ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
「そんな……ここにアリスの人形が落ちてるってことは……。」
「……やはりここで何かあったのか……?」
「わからねえ……わからねえけど、もしかしたらアリスはもう……っ!」
「……魔理沙……。」
力なくへたりこむ魔理沙にパラガスは何も言うことが出来なかった。そんな二人の後ろ。森の更に奥から突然大きな唸り声が響き渡った。
『グォオオオオオ!!』
「むっ!?」
「……今の唸り声……なんだ?」
「……どうやら奥に何かいるようだな……。どうする。いくか?」
「……ああ。もしかしたらアリスをやったやつかもしれない……。油断はできないぜ……。」
「怒りに身を任せるな……。冷静さを欠いては勝てるものも勝てん。下手すれば取り返しのつかんことになるやもしれん。」
魔理沙の静かな怒りを抑えるようにパラガスは言った。
「分かってる。私は落ち着いてるぜ……。」
「……。」
「さあいこうぜ。アリスの敵討ちだ……!」
魔理沙は低めの声でそう言うと、奥へと走っていった。
「……敵討ち…か。アリス……あいつは本当に死んだのだろうか……?」
パラガスは一人走り出した魔理沙を見て小さく呟き、魔理沙を追いかけた。
~無名の丘~
ここは無名の丘。普段は穏やかで暖かい草原もとてつもない冷気で凍えきってしまっており、妖怪の姿すら確認できない、まさに別世界というにふさわしい光景だった。
霊夢は持ち前の勘を頼りにここまでやってきたようだ。
「ここら辺の冷気は他とは段違いね……。間違いなく異変の元凶がいるはずだわ。」
霊夢は少し空を飛び、辺り一帯を見渡すが何も見つからない。
「うう、寒いわね。こんな所に長居してたらこっちまで凍っちゃうわよ。ちょっとー!誰かいないのー?……なんて……呼ばれて出てくるわけないか……。」
「いいえ。出てきてるわよ?」
突然の声に驚いて振り返るとそこには薄紫色の短い髪にターバンのようなものを巻き、首にマフラーを巻いた女性がニコニコと笑っていた。
「……ってなんだレティじゃない。なんであんたがここに?」
「うふふ、なんででしょうね?」
「……まさか、あんたがこの異変の元凶ってわけじゃないわよね?」
「さあ?闘ってみればわかるんじゃない?」
そのレティの返答に霊夢は微かに違和感を覚えた。いつもだったらのんびりした雰囲気なのだが、今日のレティはどこか挑発的に感じた。
「……あんた。なんかいつもと違わない?」
「さあて……どうかしらねっ!!」 冬符『フラワーウィザラウェイ』
なんとレティは会話の最中にもかかわらず突然スペルカードを霊夢へ放ったのだった。
「なっ!?」
霊夢は咄嗟に結界を張りレティの弾幕を防ぐ。だがその弾幕に霊夢は激しく動揺した。
「なにこれ!?いつもとは桁違いの密度じゃない……!」
「うふふふふ!それそれそれ!」
「明らかに様子もおかしいし……!どうなってるのよ!」
レティは明らかに様子がおかしかった。普段はおっとりしていてここまで好戦的ではないというのもあるが、なによりもレティでは考えられないほどの弾幕の強さにさすがの霊夢も驚きが隠せない。
「この強さ……咲夜くらいの力ってところかしら……!どこでこんな力を身に付けたか知らないけど、あんたがこの異変の元凶で間違いなさそうね!悪いけどさっさと終わらせるわよ!!」
霊夢は結界を張りながらレティの弾幕の間を飛び回る。
「はあ!」 霊符『夢想封印』
弾幕を掻い潜ってレティ目掛けて夢想封印を放つがレティはそれを簡単にかわして見せた。
「うふふ!鬼さんこちら♪」
「失礼ね!誰が鬼よ!」
「貴方しかいないじゃない。」
「何言ってるのよ、私はちゃんと優しいわよ!」
「そんなわけないじゃない。冗談ばっかり~♪」
「なんですって~!?」
「怒ると判断力が鈍るわよ。」 寒符『コールドスナップ』
レティは強い冷気を両手から発して無数の弾幕を霊夢へ飛ばした。
「くっ!」
霊夢は迫り来る無数の弾幕を紙一重でかわし続ける。そんな様子を見てレティはクスクスと笑いだした。
「どうしたのかしら?さっさと終わらせるんじゃないの?」
「あんた、ほんとにどうしたってのよ!昔、問答無用で退治したことはあったけど、それを根に持ってるわけ!?人里に被害を出してまで私を誘き出して!」
声を荒げる霊夢にレティは首を傾げた。
「人里?いいえ。私はただこの寒さで随分力が上がってるみたいでそれをたまたま通りかかった貴方で試しているだけ。人里なんてしらないわ。」
「な!?(どういうこと?人里の氷はレティの仕業じゃない?レティはただ寒さでパワーアップしてるだけ?)」
霊夢はわけが分からなくなってきていた。だがレティは話しながらも弾幕の手を緩めるつもりがなく、考える余裕すらできなかった。
「あ~もう!じゃあなんであんたはそんなに好戦的なのよ!」
「さあね。よくわからないけど、私は今凄く気分が良いのよ!もっともっと楽しませて頂戴!」
レティの様子を見て、霊夢はレティがこの異常な冷気によって気分までハイテンションになってしまっていると考えた。そして霊夢はひとつの結論にたどり着いた。
「はあ……しょうがないわね。貴方が元凶じゃないってんなら、尚更早く終わらせてもらうわ!貴方を倒して異変の元凶を探し出して退治して終わりよ!」
霊夢が出した結論はいたって単純なものだった。例え相手が異変の元凶じゃなくとも、邪魔をするなら退治する。それが霊夢の出した答えだ。
「ふふふ、今の私は簡単にはやられないわよ?」
「言ってなさい。確かに少し手こずるかもしれないけど、所詮はその程度よ。貴方が私に勝つことなんて出来ないわ。」
「じゃあ、その力見せて頂戴!」
レティは高密度の弾幕を周りに張り巡らせながら霊夢へ向かって突っ込んできた。それを霊夢は弾幕の隙間を潜り抜けてレティの背中を蹴りつけた。
蹴りつけられたレティは地面に激突しそうになるも、直前で体制を立て直し空へと急上昇する。
「まだまだ!」
レティはすぐさま霊夢へ向かって弾幕を放つ。だが霊夢はそれをすべて結界で防御した。
「今度はこっちの番よ!」 霊符『夢想封印 集』
霊夢は相手を囲むように夢想封印を放った。いつもならこれで終わるはずの闘いだが、レティはその夢想封印を軽々とかわして急激にスピードを上げて霊夢へ向かってきた。
それをお祓い棒でいなし、レティを振り返る。
「危ない危ない。当たったら少しはダメージがあったかもね……ってああ!?」
レティをいなしたお祓い棒を見ると、なんと氷漬けになって砕けてしまっていた。
「ちょっとー!壊れちゃったじゃないの!どうしてくれんのよ!」
「あらあらごめんなさい。うっかり氷漬けにしちゃったかしら~?」
「うぐぐ!もう怒ったわよ、覚悟しなさい!」
今度は霊夢がレティに向かって飛び出した。そしてレティを攻撃するわけではなく、高速でレティの周りを飛び回り元の位置へ再び戻る。
そんな霊夢にレティは首を傾げて聞いてきた。
「何してるの?そんな程度じゃかく乱にもならないわよ?」
「でしょうね。だってかく乱じゃないもの。」 神霊『夢想封印 瞬』
すると霊夢が通った後からたくさんのお札が現れてレティを囲った。
「!!」
「さあ、これで終わりよ!」
霊夢が合図するとレティを囲っていた無数のお札が一斉にレティ目掛けて高速で飛んで行った。だがしかし、レティはそれをなんとか防いでいた。
「こん……なもの……!まだ終わらないわよ!」
そう言ってレティはすべてのお札を防いで見せ、口元を緩ませた。しかしその安堵したのも束の間、霊夢がいつの間にか目の前に移動していたのだ。それも特大の霊気の玉を片手に構えて。
「言ったでしょ?終わりだって。」 宝符『陰陽鬼神玉』
そして霊夢は完全に油断していたレティに直接そのスペルカードを叩きこんだ。
「あぐぅ!?」
レティはそのスペルカードになすすべなく直撃してそのまま地面に滑り込んだ。そしてそのまま目を回して気を失った。
それを確認した霊夢は地に降りた。
「ふぅ……やっと終わった。さあ、早く元凶を探しに行かないと__っ!?」
その瞬間、霊夢は後ろからとてつもない力を感じて大きく飛び退いた。すると後ろには真っ白な髪で両目の下から頬にかけてヒビのような痕があり、耳にはイヤリングをつけ、ところどころ氷の結晶のような飾りが着いた青いラバースーツの男が立っていた。
「その体から溢れでる冷気……いえ凍気とでもいうのかしら?あんたがこの異変の本当の元凶ってわけね。今度こそ終わりにしてやるわ。」
男はしばらく黙っていると小さく口を開いた。
「……あんたは?」
「博麗霊夢。博麗神社の素敵な巫女よ。あんたを退治させてもらうわ!」
「……俺を退治…?さっきの闘いを見ていたが……出来るのか?あの程度の実力で……。」
「何よ。見てたの?のぞき見なんて趣味が悪いわね。……いいわ。だったら、私の本気を見せてあげる。かかってきなさい!」
「……本気か。期待させてもらおう。」
男は無表情で霊夢と対峙した。果たして霊夢はこの男を退治することが出来るのであろうか。そしてこの男は何者なのであろうか……?