ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ホウレンと悟空がまさかの再開を果たしたころ、人里ではピッコロと悟飯が慧音と共に人里で情報を集めていた。
最初はピッコロの姿に恐れを抱いていた人間たちも、慧音と共に歩いているのを見てだいぶ慣れてきたのか誰も怖がらなくなっていた。
「特にそれといった情報が手に入らないな……。ピッコロのほうはどうだ?」
「オレもだ。まったくあの三人はどこをほっつき歩いているんだ……。」
「二人とも、少しいいですか?ちょっと変わった話を聞いたんですけど。」
「なんだ?」
「昨日の夕方頃に紅魔館という場所がある方角から大きな爆音が鳴り響いていたらしいんです。もしかしたらお父さんたちかも?」
「なるほど、ひょっとしたらあの三人の内の誰かが何者かと闘っていたかもしれんな。慧音、その紅魔館の場所はどこだ?」
「紅魔館はここからずっと向こうへいったところに森があってその先に大きな湖がある。更にその先に建っているのが紅魔館だ。」
「よし、行くぞ悟飯。あいつらがいるかもしれん。」
「誰がいるかもしれないだって?」
紅魔館に向かって飛びたとうとするピッコロと悟飯を呼び止めたのはベジータであった。
「ベジータさん!」
「ベジータ!お前いつの間に!」
「貴様らがだらだらと話しをしている間にな。どうやらまだカカロットとトランクスはいないようだな。」
「ちょっとベジータさん!おいてかないでくださいよぉ!」
ベジータの遅れてやっていきたのは鈴仙だった。ベジータを送ってここまでついてきたようだ。
「ふん、チンタラしているからだ。」
「ベジータさん、そちらの方は?」
「私は鈴仙・優曇華院・イナバといいます。ベジータさんの道案内として同行して来ました。貴方がたがベジータさんのお仲間さんですか?」
「はい、ボク孫悟飯っていいます。」
「オレはピッコロだ。」
「見つかってよかったですね、ベジータさん。」
「……そうだな。あとはカカロットとトランクスだが……お前らが話していた内容だと紅魔館とやらに行くんだろう?オレもついていくぞ。」
ベジータがと合流して今度こそ紅魔館へ飛び立とうとする三人だったが、それを遠くから呼ぶ声が聞こえてきた。
「ま、待ってください!」
「この声は……!」
三人が振り返ると遠くからトランクスとこいしが走ってくるのが見えた。だがどういうわけかトランクスは少しふらついた様子であった。
「トランクス、おまえも無事だったか!」
「え、ええ。なんとか……。皆さんもご無事でなによりです。」
「これであとは悟空だけか、ということは紅魔館に行けば悟空がいるかもしれんな。」
ベジータは立ち止まってもなおふらついたままのトランクスに疑問を浮かべた。
「トランクス。おまえ何かあったのか?」
「あ、あはは。ちょっと色々大変なことがありましてね。お気になさらず!」
「この人たちがトランクスの仲間なんだ。へえ~!」
「お前は?」
「私?私はこいし。古明地こいしだよ。トランクスの仲間探しを手伝ってあげてたの。」
「こいしさん、手伝ってもらってありがとうございました。ここからはもう大丈夫です。さとりさんと勇儀さんにもよろしく伝えといてください。」
「ええ~?でもまだ全員集まったわけじゃないんでしょ?最後まで手伝わせてよ。」
「ですが……。」
「好きにさせておけばいい。すぐにカカロットと合流することになるだろうがな。」
「……わかりました。ではこいしさん、もう少しだけよろしくお願いします。」
「鈴仙、おまえはどうする?」
「私はそろそろ戻ろうかと思いますのでここで失礼させていただきます。最後の一人、見つかるといいですね!」
「そうか、世話になったな。」
話がまとまって最後にピッコロと悟飯が慧音の前に立った。
「慧音、色々と助かった。ひとまずはこれでお別れだ。」
「慧音さんお世話になりました。」
「ああ、またいつでもきなさい!」
「はい!では失礼します!」
こうして悟飯たちは悟空を探して紅魔館がある方角へと飛び立った。一方ホウレンたちは四人で人里へ向かって平原を上空を飛んでいた。
ホウレン、悟空、妖夢、そしてレミリアに命じられて手伝いに来た咲夜の四人だ。
「いや~待たせちまって悪かったな。それに咲夜も手伝いに来てくれてありがとな!」
「お嬢様のご命令ですからね。しっかりこなして見せるわ。」
雑談をしながら飛んでいると別の場所からこちらに向かって飛んでくる女性がいた。
「待ちなさい、そこの外来人!」
飛んできた女性はホウレンたちの前に回り込んできた。突然見知らぬ女性に呼び止められ、ホウレンたちは少女の前で急停止する。
その女性は少し暗い茶色の髪に大きな赤いリボンを付け、肩が出た巫女服を着ていた。さらにその手にはお祓い棒を持っている。
「あー…その外来人ってのは俺たちのことだよな?」
「あんたたち以外に誰がいんのよ……。」
少女は半ば呆れたようにため息をついた。
「私は博麗霊夢。博麗の巫女をやっているわ。今回はあんたたちに用があって来たの。」
「「博麗の巫女だって!?」」
声を合わせて驚いたのはホウレンと悟空であった。
「悟空、おまえも博麗の巫女を知ってるのか?」
「おめえこそ、なんで知ってんだ?」
「いや、俺はもともと博麗の巫女のところに用があって妖夢と一緒に行動してたんだよ。」
「なんだおめえも博麗の巫女に用があったんか。オラたちも博麗の巫女に用があってこの世界に来たんだぞ?」
「へ~、妙な偶然もあったもんだな。」
「……もういいかしら?」
「おう、いいぞ。」
霊夢は気を削がれながらも咳払いをして話をつづけた。
「私は普段、妖怪退治とかを仕事にしているんだけど、他にも異変の解決とかもやってるのよ。」
ホウレンは霊夢の言葉に一つだけ聞き覚えのない単語を聞いて妖夢のほうに顔を向けた。
「異変って?」
「異変っていうのはですね。幻想郷で希に起こる怪奇現象や妖怪などによって意図的に起こされた不可思議な現象とかのことです。」
「へぇ……。」
「そう、それで私は貴方たち二人に用があって来たわけ。」
霊夢はそう言うとホウレンと悟空を交互に指さした。
「?オラ何にも変なことしてねえぞ?」
「俺も覚えがねえな。」
「「……。」」
「いや…そっちの二人が明らかに何かあったって顔してるんだけど‥。」
「妖夢、俺なんかしたっけか?」
「……まあ、あんな凄い力で闘ったら……。」
「目を付けられてもおかしくないわね……。」
妖夢と咲夜はお互いに顔を見合わせて納得したようにうなずくがホウレンと悟空はよくわかっておらず首を傾げていた。
「別にあんたたち二人だけってわけでもないんだけどね。」
「あれ?この二人以外にも誰かいるんですか?」
「ええ、実は昨日から幻想郷のあちこちで闘いの痕跡が残されていてね。得体のしれない力ばかりだから私が最も危険と感じたところに来たってわけ。」
「ホウレン、おめえそんなに暴れたんか?」
「いや、間違いなくお前のほうだろ。」
「当たり前でしょ?紅魔館に一人で殴り込みに行って大暴れしたって噂を聞いたわよ?」
「いい!?確かに門はぶっ壊しちまったけど、大暴れはしてねえぞ!」
「玄関と庭も壊したでしょ?」
慌てて弁明する悟空に咲夜が言葉を付け足した。
「あ、そうだった!」
「よくもまあ、紅魔館でそこまで暴れたもんだわ。でも、一緒に行動している所を見るとレミリアあたりにでも負けて追い返された?」
「ん?いや、オラ勝ったぞ?」
「……は?」
「咲夜はオラの手伝いに来てくれただけだ。」
霊夢は悟空の言葉がすぐに理解出来ずに悟空と咲夜の顔を交互に見た。
「は…え…?咲夜、この人の言ってること…本当なの?」
「ええ、事実よ。お嬢様も妹様もまるで敵わなかったわ。」
「そんなことねえぞ。あの二人も結構強かったかんなぁ。」
咲夜の様子を見てそれが嘘じゃないと分かった霊夢は驚きの表情で悟空を見つめた。
「信じられないわ……。外の世界にそんな人がいるなんて。」
「私もよ。まさかお嬢様たちが敵わないなんてね……。」
「それで、悟空になんの用があるんだ?」
「私の用事は貴方たちが最近の異変の元凶じゃないかって思って来たの。」
「なに?」
「霊夢、最近の異変っていうのは?」
咲夜は霊夢が言った言葉が気になり、霊夢に問いかける。
「それはね、幻想郷と外の世界の結界が不安定になっていることよ。」
「結界が不安定に?それってあの隙間妖怪のせいとかじゃないの?」
「それが違うのよ。むしろ紫は私と一緒にその元凶を探してる協力者ってところね。それでその結界が最近更に不安定になってたのよ。そこに突然貴方たちみたいな強い力を持った人たちが幻想郷に入ってきたってわけ。怪しまれて当然じゃない?」
「確かに、俺たちすげえ怪しいな。」
「でしょ?だからそれを私の目で確認してもし犯人だったら退治しようと思ったわけ。」
「それって…ホウレンさんとそのお仲間さんたちもですか!?」
「そうよ。今のところ一番怪しいのはこの人たちだけだし、それに今仲間たちもって言ったわよね?恐らく私の勘だと昨日から見つかってる闘いもその仲間たちじゃないの?」
「知らねえよ。あいつらがそんなことするわけ……いやするな、うん。」
「そうだな。悟飯やピッコロ、トランクスはともかくベジータは何すっかわかんねえぞ?」
「一番危ないって目を付けられたやつが言うかよ?」
「はっはっは!そりゃお互い様ってやつだ!」
その二人の会話を聞いて霊夢は確信を得たと思い、目つきを鋭くした。
「身に覚えがあるのね。決定だわ。さっさとあんたたちを退治して私はお昼寝に戻らせて貰うわよ!」
「ちょっ……!霊夢さん、落ち着いてください!まだ証拠もないじゃないですか!」
「まあ確かにそうだけど。こっちは早くこの異変を終わらせなきゃいけないのよ、そうしないと……。」
「そ、そうしないと……?」
「いつまで経っても私がのんびりできないじゃないの!」
「そんな理由ですか!?」
「さあ行くわよ!そこの悟空とかいう人!」
霊夢はビシッと悟空を指さした。
「ん?オラか?」
「当然よ。紅魔館を一人で攻略出来るくらいだから、その仲間たちの中では一番強いんでしょ?だったら貴方を倒せば解決じゃない。」
霊夢の言いぐさにホウレンは慌てて話を聞いてもらおうと悟空の前に出る。
「待てって!先に話くらい聞いてくれよ!」
「問答無用よ!聞いて欲しいなら私を倒してからにしなさい!」
「どこのボスだお前は!」
ホウレンの言葉に耳を貸してくれない霊夢を見て悟空が楽しそうに笑った。
「オラは別に構わねえぞ、こいつ強そうだしなあ!」
「いや、お前そういう問題じゃないだろ?」
「そんなこと言っておめえだって実は闘いてえんじゃねえか?」
悟空に指摘されてホウレンは少し口ごもる。
「……まあ、倒さないと話を聞いてくれないってんなら俺も闘ってみてえけど。」
「ん~どうすっかな。オラも闘いてえし……。」
「あの……。」
「むぅ……よし!ここはじゃんけんで決めようぜ!」
「ちょっと……?」
「そうだな、そうすっか!せーのっ!」
「「じゃ~んけ~ん…ぽん!」」
「……。」
二人は何度も話かける霊夢の声にも気づかずにどちらが闘うかを決めるために霊夢をそっちのけでじゃんけんを始めてしまった。
「霊夢。こういう人たちなのよ。」
「緊張感がないわね……。こっちがやる気なくしちゃうわよ……。」
「まったくです。でも気をつけたほうがいいですよ?この人たち、どっちも信じられないほどの強さですから。」
「忠告どうも。」
そして何度もあいこを繰り返したじゃんけんの勝者が決まった。
「よっしゃー!俺の勝ちー!」
どうやら勝ったのはホウレンのほうらしく、悟空は悔しそうな顔をしていた。
「ちぇ、しょうがねえ。おめえに譲るよ。」
「ああ、悪く思うなよ?」
「決まったかしら?」
「おう!俺がやらせてもらうぜ!」
「まったく……この私を目の前に随分と余裕じゃないの。」
「余裕ってわけじゃねーよ。それよりおまえ、俺が勝ったらちゃんと話を聞いてくれるんだろうな?」
「あれ、本気にしてたの……?まあいいわ。勝てたらね。」
「絶対だぞ?手加減しねえからな?」
「はいはい、わかったわよ。さっさと始めましょ?」
ホウレンは霊夢の承諾を得てやる気を更に出した。そして悟空、妖夢、咲夜の三人は闘いの邪魔にならないように少し離れた地上に降りた。
それを確認するとホウレンは深呼吸をして息を整える。
「……よし、いくぜ!」