ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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フランの気持ち 魔法の森の異変

 霊夢たちが異変解決に向けて動き出した少し前、悟空と美鈴は深い森の中を歩いていた。

 

「うーん。この辺りから微かにフランの気を感じた気がしたんだけど。分からなくなっちまった。やっぱりこの世界は気が探りにくいみてえだな。」

 

「たぶん、幻想郷には気ではない力を持った者がたくさんいるせいでしょうね。私も近くの気しか探ることが出来ません。」

 

「やっぱそうか。気を付けねえとなぁ……。」

 

「さあ。妹様を手分けして探しましょう。私はあっちを探してきます。」

 

「じゃあオラがこっちだな。何かあったら気を思いっきり高めろ。それならオラも気を感じ取りやすいはずだ。」

 

「わかりました。ではいきましょう!」

 

 二人はお互いの逆の方向へフランを探しに走りだした。それから数十分の時が流れるもフランの姿は一向に見当たらなかった。

 美鈴は息を切らしながら立ち止まり、膝に手をついた。

 

「はぁ…はぁ…!全然見つからない……。もしかしてもう森から出て行ってしまったんじゃ……?」

 

 美鈴はこの森にすでにフランがいない可能性を考えて一度悟空呼ぶために気を高めた。すると後ろから気配を感じる。

 

「……美鈴?」

 

 その声に振り向くとそこにはフランが立っていた。だがフランの目は光を失ったように虚ろであった。美鈴はそれに気が付かずに駆け寄った。

 

「妹様!よかった、こんなところにいたんですね!心配したんですよ?」

 

 だがフランは美鈴の言葉に何も反応を示さず、俯いたままだった。

 

「さあ、私と一緒に帰りましょう?お嬢様も心配してます。」

 

 その言葉にフランは初めて反応を示してゆっくりと顔を上げた。

 

「お姉さまが心配……?」

 

「そうですよ。だから私がこうして迎えに来たんです。」

 

「……嘘。」

 

「え?」

 

 フランが一言発したその直後、フランから禍々しい魔力が溢れ出る。それに気が付いた美鈴は咄嗟に身構えて後ろへ一歩下がった。

 

「これは……!妹様、一体何を!?」

 

「お姉さまが私の心配だなんて嘘よ……!きっと本当は私の力が暴走してしまうかもしれないから。そうなる前に私を連れ戻そうとしてるだけなんでしょ……!」

 

「そんな!違います!お嬢様は貴女を本気で心配して……!」

 

「もういいよ。ごめんね美鈴。」        禁忌『レーヴァテイン』

 

 そう言うとフランは右手に燃え盛る炎の剣を創り出した。

 

「ちょっとだけ眠っててくれる?」

 

 そしてそのまま美鈴へ向かってレーヴァテインを振り下ろした。

 

「くっ!」

 

 美鈴は咄嗟に右へ飛び、レーヴァテインをかわし体制を整える。レーヴァテインが通った後は火がつき、木々に燃え移っていた。

 

「妹様、落ち着いてください!こんな森の中でそんなスペルカードを使ったら森が全焼してしまうかもしれません!」

 

 フランはそれを聞き、レーヴァテインを消した。

 

「……そっか。じゃあ。」        禁忌『カゴメカゴメ』

 

 そして左手を開いて前に突き出すと別のスペルカードを発動し、美鈴を取り囲むように放った。

 

「!!(駄目……!これはもう避けられない!)」

 

「これなら大丈夫だよね?さあ、今度こそ眠ってね。」

 

 フランが指で合図を取ると弾幕は一気に美鈴へ襲いかかった。美鈴は両腕を前で交差させて身を守ろうとした。そして攻撃に備えて歯を食いしばる。するとそこに超スピードで接近する影があった。

 

「美鈴!!今すぐしゃがめ!」

 

「悟空さん!?」

 

「だぁああああ!!」

 

 その影の正体は悟空だった。悟空は一瞬で弾幕の間をくぐり抜け美鈴の前に立ち、そして驚く美鈴を地べたにしゃがませると全体に向かって衝撃波を放ち、フランの弾幕を全て弾き飛ばした。

 

「ふう~。危なかったなぁ美鈴。怪我はねえか?」

 

「は、はい。ありがとうございます。それよりどうしてここが?」

 

「ん?さっきおめえが気を高めたんじゃねえか。」

 

「あ……。」

 

 美鈴は確かに気を高めていた。だがフランに遭遇したことで、そのことをすっかり忘れてしまっていたようだ。

 悟空はしゃがんだ美鈴に手を差し伸べて立ち上がらせた。フランは美鈴を助けた悟空の姿を見て、更に表情を暗くした。

 

「……そっか。悟空も私を連れ戻しに来たんだ……。」

 

「ようフラン。探したぞ~!おめえに話があって来たんだ。」

 

「……何?また館に帰れって話?だったらイヤ。帰りたくない。」

 

「なんでだ?」

 

「だって、帰ったらまた私は館に閉じ込められてお外に出られなくなっちゃうもん……。私はもっとお外で遊びたい。それにお姉さまとも喧嘩しちゃったし……。」

 

「レミリアは怒ってねえぞ?」

 

「嘘っ!だって私お姉さまを怒鳴りつけて無理やり出てきちゃったもん!お姉さまが怒らないわけない!」

 

 フランは激情に駆られて大声を上げた。

 

「貴方たちが来たのだって、お姉さまに頼まれてでしょ!?」

 

「よくわかったなぁ!確かにオラたちはレミリアに頼まれておめえを探しに来た。」

 

「やっぱり……。悟空さんなら私を力づくで連れ戻すことが出来るから……。」

 

「そんな!お嬢様はそんなつもりで悟空さんに頼んだわけじゃありません!」

 

「美鈴の言うとおりだ。オラ別に力づくでおめえを連れ戻すつもりはねえぞ。」

 

 二人の言葉を信じられないフランだったが、それならば何をしに?という疑問が頭をよぎった。

 

「……じゃあどうするつもりなの?」

 

「おめえが帰りたいって思うまで好きにすりゃいい。遊びてえっていうんならオラたちも付きやってやる。それでどうだ?」

 

 フランは悟空の言葉を聞いて目を見開き、口をポカンと開けた。

 

「……どういうつもり?私を放っといたら危険だからお姉さまに頼まれて私を連れ戻しに来たんじゃないの?」

 

「確かにレミリアは危険もあるって言ってた。でもな、レミリアはおめえが頑張ってることもちゃんと分かってくれてる。あいつだっておめえを外に出してやりてえって思ってるんだ。あいつはオラたちにフランを探してくれって頼んだ時、フランのことをすげえ心配してたんだぞ?オラたちの中で誰よりもな。」

 

「……。」

 

 悟空の話を聞いているとフランから発せられていた禍々しい魔力がゆっくりと薄れていった。

 

「あいつの気持ちも分かってやってくれ。おめえの大切な姉ちゃんだろ?」 

 

「……お姉さま……謝ったら許してくれるかな……?」

 

 フランは俯いたまま消え入りそうな声でそう聞いてきた。

 

「大丈夫だ。レミリアならきっと許してくれる。なんならオラたちも一緒に謝ってやるぞ?」

 

「……二人共。ほんとに遊びに付き合ってくれるの……?」

 

「いくらだって遊んでやっぞ!なあ、美鈴?」

 

「はい!私もとことん付き合いますよ!」

 

「……ほんとにいいの?」

 

「ああ。でも先に美鈴にはしっかり謝っとかねえとな?」

 

「うん……。美鈴、さっきはいきなり攻撃しちゃってごめんなさい。」

 

 フランは美鈴に向かって縮こまって頭を下げた。

 

「……妹様。頭を上げてください。私に怪我はありませんし、気に病む必要なんてありません。だからほら、一緒に遊びましょう?」

 

「ごめんなさい……ありがとう……っ!」

 

  フランは目に涙を浮かべながら美鈴に抱きついた。

 

「遊ぶのはフランが落ち着いてからだな。」

 

「はい……そうしましょう。」

 

 すでにフランから発せられていた禍々しい魔力は完全になくなっていた。二人は美鈴の胸で涙を擦るフランを優しい笑顔で見守った。

 

 ~妖怪の山~

 

 ピッコロと早苗は諏訪子から聞いた凍った草木の場所へ来ていた。

 

「はあ……。凍った草木は見つけましたけど、異変解決の手がかりは見つかりませんね……。ピッコロさん、そっちはなにか見つかりました?」

 

「いや、特に目立ったものは何もない。だが気になるものを見つけた。」

 

「え?何を見つけたんですか?」

 

「足跡だ。それもなにか人間ではない者のな。」

 

 そう言ってピッコロが指を指した場所にはは直径1メートルはあるとても大きな足跡だった。

 

「……なんの足跡でしょう?こんなに大きな足の妖怪ここらにいましたっけ……?」

 

「なるほど。もしかしたらこの足跡の主がなにか鍵を握っているかもしれんな。」

 

「確かに……。ピッコロさん。この足跡をたどってみましょう!」

 

「いいだろう。だが油断するなよ。なにがいるかわからんからな。」

 

「はい!もしもの時はサポートお願いします!」

 

「ふん、まあよかろう。行くぞ。」

 

 二人は謎の足跡の招待を追って山の奥へと足を進めた。

 

 ~魔法の森~

 

 魔理沙がパラガスに案内されて来た場所は辺りにある草木が中途半端に氷漬けになっており、まるで何かが闘った後のような光景だった。

 

「お、おいおい!どうなってんだ?なにがあったらこんな光景になるんだよ!」

 

 驚いているのは魔理沙だけではなかった。なぜかこの場所を知っていたはずのパラガスまでもがその光景に動揺していた。

 

「……おかしいぞ。俺が来たときはこのように荒れていなかった……。」

 

「え?どういうことだ?」

 

「先ほど俺が来たときはせいぜい3mほどしか凍りついていなかったはずなんだ。これほど広く凍りついてはいなかった。」

 

 パラガスの言うとおり森はすでに一キロ以上は凍りついていた。更に魔理沙が森を見渡すと木に謎の傷跡があることに気がついた。

 

「……なんだろう。まるで握りつぶそうとしたような……__ッ!?」

 

 その時、魔理沙はその木の後ろに何かを見つけて顔色を悪くした。

 

「どうした?なにかあったのか?」

 

「そんな…嘘だろ…?」

 

「これは……!」

 

 パラガスが魔理沙に続いて木の後ろを覗き込むとそこにはアリスの人形がボロボロになって転がっていた。


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