ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ここは幻想郷のとある森。その上空に突然小さな歪みが発生した。
そこから一人の人物が叫び声を上げながら森の中に落下した。その人物は時空の歪みの中で穴に飛び込んだうちの一人、孫悟空であった。
「いっちちち!なんとか間に合った見てぇだな。みんな大丈夫か__ってあり?みんなどこ行ったんだ?」
悟空は辺りを見渡すがそこには自分以外の人の気配がなかった。
「あ…そうか。あんときみんな別々の穴に入ったから、もしかすっと別の場所に出ちまったのかもしんねえな。うーん、とりあえず気を探ってみっか。」
悟空は目を閉じて遠くの気を感じてみるも上手く気が探れずそれを断念した。
「まいったな…。よくわかんねえ気がごちゃごちゃしててみんなの気がよくわかんねえぞ…。これじゃ、瞬間移動で合流すんのも無理そうだ…。仕方ねえ、歩き回って探すしかねえか。」
そうして悟空仲間たちを探して森の中を歩き回った。だがいくら歩き回っても仲間たちは見つかず、時間だけが過ぎて行った。
「やべえな。オラ腹減ってきちまった…。みんなも全然見つかんねえし、参ったな~。ん?」
腹を空かせて歩き回っていると森の奥に一人の少女が立っているのを見つけた。
悟空はこれを幸運に思い、話を聞くため少女の元へ歩み寄った。
「おーい!そこのおめえ!ちょっといいかー?」
「え、あんただれ?」
少女は水色の短い髪で背中に氷ような羽を持っていた。
「オッス!オラ悟空!」
「おっす!あたいチルノ!なんか用?」
「えっと、この辺に強そうなやつを見かけなかったか?怖え目つきしたやつとか緑色のやつとか。」
悟空の曖昧な質問にチルノは不思議そうな顔で悟空を見た。
「よくわかんないけど強いやつだったらいるよ。」
「ほんとか!それで、そいつは今どこにいんだ?」
「ふっふっふ。それはあたいのことだよ!」
「へ?おめー、つええのか?」
「もちろん!あたいさいきょーだから!」
自信満々に言い切ったチルノに悟空は少し戸惑う。どう見ても強そうには見えなかったからだ。
「そ、そうなんか?全然そんな風には見えねえんだけどな~……。」
「あ!あたいのことバカにしたな!」
すると悟空の発言が気に障ったのかチルノは悟空に怒鳴りかかった。
「い!?いや、そんなことねえぞ?信じてないわけじゃねえって!」
「うるさーい!あたいがこらしめてやるから覚悟しろ!」
チルノは悟空の弁明の声も聞かずに悟空に襲い掛かろうとしたその時、黄緑色の短い髪の羽が生えたもう一人の少女が止めに入った。
「待ってチルノちゃん!ダメだよ、知らない人に喧嘩売っちゃ!」
「あ、大ちゃん!だってこいつがあたいのことバカにしたんだよ!」
「す、すまねえ。そんなつもりはねえんだ。許してくれ。」
チルノは悟空にグイッと近づき顔を覗き込んだ。
「む~…いいよ、ゆるす!」
チルノはなんとか悟空を許してくれたようで、悟空はホッとして胸を撫で下ろした。
「あの…チルノちゃんがすみません。」
「あ、いや別にいいさ。それよかおめえは?」
「あ。私は大妖精っていいます。貴方は?」
「オラ、孫悟空だ。ところで大妖精、おめえにも聞きてえんだけどこの辺に強そうなやつらを見かけなかったか?怖え顔したやつとか緑色の肌してるやつとかさ。」
「えっと…緑色の肌の人?はわからないですけど、紅魔館なら強い人がたくさんいますよ?」
「紅魔館?」
「はい。この幻想郷の中でもかなり上の力を持った人たちが住んでいる館のことです。」
その話を聞いた悟空はかなりわくわくした様子で嬉しそうな顔をしていた。
「へえー!そうなんか!闘ってみてえなぁ!」
「あたいのほうが強いけどね!」
悟空はどや顔のチルノも目に入らず紅魔館のことを考えていた。
「もしかすっとみんなもそこにいるかもしんねえな…。なあ大妖精。その紅魔館っちゅう場所がどこにあんのか教えてくれ!」
「いいですよ。あっちのほ__」
「ちょっと待った!こうまかんへの行き方は教えられないよ!」
「え!な、なんでだよ!」
「えっとね。なんとなく。」
チルノの適当な考えに悟空はどうしたもんかと真面目に考え込んでしまう。
それを見て大妖精は焦ってチルノに近づいた。
「ちょ、ちょっとチルノちゃん……!」
「参ったな…。この世界はうまく気も探れねぇみてえだし。やっぱ飛び回って空から探してみるしかねえか……。」
本気で考え込む悟空を心配した大妖精は悟空の顔を覗き込んだ。
「あの…大丈夫ですか?」
「え?あ、ああ大丈夫だ。それよかどうしても教えてもらえねえか?」
「うーん、どうしよっかな~?」
「チルノちゃん、教えてあげよう?ね?」
「たのむ!」
悟空は手を合わせてチルノに頭を下げた。それを見たチルノは少し考えたあと何かを閃いたように手をぽんと叩き悟空を指さした。
「あたいに勝てたら教えてあげよう!」
「チ、チルノちゃん!?」
「ほんとか!よかった~!オラまた迷っちまうとこだったぞ~!」
「ふふふ、もう勝った気でいるの?ただの人間にあたいは負けないよ!」
やる気満々になったチルノと悟空だったがそこに大妖精が小声で悟空に耳打ちしてきた。
「あ、あの悟空さん。」
「ん?どうした?」
「…チルノちゃんはあんな感じですけど、妖精の中では凄く強いほうで…その…人間の貴方じゃ勝てないと思うんです。それに紅魔館も同じで実のところチルノちゃんよりもずっと強い人たちが住んでいるので行かないほうがいいかもしれませんし……。」
「へえ。あいつほんとに強かったんだな~。オラわくわくしてきたぞぉ!」
「ええ~!?」
小声でいつまでも会話している悟空たちにしびれを切らしチルノは大声で悟空を怒鳴りつけた。
「なにをコソコソしてる!来ないならこっちからいくぞー!」
「大妖精、離れてろ。巻き込まれんぞ?」
「は、はい……。」
大妖精は余裕たっぷりな悟空を心配に思いながらも言われた通りに二人から離れた。
「さあて。お手並み拝見といくかな。」
お互いに準備を整えた悟空とチルノはどちらも余裕がある表情で睨みあった。
そしてチルノが先に攻撃を仕掛けた。
「くらえ!」 氷符『アイシクルフォール』
チルノが手を前に突き出すとチルノの周りから氷のつぶてが現れ悟空目掛けて飛んで行った。
悟空はそれに驚きながらも飛んできたすべての氷をかわして見せた。
「あれ?外した?」
(外したんじゃない。あの人…全部避けてた……!)
「おどれぇたぞ!おめぇ氷を出せるんか!よーしじゃあ今度はオラから行くぞ!か~め~は~め~……!」
「ふふん、運良く外れたみたいだけど次で決め__」
「波ぁあああーー!!」
「え?」
悟空のかめはめ波をチルノは避けることが出来ずそのままかめはめ波に飲み込まれて消滅してしまった。
「あ!」
「チ…チルノちゃーん!!」
様子見に撃ったはずのかめはめ波でチルノを消し飛ばしてしまった悟空はしまった!と思いながら大妖精のほうを恐る恐る見つめた。
「……あの、えっと。」
「チルノちゃん…またやられちゃった……。」
「す…すまねぇ。おめえの友達を吹き飛ばしちまった…。ぜ…絶対にドラゴンボールで生きけぇらしてやっから待っててくれ!」
焦って大妖精に深く頭を下げる悟空だったが大妖精はあまり動揺していない様子だった。
「あ、えっと。大丈夫です!私たち妖精は時間が経てば復活しますので。」
「そ、そうなんか?そいつはよかった……!」
「あ、そうだ。紅魔館の場所なんですけど、向こうへずっと歩いたところに湖があって、その先にある真っ赤なお屋敷が紅魔館です。」
「サンキュー。じゃあ、またな!さっきのやつにもよろしく伝えといてくれ!」
「はい、お気をつけて!」
大妖精と別れ、悟空は紅魔館がある方角へ飛んで行った。
「……凄く強い人だったなぁ。あの人なら紅魔館に行っても無事に帰ってこれるかも……。」
~霧の湖 上空~
「でっけえ湖だな~。それに霧もかかってて前が見ずれぇし…。」
霧がかかった湖を先に進むとそこには真っ赤な館が見えてきた。
「お?ひょっとしてあれが紅魔館か?」
悟空は紅魔館らしき建物を見つけその門の元へ降りた。
「へえー。ほんとに真っ赤だなぁ。ここにつええやつがいんのか…。悟飯たちもここに来てっといいんだけどなぁ……。」
悟空が館をまじまじと見ていると門の壁に誰かが立っているのを見つけた。
そこにいたのは赤色の腰まで伸びた長い髪で中華風の服を着た女性だった。話しかけようとした悟空だったが、よく見るとその女性は壁にもたれかかって寝ているようだった。
「寝てんのか?…参ったなぁ。おーいおめえ!ちょっと__ッ!!」
悟空が近づいたそのとき、寝ていたはずの女性が突然悟空に殴り掛かってきた。
だが悟空はその不意打ちに反応し拳を受け止めた。
「……今の不意打ちを軽く受け止めますか。なかなか強いですね。」
「おめえ、いきなりなにすんだ!」
女性は突き出した拳を下げて話しを始めた。
「……先ほど、森のほうで大きなエネルギー波のようなものを何者かが放出したのを感じました。恐らく貴方のものでしょう?」
「……おめえ気を感じ取れるんか。確かにオラだ。それがどうしたっちゅうんだ。」
「もし貴方が危険な人物だったとしたら、この紅魔館の門番としてここを通すわけにはいきません。お引き取り願います。」
「別にオラおめえらに危害を加えるつもりはねえぞ。ただ聞きたいことがあるだけだ。」
「聞きたいこと…?なんでしょうか。」
「ここにオラみてえな強い気を持ったやつらがこなかったか?オラの仲間なんだけんど、この世界に来るときにバラバラになっちまったみてえでさ。」
「い、いえ来てませんよ?(ホントは寝てたからわからないけど……。)」
悟空はガクッと肩を落とし、困った顔をして腕を組んだ。
「そうか~…。参ったなぁ。ここにはいねえのか……。」
「聞きたいことはそれだけですか?ならばお帰りください。」
「あ、そうだ。それともう一つお願いがあるんだけどいいか?」
「なんです?」
「ここにすげえ強いやつらがいるって聞いてよ!オラそいつらと闘ってみてえんだ!ダメかな?」
悟空のお願いに女性は目を丸くする。
「ま…まあ、確かにここの住人は強者ぞろいですが。貴方人間でしょう?死んじゃいますよ?」
戸惑った女性ははたから見れば無謀とも言える悟空のお願いに一応警告をするが悟空は逆に目を輝かせてしまった。
「そんなにつええんか!オラわくわくしてきたぞ!」
そんな悟空の様子を見てこれはもう何を言っても無駄だと考えた女性はため息を零した。
「……えっと。後悔しませんね?」
「ああ!」
「……わかりました。では私がお相手いたしましょう。」
「おめえが相手してくれんのか!よろしくたのむ!」
「はい。よろしくお願いします。」
悟空たちが組手を始めようとしているとき、紅魔館の窓からその様子を眺めている女性がいた。
「あら?珍しいわね。あの娘がちゃんと働いているなんて。」
女性が独り言を零していると前から一人の少女がその女性の前に歩いてきた。
「咲夜。ちょっといい?」
「はい。何でしょうかお嬢様。」
「今美鈴が話している男、たぶん美鈴を倒してこの紅魔館に入ってくるわ。」
少女の言葉に咲夜は一瞬あっけにとられる。
「人間が美鈴を…ですか?」
「ええ、間違いないわ。断片的だけど運命を覗いてみたの。目的はわからないけど侵入してくることは確かなこと…。気を緩めないようにね。」
「はい。かしこまりました。」
「ああ、それとね咲夜。」
少女は去り際に後ろを振り返り一言だけ告げた。
「あの男には貴方でも勝ち目がないから気をつけなさい。」
言い忘れてましたが自分の書く幻想郷の住人は少しでもバランスをよくするためにだいぶ強め?にしてあります。