ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
山を下りる途中で大妖精の元にチルノを送り届けた二人は再び山頂へと来ていた。
「……やはりだ。」
「何がですか?」
「見てみろ。幻想郷の空がどんどん白く染まっていっている。」
早苗が空を見上げてみると空は先ほどよりも更に白く染まっており、どんどん曇った空を侵食しているようだった。
「な、なんで!さっきの刺はもう壊したはずですよね!?それなのになんで空がどんどん白くなっていってるんですか!」
「……もしかするとあの魔人は一体だけではないのかもしれん……。早苗!ここ以外に異変が起こっている場所はどこだ!?」
「え…えっと!たしか人里や魔法の森のほうでも凍った木が見つかっているって聞いています!」
「人里には悟飯がいるからとりあえずは安心だろう。ならば魔法の森とやらに急ぐぞ!案内しろ!」
「はい!あっちの方角です!」
二人は早苗の指した方角へ向かって急いで飛び立った。飛んでいる途中で幻想郷のあちこちの空が白くなりかけてるのを何度も見かけた。曇っているのにも関わらず、まるで晴れているかのような光景だった。
「どうなっているんですか!この幻想郷で一体何が起こってるんです!?」
「オレが知るか!とにかく今は急ぐぞ!」
更にスピードを上げて飛んでいく二人、その目線の先には魔法の森が見えてきた。
魔法の森は半分以上が凍り付いてしまっていてそれどころか先ほどの魔人と同じ咆哮が森の奥から響いてきて二人は魔人が一体ではないことを確信した。
そして森の奥、開けた場所にパラガスと魔理沙が魔人たちに囲まれているのを発見した。
「ピッコロさん!あれ!!」
「わかっている!はぁああああ!!」
ピッコロは飛びながら両手を合わせて気を集中させた。
「激烈光弾!!」
__こうして現在。パラガスと魔理沙を助けたところにつながったのだった。
「パラガス!無事か!」
「魔理沙さんも大丈夫ですか!?」
「お…おまえたち、なぜここに?」
「話はあとだ!さっさとその女を連れて逃げろ!」
「だ…だが!」
「さっさとしろ!まとめてやつらに殺されたいのか!?」
「くっ……!」
パラガスは魔理沙を抱えてその場から走り出した。
「お、おいパラガス!いいのかよ!あの化け物はまだあんなにいるんだぜ!?」
「あいつなら大丈夫だ!オレやおまえよりも遥かに強い!それよりも今は生き残ることを考えろ!」
だがしかし、そんな二人の前にも新たな魔人が数体現れた。そして一斉に口を大きく開けた。
「「!!?」」
「しまった!パラガス避けろぉーー!!」
魔人たちの口から一斉に放出されたエネルギー波に二人が飲み込まれそうになったその時、パラガスは咄嗟に魔理沙をピッコロたちの元へ投げ飛ばした。
一瞬の出来事に魔理沙は唖然としたまま飛ばされ、急いで駆けつけた早苗に抱きかかえられた。
目の前でどんどん氷漬けになっていくパラガスを見て魔理沙は我に返った。
「お…おい!パラガス!なにやってんだよ!?」
「……は…早く逃げろ!」
「で…でも!」
戸惑いその場からなかなか動き出せないでいる二人に魔人たちはじわじわと近づいて来る。
そこにピッコロが飛んできて魔人たちを蹴り飛ばした。
「おまえら何をグズグズしている!あいつの行動を無駄にするつもりか!!」
「っ!!すまねえ、パラガス……っ!!」
早苗は魔理沙を抱きかかえたままその場から飛び出した。だが魔人たちもそれを逃そうとせず、二人の前に立ちふさがった。
そして魔理沙はその魔人を見た途端に顔色を更に悪くした。なぜなら……。
「……アリ…ス……?」
魔人の体の中に氷漬けになったアリスの姿があったからだ。
「な、なんでアリスさんが魔人の中に!?」
「そんな……どういうことだよ!!」
魔人は大きく拳を振り下ろした。動揺していた二人はその攻撃に反応することができないでいる。
そこに再びピッコロが駆けつけその攻撃を受け止めてそのまま倒そうとした。
「ま…待ってくれピッコロ!そいつの中に私の友達がいるんだ!」
「なんだと!?」
ピッコロは魔人を見つめてアリスの存在に気が付いた。
「くそっ!これでは手が出せん……!」
「ピッコロさん!ここは引きましょう!数が多すぎます!」
早苗の言葉通り、魔人の数はどんどん増える一方だった。だがここで逃げればこの森の外に魔人たちが来てしまう恐れがある。そう考えたピッコロはある決断をした。
「……おまえたちだけ逃げろ。」
「……え?」
「ここで逃げればやつらはここ以外にも手を出し始めるだろう。ここはオレが残って全員まとめてここで食い止める。わかったらさっさといけ!」
「で、でもそれじゃあピッコロさんが……!」
「……諏訪子との約束がある。」
突然出てきた名前に早苗は動揺した。
「諏訪子さまとの約束……?なんのことですか!一体なんの約束を!?」
「おまえに何かあった時、必ずおまえを助けてやってくれとな。だからいけ。……心配するな。オレはあの程度のやつらに遅れはとらん。」
「ピッコロさん……。絶対ですよ!絶対に負けないでください!!」
早苗は魔理沙を抱えたまま魔人たちを食い止めるピッコロに背を向けて、とにかく全力で森を抜けた。そのまま二人は守矢神社まで飛んで行った。
魔人は各地にも現れていた。別の森の中にいた悟空たちもまた魔人に襲われて悟空がそれと闘っている間にフランと美鈴は紅魔館へ全速力でむかっていた。
「ねえ!悟空大丈夫かな!?」
「大丈夫です!悟空さんならあんな化け物に負けたりしません!それよりも早く紅魔館へ戻らないとお嬢様たちが心配です!」
「うん……そうだよね……!はやく紅魔館に戻ってお姉さまに謝らなくちゃ!」
美鈴は今まで感じた中でもとびきりの危険を感じていた。それは悟空と初めて対峙した時よりも遥かに大きい。そんな気配を魔人から感じた。
そしてその魔人を生み出している何かが存在しているかもしれないという考えが頭から離れない。紅魔館に近づくにつれて得体のしれない邪悪な気を感じてそれが確信へと変わりつつあった。
(みんな……無事でいてください……!)
二人は森を抜けて霧の湖に出るとそこにはありえない光景が広がっていた。あの広い湖がすべて氷漬けになっていたのだ。二人は嫌な予感がして急ぎ湖を越えた。
するとそこに見えたものは目を背けたくなるような現実だった。
「……そんな…っ!」
「美鈴……なんなのこれ?なんで紅魔館が凍っちゃってるの!?」
二人の目に映ったのはすべてが氷漬けになった紅魔館だった。そしてそこにレミリアたちの魔力などはまるで感じない。それどころか先ほどまで感じていた邪悪な気も消えてしまっていた。
だが紅魔館の庭を見てみるとそこには無数の魔人が徘徊していた。
「あれはさっきの魔人……!まさかお嬢様たちはあいつらに……?」
「……嘘。」
「妹様……?」
「嘘……嘘……嘘……っ!」
「妹様!落ち着いてください!」
「いやぁあああああああ!!」
「妹様、駄目です!止まってください!!」
フランは魔人たちにレミリアたちが殺されたと思い込み、美鈴の制止を振り切って怒りに身を任せて魔人たちに向かって飛んでいく。
魔人たちはそれに気が付くと一斉にフランへエネルギー波を放った。それをフランはすべてかわしながら拳を前に突き出した。
「バラバラになっちゃえ!!」
フランは自身の能力を発動させて目の前の魔人をバラバラに砕いた。そのまま庭に着地すると片っ端から魔人を始末していく。
「消えちゃえ……っ!消えちゃえ……っ!!」
次々と魔人を破壊していくフランだったが目の前に現れた数体の魔人を見た途端にその手を止め、目を見開いた。
「……お姉さま…?」
魔人たちの中にいたのは傷だらけで氷漬けになったレミリアや咲夜たちだった。それを見た瞬間にフランから怒りによって溢れ出ていた禍々しい魔力が消える。
魔人はそんなフランにも容赦なく拳を叩きつけ、フランは紅魔館の外壁に激突して地に膝をつく。
「ゲホッ…ゲホッ……!な…なんでお姉さまたちがあいつらの中に……?」
思案するフランだったが突然後ろの壁から別の魔人の手が突き出され鷲掴みにされてしまう。
魔人はどんどんフランを掴む力を上げていき、体が軋む音が聞こえだした。
「あ…あああ……!!」
「妹様!!」
美鈴はフランを掴む魔人の手を全力で蹴り上げて魔人の手を緩ませた。その隙にフランは魔人の手から逃れて再び地に膝をついて息を吐き出した。
「はぁ…はぁ……!駄目……あいつらを壊したらお姉さまたちまで壊れちゃう……どうすれば…。」
「妹様、ここは逃げましょう!逃げてお嬢様たちを助ける方法を考えるべきです!」
「でも……!私にはお姉さまたちを置いて逃げるなんて……!」
レミリアたちを置いて逃げるという行為に強い罪悪感を感じて逃げることに躊躇っているフラン。
すると遠くから更に別の魔人からのエネルギー波が飛んでくるのが美鈴の目に入った。
「妹様、危ない!!」
「え……?」
美鈴は咄嗟にフランの前に飛び出してエネルギー波を受け止めた。
「くっ!!」
「美鈴!!大丈夫!?」
エネルギー波を受け止めた美鈴の体はみるみる凍り付いていった。
「そんな……!やだよ!美鈴までいなくならないで!!」
「妹様……!逃げてくだ…さ…い。」
「美鈴ーー!!」
美鈴はついに全身凍り付いてしまった。フランは地面にへたり込み涙を流す。
「うぐっ…ひっく……もう駄目…。私の能力ではみんなを助けることなんてできない……!ごめんね。美鈴……!」
フランのすぐ隣に魔人が近づいてきて大きく手を振りかぶった。
「ごめんなさい……お姉さま……。」
そしてついにレミリアが恐れていた出来事が現実のものになろうとしたその時。
「だぁああああ!!」
超サイヤ人に変身した悟空が現れて魔人を遠くまで殴り飛ばした。
「フラン!諦めんのはまだ早え!いくぞ!」
悟空はへたり込むフランをわきに抱えてその場から飛び出したのだった。