ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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強化チルノを倒せ!ピッコロ直伝の必殺技!

 普段ならば花が咲き乱れる美しい草原である山頂は猛吹雪によって雪原と化していた。

 まるで真冬のような光景となった山頂にてピッコロと早苗はこの光景を創り出した魔人。

 謎の成長を遂げたチルノと三つ巴の状態になっていた。

 

「さて、始めるとしよう。」

 

「あ!逃がさないぞ!」

 

「行かせません!貴方の相手は私がしましょう!」

 

 その場から消えたピッコロを追おうとするチルノの前に早苗が立ちふさがる。 ピッコロはそのまま魔人の目の前へ移動した。

 

「グルルルル!」

 

「そう睨むな。すぐに片付けてやろう。」

 

 口角を上げニヤリと笑うピッコロの挑発に乗り、魔人は巨大な右腕をピッコロに向けて叩きつけるがピッコロは真正面から受け止める。魔人の攻撃の威力に衝撃をくらった大地は大きく抉られる。

 

「ハァアアアア!!」

 

 ピッコロはそのまま魔人の右腕を両手で掴み、自らに引き寄せてその顔面を左足で蹴りつける。重たい蹴りの威力に魔人は遥か後方まで滑り込む。

 

「グォオオオオオ!!」

 

「確かに硬いな。これではまともにダメージは与えられんか。」

 

 魔人は這いつくばりながらピッコロ目掛けて猛スピードで向かってくる。それを見たピッコロは右手を前に突き出して気を込める。

 

「爆力魔波!!」

 

 そのまま向かってくる魔人へ爆力魔波を繰り出す。直撃をくらった魔人は一瞬その場で動きを止めるがその体は傷一つない。

 

「これも無駄か。これだけの硬さになるとなかなか骨が折れるな。」

 

「ガパッ」 

 

 動きを止めた魔人は今度は大きく口を開きそこからエネルギー弾を繰り出した。それをピッコロは右腕で弾き飛ばす。だが__

 

「なに!?」

 

 右腕の弾いた箇所が完全に凍りついており、二の腕がその場に崩れ落ちた。

 

「チィッ!(あいつの気は触れたものを凍らせるのか!)」

 

 追い打ちをかけるように次々と飛んでくるエネルギー弾を今度は触れないように気で全て撃ち落とし、魔人の背後に回り左腕に強く気を込める。

 

「お返しだ!」

 

 強く気を込めた左腕の手刀により強固な魔人の右足を叩きつける。するとヒビすら入らなかったはずの魔人の右足が切り離され、魔人はバランス を崩し横倒れになる。

 すかさずピッコロは強く気を込めた右足で魔人のもう片方の足も蹴り砕いた。

 

「グォオオオオオ!!」

 

「どうやらこの方法なら貴様にもダメージを与えられるようだな。」

 

 ピッコロは攻撃する箇所に最大限に気を溜めることによって。強固な魔人の体にもダメージを与えていた。これは昔、新ナメック星にてビッグテケスターの機械兵との闘いの時と同じ戦法である。

 

「グォオオオオオ!!」

 

 魔人は下半身を引きずりながらピッコロを睨みつけ、雄叫びを上げる。

 

「痛覚はないのか?厄介だな。だが……。」

 

 ピッコロは左手と両足の全てに最大限の気を溜めて構える。

 

「すぐに粉微塵にしてやろう。」

 

 少し離れた場所で闘っていた早苗とチルノはピッコロと魔人の闘いの凄まじさに思わず目を奪われていた。

 

「凄い…。」

 

 小さく吐き出した賞賛の声。次元が違う戦いを見て息を呑む音。

 

「……ハッ!思わず見入っちゃった!さっさとあんたをやっつけなきゃいけないのに!」

 

「そ、そうでした!私も集中しろって言われてたのに!」

 

 お互いに我に返り首を振って対峙する。どこか緊張感が抜けてしまった早苗は再び集中しなおす。だがチルノは違う。

  姿形は大人のようで力も早苗に匹敵するほどにまで成長しているが、頭の中身までは成長しておらず相手の力量が測れずに完全に油断している様子だった。

 

(ピッコロさんの言ったとおりだ。あの様子なら集中して闘えば勝てる!)

 

「早く決着つけて、あの緑のお化けもあたいがたおす!」

 

「ピッコロさんはお化けじゃありません!ちょっと妖怪に近いだけです!」

 

「?それってお化けと何かちがうの?」

 

「……と、とにかく!あなたを倒して大妖精ちゃんの所へ送り届けます!覚悟してください!」

 

「かくごするのはそっちだよ!凍っちゃえ!」        氷符『アイシクルフォール』

 

 チルノはつららのような形の弾幕を早苗に向けて放つ。いつもなら躱すのもわけないスペルカードだが今のチルノの放ったそれは明らかに弾の大きさも量も桁違いだった。

 

「はっ!!」        大奇跡『八坂の神風』

 

 早苗はその弾幕に対して吹雪の風を利用してスペルカードを放ちそれを相殺する。

 どちらも広範囲のスペルカードのため衝撃で降り積もった雪が吹き飛ばされた。

 

「なかなかやるじゃん!あたいのほうが強いけど!」

 

「言ってくれますね!私だって負けませんよ!」

 

 早苗はすぐにチルノの後ろへ回り込みお祓い棒を振り下ろした。だがチルノはそれをひらりとかわして逆に早苗の横腹を蹴りつけた。

 

「うぐっ!」

 

「残念でした!」

 

 蹴りをくらった早苗は大きく横に飛ばされる。そこにチルノは追撃の弾幕を放ってきた。

 それを早苗は飛び回って回避する。

 

(強い!まさかこれほどのパワーアップをしてるなんて!)

 

 早苗はチルノの隙を探しながら弾幕を避け続ける。そんな早苗にチルノはイライラし始めた。

 

「ちょろちょろするな!これでもくらえ!」        氷符『アイシクルマシンガン』

 

 チルノが放ったスペルは高速の氷弾を大量に撃ち続けるというものだった。先ほどまでの弾幕と違ってスピードが桁違いになり、早苗は避けるのがやっとの状態だった。

 

「このままじゃ負けてしまう……!こうなったら!」

 

 すると早苗はなぜかその場に止まって動かなくなった。それを見たチルノはチャンスと思い大量の氷弾を早苗にぶつけた。だがその早苗は陽炎のように消えてしまいチルノは混乱する。

 

「あれ?消えちゃった?どういうこと?」

 

「たあ!!」

 

「え!キャアア!」

 

 混乱するチルノの後ろから早苗が突然現れてチルノのがら空きの背中を叩きつけた。

 チルノは背中をさすりながら早苗から少し距離をとった。

 

「ど、どういうこと?今あたいの氷があんたを直撃したはずでしょ?」

 

「ふふん!あれはただの残像です!」

 

「ざんぞう?なにそれ?」

 

「……えっと……分身の術みたいなものかな……?」

 

「分身!すごい忍者みたいだ!」

 

「私は巫女ですよ!」

 

「どっちでもいいよ、それより早くつづきをやるぞ!いいかげん面倒になってきたから次で終わらせてやる!」

 

「望むところです!でも終わるのは貴方ですよ!」

 

「言ったな!じゃあこれを見てもそんなことが言えるか!?」

 

 するとチルノは頭上に超特大の氷塊を創り出した。それは妖精では到底創り出せないほどの質量で早苗は息を飲んだ。

 

「さあ、これであたいの勝ちだ!」

 

 そしてチルノが両手を振り下ろすとその氷塊が早苗目掛けて飛んできた。

 

「はぁああああ!!」

 

 なんと早苗はその氷塊を正面から受け止めようとした。そしてそれを受け止めると抑えきれずにどんどん後ろへ押されていく。

 

「はっはっは!どうだどうだ!」

 

「こ…こんな攻撃……!ピッコロさんの修行に比べたら……なんでもありません!!」

 

 そう言って早苗はその氷塊にゼロ距離で弾幕を撃ちだして無理やり破壊しようとした。

 すると氷塊にだんだんヒビが入り、早苗は一気に全力の弾幕をヒビの中に放った。

 

「やぁあああああ!!」

 

 そしてチルノが放った超特大の氷塊は砕け散り辺りへ落ちて行った。それを見たチルノは驚き目を見開いていた。

 

「あ…あたいの全力の氷がこわされた!?」

 

「はぁ…はぁ……!」

 

「で、でもその体力じゃあたいに勝ち目なんてない!次で本当に終わりに……し…て……?」

 

 チルノは気づいた。いつの間にか自分の周りが無数の弾幕で囲まれていたことに。

 

「え……なんで……?こんな弾幕……張るひまなんてなかったはず……!」

 

「……先ほどまで貴方の弾幕を避け続けている最中にこっそり雪の中に仕込ませてもらいました。それを今の氷塊を受けてめて、注意が私に向かっている時にすべての弾幕を貴方の周りに配置したんです。」

 

「そ…そんな……!」

 

「終わりです!ピッコロさん直伝!魔空包囲弾!」

 

「きゃああああ!!」

 

 早苗が両手を交差させるとチルノを囲っていた無数の弾幕が一斉にチルノへと飛び交った。

 チルノは避けることも防御することもできずにそれをまともにくらい積もった雪の上に落ちた。

 すると別人のように変化していたチルノの体がみるみる元の姿に戻っていった。

 

「……終わった……みたいですね。」

 

 早苗は肩の力を抜いてチルノの元へ降りた。ピッコロからもらった服はすでにボロボロになってしまっており、着ていてもあまり意味がないほどだった。

 

「せっかく出してもらったのに……仕方ないですね。」

 

 早苗はボロボロになったコートを脱ぎ捨ててチルノを抱きかかえた。

 そして遠くの木の陰で休ませようとしたその時、遠くから大きな破壊音が鳴り響き、氷のつぶてが飛んできた。

 その方角を見るとピッコロがバラバラに砕け散った魔人の前に立っているのが見え、早苗は急いでチルノを抱えたままピッコロに駆け寄った。

 

「ピッコロさん!終わったんですか?」

 

「早苗か。見ての通りだ。」

 

「そうですか……よかった……ってピッコロさん!その右腕……!」

 

 ピッコロの右腕は先ほどの闘いで氷漬けにされて砕けてしまっていた。

 

「心配するな。……フン!」

 

 ピッコロは凍っている部分を引きちぎると右肩に力を込め始めた。

 

「カァアアア!!」

 

 すると力を込めた右肩から新しい腕が生えたのだった。早苗はそれを見てギョッとした。

 

「ええ!?ピ、ピッコロさんってやっぱり妖怪じゃないですよね!?」

 

「そんなわけないだろう。バカを言うな。それよりもこれを見てみろ。」

 

 ピッコロは首を傾け、倒した魔人の一部を見た。

 

「これは……あの魔人の背中にあった刺ですね。これがどうかしたんですか?」

 

「よく見てみろ。こいつはくたばったのにまだこの刺から雪が出たままだ。」

 

 言われた通りにその刺をよく見ると、上のほうで大量の雪が空へ向かって飛び出していた。

 

「本当ですね。でももうこの魔人は退治できたんですよね?だったらなんで……?」

 

「……待てよ?ここの空はこんなに白かったか?」

 

「え?」

 

 ピッコロにつられて早苗は空を見上げた。すると空の色がなんと真っ白に染まりかけていたのだった。

 

「い、いけない!はやくこの刺を壊しちゃってください!このままじゃ何が起こるかわかりません!」

 

「そうだな、そうしよう。」

 

 ピッコロは右手に気を込めて残った刺をすべて粉々に砕いた。だが空は白く染まったままで変化がない。

 

「……早苗。そのガキを先ほどの妖精の元へ送ったらさっさと行くぞ。何か嫌な予感がしやがる。」

 

「え?は、はい。わかりました!」

 


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