ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ここは地底世界、別名旧地獄。トランクスは地底世界の旧都という巨大都市に落ちていた。落ちてすぐに仲間たちがいないことに気づいたトランクスはこの旧都で聞き込みを行いつつ皆を探し回っていた。
「参ったな…。かれこれ一時間は探し回ってるのに誰も見つからないなんて……。」
トランクスは路地裏に座り込み少し休憩をしようとした。だがそんなトランクスに忍び寄る影が三つほどあった。
「おい兄ちゃん。こんなところでなーにやってんだ?」
「ここは俺たちの縄張りだ、とっとと失せな!」
現れたのはガラの悪い三人の男だった。見るからに人間ではないその容姿に普通の人間なら怯えて腰を抜かす所だが、トランクスにとって怯えるような連中ではなかったため冷静なままだった。
「それは悪かったな。すぐに消える。」
あまり関わりたくなかったトランクスはすぐにその場から立ち上がり、立ち去ろうとした。しかし男たち内の一人がトランクスの腕を掴みその足を止めた。
「待てよ兄ちゃん。ついでだ、ここで休んでった分有り金を置いてってもらおうか。素直に渡せば痛めつけたりしねえでやるぜ?弱小な人間さんよ。」
「……確かに勝手にお前たちの縄張りで休んだオレが悪いが、お前たちに金を払う必要は感じないな。オレは暇じゃない、さっさと放してくれ。」
「なんだと?てめえ俺たち鬼に逆らうなんて随分と命知らずな人間じゃねえか。」
「俺たちは別にお前を殺してやってもいいんだぜ?」
自らのことを鬼と呼んだ男たちはトランクスの態度に怒りを露わにし、三人でトランクスを囲み脅してきた。だがトランクスの表情は変わることなく真っすぐに男の目を見ていた。
そんなトランクスに更に苛立ちを覚え、三人の内の一人がついにトランクスに手を上げた。
「ただの人間風情が調子に乗ってんじゃねえよ!」
男は常人では見えないほどの速さで拳を振り下ろした。だがトランクスはそれを軽く受け止めると
その男の腹に強烈な蹴りを叩きこんだ。男が何が起きたのかもわからないままその場に倒れ、気を失った。
「な!?」
「て、てめえ!何をしやがった!」
「お前たちが聞き分けが悪いんでな。悪いが少し眠っていてもらうぞ。」
「ふざけやがって!おいやっちまうぞ!」
男たちはトランクスを左右で囲んで二人がかりでトランクスに殴り掛かる。だがトランクスはそのすべての攻撃をかわし続けた。
「はあ!」
「ごへぇ!?」
トランクスは攻撃をかわしつつ片方の男の顔面を裏拳で殴りつけ気絶させた。そして最後に残った男を軽くひっくり返した。
「……お前で最後だ。さあ覚悟はいいか?」
「ま…待ってくれ!お、おれが悪かった!許してくれ!」
「……。」
「そ、そうだ!あんた確か急いでたんだろ?何か手を貸せることはないか!おれに出来ることならなんでもしてやるぞ!」
「……まあいい。じゃあ一つだけ質問させてもらう。この辺でオレと同じ人間を何人か見かけなかったか?」
「に、人間?いや、生憎おれはあんた以外の人間は見ていない。」
「そうか、ならいい。喧嘩を売る相手は考えたほうがいい。じゃあな。」
トランクスは男から手を放し、その場から立ち去った。だが今の闘いを終始見ていた者がいたことにトランクスは気づかなかった。
それからトランクスは何度かガラの悪い者たちに絡まれながらも捜索を続け、旧都の中心にたどり着いた。そこにはやけに動物が群がっている屋敷があった。
「大きな屋敷だな。ここの人なら何か知っているか……?」
トランクスは何の情報も得られないままここにたどり着いたためとにかく情報が欲しかった。そこに周りとは違う大きな屋敷に淡い期待を抱いてトランクスは屋敷の中へと足を踏み入れた。
「ごめんくださーい!誰かいませんかー?少しお尋ねしたいことがあるんですけど!」
だがトランクスの呼びかけに屋敷からは何の反応もない。仕方なくトランクスは引き返そうとすると後ろに微かに気を感じてトランクスは振り返った。
そこには薄く緑がかった灰色の髪に黒い帽子を被っていて体の周りに管のようなものがあり、胸に閉じた目のようなものをつけた少女が立っていた。
「……君は?」
トランクスの問いかけに少女は驚いた様子を見せた。
「……貴方。私に気づいているの?」
「え?何を言ってるんだ?気づいてるも何もここにはオレと君しかいないじゃないか。」
「!!……本当に気づいてる。貴方何者なの?」
トランクスは少女の言っていることがよくわからなかった。その様子を見た少女はトランクスに近づき静かに話し出した。
「私は古明地こいし。ここに住んでいるの。貴方は?」
「え…あ、ああ。オレはトランクス。少し聞きたいことがあってここを訪ねたんだ。お父さんやお母さんはいるかな?」
「いないよ。ここには私とお姉ちゃん、それとペットたちだけで暮らしているの。」
「そうなんだ。じゃあ、お姉さんはいるかな?」
「いるけど…その子供扱いやめてよ。もっと普通に接してくれたらお姉ちゃんのところに連れてって上げる!」
「え?あ、ああわかった。……これでいいですか?」
「貴方の普通にって敬語なのね…。まあいっか、ついてきて。案内してあげる。」
「その必要はないわ。」
突然聞こえてきた声に反応して屋敷の奥を見ると、その奥から薄紫色の髪にヘアバンドをつけフリルが多くついた服を着ている。更にこいしと同じで管のようなものが体の周りにあり、胸に開いた目のようなものが付いている少女がトランクスたちの前に姿を現した。
「あ、お姉ちゃん。ちょうどよかった、この人お姉ちゃんに聞きたいことがあるらしいの。」
「ええ。全部聞こえていたわ。それよりこいし、貴方いままでどこ行ってたのよ!随分心配したのよ?」
「ごめんごめん。ちょっと無意識の内に地上に出ちゃってたみたいで、そのまま散歩したり遊んで回ってたら少し遅くなっちゃった。」
「少しじゃないでしょ?一週間よ?一週間!」
「あ…あの~?」
「え?ああ、ごめんなさい。ちょっと熱くなってしまってました。えっとご用件は?」
トランクスは先のこいしとの会話もあったせいか、姉のほうにも敬語を使うことにした。
「実は人を探しているんですが、今日ここら辺で人間を見かけませんでしたか?全部で四人なんですけど……。」
「人間?まさか、こんな地底にくる人間なんてそうそういないと思いますが……そういえば貴方は人間みたいですね。人探しのためだけにここ地霊殿まで足を運んだんですか?」
「足を運んだと言うよりは気が付いたらこの都市にいた…と言ったところでしょうか……。」
トランクスの言葉にこいしは首を傾げた。だが姉のほうはトランクスの目をじっと見つめている。
「あの…オレの顔に何かついてます?」
「ここまで来るのに随分妖怪に襲われたみたいですね。」
「!……なんでそれを?」
「お姉ちゃんはね。人の心が読めるんだよ。」
「人の心を読む……?」
「ええ。こいしの言うとおりです。私は貴方の心の声を聴いただけ。故に貴方のさっきの言葉も嘘偽りがないこともわかりました。貴方のお仲間のことも読ませてもらいましたけど残念ながら私は見ていません。」
「そうですか……。」
「お役に立てずごめんなさい。」
「いえ、お話が聞けただけでも助かりました。ではオレはもう行きます。お邪魔しました。」
トランクスが頭を下げて扉に手をかけ帰ろうとしたとき、こいしは少し残念そうにトランクスに声をかけた。
「もう行っちゃうの?」
「はい。こいしさんもありがとうございました。オレは引き続き仲間たちを探しに行きます。」
「……ねえ、その仲間探しなんだけど。私も手伝ってもいい?」
こいしの提案にトランクスは驚いて目を見開いた。姉のほうを見るとそちらも少し驚いた様子でこいしを見ていた。
「ええと、こいしさん。気持ちは嬉しいですが、これ以上迷惑をかけるわけにはいきません。気持ちだけ受け取っておきますよ。」
「でもトランクスはさ、ここのことあまり詳しくないんでしょ?だったらここの地理に詳しい妖怪が一人くらい必要だと思うの!」
こいしからなぜか強い思いを感じたトランクスはその申し出に少し迷いを見せた。するとそんな二人の様子を見て、姉はトランクスに話しかけた。
「貴方、トランクスって言うのね。」
「え、ええ。そうです。」
「じゃあトランクス。こいしを連れてってあげてくれないかしら?」
「貴方まで……どうしてオレの手伝いを?」
「それは秘密よ。」
口元に指を立ててそう言った姉にトランクスはますます意味が分からなくなるも、引く様子がまるでないこいしたちに根負けした。
「……わかりました。じゃあお願いします。」
「やった!あっ……コホン。じゃあ私が街を案内してあげるからついてきて!」
「ちょ、そんなに手を引っ張らなくても!で、ではお姉さん。ありがとうございました。こいしさんを少しだけお借りしていきますね。」
「ええ、妹を頼みます。」
トランクスはこいしに手を引っ張られながら地霊殿から出て行った。その後姿をみて姉は小さく微笑んだ。
「はしゃいじゃって……。よっぽど自分を見つけてくれたことが嬉しかったのね。」
姉はそのまま二人の姿が見えなくなるまでそこに立っていた。
~旧都~
「こいしさん、そっち側はもう探したので別の場所を教えてもらってもいいですか?」
「じゃあ、向こうのほうを探してみましょう。」
それから二人は数時間もの間、旧都全域を探し続けた。だが仲間たちは一向に見つからなかった。そこで二人はどこを探すかの話し合いをするため近くにあった長椅子に並んで座った。
「全然みつからない……。本当に旧都にいるの?」
「わかりません。正直オレはこの世界の地理をまったく知らないんです。」
「旧都がわからないってのはわかるけど…世界っていうのは?」
トランクスは自分がここに来た経緯をこいしに話した。するとこいしはその説明に納得したようで長椅子から立ち上がった。
「貴方外来人だったんだね?どうりで見たことない恰好だと思った。でもそういうことなら話は早いね!」
「と、言いますと?」
「この地底世界じゃなくて地上を探しに行こう!」
「地上に行けるんですか?」
「当たり前だよ。行けなかったらそもそも地底にだってこれないでしょ?」
「な、なるほど。確かに……。」
「そうと決まれば、さっそく地上に行ってみよう!」
「はい!___こいしさん。動かないで。」
急に真剣な声になったトランクスにこいしは不思議に思いながらもそれに従った。
「……おい、おまえたち。隠れてないで出てきたらどうだ?」
トランクスがそう言うと街の至る所からガラの悪い男たちが次々と二人を囲むように現れた。
その中から数時間前トランクスに絡んできた三人の鬼たちが出てきた。
「よう兄ちゃん、さっきは世話になったな……!」
「懲りないやつだな。まだ痛い目にあいたいのか?」
「へっ、今度痛い目にあうのはてめえのほうだぜ?なにせこの人数だ!その連れの女を守りながらおれたちと闘えっと思うかよ?」
トランクスたちの周りには二十人を超えるほどの妖怪が集まっていた。恐らくあの鬼たちの子分だろう。鬼たちが笑みを浮かべてトランクスたちに向けて一斉に襲い掛かってきたその時。
「待ちな!あんたら雑魚じゃいくら束になっても勝てないよ!」
突然響いた大きな声に鬼たちは全員足を止めて声の主を見た。するとさっきまで笑みを浮かべていた鬼たちは冷や汗をかき顔が青ざめていった。
「あ…あんたは!星熊勇儀!?」
星熊勇儀と呼ばれたその女性は金色の長髪で頭には黄色い星のマークがついた赤い一本の角を持ち、体操服のような恰好に半透明のスカートをはいていた。
勇儀は持っていた赤い杯に酒を注いで飲み干すと周りの妖怪たちを睨みつけた。
「こいつは私が目をつけてんだ。負け犬は引っ込んでな。」
「くっ…!てめえ、誰が負け犬だこら!」
「あんた以外にいるのかい?あんたも鬼なら潔く負けを認めな。それよりも……。」
勇儀はトランクスとこいしにゆっくりと歩み寄ってトランクスの正面で足を止めた。
「私はね。あんたに用があるんだ。ちょいと話を聞いてもらえるかい?」
「……なんだ?」
「実は今日のあんたの闘いっぷりは全部見させてもらったよ。人間でありながら妖怪たちを倒し、下っ端とはいえ鬼三人がかりを瞬殺してみせた。そんなあんたに頼みがあるんだよ。」
「見ていたのか…。それで?オレに何を頼もうって言うんだ?」
勇儀はニヤリと口元を緩め、目を輝かせてトランクスに顔を近づけた。
「私にあんたの力を見せて欲しいのさ!」
勇儀の言葉に周りの妖怪たちがざわめきだす。だがトランクスと勇儀はそんな中でも静かにお互いを見つめあう。そしてトランクスは小さくため息をして立ち上がった。
「どうやら引いてくれそうにはないな。いいだろう、相手になる。……こいしさん。少し俺たちから離れていてください。」
「……トランクス。大丈夫なの?相手は元山の四天王と呼ばれた鬼だよ?人間の貴方じゃ勝てないと思うけど……。」
「大丈夫です。オレも…半分普通の人間じゃないんで。」
「え?」
「決まりだ!じゃあさっそく始めようじゃないかい!」
そう言うと勇儀は持っていた杯に酒を注ぎ始めた。
「……闘うんじゃなかったのか?」
「闘うさ。これを持ちながらね。」
勇儀はそう言って酒が注がれた杯をくるくると手の上で回した。その余裕たっぷりな態度にトランクスは少し苛立ちを覚えた。
「……オレを舐めているのか?」
「違うよ、私にとってこれは力を試す準備さ。なにせ大抵のやつはこの杯から酒を一滴も落とすことが出来ないんだからね。……あんたはどうかな?」
「ふっ、酒が無くなっても後悔するなよ。」
「とんでもない!むしろそこまでの強さなら大歓迎さ!」
二人は話をやめるとそのまま構えて動かなくなった。だが周囲の妖怪たちはそこに誰も近づかない、いや近づけないのだ。二人の間にはそれほど空気が張りつめていた。
最初に動きを見せたのはトランクスだった。トランクスは勇儀を思いっきり殴りつけた、だが勇儀はそれを片方の手で受け止めていた。そのぶつかり合いだけで回りには衝撃が放たれ、土埃が宙を舞う。
「ゾクゾクするねぇ!こんなに強い一撃は鬼でも滅多に見られないよ!」
「一撃で終わらせるつもりだったんだがな。どうやら一筋縄ではいかなそうだ……。」
「そういうことさ!はあ!」
「くっ!!」
勇儀は空いているトランクスの下っ腹を左足で蹴りつけた。重たい一撃にトランクスは立ったまま地面を滑る。そこに勇儀は左手でトランクスの右頬を殴りつけ、回し蹴りで追撃を加えるもトランクスはそれをギリギリで受け止めて逆に勇儀を殴りつけた。
殴られてよろけた勇儀は自分の杯を見て楽しそうに笑った。
「いいね…!私の杯から酒を少しでも零させたやつは博麗の巫女たち以外では初めてだよ!」
「博麗の巫女……?」
勇儀は長椅子まで歩いてゆき、杯をそこに置いた。すると勇儀から発せられる気のようなものが急激に上昇し始めた。その力の上昇に周りにいた鬼を含める妖怪たちは怯えだし、一部の妖怪は腰を抜かしてしまっていた。
そしてトランクスでさえもその凄まじい力に驚きを隠せなかった。
「力試しなんてもういい。ここからは本気であんたと闘ってみたい!」
「まさかこれほどの気……いや別の力か。とにかく甘く見ていたのはオレも同じだったわけだ。」
「早くあんたも本気を出しなよ。じゃないと本当に__」
その瞬間トランクスの視界から勇儀が消えた
「がっ!?」
「__死んじまうよ。」
トランクスは強烈な右拳を腹にくらい妖怪たちの中に吹っ飛んだ。トランクスは想像を遥かに超える勇儀の力に大きなダメージを受けた。
「はぁ…はぁ…!(この力…人造人間に匹敵…いや、それ以上のパワーだ!)」
「はっはっは!まだまだくたばるんじゃないよ!」
勇儀は高く飛び上がりトランクスに向けて飛び蹴りを仕掛けるがトランクスはそれを転がってかわした。勇儀の蹴りの威力に近くの妖怪たちは吹き飛ばされ、地面に大きくひびが入る。
「トランクス!こんなの無理よ!早く降参したほうがいいって!」
トランクスを心配するこいしの声が響く、その声を聴いたトランクスは勇儀の攻撃を紙一重でかわしながらなんとか距離をとり、気を上昇し始めた。
「はぁああああ!!」
そしてトランクスは超サイヤ人に変身した。変身の衝撃で辺りの土埃がすべて消し飛んだ。その変身にそこにいた誰もが驚いた。人間がこんなことを出来るはずがないと戸惑う声があちこちから聞こえてくる。
だがトランクスはそんな声にも耳を貸さず、ただ勇儀と正面から対峙した。
「驚いたよ。人間にもそんな変身が出来るやつがいるんだねぇ。」
「……オレの体には人間の血だけじゃない、戦闘民族サイヤ人の血も流れている。今から見せるのが本当の力だ!」
「いいねぇ!そのサイヤ人とやらの血がどれほどのものなのか見せておくれよ!」
トランクスと勇儀の姿が消える、そして次の瞬間に二人の拳がぶつかり合った。ぶつかり合った衝撃で足元が陥没しクレーターが出来る。互いの力は拮抗しているかのように見えたその時、トランクスが徐々に勇儀の拳を押し始めた。
「おいおい!あの星熊勇儀が押されてねえか!?」
「お…おれたちはあんな化け物と闘おうとしてたのか……。」
「ぐっぐぐ!なんて力だい……!怪力乱神と恐れられるこの私が……!」
「もう終わりにさせてもらうぞ。勇儀!」
「!?」
トランクスはぶつかり合った勇儀の拳を弾き飛ばし、そのまま上空に蹴り上げた。そして蹴り上げた勇儀の後ろに一瞬で回り込みその背中を蹴りつけ、両手を合わせて勇儀を叩きつける。それをくらった勇儀はクレーターの中心に勢いよく衝突した。
トランクスは上空からゆっくりと勇儀の元へ降りたった。
「……まだ立っていられるのか。」
叩きつけられた勇儀は土埃の中で立っていた。だが先ほどと違い力が随分と低くなっていた。
「……参った!私の降参だよ。あんたまだまだ本気じゃないだろう?」
「気づいていたのか?」
「だからなんとか本気を出させてやろうと思ったんだけどねぇ。はっはっは!上には上がいるもんだ!」
高らかに笑う勇儀だがその表情はどこか悔しそうだった。
トランクスはその様子を見て超サイヤ人を解いた。すると闘い終えたトランクスの元にこいしが駆け寄った。
「トランクス!」
「うわ!?」
駆け寄ったこいしはすぐさまトランクスに抱き着いてきた、驚いてこいしを見るとこいしは目を輝かせてトランクスを見ていた。
「あの…こいしさん?」
「凄かったよトランクス!なんなのあの変身!?もう、あんなに強いんだったら言ってくれたらよかったのにー!」
こいしはまるで子供のように興奮した様子で今の闘いの感想を言い続けた。
「こ、こいしさん。そんなに抱き着かなくても……!」
「ええ~?いいじゃない。減るもんじゃないんだしさ。」
「あっはっは!地霊殿の子供に随分と好かれたようじゃないかトランクス?」
「あ、あはは。そうみたいですね……。」
ここでトランクスは周りにいたはずのたくさんの妖怪たちの姿が見えないことに気が付いた。
「そういえば、あの連中はどこに……?」
「あの妖怪たちならトランクスが勇儀を倒した辺りで逃げてっちゃったよ。」
「それで怯えて逃げちまったってわけかい?だらしない連中だねぇ……。」
「まあとにかくこれであいつらもオレたちに手を出してくることはないだろう。それよりも…この大穴はどうしようかな……。」
「ああ、この穴なら気にしなくていい。私が知り合いに頼んで直してもらっとくよ。」
「そうか?それは助かる……。」
「ねえトランクス。地上に出る前に一度地霊殿に戻らない?地底だからわかりにくいけど、もうすっかり夜だよ?」
「そうなんですか?参ったな、どこか眠れる場所を探さないと……。」
その言葉を聞いた勇儀はニヤリと笑いトランクスの肩に手を回した。
「トランクス、あんた酒は飲めるかい?」
「え?いや、オレはあんまり飲んだことは……。」
「よーし!じゃあ今日はあんた今日は私に付き合いな!寝床がないなら朝まで飲み明かそうじゃないかい!」
「え…ええ~!?」
「あ、ずるい!私もトランクスともっと話がしたい!」
「ちょ、ちょっとこいしさんまで!」
「よーし、じゃああんたも来な!今日は朝まで騒ぎ通すよ~!」
「おおー!」
「ちょっとお二人とも!?待ってください!さすがにそんなわけには…ちょ、押さないでください!な…なんでこんなことに……?」
トランクスの主張も空しく、二人に引きずられて、結局その日は朝まで勇儀の酒とこいしの質問攻めに付き合わされることになったトランクスであった。