ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ホウレンと霊夢の闘いは以外にも一方的になった。押されているのはホウレンのほうだ。
霊夢の実力はホウレンの想像を遥かに上回っており、幻想郷最強とも言えるその力の前にホウレンはなすすべなく地面に叩きつけられていた。
「ぐっ……!」
「もうおしまい?」
霊夢は空中からホウレンを見下ろしている。その姿にはいくらかの余裕を感じた。
「んなわけあるか、まだまだこれからだってーの!」
そんな二人の闘いを見ている三人はそれぞれに思うところがあるようだった。
「……さすが霊夢ね。あの人も十分な実力者だと思うけど完全に霊夢が押してるわ。」
「ええ。やっぱり強さの格が違いますね……。」
「おーい!ホウレン、大丈夫かー?」
「おう!まだまだいけるぜ!」
「なら早くかかってきてよね。あんたの次にあいつも残ってるんだから。」
そう言って霊夢は悟空を横目で見た。
「おいおい、もう勝った気でいんのかよ。勝負はまだこっからだぜ?」
「と言ってもね……。貴方の動きじゃ、勝ち目はないわよ。」
「どうかな?いくぜ!」
ホウレンは霊夢めがけて飛び上がり、無数の拳を繰り出すが全てかわされる。
「ほら、私にかすりもしないじゃないの。」
ホウレンの攻撃を涼しい顔で避けながらそう言った霊夢を見て悟空は感心したように驚いた。
「へぇ、あいつ思ったよかつええな!レミリアより強いんじゃねえか?」
「……そうですね。昔お嬢様が異変を起こしたことがあったのですが、その時お嬢様を倒し異変を解決させたのは霊夢ですからね。」
「ほんとか!すげえんだなーあいつ!」
「……貴方が言うかしら?」
三人が会話をしている時も闘いは続いている。ホウレンの攻撃をかわし続けた霊夢は隙を狙ってホウレンの腹に強烈な右拳を叩きつける。
「うぐっ!!」
「それ!」
強烈な一撃によろけたホウレンに霊夢は回し蹴りを食らわせる。ホウレンはそれを避けることが出来ずに再び地面に滑り込んでしまう。ホウレンはなんとか立ち上がるも疲れが見え始め、息を乱していた。
「妖夢が言ったとおり油断せずに戦ったつもりだけど、この程度なら油断してても倒せそうね。」
(やべえな、こいつ妖夢よりも遥かに強いぞ……。このまま闘っても本当に勝ち目がねえ!)
「さあ、そろそろ終わりにしましょうか。」 霊符『夢想封印』
霊夢がお祓い棒をホウレンに向けるとその周りから大きな光の玉が現れ、ホウレン目掛けて飛ばされる。
「くっ!」
ホウレンはその攻撃をギリギリですべてかわす。
「そんなんで避けたつもり?」
すると避けたはずの光の玉はホウレンを追跡するように再び方向を変えて飛んできた。
「くそっ!うらぁあああ!」
ホウレンはやむを得ずその光の玉をすべて力ずくで弾き飛ばした。それに驚き一瞬だけ隙が出来た霊夢にホウレンは技の構えをとる。
「くらえ!ターコイズブラスト!」
ホウレンは霊夢目掛けて青白い閃光を放つがなぜか霊夢は仁王立ちのままその技をくらった。
「はぁ…はぁ……マジかよ。」
「それが貴方の全力かしら?」
土埃の中から霊夢がゆっくりと出てくる。技が直接当たったにも関わらず霊夢はまったくの無傷であった。
「まるで効いていないのか……!?」
「そんなわけないでしょ?ちょっと結界を張っただけよ。」
「結界だと……?」
「そ。もともとこの幻想郷の結界の管理も仕事のうちだしね。これくらい造作もないわ。」
ホウレンはいよいよもって手詰まりになり最後の手段に出ることにした。
「……仕方ねえか。ここまで追い詰められたんじゃ、出し惜しみしてるわけにもいかねえ。」
「?」
首を傾げる霊夢を前にホウレンは両腕を開き気を高め始めた。
「お、ホウレンのやつ、やっと本気出すみてえだな!」
「本気って…もう全力で闘っているんじゃないですか?」
「あの状態ではな。」
「?あの状態では……?」
悟空の言葉に妖夢は首を傾げた。だが咲夜は昨日の悟空を思い出していた。
「……まさか、あの人も……?」
「はぁああああ!!」
「……一体何を?」
「だああああ!!」
その瞬間、ホウレンの周りに爆風が起こり超サイヤ人へと変身した。
「な!?」
「や、やっぱり!!」
「え?え??」
妖夢は突然の爆風に何が起こったか分からず、辺りをキョロキョロと見渡す 霊夢は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま冷静さを取り戻していた。
「……何よ、その姿。」
「これか?これは超サイヤ人ってやつだよ。」
「なにそれ?」
「そうだな……。俺たちサイヤ人の真の力ってやつかな?」
「ふぅん。でも今更その真の力で闘っても意味ないんじゃないの?そんなボロボロの体で本気を出したところでこの実力差が埋まるとは思えないんだけど?」
「俺たちサイヤ人を甘く見ないことだな。さっきの俺と今の俺……どれだけ違うか、確かめて見るか?」
「いいわよ。今度こそ完膚なきまでに叩きのめしてあげる。」
ホウレンと霊夢は少しの間お互いを睨み合う。そして先に霊夢がお払い棒を 構え攻撃を仕掛けた。
「はっ!!」 夢符『退魔符乱舞』
霊夢は数多の針状の弾幕を超高速でホウレン目掛けて放った。だがホウレンはその弾幕を全て最小限の動きで躱してみせた。
「あの速度を見切った!?」
「うおりゃあ!」
「くっ……!」
ホウレンは弾幕を躱した直後、霊夢に向かって突進し右拳を突き出すも咄嗟に受け止められる。
だが即座に左足で蹴りをいれ霊夢を蹴り飛ばした。吹き飛んだ霊夢は地面を滑り、体制を立て直した。
霊夢は一度ホウレンと距離をとるため、空へと飛び上がった。
「逃がさねえぞ!」
ホウレンは霊夢を追い空へ飛び上がったその時
「逃げる気なんてないわ。」
霊夢はくるりと振り返りお払い棒をホウレンへ向けた。
「!!」
「今度は避けられないわよ!」 霊符『夢想封印 集』
さきほどと同じ大きな光の玉が今度はホウレンの周りを包むように現れ、一斉にホウレンに集まるように飛び交って爆発を起こした。それをまともにくらったホウレンは地面へ落下した。
「……ッ!ハッ!!」 夢符『二重結界』
土埃の中から特大の光線が飛び出すが霊夢は咄嗟に結界を張り身を守った。激しい轟音が鳴り響き、周りの煙が全て吹き飛ぶ
「うぐぐ……!」
霊夢の張った結界は非常に強力なものであったがなんとホウレンの攻撃によってひびが入りだす。その結界を見て霊夢は目を見開いて驚いた。
「嘘でしょ!?結界にひびなんて……!!」
「砕けろぉおお!!」
「うっく……きゃあああ!!」
ホウレンのエネルギー波は霊夢の結界を打ち砕きそのまま霊夢に直撃した。流石の霊夢も避けきれず、地面に落ちていった。
その様子を見て妖夢は自分と闘った時との違いに驚きを隠せずにいた。
「す、凄い……!あの姿になってから強さがまるで違う……!」
「あいつも随分修行積んだみてえだな。始めて会ったよかずっと強くなってやがる。超サイヤ人の力も使いこなせてるみてぇだ。」
「超サイヤ人の力を使いこなせてる?どういう事?」
悟空の言葉に咲夜が質問をする。
「もともと超サイヤ人ってのはオラたちサイヤ人にとって、伝説上の存在でな。理性が少しとんで、凶暴性が増すんだ。」
「……物騒な話ね。」
「ですが、ホウレンさんは強さこそ増しましたが。理性がとんでいるようには見えませんが……。」
「そうね。貴方が変身した時も普通にお話していたみたいだけど?」
「そりゃ、たくさん修行したかんなぁ。」
「そう……。(修行でなんとかなるのね……。)」
「それでホウレンはな。出会ったとき記憶が無くってよ。それなのに闘いの中ですぐに超サイヤ人になりやがったんだ。あいつひょっとしたらすげえ才能の持ち主かもしれねえな。」
「サラッと重要なこと言わないでください!記憶が無いってどういう事なんですか!」
「……彼は今も記憶が無いままなの?」
「……ああ。あれから三年は経ってっけど、多分まだ昔のことは思い出せてねえと思う。」
「そうなんですか……。」
「ああ、だから超サイヤ人の力も全然使いこなせなくてすぐ変身が解けちまってたんだが、この三年で随分と物にしたみてえだ。……だけど、あの霊夢っちゅう女。まだなんか隠してんな……。」
ホウレンは倒れた霊夢を真っすぐに見つめている。
「……どうだよ、霊夢。俺の全力は。」
霊夢はゆっくりと立ち上がりながらホウレンの言葉に答えた。
「……ええ、正直驚いたわ。まさか……力尽くで二重結界を壊すなんてね。」
立ち上がった霊夢は再びホウレンと向き合い睨みあった。
(さてどうしようかしらね……。まさか私とほぼ同等かそれ以上の力を隠しているなんて思わなかったわ。それにまだもう一人残ってるし……。)
睨み合いをしているとホウレンと悟空はこちらに向かってくる気の存在に気が付き空を見上げた。
「この気は……!」
「どうしたの?闘いの最中によそ見なんて随分と余裕じゃない。」
「悟飯たちの気だ!」
「何を言っているの……?」
「あいつら無事だったんか!よかったー!」
ホウレンに引き続き悟空も向こうの空を見上げて歓喜する。それを見て咲夜は悟空に問いかける。
「貴方も彼も急にどうしたのよ?向こうの空に何かあるの?」
「……あ!誰か飛んできますよ!」
妖夢の言葉に反応して霊夢も同じく空を見上げる。
「あれは……?」
その先には悟飯たちが飛んでくる姿があった。霊夢たち幻想郷の住人にとっては見たこともない人間たちが空を飛んでくるという光景であり、軽く身構えてしまう。
そして悟飯たちは悟空の前に降りてきた。
「お父さん!無事でよかった!」
「おー悟飯!おめえも無事だったみてえだなぁ!」
悟空の言葉に咲夜はギョッとした。
「貴方結婚してたんですか!?」
「え?そうだけど、それがどうかしたんか?」
「い、いえ意外だったもので……。」
「カカロット、これはどういうことだ。なぜホウレンのやつがここにいる?」
「それどころか超サイヤ人にまで変身して闘っているとはな。おかげでオレたちも見つけることが出来たが。」
今度はベジータとピッコロが順々に悟空に問いかけた。
「いろいろあってさ、あいつはこの世界に迷って入ってきちまったらしいぞ。」
「なるほど、わざわざ異世界にまで迷い込むとは間抜けなやつめ。」
「ベジータ、オラたちだってこの世界で迷ってたからお互い様ってやつだと思うぞ?」
そう言われてベジータは小さく舌打ちをして押し黙った。
「ちょっとそこにいるのってこいしじゃないの!なんであんたまでそいつらと一緒にいんのよ!」
「私?私はトランクスについてきただけだよ。ね?トランクス。」
「はい。こいしさんがオレたちの手伝いをしてくれると言うので来てもらいました。」
「そういうこと!」
「手伝いってあんた……。」
「ホウレンさん!一体何があったんですか?ボロボロなうえに超サイヤ人にまでなって。」
トランクスの問いかけにホウレンは霊夢から目を離さずに答えた。
「いろいろあって、こいつを倒さないといけなくなってさ。超サイヤ人にならないとまるで歯が立たないから全力をだしたってわけだよ。」
「なるほど、そうだったんですか。」
「さて、随分賑やかになっちまったがそろそろ続きを始めようぜ?霊夢。」
「……そうね。始めましょうか。」
「みんな。これは俺の戦いだ。手は出さないでくれ。」
(流石の私もこれだけの人数相手じゃ勝ち目がないわね。仕方ない、体力の消耗が激しいからあまり使いたくなかったけど。あのスペルを使うしかないか……。)
「……ホウレンっていったわね?貴方の負けよ。」 『夢想天生』
ついに霊夢は最後の切り札を見せる。果たしてホウレンは勝つことが出来るのであろうか……?