ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
セルゲーム開催まであと六日。ホウレンが悟空の家に住み着いて二日目になるが依然としてホウレンの記憶が戻る傾向はなかった。
ホウレンと悟空はチチの言いつけで畑を耕していた。すると悟空がホウレンへ質問をしてきた。
「なあホウレン。おめえってひょとしてつええんか?」
「なんだよ突然。さあ、どうだろうな。体力はあるほうだと思うが……。」
「おめえ随分鍛えられた体つきしてっから、もしかすっとつええかもしんねえぞ。」
「そうか?まあ強いならそれに越したことはないが、記憶がないからな。確認しようがないぜ。」
ホウレンが肩をすくめると悟空は笑顔で言い放った。
「じゃあよ、オラと組手してみねえか!」
「組手って……ご、悟空とか?」
突然の申し出にホウレンは少し戸惑う。なぜならこの二日間の間でもすでに悟空の強さを何度も見ているからだ。
湖に直接飛び込み、大きな魚を素手で捕まえてみせたり。巨大なイノシシや恐竜などもいとも簡単に倒してしまう悟空との組手は普通に考えれば無茶ぶりである。
「ああそうだ!おめえの力を見てみてえ!」
「いや、でもな……悟空と闘うってんならまだ恐竜とかのほうがまだいいぜ……。できれば俺が死なない程度のやつとか。」
「大丈夫だ!ちゃんと手加減すっぞ?それによ。つええやつと闘うのは楽しいぞ~!」
「楽しいって……そりゃ、相手との実力が近けりゃ楽しいかもしれねえけど、そうでなけりゃあただのピンチだろ?」
「そんなことねえさ。武道家なら自分より強いやつに会えばもっと強くなるために修行するし、なにより闘ってみてえって思う。それによ?もしかすっと、これがきっかけで何か思い出せるかもしんねえ。な?やろぜホウレン!」
なんとか悟空を説得しようとしたホウレンの検討も空しく、説得に応じるどころかよりやる気を出させてしまい、ホウレンは降参するように小さくため息をついた。
「わかったよ。そこまで言われたら、俺も覚悟を決めるさ。悟空の言うとおり、もしかしたら少しでも記憶が戻るかもしれないしな。」
「やったあ!そうこなくっちゃな!へへっ、それじゃあ、始めようぜ!」
「待った。とりあえず場所を移そう。せっかく耕した畑が踏み荒らされちまうぞ?」
「おっといけねえ、そうだな。じゃあよ、ちょっと神様の神殿に行ってみねえか?あそこなら迷惑にはならねえし、ついでにみんなにもおめえを紹介もしてえ。」
「それは構わないが、神様の神殿ってなんなんだ?」
「そりゃおめえ、神様が住んでる家みてえなもんだ。」
「お、おまえ神様と知り合いなのか!?」
「まあな。つってもこの間、新しい神様に変わったばっかなんだけどな。さあ、ホウレン
オラの肩につかまれ。瞬間移動すっぞ。」
「瞬間移動って……ほんとになんでもありだな、おまえ……。これでいいか?」
「おう!じゃあいくぞ。」
悟空はホウレンが肩をつかんだことを確認するとすぐに瞬間移動で神様の神殿へと移動した。
~神様の神殿~
「よし、ついたぞ。」
「おお、ほんとに移動できた!すげえな瞬間移動!」
「へっへ~そうだろ?覚えんの苦労したぞ~。」
「あら?孫くんじゃない。どうしたの?こんなとこまできて。」
「ブルマじゃねえか。おめえこそなんで神様の神殿にいんだ?」
「ちょっとトランクスの顔を見にね。もうそろそろ出てくるらしいのよ。」
「精神と時の部屋か。あいつもまた強くなってんだろうなぁ。」
「なんたってわたしの息子ですもの?当然よ。それより孫くん。そっちの彼は?」
「ああ。こいつはいろいろあって今オラの家に住んでるんだ。」
「はじめまして、俺の名前はホウレンだ。」
「へえ~。なかなか男前な顔してるじゃない。わたしはブルマよ。よろしくね。」
「ブルマか。よろしく頼む。」
「それで?孫くん。なんでこの子をあんたの家に住ませてるわけ?」
「それがよ、話すとなげえから、トランクスが出てきたらみんなにまとめていっぺんに話すよ。」
「なるほど、わかったわ。じゃあ、トランクスが出てくるまで待ちましょう。」
「よし。じゃあホウレン、その間に組手を済ませちまおうぜ!」
「そうだな、お手柔らかにたのむよ。」
二人は神殿の広い場所まで移動してお互いに距離をとった。それを見て神殿にいた仲間たちがそれを観戦しに集まりだした。
「ピッコロ。あいつはだれだ?」
天津飯は先にこの場に来ていたピッコロに問いかける。
「さあな。悟空が連れてきたようだが、今から組手を行うらしい。」
「悟空と?いくらなんでも無茶じゃないか?」
「普通ならな。だがやつから感じる気はどこか違う。」
「違う?違うとはどういうことだ。」
「俺にもわからん、だがひょっとするとやつは地球人ではないのかもしれんな。」
「準備はいいか!ホウレン!」
ホウレンはゆっくり深呼吸をして拳を構える。
「おう!いつでもいいぜ!」
「よーし、いくぞ!!」
悟空は一気にホウレンに詰め寄り、右拳で殴り掛かるがホウレンは紙一重でそれをかわし逆に悟空を殴りつけると難なく左手で拳を受け止められ軽い衝撃波が起こる。
手加減しているとはいえ、超サイヤ人状態の悟空の攻撃をかわし、反撃まで加えたことにまわりが驚きの表情をみせる。
だが一番驚いているのはホウレン自身のようだ。
「ははっ!おめえやっぱりつええじゃねえか!」
「お、俺自身も正直驚いてるとこだよ。体が勝手に反応しやがった。」
「その調子だ。どんどんいくぞ!」
悟空は受け止めた拳を離し、即座にその腕を掴みホウレンを自らの後方へ投げ飛ばす。
投げ飛ばされたホウレンは空中で体制を立て直し、着地と同時に悟空へ突撃して素早い連撃を繰り出した。しかしそれも悟空は難なくかわし、受け止めて見せた。
「くっ!やっぱつええ!全然当たるどころか、かすりもしねえ!」
必死に悟空を攻撃するホウレンに対し、悟空は余裕の表情でとても楽しそうにしている。
たとえどんなに力が離れていても、やはり悟空にとって闘いは楽しいものなのだ。
「えりゃあああ!」
「ぐうっ!?」
悟空は連撃をかわすと同時にホウレンを蹴りつけ、ホウレンは避けることが出来ず後方へ大きく滑り込んでしまうがなんとか受け身を取り立ち上がる。
正面を見ると悟空の両手に強い気が込められていた。
「ちょ、ちょっと孫くん!?」
「まて悟空!さすがにそれが当たればただでは済まんぞ!!」
「か~め~は~め~破ーーーー!!」
ブルマと天津飯が制止するなかそれでも悟空はかめはめ波を放った。
「な、なんだこりゃ!?ぐぉあああ!!」
かめはめ波をまともに受けたように見えたホウレンだったがなんと正面からかめはめ波を受け止めていた。
「ぐぬぬぬ……!!」
「どうした!おめえの力はそんなもんか!」
「ぐぐっ……だあああああ!!」
ホウレンは歯を食いしばり後ろにどんどん押されながらもかめはめ波を上に弾き飛ばした。空へと弾かれたかめはめ波は大気圏を越え宇宙へと飛んで行った。
「はぁ…はぁ…っ!ど、どうだ。なんとかなったぞ!」
周囲が驚く中、悟空は口元に小さな笑みを浮かべて、突き出した両手を下した。
「ここまでだ。ホウレン、やっぱおめえつええよ!オラの思ったとおりだ!」
「はぁ…はぁ…あ、ありがとよ。でも俺は限界…み…たい…だ…。」
いままで気合で立っていたようなものであったホウレンは体に限界がきてその場に倒れる。意識が薄れゆく中みんなが俺に駆け寄ってくるのが見えた。
~神殿 内部~
目が覚めると目の前に見知らぬ黒い人物が立っていた。
「おまえ目が覚めたか?」
「あ、ああ。ここは一体……それにあんたは誰だ?」
「俺ミスターポポ。おまえ悟空と闘って力尽きて倒れた。それを神様が治した。ここ神様の神殿の中。起きたならついてこい、みんな待ってる。」
そういうとミスターポポはスタスタと歩き出す。それを見て慌ててホウレンはベッドから出て、後を追った。
~神殿 外~
「お、ホウレン!目が覚めたんか!」
外に出ると真っ先に悟空が話しかけてきた。周りにはさっき闘いを見物していた人たちとその時いなかった長髪の青年が立っていた。
「迷惑かけたな。ところで俺の傷を治してくれたっていう。神様はどこにいるんだ?」
あたりを見渡すと緑色の肌をした小さな子供が歩いてきた。
「はじめまして、ボクはデンデ。その神様です。といっても神様になったのはつい最近ですけど。」
「あんたがそうか。さっきは死ぬかと思った、治してくれてありがとな神様。」
「いえ気にしないでください。それとボクのことはデンデでいいですよ。」
「そうか?じゃあ改めてありがとな、デンデ。」
「ホウレン、トランクスも出てきたことだし。そろそろおめえのことを紹介してえんだけど、いいか?」
「そうだったな。じゃあ頼む。」
悟空はホウレンに確認をとるとすぐにホウレンの横に立ち、みんなを呼び集めホウレンの事情をすべて話した。
傷だらけで倒れていたことや記憶喪失のことを聞いたみんなは驚きの表情を見せた。
「そんなわけでなんとかこいつの記憶を戻してやりてえんだ。なんかいい考えがねえかな。」
みんなが黙りこんでしまう中ピッコロが口を開いた。
「悟空、確かにそいつの正体が気になるのは確かだが、今の状況を忘れたのか?今はセルゲームに向けて皆修行している最中だ。そいつには悪いが付き合ってやれる時間がない。」
ピッコロの言葉に全員が口を閉じる。ピッコロの言うとおり、今地球はセルゲームに勝たねばすべてが終わってしまうという時なのだ。ホウレン一人の記憶を戻している時間など残っているはずもない。
「そうだよな……。悪い、忘れてくれ。このことはやっぱり俺の力で何とか__」
「__待って!」
引き下がろうとするホウレンの言葉を遮ったのはブルマだった。
「あのさ、みんなで明日お花見にいかない?」
「「「お花見ぃ??」」」
ブルマの突然の申し出に皆が声を合わせて聞き直す。
「そう。お花見よ!もしかしたらこれで地球最後かもしれないんだから最後くらいパーッと騒ぎましょうよ!」
「お、オラは構わねえけど。みんなはどうだ?」
「さっきも言ったが、そんなことしている暇はない。俺はいかん。」
「悪いいが俺もそんな気分にはなれない。お前らだけで言ってきてくれ。」
「母さん、オレはいいですよ。少し息抜きもしたいですし。」
「ありがと、トランクス。ピッコロも天津飯も連れないわね~。じゃあ孫くん、そっちで声かけられる人には声かけといてくいれる?わたしは準備とかしておくから。」
「いいけどよ。なんだって急にお花見なんだ?」
「さっきも言ったでしょ?最後くらいパーッと騒ぎましょうって。……それにみんなで騒いで楽しいことをすればもしかしたら昔のことも何か思い出せるかもしれないでしょ?」
ブルマの発言にホウレンは顔を上げて驚いた。
「あ、あんた最初からそのつもりで?」
「まあね。あなた悪い子じゃなさそうだし、手助けして上げたいじゃない?もしかしたら何も変わらないかもしれないけど、わたしにできるのはこれくらいだから。」
その言葉を聞いてホウレンはブルマを正面に見据えて深く頭を下げた。
「ありがとう、それでも俺は嬉しいよ……。」
「いいのよ。ほら顔を上げて?記憶、戻るといいわね。」
「ああ!……悟空もありがとな。」
「気にすんな。それよか、お花見楽しもうぜ!」
「…あれ?そういやおまえ、明日はなんか用事があるんじゃなかったか?」
「え?そうだっけか?」
「ほら、確か悟飯の学校の面接とかって。」
「ああああ!!そうだった!わ、わりいブルマ。オラも明日は行けそうにねえ……。」
「あはは!残念だったわね孫くん?でも声かけはよろしくたのむわよ。」
「ちぇ~。しょうがねえな。」
「悟空、そろそろ帰ろうぜ。はやく畑に戻らねえとチチにどやされる。」
「そうだな。じゃあなみんな!ブルマ、明日はホウレンのことたのんだぞ。」
「ええ。任せといて。」
悟空の肩に掴まりながらホウレンはみんなに軽く頭を下げた。
「みんな今日はありがとう。また明日。」
そう言い残して悟空とホウレンは瞬間移動で帰っていった。
「ホウレンか……。」
「ピッコロ。何か気になることでもあるのか?」
「あいつの傷が治って神殿から出てきたとき奴の気が大きく上がっていた。」
「なに?どういうことだ。」
「……もしかすると、あいつはサイヤ人かもしれん。」
「な!?だがあいつには尻尾がついてなかったぞ!?」
「悟空やベジータと同じかもしれん、大怪我が原因で切れてしまった可能性もある。
……悟空め、また厄介なものを引き当てたかもしれんな。」
ピッコロはそう言って空を見上げた。
次の更新はいつになるかわかりませんが早く書きたいと思っています。次回はパラガスやブロリーが登場する予定ですのでお楽しみに。