ボクが倒したのでとりあえずは。」

 

「そうか。ここはおめえに任せといても大丈夫そうだな。」

 

「はい、任せてください!必ず守り通してみせます!」

 

「さて……フラン。」

 

「……なに?」

 

「レミリアたちを助けんのにはおめえの能力が必要だとオラは思う。」

 

「!……そんなわけないよ。私の能力じゃ壊すことは出来てもみんなを助けることなんてできない……。」

 

「いいや、出来る。おめえの能力で中にいるレミリアたちを除いた氷をぶっ壊すんだ。」

 

「!?そ…そんなの無理だよ!私はそこまで上手く能力を上手く使いこなせない!だからお姉さまだって私をお外に出してくれなかったんだよ!?」

 

「フラン……おめえはまだ自信がないだけだ。能力で中にいるレミリアたちも壊しちまうのが怖えんだろ?」

 

「そんなの……怖いに決まってるよ!当たり前じゃない!もし失敗してお姉さまたちが壊れちゃうって考えたら……私はっ!」

 

 そう言うとフランは俯き押し黙ってしまった。

 

「じゃあフラン、今からオラと特訓しねえか?」

 

「……特訓?」

 

「ああそうだ。おめえが自信が持てればぜってえに上手くいく。だから自身が持てるようにオラと特訓すんだ。レミリアたちを助けるためにもな。」

 

「お姉さまたちを助けるために……。」

 

「どうだ?」

 

 フランは考え込みしばらく俯いたままだったが覚悟を決めて顔を上げた。

 

「悟空。私やるよ!絶対にお姉さまたちを助けたい!それに……まだ謝れてないから…!」

 

「よく言ったぞフラン!さっそくオラと特訓開始だ!」

 

「うん!」

 

 悟空とフランはこうしてレミリアたちを助けるための特訓を開始した。だがそうしている間にも異変の規模はだんだん広がっていた。

 それは幻想郷全体へと広がっていき、各地が大騒ぎになっていった。

 その時修行中のホウレンと妖夢は……。

 

「空が白く……。ホウレンさん、これは一体?」

 

「霊夢もいつまで経っても帰ってこねえし、一体何が起こってるんだ……?」

 

 白く染まる空を見上げていると境内の階段を何かが上がってくる音が響き二人はそろって階段に目を向ける。

 

「……霊夢じゃないな。なんだ?この重たい足音は……。」

 

「そもそも人間の足音じゃありませんね……気を付けてください。」

 

 妖夢は階段から目をそらさずにゆっくり刀を抜いた。ホウレンもまた拳を構えてそれが上がってくるのを待った。すると階段を上がってくる足音が急にピタリと止まったかと思うと境内の地面が階段からどんどん凍り付いてきた。

 

「っ!妖夢!」

 

「わかってます!」

 

 二人は飛び上がり凍り付くのを回避した。今二人が立っていた場所はすぐに凍り付いてしまい、境内のすべてを凍り付かせた。

 

「おいおい……勘弁してくれよ。霊夢に怒鳴られちまうじゃねえか。」

 

「そんなこと言ってる場合ですか!あれを見てください!」

 

 妖夢が指さしたのは境内の階段だった。そこには数体の氷の魔人が上ってきていた。

 

「あいつらがやりやがったのか!よーし、すぐに倒してこの氷を解かさせてやろう!」

 

 やる気満々で魔人と闘おうとしたホウレンだが魔人の後ろから誰かが歩いてくるのが見えた。

 それはなんと勇儀だった。勇儀は魔人が目に入るとニタリと笑って魔人たちを蹴り飛ばしてホウレンたちの元へやってきた。

 

「悪いねえ。獲物を横取りしたかい?」

 

「いや別にいいけど、あんたは?」

 

「私は星熊勇儀。あんたがホウレンだね?」

 

「なんで俺の名前を……。」

 

「トランクスの知り合いだから……って言えば通じるかい?」

 

「なるほど。納得したよ。」

 

「勇儀さん。あの魔人がなんなのか知ってるんですか?」

 

「私も詳しくは知らないよ。だけどなかなか強いやつだって話を聞いてね。トランクスに止められたのを無視してやってきたってわけさ。悪いけどあいつらは譲っておくれ。」

 

 話をしている間に魔人たちは境内まで登ってきた。魔人の強さを知らないホウレンは魔人と勇儀の闘いに少しだけ興味がわいた。

 

「うーん、まあいいか。頼むよ。」

 

「そうこなっくちゃ!よーし、腕がなるねえっ!」

 

「グォオオオオオオ!!」

 

 魔人の雄たけびと同時に勇儀は魔人に向かって一直線に走り出し、そのまま魔人の腹を思い切り殴りつける。勇儀の強烈な一撃で魔人は少しだけ宙に浮き上がった。

 そこに更にもう片方の腕でもう一度魔人の腹を殴りつけると魔人は階段を転がり落ちて行った。

 

「さあ次だ!まとめてかかってきな!」

 

「「「グォオオオオオオ!!」」」

 

 魔人たちは標的を勇儀一人に絞って一斉に襲い掛かっていった。

 

「それそれそれっ!!」

 

 だが勇儀はそれを次々となぎ倒していく。その姿はまさしく鬼そのものであった。

 

「私の一撃でヒビすら入らないなんて……随分と硬いじゃないかい!今度は本気でいかせてもらおうか!!」

 

 そう言うと勇儀が纏っていた妖気が急激に上がっていき妖気を感じ取れないホウレンでさえひしひしと力が伝わってきた。

 力を解放した勇儀は魔人たちとの距離を一瞬で詰めて、その顔面を殴りつける。

 すると先ほどまでヒビすら入らなかった魔人の顔に大きくヒビが入る。それを勇儀は見逃さずに魔人の体をよじ登って今度はそのヒビの入った顔を蹴り砕いた。

 

「まずは一体!さあどんどんいくよ!!」

 

 勇儀はそのまま次から次へと魔人を打ち砕いていった。

 

「へえ……。あいつめちゃくちゃ強いじゃねえか。力だけなら霊夢よりも上じゃねえのか?」

 

「あの方は山の四天王と呼ばれていた鬼ですからね。凄く強いのは知っていましたがこれほどとは思いませんでした。」

 

「鬼か……ほんとになんでもいる世界だよな……ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや……何か変な気が階段を上がってくる……。」

 

「変な気……誰でしょうか……?」

 

 ホウレンが気を感じ取ったと同時に魔人たちが突然大人しくなって勇儀から距離をとりだした。変に思った勇儀はホウレンたちの目線に気が付き、階段に目をやる。

 すると階段を上がってくる男がいた。その男は霊夢と対峙した男であった。

 

「……俺の造った魔人たちをここまで圧倒するとは、なかなか強いやつがいるじゃないか。」

 

「へえ……。あんたが造ったって?ってことはあんたがこいつらの親玉かい。わざわざ私と闘いに来てくれたってんなら歓迎するよ。」

 

「……そのつもりだ。あんたみたいな強いやつに残られると厄介なんでね。」

 

 突然現れた男と勇儀は境内で睨みあう。猛々しく笑う勇儀に対して男は無表情のままだった。

 

「残られると厄介……?何言ってるんだあいつ……。」

 

「私は星熊勇儀。あんたの名は?」

 

「……俺はアスイ。覚える必要はない。すぐに何もわからなくなる。」

 

「そうかい、随分自身があるみたいだねぇ。まあそんなことはいいさ。とっとと始めようじゃないか!私の弾幕、受けてみな!」        力業『大江山颪』

 

 勇儀の周りから突如激しい熱風が吹き荒れる。そしてそのまま巨大な球体の弾が無数にその風に乗ってアスイの元へ飛んでいった。

 

「……ふっ!」

 

 すべてが直撃しかけたその時アスイが腕を横に振り切ると勇儀が放った弾幕がすべて凍り付き、地に落ちて砕け散った。

 

「私の弾幕が凍り付いた!?」

 

 勇儀が動揺した瞬間にアスイは懐に入り込み、どこからか取り出したダガーで斬りつけてきた。

 それにギリギリで反応した勇儀はその攻撃をかすりはしたものの何とか避けて見せた。

 

「なかなか速いじゃないかい。それにそんな武器なんて隠していたなんてねぇ。」

 

「……今ので致命傷を与えるつもりだったんだが。驚いたよ、いい反応速度だ。」

 

「驚いたって顔じゃないぞ?さっきからずっと無表情のままさ。」

 

「……いつもこうなんだ。ちゃんと驚いてはいたさ。」

 

「そうかい。じゃあもっと驚かせてあげようじゃないか!」     四天王奥義『三歩必殺』

 

「いけない!ホウレンさん、回避してください!」

 

「ちょ、おい!」

 

 勇儀が一歩踏み出した。するとその瞬間に勇儀の周りに超高密度の弾幕が張られた。

 それは周囲すべてを巻き込むほどの広さでホウレンと妖夢はなんとかそれを上空に飛んで回避した。一方アスイは持っていたダガーで片っ端から弾幕を弾き落としていた。

 

「耐えて見せな!」 

 

 更に勇儀がもう一歩踏み出す。さきほどよりも更に範囲が広く、高密度な弾幕が張られてアスイを前と後ろから襲い掛かる。

 だがアスイはそれすらも無表情のままですべて防いでいた。

 

「さあ、これが最後だ!」

 

 勇儀が三歩目を踏み出したその瞬間。今までで最大の規模の弾幕が辺り一帯に張られた。

 これで決着がつくかと思うほどのスペルカードだったが……。

 

「……フン!!」

 

 アスイは三歩目が発動したと同時に地面に思い切り手をついた。すると勇儀の放ったすべての弾幕が一瞬で凍り付いてしまったのだ。

 

「これも凍らせてくるのかい!だけど、弾幕が効かないなら今度は肉弾戦で__」

 

「__……悪いな。もう終わりだよ。」

 

 いつの間にやら勇儀の後ろにアスイが現れて勇儀を氷漬けにした。あまりに一瞬の出来事だったため、ホウレンたちは何が起こったのかすら把握できない。

 だがホウレンはアスイが非常に危険なことだけはすぐに理解できた。

 

「……次はあんたたちだ。」

 

「妖夢!逃げろ!!」

 

「で、でも勇儀さんが!」

 

「いいから逃げろ!俺があいつを引き付けておく!!はぁああああ!!」

 

 ホウレンは超サイヤ人に変身してアスイ目掛けて突進した。その勢いのままホウレンはアスイを殴りつけるもその手を軽く掴まれて防がれる。

 すると掴まれたホウレンの手が徐々に凍り付いていった。

 

「っ!くっそ!!」

 

 ホウレンは咄嗟にもう片方の手でアスイの顔に気弾を放ってその手から逃れる。だが右手の先は完全に凍り付いてしまっていた。

 

「くっ……!だぁああああ!!」

 

 ホウレンは残った腕でとにかくアスイに連続でエネルギー弾を放ち続けた。境内は激しい爆音と土煙で覆われた。ホウレンは気弾を撃ち続けながらも妖夢に声をかけた。

 

「なにしてんだ!早く逃げろ!逃げてみんなにこのことを知らせるんだ!」

 

「……っ!わかりました、待っていてください!必ず助けを連れてきます!!」

 

 ホウレンを助けるべく妖夢はその場から逃げる覚悟を決めた。そして急いでそこから離れようとしたその時、アスイが妖夢の目の前に現れた。

 

「なに!?なんであいつがあっちに!!」

 

 気弾を撃つのをやめて土煙の中を見るとそこにはアスイにそっくりな氷像がバラバラになって落ちていた。

 

「……入れ替わってやがったのか!くそっ、妖夢!!」

 

「……まずはあんただ。お嬢さん。」

 

 アスイはゆっくりと手のひらを妖夢に向けて気を溜めた。

 

「っ!きゃあああ!!」

 

 アスイのエネルギー波が妖夢に直撃したかと思われた時、アスイと妖夢の間にホウレンが入り込んでそのエネルギー波から妖夢を守った。そしてホウレンは氷漬けになって境内に落ちた。

 

「え……?ホウレンさん?」

 

「……順番が変わってしまったか。」

 

「そ…そんな……!!」

 

 妖夢はすぐに境内に降りてそのホウレンを見つめた。

 

「嘘ですよね……?ホウレンさん……ホウレンさんっ!!」

 

 妖夢の必死の叫びもホウレンには届かず、むなしく空を切るだけであった。

 凍り付いた博麗神社に妖夢の悲痛の声が鳴り響いた。

 


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