ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

20 / 58
今回はホウレンたちが幻想郷に来る一年前の話になります。


番外編 突然の幻想入り ブロリーとパラガス

 セルとの闘いが終わってから約二年、ブロリーはホウレンたちに敗れて以来、更なる強さを求めて激しい修行を繰り返し、時折悟空の元へ行き勝負を仕掛けるといった生活を送っていた。

 そんなある日のこと……。

 

「ブロリー、そろそろ夕食にしよう。おまえも腹が減っただろう。」

 

 パラガスが話しかけた先にはブロリーが巨大な岩を背中に乗せたまま指立て伏せをしていた。

 

「はぁ…はぁ…親父か。いい、オレはもう少しやってから食う。」

 

「そうか、ではオレは先にいただくとしよう。おまえもやり過ぎないようにな。」

 

「……ああ。」

 

 二人が今いる場所は地球のとある荒野だった。近くにある洞窟で夜を過ごし、猛獣や遠くの森から食料を集めて生活している。もともと惑星ベジータが無くなってから二人で宇宙を放浪していたため、こんな生活にも慣れていた。

 

「カカロット……そしてホウレン。オレは必ずやつらを超えて見せるぞ……!」

 

 そして翌日、ブロリーは早朝から修行を始めていた。気弾を大量に放ちそれを撃ち落とすという修行だ。それを続けていると洞窟のほうからパラガスの声が聞こえてきた。

 

『な、なんだこれは!?ぐぉおおお!!』

 

「……親父?何を騒いでいるんだ。」

 

 気になったブロリーは修行を一時中断し洞窟へと戻った。するとそこにパラガスの姿はなく、変わりに電磁波を放った紫色の空間が出現していた。

 

「……なんだこれは?親父!どこにいるんだ!」

 

 辺りに大声でパラガスを呼びかけるも返事はなかった。変に思ったブロリーは現れた空間が気になり手を伸ばした。するとブロリーの体が急激に空間へと引きずり込まれた。

 

「なっ!?ぐぁああああ!!」

 

 そしてブロリーはその空間に入り姿を消した。それから数時間が過ぎブロリーは目を覚ました。目を覚ました場所は先ほどまでいた洞窟の中ではなく、見たこともないような場所だった。

 どんよりとした空に枯れた木々、血のような真っ赤な池などが目に入り、まるで地獄のような場所であった。 

 

「なんだここは……。親父はどこにいったんだ?」

 

 ブロリーが辺りを見渡していると遠くから何者かが大声で叫んできた。

 

「おいおまえ!ここで何をしている!」

 

 現れたのは妙な姿をした男だった。例えるならばまるで鬼のような姿をした青い肌の男だ。今の状況がわからないブロリーは仕方なくその男に話を聞いてみることにした。

 

「おいおまえ、ここはどこだ?」

 

「何を言っている!おまえ亡者じゃないな?どうやってここに入ってきた!」

 

 ブロリーはその男が言っている意味がよくわからなかった。だが明らかに敵対している様子を見てブロリーは鼻で笑った。

 

「何を笑っている!痛い目にあいたくなければここで何をしていたか大人しく話せ!」

 

「それはオレのセリフだ。死にたくなければここがどこなのか話せ。」

 

「なんだと、いい度胸だ!ならば力づくでおまえを捕らえて四季さまの元へ連行する!」

 

 男は背中に抱えた金棒を取り出してブロリーの肩に振り下ろした。ブロリーはその攻撃を避けずにあえて肩で受け止める。それを見た男は驚いて後退する。

 

「その程度か?」

 

「くっ!おいおまえたち!こっちに来てくれ!」

 

 男の呼びかけに応じて周辺から似たような姿をした男たちがたくさん集まってきてブロリーを囲った。

 

「こいつが侵入者か?」

 

「ああそうだ。こいつを捕らえるのを手伝ってくれ。」

 

「たった一人の人間だろう?何をそんなに構える必要がある?」

 

「普通の人間がオレたち獄卒の攻撃にビクともしないわけがない!いいから手伝え!」

 

「へっ、仕方ない。ここはオレが片付けてやるぜ!」

 

 そう言って囲っていた男の一人が薄ら笑いを浮かべて腕を鳴らしながらブロリーに歩み寄った。

 

「おい!やつを甘く見るんじゃない!全員で取り押さえろ!」

 

「いいから黙ってみてな!待たせたな人間。すぐにお寝んねさせてや__ごぼぉ!?」

 

 ブロリーは舐めた態度に腹が立ち、話を聞き終わる前に男を殴りつけ、遠くの岩山に叩きつけた。

 

「な…なんだこいつ!!ほんとに人間か!?」

 

「だから言ったろう!全員で取り押さえるぞ!」

 

 今のを見て男たちはようやくブロリーを危険と判断して武器を取り出した。そして一斉にブロリーへ襲い掛かった。

 

「「「うぉおおお!!」」」

 

 ブロリーは襲い掛かる男たちの攻撃をすべてかわしながら一人ずつ順に片付けていく。次第に男たちの数は減っていき結局その場に残ったのは一撃で沈められた男たちと見る影もなくボロボロになった地形だけだった。

 

「……つまらん。もう終わりか……おいおまえ、まだ意識があるだろう?ここはどこなのかさっさと教えろ。」

 

「お…おまえ、何を言っているんだ?ここに侵入しておいて知らぬはずがないだろう……・?」

 

「知らん。だから聞いているんだ。」

 

「それは私が説明してあげましょう。」

 

 突然聞こえてきた声にブロリーは振り向くとそこには緑色のショートヘアで片方だけを少し長く伸ばし、赤と白のリボンを付けている。さらにその上に帽子を被っている女性が歩いてきた。

 

「誰だおまえは?」

 

「私は四季映姫、ここ幻想郷の地獄の閻魔をやっています。」

 

「そうか、地獄の……ってなんだと!?ここは地獄なのか!?」

 

「はい。まさか本当に知らずにここに侵入してきたんですか?」

 

「知るわけないだろう!オレはそもそもここがどこなのかも今知ったばかりだ!」

 

 それを聞いた映姫はブロリーの顔をじっと見つめて目を閉じた。

 

「……嘘はついてないみたいですね。ではなぜ私の部下たちを倒したのですか?」

 

「こいつらが勝手に襲い掛かってきたから始末しただけだ!そんなことよりもここが地獄ということは、オレは死んだのか!?」

 

「いいえ、生きてますよ。亡者であれば貴方は今頃力を封印されて弱体化しているはずです。貴方は別に力が弱まってないでしょう?」

 

「……なるほど。確かにオレの力は弱まってなどいない。ではオレは生きているのか……!」

 

 ブロリーは自分が生きていることがわかると安心して肩を落とした。

 

「貴方がなぜここに来たのかの経緯が知りたいです。そのままじっとしててください。」

 

 そう言うと映姫は懐から手鏡を取り出してそれを覗き込んだ。

 

「?何をしている。」

 

「……なるほど、貴方は外の世界から来たのですね。それもかなりの極悪人のようです。」

 

「外の世界だと?なんのことだ。」

 

 映姫はブロリーにここ幻想郷のこと、外の世界のこと、そして今の状況をひとつずつ丁寧に説明した。説明を聞いたブロリーは最初は信じられないという様子だったが自分が吸い込まれた謎の空間のことを思い出すと映姫が話した内容がすべて真実であることを理解した。

 

「つまり、オレは別の世界に迷い込んでしまったということか?」

 

「そういうことです。ですが本来ここ地獄には生きた者は入ることが出来ません。もしかしたら最近の異変の影響が地獄にも出ているのかも……。」

 

「異変……それはなんだ?」

 

 質問された映姫は異変についてをブロリーに説明した。

 

「それが異変か。それがオレになんの関係がある?」

 

「今幻想郷では少しだけ結界に歪みが発生しているんです。今はまだ大したことない歪みですが、早く解決しないとどんどん歪みは悪化してゆき、最終的には外の世界と幻想郷がごちゃごちゃになってしまう可能性すらあり得るのです。何が言いたいのかというと貴方がその小さな歪みに巻き込まれてこの世界に来たということです。」

 

「よくわからんが、帰ることは出来るんだろうな?」

 

「そんなの私にはわかりません。でも、そうですね……。地上にいる博麗霊夢の元に行けばもしかしたら帰れるかもしれませんよ?」

 

「ならばオレをそこに連れていけ。」

 

「いいですけど条件があります。」

 

「条件だと……?」

 

「はい。貴方を今から霊夢の元へ送り届けます。それで貴方が元の世界に帰れればそれでよしとしましょう。ですが、もし帰ることが出来ないようであれば貴方はもう一度この地獄に帰ってきてもらい、力の一部を封印した上でここで働いてもらいます。」

 

「なんだと?なぜオレがしなければならない!」

 

 映姫に詰め寄るブロリーの前に映姫は先ほどの手鏡を出して見せた。

 

「この鏡は浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)と言いまして、これを覗くと見ようと思った人物の過去をすべて覗き見ることが出来るんです。さきほど鏡を覗き込んだ時に貴方の歩んできた人生をすべて見させていただきました。その結果、貴方は地獄に落ちるべき極悪人と分かったのです。そんな人物をこのまま何もせずに見逃すのは閻魔の私には耐えられません。だから先の条件を出させていただきました。」

 

「ふん、そんな条件飲むわけがないだろう?いいからオレを博麗霊夢とやらの場所へ送れ!」

 

「条件を飲まないというのなら連れて行きませんよ?貴方は一生ここで私たちと共に生きていくんことになるんです。それでもいいんですか?」

 

「ぐ…ぐぬぅ!」

 

 考え込んだブロリーだったが背に腹は代えられず映姫の条件を渋々受け入れた。

 そして場所は変わってここは三途の川。そこには船が一隻と赤髪を小さくツインテールにして、半袖の着物を身にまとい、大きな鎌を抱えた女性がいた。

 

「彼女は小野塚小町といってここ三途の川の渡し舟の船頭をやっています。今回は小町に貴方を案内させますので、くれぐれも逃げ出さないでくださいね?あ。ちなみに逃げ出そうとしたら強制的に貴方の力を封印させてもらいますので注意してくださいね?」

 

「先に言え!くそっ、こうなれば絶対に元の世界に帰り、条件をなかったことにしてやる……!」

 

「では後は任せましたよ、小町。」

 

「ええ、任せてくださいよ。お前さん名前は?」

 

「ブロリーだ。」

 

「じゃあブロリー、この船に乗っておくれ。」

 

 ブロリーは小町の言葉に従って小舟に乗り込んだ。そして映姫に見送られて二人は三途の川を渡り始めた。一方そのころ、消えてしまったパラガスは……。

 

「おーい、おっさん。こんなところで寝てると妖怪に食われちまうぞ?」

 

「う……ん……?」

 

 パラガスが目を覚ました場所は深い森の中だった。誰かに声をかけられて起きたパラガスの前にいたのは魔理沙ともう一人、金髪のショートヘアにヘアバンドのような赤いリボン、青いワンピースのようなロングスカートを着た女性がいた。

 

「ここは……?」

 

「お?目を覚ましたみたいだな。大丈夫か?」

 

「……おまえたちは?」

 

「私か?私は霧雨魔理沙だ。」

 

「私はアリス・マーガトロイドよ。貴方こそ名前は?」

 

「……俺はパラガスだ。それよりここはどこだ?オレは確か何かに吸い込まれてそれで……。」

 

 パラガスはなんとか吸い込まれた後のことを思い出そうとするが何も思い出せない。どうやら吸い込まれた時に気絶してしまったようだ。

 頭を抱えていると魔理沙たちが納得したように顔を見合わせていた。

 

「パラガスさん、貴方多分外の世界から来たんだわ。」

 

「外の世界?何を言っているんだ?」

 

 そして二人はパラガスに幻想郷のことを説明した。

 

「……にわかには信じられん話だが、この状況では信じるしかないようだな……。ではオレはどうしたら元の世界に戻れる?」

 

「ああ、それなら霊夢のところに行けば帰れると思うぜ。なんなら連れてってやろうか?」

 

「本当か?ならお言葉に甘えさせてもらおう。案内してくれ。」

 

「いいぜ。アリス、おまえはどうする?」

 

「私はそろそろ帰ろうかしら。案内なら貴方一人で十分でしょうし。」

 

「そうか、わかった。じゃあパラガス、この私の後ろに乗ってくれ。」

 

 そういって魔理沙は箒に乗り、その後ろを指さした。

 

「気遣い感謝するが必要ない。」

 

 パラガスはそういって二人の前で空に浮かび上がって見せた。それを見て二人はパラガスが普通の人間じゃないとわかった。

 

「あんた飛べるんだな。何者だよ?」

 

「オレはサイヤ人だ。これくらいわけない。さあ案内してくれ。」

 

「サイヤ人?まあよくわからないが、まあいいか。こっちだ。」

 

 パラガスは魔理沙に案内されてそのまま博麗神社へと飛び立った。それから少し時間が経ち、二人は博麗神社に到着した。

 

「おーい霊夢!いるか?」

 

 魔理沙が呼びかけると、神社の中から霊夢が顔を出した。

 

「魔理沙じゃない、また茶菓子でも盗みに来たの?」

 

「ちげーよ!茶菓子はもらうけど今回は用事があって来たんだ!」

 

「用事?それってそこの人と関係あるの?」

 

 霊夢は魔理沙の後ろに立っているパラガスを見てそう言った。

 

「パラガスだ。おまえに頼みがあり、ここまで案内してもらってきた。」

 

「ふーん。」

 

 霊夢は立ち上がり、神社から出てきて二人の前までやってきた。

 

「それで、頼みって何かしら?」

 

「オレはどうやらこの世界に迷い込んでしまったようでな。そこでオレを元の世界に戻してもらえないだろうか?」

 

「霊夢、おまえなら簡単だろ?戻してやってくれよ。」

 

 すると霊夢はばつが悪そうに目をそらした。その様子を魔理沙は不思議に思った。

 

「どうしたんだよ。何か問題があるのか?」

 

「えっと……実は今は幻想郷と外の世界を繋げることが出来ないのよね……。」

 

「はあ?なんだよそれ、なにかもしかして最近の異変と関係あるのか?」

 

「ええ、その通りよ。パラガスって言ったかしら?悪いんだけど、この異変が解決するまで貴方を元の世界に帰すことは出来ないわ。」

 

『なんだと!?』

 

 パラガスが反応を見せるよりも早く、突然大きな声が神社の入口から聞こえてきた。驚いて鳥居の方を見てみるとそこにはブロリーと小町が立っていた。

 ブロリーは丁度今の話を聞いてしまったようで、だらだらと汗を流していた。

 

「ブロリー!?おまえもこの世界に迷い込んでしまっていたのか?」

 

「親父こそ、こんなところにいたのか……いやそれよりも!帰れないとはどういうことだ!?」

 

 ブロリーは霊夢の両肩を掴んで詰め寄った。切羽詰まった様子のブロリーに気圧されながら霊夢は答えた。

 

「い、今幻想郷は重大な異変と直面しているのよ。この世界の結界が不安定になり始めていて危険な状態なの。今結界を開いてしまったら何が起こるかわからない、だから帰すことは出来ないのよ。わかった?」

 

「……。」

 

 放心するブロリーの肩に手をポンと置いて小町は言った。

 

「残念だったね。」

 

「く…くそぉおおお!!」

 

 その後、パラガスは魔理沙に誘われて魔理沙の家で研究の手伝いをして過ごすことになった。

 そしてブロリーはがっくりと肩を落としながら地獄に戻り、映姫の元で力の一部を封じられて獄卒として働くことになった。

 それから一年後、二人はホウレンたちと再会することになるのであった。

 




次回から第二章です。更新ペースが遅くなるかもしれませんが最後まで頑張ります!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。